804氏による強制肥満化SS

804氏による強制肥満化SS

『取り替え』

 

 

 

授業中。
突然私のお腹が張り出した。
…便秘?
いや、そうじゃない。
実際にお腹が膨れてきてスカートを押し上げる。
それだけでも十分不可解なことだが、もっと不可解なことに押し上げられていたスカートまで段々と大きくなってきている。
さらによく見ればお腹だけではなく、二の腕や指の太さも変わってきているようだ。
そしてそれらの膨張に合わせて制服もどんどん大きくなってきている。
数分もすると体とスカートの膨張は収まった。
そっとお腹を触って見ると、指先で厚ぼったい脂肪がつかめた。
一体何が起こったのだろう?
目眩がして机の上に突っ伏す。
そんな私を心配して、先生が保健室に行くように勧める。
隣の席の希美ちゃんの付き添いを受け、私は保健室に移動した。

 

 

「大丈夫?」
「うん…ありがとう希美ちゃん…」
保険室のベッドに寝転がったことで少し気分が落ち着いた。
でも、どうして?
「どうして、急にこんなことに…」
「貧血じゃない? 朝ごはん抜いてきたとか?」
「え…そうじゃなくて、なんで急に…太っちゃったのかなって…」
「?」
希美ちゃんはキョトンとしている。
「だから、急に太っちゃって…」
「…何の話? 別にいつもと変わってないよ?」
「え?」
「きっといきなり気分が悪くなったせいで混乱してるんだよ。ゆっくり休んでたほうがいいよ。」
そう言って希美ちゃんは教室に戻っていった。

 

 

放課後、家に帰ってみて急激に太ったことを家族に話したが、私が何を言っているのか分からない様子だった。
どうやら私以外の人は、私が急激に太ったことに気付いていないらしい。
しかも、家にある服のサイズはどれもこれも今の私にピッタリあったものばかり。
もしかして私が勘違いしているだけ?

 

…いや、絶対にそんなことは無い。
あの突然の変化が起こる前は、確かに私はもっと痩せていたはずだ。
それなりに引き締まったお腹回り、薄い胸(これは自慢にはならないけど…)、小顔とまでは言わないが決して丸々とはしていない顔。
全体的に見てやや小柄でどちらかといえば痩せ型という体型だったはずなのだ。
服の上からでも分かる太鼓腹、ハムのようなむっちりとした腕、鎖骨が埋もれてしまうほどの首周りの脂肪、頬肉に押された細い目。
どれもこれも、私の体とは思えない。
一体何があったというの…

翌朝。
眠りから覚めたわたしは、すっかり様変わりした部屋の様子に驚いていた。
本棚からは小説の類が消え、代わりに今まで読んだことも無いような漫画やファッション雑誌、さらにはちょっとHな本までずらりと並んでいる。
勉強机の上にはCDや携帯ゲーム機などが乱雑に置いてあり、学校で使うはずの教科書や参考書がどこにも見当たらなかった。
教科書についてはどうしても見つからなかったので諦めて学校に行くと、私のロッカーにこれまた乱雑に突っ込まれていた。
ページをめくってみると、重要な事項に赤線を引いたり先生の話をちょっと書き込んでおいたりする、いわゆる「使い込まれた」跡が全くなくなっていたことにまた驚かされた。
誰かが勝手にわたしの教科書をすりかえて持っていったのかと思って周囲の人に聞いてみたが、どうやらそれも違うようだった。
皆が口を揃えて言うことには「あんたってそもそも教科書に書き込みするほど勉強なんかしないじゃない」ということだった。

 

そして授業が始まったら始まったで、全く身が入らなかった。
全然集中できず、しょっちゅう欠伸が出た。
結局この日、わたしは生まれて初めて仮病で途中早退――つまり、ズル休みをしてしまった。

 

夕方、わたしはゲームセンターで1人で遊んでいた。
今までやった記憶も無いゲームなのに、妙に馴れた手つきで操作できてしまう。
そして遊んでいるうちにまた変化はやってきた。
わたしのショートカットの黒髪が、いつの間にか腰まで届くような長い金髪になり、メガネもコンタクトに変化していたのだ。
耳にはピアスもいつの間にかついていた。
手鏡で確認してみると、金髪にしろピアスにしろ体型や顔立ちと全くあっておらず、デブ女が無理に化粧っ気を出しているようで痛々しかった。
そんなわたしの元に、1人の女の子が近づいてきた。

 

「やっぱりここにいた」
「え?」
後ろを振り返ると、私と同じ制服をきた少し小柄な女の子が立っていた。
全く染めていないショートカットの黒髪に地味目のメガネをかけている。
昨日までのわたしとよく似た感じの女の子だ。
「(…昨日までのわたしと、よく似た…?)」
「気付いたかしら?」
そう、彼女の容姿はよく似ているどころではない。
わたしそのものだった。
「あ、あの、あなた、じゃなくて、わたし…なの?」
「ふふ、そうよ。あなたは私。私はあなたなの」
「え…?」
「あなたは私のこと知らないだろうけど、私はあなたのことよく知ってるわ。成績優秀で、スマートで、地味な格好してるのになぜか男に人気あって… ま、あなたはあまり自覚してなかったみたいだけど」
彼女――いや、わたし?はニヤニヤと笑いながら話を続けた。
「それに引き換え、私ときたら… デブで、成績なんか下から数えた方が早くて、食べることやゲームや漫画くらいしか楽しみがなくて… そのくせちょっとでもよく見られたいから髪を染めてみたりしてさ。そんなの呆れられるだけって気付かずに、ほんとバカよね。だから取り替えたの」
「取り替えた?」

「そう、取り替えたの。私と貴方の立場を。たまたま古本屋でうさんくさい本を見つけてね、そこに書かれてある通りにやってみたらこうなったってわけ」
「う、うそでしょ…」
「ざんねーん! 現実でーす。あはは、頭がいいって本当に素敵よね! 今までわからなかった問題がすらすら頭に入って来て、柄にも無く授業を真面目に受けてさ。しかもそれが全然苦痛じゃないの! それどころか質問なんかしちゃってさ、あれ、あたしってこんなに優等生だっけ?みたいな」
「…も、戻して! 今すぐわたしを元に戻して!」
「バカねえ、こんな楽しいのに戻すわけ無いじゃない。あ、それとまだいろいろ変化はあるはずだからね。私はもっと太ってたからさあ。それにあなた今日途中で早退したみたいだけど、普段の私だったら気が乗らなきゃ初めから学校にはいかないから。これからもっともっと堕落してわよ、あなた」
「そ、そんな…」
「ま、がんばってね。元々優秀な貴方なら結構踏みとどまれるかもよ?」
そう言って彼女は去っていった。

 

 

そして翌日の授業中。
あたしはその内容の難しさに愕然とした。
昨日は集中できなくとも、付いていくことはできていた。
それが今日は全く理解できない。質問しようという気力も沸いてこない。
しかも先生の目を盗んでは居眠りをしたり、こっそりとお菓子を食べたり…
一昨日までのわたしでは考えられないことだ。
だいたい、学校にお菓子を持ってこようなんて思っていないのに、どうしてカバンにお菓子が入っているのだろう。

 

変化は知能レベルだけではなかった。
体質も徐々に変化してきたようで、あたしは妙に汗っかきになっていた。
太っているせいなのか、単に汗かき体質なのかはわからない。
でも、デブが汗をかいている姿はそれだけで暑苦しい。
気付けば、あたしに話しかける友人は少なくなってきていた。
哀れみのような、蔑むような視線をあたしに浴びせて遠巻きに見ている感じだ。

 

…あたしはどうなってしまうのだろう。
あたしは、あたしであったことをいつまで憶えていられるのだろう。
あたしは、あたしはもう堕ちていくしかないのだろうか。

――数ヵ月後。

 

アタシはそれなりに毎日を楽しんでいる。
まあ考えたって仕方ないし、マンガとかゲームとか面白いものいっぱいあるし、
まあいっかって感じ。
ていうか、なんか最近ますますデブった気がする。
もうお腹なんか太鼓腹ってレベルじゃないし(笑)
お腹さわると両手で電話帳くらいの厚さの肉がつかめるんだから(爆)
顎なんか二重になっちゃったけど、この顎を下からタプタプするのか密かなマイブームだったりするわけよ。
んで思ったんだけど、ほら、なんだっけ、洋ナシ体型?
なんかアメリカ人とかがデブってなるやつ。あんな感じに太ってんだよね、アタシ。
てことはさ、アタシって日本人よりもアメリカ人チックな体型なわけじゃん?
つまりやせたらスーパーモデルとかにもなれるんじゃないかってさ。
皆それ言うと笑うけどさ、あれって絶対うらやましがってんだよね。
ま、仮に同じような体型持っててもアタシと皆とじゃセンスが違うからさ、
きっと勝負にならないよね(笑)

 

しかし、アタシと立場を取り替えたあの女。
アタシが言うのもなんだけど、あんな生活して息苦しくないのかね。
ほら、ガツガツ勉強したって世の中知らなきゃ意味ないしさ。
点取り虫になったってしかたないし(笑)
アタシみたいにやりたいことやって自由に楽しんでる方が人生得してると思うんだよね。
ホント、そんなことあの女に言ってもわかんないだろうけど(笑)

 

…そういや、この間変な本見つけたんだよねえ。
なんか魔法っぽい本?
アタシ、絵のない本ってキライだしいかにもうさんくさいけどさ、どーせヒマだからちょっと読んでみよっかなー、なんて。
えーとなになに、『立場を入れ替えるには…?』

 

 

END

 

#入れ替え,OD,知能低下


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