229氏による強制肥満化SS
「……?」
――目が覚めると見知らぬ部屋にいた。
ゆっくり目線だけで辺りを見回すと、一つの扉と、壁の隅に監視カメラが設置されている。
……何故ここにいるんだろう、記憶がはっきりしないな。もしかして夢?
少女は頭に考えをめぐらせながら体を立ち上がらせようとした。
そのときになって、自分の手足が縛られてることに気づいた。
おまけに服装も、上下に分かれた、肌にぴったりと密着する黒のボディスーツのようなものになっていた。少女の白くて細い、腕とおなかと足がそのコントラストを引き立てる。
そして口には硬いマスクのようなものがくっつけられ、大きなチューブが自分の口元と、目の前の壁に繋がっている。
「目が覚めた?」
何処からか機械で発せられた人の言葉が聞こえた。女の人のような声だった。
「色々質問はあるだろうけど、答えれないわ。ここから出たかったら指示に従って頂戴。」
「んん!?」
女のその言葉と同時に、口元に何か押さえつけられる感触がした。冷たくてやわらかい…… ゼリーのような物体。
「まずしばらくそれを飲んでもらうわ。」
「んんー!!」
飲んではいけないとは思う一方で、急に息苦しくなってきた。
口を開けて謎の物体を飲み込むと、息ができる仕組みになっていた。
「そうそう、飲まないと窒息死しちゃうからね?」
訳のわからないまま、寝転んだ状態で少女はそれを飲み続けさせられるはめになった。
何が起きてるんだろう? あの声の主は何処かで聞いたことあるんだけど……
何時間がたったのだろうか。
それともそれはあくまで少女の体感時間で、本当は一時間程度なのだろうか。
その考えを何度も巡らせたところで、鍵を開けるような音がすると、口と手足の枷が外れた。
「ハァッ…… ハァッ……」
味のしない奇妙な物体を飲まされ続けられ、少女の体は吐き気に満ち溢れてた。
「お疲れ様。気持ち悪かったら扉の前においてるコップ一杯を飲むといいわ。飲んだら次の扉に進んでね。」
「……あなたは誰?」
「答えられないわね…… ふふっ」
このしゃべり方、確かに何処かで聞いたのだが……。
だが今ここから出るには、あの扉の向こうに進むしかなさそうだ。
少女は気持ち悪さでふらふらしながら、扉の前にいつの間にか置かれたコップを取ると、中に入った水をゆっくり飲み干した。
扉を開ければ、小さなテーブルいっぱいいっぱいに料理がたくさん置かれていた。
そして心なしか、部屋がさっきよりも少し広くなっていた。部屋というより、テーブルの向こうにある扉への距離が。
ローストチキンやピザ、ケーキやマッシュポテト…… なんというか、栄養が偏ってる食事ばかりだった。
量は少し多めだが、別に食べれないわけでもない量ではない。
「それを全部食べたら次の扉に進めるわ。」
少女はしぶしぶ椅子に座ると、さっきの吐き気がなくなってることに気づいた。
それと、あんなに妙なものを飲まされたのに、お腹は膨れてすらいなかった。
やっぱり結構時間がたっていたのか、豪華な食べ物の前ではお腹がすいたので素直に食べることにした。
「はい、お疲れ様。」
そう女が言ってる一方で、少女はお腹をさすっていた。何とかぎりぎり食べれる量だった。
黒いスパッツの上のお腹は、スレンダーな少女の体に比べるとバランスを崩していた。
「……あのう、何が目的なんですか?」
「今わかるわよ。」
ふふっ、という女の笑い声が耳に聞こえたかと思うと、突然体がおかしくなる感覚に襲われた。
なんというのだろうか、体の体温が上がり、むずむずするのだ。
だんだんそれは大きくなっていき、どうしていいのかわからず少女は無意識に頬を押さえてた。
やがて、思わず声を上げると、お腹の満腹感は消えうせた。が、お腹のふくらみは元に戻るどころかさっきより大きくなっている。
お腹だけでなく、なんというか全体的に苦しくなったような気がする。服が若干食い込んでるような、そんな感じ。
「じゃあ次の扉に進んでね。」
少女は疑問を後にして椅子から降りて扉まで歩くと、いつもより何か違和感を感じる。体全体がだるいような……。
扉の前に立つと、見知らぬ女の子がたっていた。
太っているとはいえないが、肉つきのいい感じの…… ほんの少し大きくなった胸やお尻、それからお腹が、黒いノースリーブとスパッツの下から見える。
ぎょっとした。それは自分だった。同じ動きをすれば彼女も同じ動きをした。
「ふふふっ」
そんなきょどる少女の姿を見て、女の笑い声が部屋に響く。
扉を開ければさっきと変わらない状況だった。
さっきよりもまた広い、扉までの距離が長い部屋。そして若干大きくなったテーブルの上には、栄養の偏った食べ物がどっさり。
ほとんどさっき見たようなメニューだが、ピザやケーキ、ラーメンなどは違った物を扱ってくれていた。
「……また!?」
「召し上がれ。」
食べたくない。恐らくまた体が太ってしまう。
……だが、逆らうにもどうやって逆らえばいい? 反抗したところで、餓死するしかない。
今は彼女の言うことに従うしかなかった。
一つ一つ少女は食べ物に食らいついていった。
さっきより品は増えてないが、品の大きさや量自体が大きくなってるということに気づくのは半分を食べ終わってのころだった。
*
「うう…… やっぱり見間違いじゃない……」
さっきより確実に丸みを帯びた体をした少女。
若干丸くなった顔、太くなった二の腕、出っ張り始めたお腹、隙間が狭くなる太もも……
恐る恐る新しい扉を開ければ、またそこには量を増した料理が彼女を待っていた。
もう少女は黙って食べ始めることにした。これさえ食べれば、これさえ食べれば……
そんなことをずっと一心にして考えてた。
「じゃあ行くわよ?」
何でこんなに食べれるんだろう…… さっきより多いのに……。
少女が吐き気とともに、口を押さえながら考え込んでいるときに、
女のうきうきした声と同時に、彼女の体温は上昇した。さっきよりもずっと熱い。
「あっ、やめっ…… いやあああああ!」
思わず泣いて叫びたくなるような、そんな熱さに苦しめられると、彼女の体はまた膨らんだ。と同時に体温は下がっていく。
息を荒くしながら体制を元に戻すと、さらに大きくなったお腹が彼女を逆に冷静にさせる。
黙って椅子をおり、彼女は次の扉まで歩いた。その度にほんのわずかだが、揺れる脂肪を感じていた。
*
……あれから何時間たったんだろう。あれから何回お腹はちきれそうになったんだろう。女の目的が、理由はわからないがとにかく自分を太らせることにあるというのはようやくわかった。
……わかったところで逃げ出すことはできない。
少女は息を切らせながら次の扉へ歩いていた。
だんだん伸びるこの距離は、ゆれる脂肪を自覚させるためなんだ、というのもわかった。
だんだん重くなる体。完全に出てしまったお腹は歩くだびに震える。
その上に乗っかった大きな胸もゆっさゆっさと上下するし、横に繋がったぶっとい腕は最初の2倍ぐらいの大きさになっていた。
肥大化したおしり、それを支える足もまた太く、完全に隙間など消え去っていた。
スパッツとノースリーブは体にぴっちりと密着し、伸びきっている。胸とおしりの部分だけ隠していた。
顔はまん丸としており、今にも二重あごになりそうなぐらい大きくなっていた。
悪く言えばデブ、ぎりぎりでぽっちゃり、というところだろうか。
「ハァ、ハァ……」
そんな姿をまた扉の前で見せ付けられては、うんざりした気持ちで扉を開けた。
「お疲れ様、これで最後よ。」
今までで一番多い料理が目の前に置かれていたが、少女はその言葉でそんな量のことなど気にならなかった。
急いで椅子の上に座り込み、素早く料理を食べ続けた。
これで、やっとこれで終わるんだ! その気持ちが少女の食事のスピードを加速させた。
*
「ううう……」
なんとか食べきった少女は、やはり口を押さえながら椅子の上に座って、肥満化が始まるのを待った。
だが、しばらく待っても何も始まらない。重くなったのはお腹だけだ。
「何してるの? 進みなさいよ。」
その台詞を聞いてしばらくきょとんとしてしまったが、そのまま進むことにした。
体をゆっさゆっさ揺らしながら、少女は早足で扉へ近づいた。
扉の前にたどり着けば、ほっと一息ついた。
歩いてる間に太ったりしなかった、そんな変な不安から開放されて、ドアノブに手を回した。
「あれ?」
太くなった手首を何度も回したが、扉が開かない。
しばらく試行錯誤してると、急に体が汗をかき始めてきた…… まさか。
「今まではちょっとずつだけど、太らせる量を制限してたの。でも最後だしサービス。全部溜まってた分とさっきの食べた分含めて、太らせてあげる。」
少女は冷や汗もかき始めた。
体がだんだんと熱くなる。そして奇妙なかゆさが体中を襲う。
どうしようもできないもどかしい感覚。
「ず、ずるいよぉ! そんなの、そんなのって…… あああっ!!!」
いやらしい声を出すと同時に、少女は思わずその場にしゃがみこんだ。体が全体的に重くなった感じがする。
暑さを増すのと同時に、少しずつ体に錘がつけられたのかのように、沈んでいく感じがする。
「やだ、やだやだやだっ! やめっ-…――」
座り込んだ体制で、少女は大きくなっていく自分の体を見ていくしかなかった。
体のほてりが消えていくのを感じると、少女はゆっくり目を開けた。
若干さっきより狭くなった視界。
むくんだ感触のする自分の顔、マフラーを巻いた感じの首の辺り。
大きくなった胸、それよりもでかい腹。丸太のように太くなった腕。少女の目線ではその辺りしか確認できなかった。
少女は平均の2、3倍はあるであろう太い腕で、なんとか体を支えながら立ち上がった。
目の前の扉のロックはいつの間にか外れてる。なんとかぎりぎり自分の体が入るようだった。
とにかく少女は早くここから出たいという一心でひたすら歩いた。
だが、さっきと道のりはあまり変わらないはずなのに、すごく遠く感じた。
一歩一歩歩くたび、脂肪全体が激しく揺れている。太ももと太ももが擦れあうし、胸と腹とお尻は上下する。
すぐに息切れして、すぐに汗をかく……。まるでその姿は……。少女は考えるのをやめて歩くことに専念した。
そしてあと少し、というところで目の前の扉から一人の女が出てきた。
「うふふっ、お疲れ様。」
「フゥ…、お…、おねえちゃ…? フゥ…、フゥ…」
喋ってみてわかったのは自分の声が予想以上に、女と思えないほど野太くなっていたのと、滑舌が悪くなってた。
「ほら、扉はすぐそこよ。」
必死になって歩く妹の体には何も関与せず、姉は扉の前からどいた。
そこにあったのはさっきの扉になかった、毎回あったはずの鏡だった。
あごは完全に二重になって、首も見えるか見えないか、そんな領域。目は肉に少し埋もれてる。
丸太のごとく太くなった両腕、大きくなりすぎて少したれてる胸、両方に挟まれた脇肉。
最も存在主張の強い腹は、下半身にあるはずのスパッツを半分ほど隠してた。
お腹に負けずでっぱったお尻、隙間のなくなった太い足。
全体的に球体のような体になっていた。そして豚のようにひぃひぃいいながら、
汗をかきながら、立っているだけで人を不快にさせるような体の持ち主は、紛れもなく自分だということを少女は考えたくなかった。
思わず少女は丸みを帯びた手で自分の頬を触った。むにむにとクッションのような感触がする。指で触ればびっくりするぐらい凹む。
もう片手では自分の妊婦以上のお腹を触っていた。お知りを触ろうとしたら、背中に肉がつきすぎたのか手が届かなかった。
「……ひ、ひどいよ… おねえちゃん…フゥ…、フゥ…」
しばらく見ていなかった姉の姿は、すごくスレンダーだった。そう感じるのは目の前にある鏡のせいだろう。
「こ、こんな姿… わたひ…」
思わず少女は嗚咽を出しながら、涙を流してしまった。
「うふふ、ごめんね。」
にやりと女は笑う…… 一瞬その笑みに気を取られた瞬間、ガチャンという鍵が閉まる音が部屋に響く。
「でも、大丈夫。これからはお姉ちゃんがずーっとそばにいてあげるわ。」
少女は必死に目の前の扉を開けようとしたが遅かった。既に鍵は閉まってて扉の向こうに行くことはもう出来ない。
……いや、実際あいたとしてもこの狭い扉では、少女の体が通るのは少し難しい。
鏡は、丸々と太った女がしゃがみこんでこっちを見つめている姿を映していた。
もうどんな顔をしても、とても可愛いとは思えない。どんなポーズをとっても、滑稽にしか見えない。今こうして悲しんでる姿さえ……
無意識に出る荒い息が部屋の音を支配している。今になって少し冷静になると、体を折り曲げてるのも苦しいし、呼吸をすることさえなんだか苦痛になっている。
「そんな体じゃ外に出れないでしょ〜? ふふっ。」
「……」
「さあ、食事の時間よ。」
ぶっくり太った少女の後ろには、また豪華な料理が置かれていた。
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