aki氏による強制肥満化SS

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『自己犠牲魔法伝説』

 

 

 

地平線の向こうまで砂地が続く広大な砂漠。物資輸送中の商団の護衛に雇われた二人組の冒険者が砂の魔獣サンドウォームと一時間にも及ぶ激しい戦闘を繰り広げている。
金色の鎧を身に纏い、槍を構える青年はサンドウォームの攻撃を受けて右腕に大きな裂傷を負っていた。青年の後ろには、ビキニ型の旅人服を着たぽっちゃり体型の少女がいる。
「フロリス!早く回復してくれッ!」
「うん、分かったよ!えと、傷薬傷薬‥」
「傷薬じゃ間に合わん、ここは回復魔法を使うしかないぞ!頼む!」
「やだっ!それだけはやだ!」
フロリスと呼ばれたこの少女は腰に小剣を帯剣しており、一見すると武器とその身で戦う前衛クラスだがクラスは『ハイプリースト』。かなり高度な回復系の魔法を行使可能である。
にも関わらず仲間が危機に瀕しながら、魔法を使おうとしたがらないのだ。その理由とは―――――

 

「戦闘を積み重ね、着実にレベルを引き上げてきているな。
 この地方の魔獣が相手ならば、じきに君だけでも対処可能になるだろう」
「でも。あたしみたいな駆け出しと組んだばっかりに、えーっと‥
 グランさんはこんな辺りで足止めをくっちゃってるよね。
 世界を平和にして廻るっていう大きな目標があるのに」
「ハーガッソでいい。私が君と組みたいと思ったから共にいるのだ。
 世界中を巡るのは安心して旅を出来るようになってからでも遅くはないさ」
「うん‥」
二週間前。
フロリス・ナナセは新米の冒険者であり、クラスは女性用基本クラスの『アマゾネス』であった。
同じく一人身で冒険をしていた英雄志望の青年、グランデュアーレ・ハーガッソとパーティーを組む事になったのだが、自分よりもレベルが高く経験豊富で、補助系の魔法も行使可能なハーガッソの荷物と化している現状にもどかしさと焦りを感じていた。
「早く一人前になりたいよ。けど、クラスチェンジまでまだ先だしなぁ‥」
フロリスは泊まっている宿屋から出て、夕方の街を見て回っていた。
市場に、武器防具を広げている露店を見つけた。
暫くクエストを攻略しておらず、魔獣の弱い地方での稼ぎではとても優れた性能を持つ高価な装備品など買えない。金策をするべきか?それとも店主に値切り交渉をするか?などと可か不可かも分からない事を考えている時。
「そこのお嬢さん。クラスチェンジアイテムがあるけどどうかね?」

武器防具屋の隣で水晶球を乗せた大層な台座の前に座している、地味なローブ姿の男が言った。
「なに?おじさん‥占い師っぽいけど、アース教会の人?」
「ふふふ、クラス支援法人の役員が商売すると思うのかな」
「って事はおじさんは!まさか違法クラスチェンジアイテムを売る闇商に‥むぷぷ」
ローブの男が慌ててフロリスの口を塞いだ。この世界では、クラスチェンジは国の公的機関を通して行われる。
国指定の施設で審査を受け、必須レベル・適性の条件を満たしていると認可されれば専用アイテムを授けられる。そこで初めて、クラスチェンジが可能になるシステムである。いわば免許のようなものであった。
しかし、それはあくまで正規のルート。専用アイテムとクラス固有知識さえあればクラスチェンジ可能なクラスも多く、自由業の代表格たる冒険者の中には非公式クラスチェンジを行っている無法者も存在する。
「しーっ!声が大きい!せっかく人が迷える子羊の為に良い品を用意してるっちゅうに。
 ‥お嬢さん、クラスチェンジに興味があるだろう?見ていかないかい。
 今なら全品4割引で販売中だよ」
「ま、まあ見るだけなら‥」
テーブルの上には後衛クラス用のクラスチェンジアイテムである、魔導書が3冊並べられた。
「セイレーンにウィッチ‥うっそぉ!?これハイプリーストじゃない!」
高度な回復魔法を行使可能なハイプリーストは、フロリスが密かに将来目指している上級のクラスであった。
フロリスは魔導書を手に取った。
「ほう。ハイプリーストを所望かね」

「うん‥二人パーティーなんだけど、後衛の私が回復魔法使えないから。
 でも、私に適性があるかどうか‥」
「ふふふふ。ハイプリーストは上級故に極めて高い魔力と適性を持たねばなれない、
 人を選ぶクラスだ。しかし心配無用。この魔導書からクラスチェンジするハイプリーストは
 魔力も適性も必要なく魔法を行使可能なのだよ」
「どういう事‥?」
「『自己犠牲魔法』。魔力ではなく、その者の根幹を支えるものを”捧げる”事で
 最大次元の魔法ですら発現させるのだ。消費するのは言い換えれば”大切なもの”だよ。
 例えば、自分の命が何よりも大事な者は魔法を行使する度に寿命を削る。髪の毛が大事ならば‥」
「ハゲていくの!?何さそれ、ひっどいね!ただの欠陥クラスチェンジアイテムじゃない」
「欠陥と見るかどうかはお嬢さん次第だと思うがね。
 これがあれば、誰でも今日からなれるのだから」
今日からなれる。ハイプリーストに。甘美な響きだった。
フロリスは無言のまま、魔導書を見つめていた。

 

次の日。宿を出発したフロリスとハーガッソは金策と戦闘訓練も兼ねて
依頼を出していた街の道具屋から素材回収のクエストを引き受け、東の山へ向かっていた。
「山頂にいる魔獣ヒポグリフの羽と、可能であれば火喰い狼の毛皮の回収が目的だ。
 火喰い狼に関してはここ7年姿を確認されていない魔獣だから無理に探す必要はないと‥
 どうした?フロリス」
「え?あ‥ごめん。昨日市場で会った人の事をちょっと思い出していてね」
正確には、会った人から言われた内容を、であった。自己犠牲魔法について考えていた。
「昨日会った人?」
「うん。市場にローブを来た占い師風の人がいたの」
「‥もしや、それは今朝の新聞に載っていた闇商人ではないか?
 何でも非正規クラスチェンジアイテムを幾つも所有しており、
 各地で売って回っていたが、昨晩治安部隊に身柄を確保されたらしい。
 クラスチェンジアイテムを商売道具にするなど馬鹿げている。言語道断だ」
「そ、そうそう!言語道断だよねー」
フロリスは内心冷や汗をかいていた。昨日、実はクラスチェンジアイテムを買ってしまい、更に
クラスチェンジを済ませていたのだ。晴れて念願のハイプリーストになり、回復魔法もしっかり覚えている。

早めにそれを白状するつもりだったが、フロリスは中々言い出せなかった。

 

東の山は二人が十分対処可能な範囲内の魔獣が出没する、危険度の低い区域である。
いつもはハーガッソの後ろにいるフロリスも、隊列を変更して前に出ていても問題はなかった。
「これではあまり戦闘経験は積めそうにないな。‥フロリス、君は本当に後衛クラスである
 プリーストからハイプリーストを目指すのか?私の見たところ、適性は剣を扱う技系前衛クラスに
 ありそうだ。ニンジャ辺りが適職となるやも知れんぞ」
「ニンジャかぁ。あはは‥」
実はもうハイプリーストでした!と言ったらハーガッソはどんな顔をしただろうか。
と、その時。突如ハーガッソの体がごう、と燃え上がった。
「うおおおッ!!」
火だるまになったハーガッソはすかさず地面を転がり、全身に纏わりつく炎を消そうと試みる。
だが、炎はすぐに消えずに燃え続けている。
「ぐううッ‥この蒼い炎は、火喰い狼!?」
後方を見据えると、蒼白い炎の如く逆立つ毛並みで覆われた体躯を持つ狼がこちらを睨んでいる。
火喰い狼であった。危険度の低い東の山に生息する魔獣の中では別各の存在で、普段出くわす魔獣をレベル10前後とするなら、火喰い狼はレベル30以上の魔獣。希少種ながら奇襲を得意とする狩り上手としても知られている。
「いいいいきなり襲撃とは卑怯よコノーッ!」
思いがけない相手に遭遇してフロリスは気が動転してしまっていた。

しかし、それでも体は反応する。自身に向けられて吐き出された火喰い狼のしつこい炎(仮名)を態勢を崩しながらもかろうじて避けた。
「火ーーーっ!!」
「落ち着けフロリス!まだ最悪の状況ではない!‥とは言え、まずいな‥」
倒れていたフロリスを引き起こしたハーガッソにもう火は付着していないが、顔や腕に痛々しい火傷を負っている。
手には大きな水ぶくれがあり、武器を握るだけでも激痛が走った。
「ハーガッソ!?き、傷薬を使わないと!」
「そんな暇はないッ!少々回復したところで先程と同じ炎を喰らえば私は耐え切れん。
 いいか、私が動けなくなったら君だけでも逃げろ!!」
「だめ!ハーガッソを放って逃げられるわけが」
言い終わるよりも早くハーガッソが槍を水平に構えて火喰い狼に突進する。距離があり過ぎる。
槍の刃が火喰い狼に届くよりも先に炎に焼かれるのは目に見えていた。
「そうだ!あれを使えば‥」
フロリスは意を決して、瞳を閉じると魔法の詠唱を開始した。ハーガッソの叫び声が聞こえた。
「今、助けるよ‥!我が望み、秩序の神の波動となりて奇跡を呼ばん‥ヒーリングオール!」
炎に焼かれるハーガッソの周囲に白い光の粒子が降り注ぎ、ほんの一瞬で火傷が跡形も無く癒された。纏わりつく炎がハーガッソを焼いても、焦げると同時に回復するのでもはや問題にはならない。
ハーガッソが鋭く踏み込むとほぼ同時に火喰い狼の額は黒鉄の刃に貫かれた。

「やったーっ!」
フロリスは思わず飛んで喜んだ。火喰い狼が絶命した後、ハーガッソが死体を肩に担ぎ上げる。
「不思議だ‥傷が全て治っている。フロリス、今のは‥」
はっとしたハーガッソは火喰い狼を放り投げて、フロリスの下へ駆け寄ってきた。
「良かった、回復魔法が私にも使えたよ‥。あ、こういう時抱きついた方がいいのかな?
 なんちゃってね‥でへへ」
「フロリス!!一体何があったんだ!?何が君をそんな姿に!?」
冷静なハーガッソがひどく慌てた様子で肩をがしっと掴み、フロリスを揺さぶりながら言う。
「姿?」
「鏡だ!鏡を見ろッ!!」
道具袋から取り出したフロリスは今の自分の体を見て、すっとんきょうな声を上げた。
「な、な、な‥何じゃアアこりゃあああ!!!」
整った顔立ちは愛嬌のある丸顔に。ご飯茶碗よりも薄く空気抵抗の少ない胸は林檎2個分程の
わしづかみ出来るボリュームに。真っ直ぐな美しいラインを描いていた腹部はなだらかな斜面を作り。ネコ科の動物を思わせる、無駄な脂肪がなく筋肉質な太ももは丸太のように太くなっていた。

 

「愚かな真似を‥!君は目先の事に囚われ、
 取り返しのつかない過ちを犯してしまったんだぞッ!!」
街の宿屋へ戻ってからフロリスは、ハーガッソに昨日の出来事を全て正直に白状した。
すると当然、もの凄い剣幕で叱られた。これ程怒るハーガッソを見たのは初めてであった。
「ゴメンナサイ‥。ハイプリーストにすぐになれるもんだから、つい‥」
「つい、で違法クラスチェンジをするならアース教会はいらんッ!
 正規の手順を踏まないクラスチェンジは重罪扱いで終身刑すらあり得ると知らないのか!!
 これで君はもう、クラスチェンジは不可能だ‥!」
「どええーっ!?」
「こうなると君に残された道は三つに一つ。
 自首して囚人の身になるか、冒険者をやめるか、現状維持か」
「現状維持って‥ハーガッソはどうするの?」
「これはフロリス自身が招いた事態だ。‥私は何も聞かず何も知らない、それだけだ」
「さ、B‥現状維持でお願いします‥」
「そうか。ならばこの話は終わりだ」
「ごめんね。ありがとう、ハーガッソ。えと、ふつつか者だけどこれからもよろしくね」

「うむ‥。では装備品を買いに行くか。
 火喰い狼を持ち帰ったお陰で報酬が8倍になったからな、余裕がある」
「えーっ本当に!?やったね!」
喜ぶフロリスを連れて、ハーガッソは武器防具屋へ行った。命を救ってもらったお礼のつもりだったのだろう。

 

露店の武器防具屋でハーガッソが見立てた装備品はフロリスにとって素直に喜べる代物ではなかった。
「あのさあ‥」
「似合っているぞ」
「超がつく程恥ずかしいんですけどーっっ!!」
ハイプリーストと言うと神聖かつ清楚であり、余分な肌を見せない印象が強いクラスである。
しかし、フロリスの服装は真逆。一応種別は旅人服の、肌を8割以上露出するビキニ型の服だった。
小手や具足の他に耐熱素材製マフラーやアームウォーマーも付属している為、温暖地域仕様の品らしい。顔を真赤にしてぷんすかと怒るフロリスに対し、ハーガッソは普段通りの落ち着いた様子で説明する。
「前々から君の敏捷性に着目していてな、動きやすい服装を薦めようと考えていたのだ。
 後は‥もしまた太っても予め余裕があれば窮屈な思いをしないで済むであろう事も
 考慮しての選択だ」
ハーガッソに他意はない。
が、ぽっちゃり体型となった現在のフロリスにとっては嫌がらせも同然である。
「うげら!まさかまた私に魔法を使わせる気なのーっ!?」
「いや、普段は頼る気はない。緊急の場合には使ってもらう場合もあるだろう‥。
 そうだ、フロリス。君の話では『自己犠牲魔法』は使用者の大切なものを
 失っていくと言っていたな?魔法の行使で太るとは‥」

ふるふると体を震わせ、両手を握り締めながらフロリスは怒鳴るように言った。
「ええそうですとも、あたしは細くて無駄な肉のない自分の体がすぅっごく好きだったのーっ!
 瞬発力をつけたいから可能な限り脂肪を筋肉に替えるよう鍛えて!いらない体重は落として!
 あのすらっとした体型をずう〜〜〜っと維持してきたんですーぅ!なのになのに!!
 たったの一度魔法を使っただけでこんな風になるなんてあんまりだよ〜〜〜っ!!
 ぅわあぁぁぁぁん!!!」
フロリス・ナナセ(19歳)の心を支える根幹とは、”自身の美しい肢体への惜しみない愛”。
思春期から自己管理を徹底的に行い、期待値通りの身体能力と自分が最も理想とする体型を『形』に
出来たのも、ボディビルダーや一流モデルが資質として持つものと同様の凄まじいナルシシズムあっての事だった。
市場を通り行く買い物客達の視線が、一斉に子供みたいに泣きじゃくるフロリスに集中する。
フロリスがさらし者になる人生は、既に始まっていたのである。

 

時は現在に戻り。
物資輸送途中に商団を度々襲撃してきたサンドウォームを撃破し、無事砂漠横断を終えた。
目的の商業都市に到着したところで、商団のリーダーが護衛を全うした二人の元へ特別謝礼を渡しにやって来た。
「おかげ様で我が商団の損失が一切なく、今回の旅を終える事が出来ました。
 ありがとうございました。こちらは私の気持ちです、お受け取り下さい」
ただしあたしに多大なる損失はあったけどねーっ、と言いたげなフロリスは頬を膨らませてそっぽを向いている。
「エメラルドをあしらった首飾りですか」
「きっとフロリスさんにお似合いですよ。それにしてもフロリスさんは‥
 旅出発前と比較して、こう‥」
「なぁに!?太りましたねって言いたいんでしょう!?はっきり言っちゃってよコノー!!」
「やめなさい!フロリス!」
「こ、これは失礼しました。もし宜しければ我々と一緒に食事をしていきませんか?
 この都市には巷で評判の料亭がありまして、そこの伝統料理が大変美味と有名なんですよ」
「いいの?もちろん行く行くぅ!」
フロリスの怒った顔は途端に嬉々としたものに変化する。商団のリーダーは食事が好きそうと判断したらしい。
「伝統料理とは?」

「特産牛をふんだんに使用した禁じ手のマヨネーズビーフカレーライスだそうです」
「そんな聞いただけで太りそうな物食べられるか〜〜〜っ!!!」
ハーガッソはフロリスが太ってから気が短くなったのでは、と思った。実際そうであった。
体型の変化と共に、フロリスには様々な変化が起きていた。

 

何とか元の体型に戻りたいと強く願うフロリスは、食事制限や激しい運動をして痩せようと試みた。
ストレス発散目的も含めて後衛クラスでありながら小剣を振るい、勇猛果敢に戦っては滝の如く汗を流していた。
『幸いフロリスは元から身体能力が高く、体重が増しても並の魔獣ならば遅れを取らなかった』とハーガッソは後に語る。
だが、クエストの中では回復魔法を使わざるを得ない状況は必然的に訪れる。
普段からの努力の末に痩せても魔法を行使し、体重が結果としてプラスになる場合が多かったのである。
でっぷりと太り、いかにも鈍重そうな見た目に似合わぬ鋭敏な動きで魔獣を蹴散らす様が知れ渡っていき、いつしか冒険者達の間でフロリスの事は『重量を踏み込みの速度に変える器用な女』と呼ばれていた。
「うほ、ありゃあフロリス・ナナセじゃねえ?」
「ふっとい体を弾ませながら、並のヴァルキリーより素早く行動するって噂だぜ‥」
「ありっちゃありだが無しっちゃ無しのボインだな」
街中を歩けば他人の目が全て自分に向いているような気がしてならず、暫くの間フロリスは恥ずかしくて俯きながらハーガッソの後ろを控えめに歩く日が続いた。
フロリスが考えている程注視はされていなかったのだが少数派の男性諸君から色々な意味で熱視線を浴びていたのは確かである。
「嫌だぁ〜〜っもうっ!このフロリス耐えられないっ!
 回復魔法及び回復系特技を使える仲間の参入を所望します!」
「う、うむ‥新たな仲間が必要な頃合いだな」

 

「拙者サムラインと申す者でござる!貴女の事は存じておるでござるよ。
 何でも、ゴブリンめを素手で殴り倒せるらしいとの事!
 体当たりの威力は大筒並とも聞き及んでいるでござる!是非一度お手合わせを!」
「誰から聞いたんだよそんな噂!!殴るよこのくそ侍!
 ていうか、こいつ前衛クラスのソードマスターじゃない!」
「プルミアです。フロリスさんは高い位置から飛び降りて、
 重力を攻撃力に変える戦い方をするそうですね。
 その戦法で飛行するホークマンを叩き落して、亜人種からも恐れられているとか」
「そんなのやった事すらないし!!後衛クラスなのに彼女はウィッチなんて‥
 まるで運のなさを感じるよ」

 

結局、仲間達と共に冒険をした1年と4ヶ月の間、フロリスは最後までパーティーの回復役を務めた。
冒険を続ける中で決して痩せる努力を欠かさなかったが、嘗ての引き締まった細身の体型に戻る日は訪れずフロリスの体は歩くだけで胸や腹部がゆさゆさと揺れる、はちきれんばかりの豊満さを維持し続けていた。
「愚かな人間達よ。魔族の王として君臨するシャミノス様がじき世界そのものを統べる神となろう。
 我が主の行く先を妨げる者は例え矮小な人間如きであろうと、
 覇道の礎として屍を何やかんやてなもんや‥」
「ごちゃごちゃとうるさいんだよ!!あたしはあたしを取り戻す為に、
 魔族だろうが何だろうが潰す!!」
「あ‥?あ‥?何故だ?何故この人間からこれ程までに強烈な意志を感じる?何故だ!?」
世界でただ一人、魔法を使う度に太っていく体質の持ち主になったフロリス・ナナセ。
後に太った冒険者達の希望を与える者として語り継がれる。
彼女は今日もどこかで頬を赤く染め、涙を我慢しながら目の前の敵と、そして自分自身との戦いを繰り広げている。

 

 

 

自己犠牲魔法伝説 完


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