元人気者、白瀬彩音の青春

元人気者、白瀬彩音の青春

 

 

どうしてこんなことになってしまったのだろう?
どうしてこんな人生になってしまったのだろう?
どうしてこんな体になってしまったのだろう?

 

私の名前は白瀬彩音。自分で言うのもなんだけど、「元」人気者。
中学生の時、自分ではあまり気づいていなかったけど、今思うと私は輝いていたと思う。

 

私は子供の時から足が速かったけれど、中学に入って陸上部に入部してから、私の体は特別だと知った。
普通に練習を重ねるだけで、記録をどんどん更新し、先輩の記録を追い抜いた。
顧問は私のトレーニングに夢中になった。学校中が私に期待した。
気づけば、私は県大会を大会新記録で優勝していた。

 

私は名門高校の陸上部にスカウトされ、スポーツ推薦で入学した。
文武両道の高校で、一般入試の偏差値は物凄い高い。
入学金、学費は免除された。
本来の学費はとても高くて、我が家の経済力では、とてもじゃないが払えない。

 

もちろん私は期待の新入生だった。
専用のコーチと練習メニューが与えられた。
合宿所生活はちょっと不自由だったけれども、友達と暮らせるのは楽しかった。
全国屈指の陸上部だったけれども、私のレベルは入部当初から高い水準にあった。
高校は本気で国体やインターハイ優勝を目指していた。

 

勉強も問題なかった。
中学でも成績は悪くないほうだったけども、高校に進学してからは、スポーツ推薦のバカだって思われたくなかったから、部活の練習の合間にまじめに勉強をした。
ばりばりの進学校なので、生徒の学習意欲を煽るため、定期試験の成績上位者は掲示板に堂々と掲載された。
私はTOP50にはどの教科でもランクインしていた。友達は感心していた。
でも私は自分がガリ勉だとは思わなかった。
勉強は部活と両立できる程度しかやらなかったし。
私にすれば周りのみんなのほうが遊びすぎなんだと思う。

 

恋愛は…私はあまり男の子に興味がなかったけど…世間的にはモテたほうだと思う。
中学の時から何度か告白された。
みんなよく知らない男の子だったので断った。
友達は「もったいない」って言ってたけど、何がどうもったいないのか分からなかった。

 

私の人生はさしたる問題もなかった。

 

変化があったのは高校二年生になってからだ。

 

突然、私の体重が増えだした。
合宿所生活で、食事は徹底的に管理されていたのにも関らず、私の体重は増えだした。
体重の増加分は、皮下脂肪の蓄積だった。
10代の女の子が一時的に太るのはよくあることらしいが、私の場合は時期が悪かった。
今まさに陸上選手として成熟しようという時に、予想外の体型の変化が訪れたのだ。

 

コーチはもちろん、食事制限やトレーニングの強化で体重の増加を食い止めようとしたが、無駄だった。
走るときに体が重いと初めて感じるようになった。
思うようにスピードが上がらなくなり、記録の更新が止まった。
そして、夏季大会の部内選考に落ちてしまった。
この時の私の体型は、標準的な女子高生のそれであり、陸上選手としてはあきらかに肉がつきすぎであった。

 

部員全員が驚いていた。
つい数ヶ月前まで、部内の期待の新人で、2年次の活躍が期待されていた選手が、選考に落ちたのだ。
コーチは私を励ましてくれた、そして、冬の大会を目指して減量をすることにした。
友達も応援してくれた、高価なダイエット食品をプレゼントしてくれた友達もいた。

 

体力を落とさずに体重を落とす練習は、とてもつらかった。
夏の練習は地獄だった。
しかし、私の体重は減るどころか増え続け、一学期が終わる頃には、体重が58s。
普通の女子校生と比べてもぽっちゃり目といえる体型になってしまった。
もはや、肥満化といえるコースを辿っていた。

 

私は厳しい練習にも関らず一向に痩せることができない自分の体に苛立ち、精神が不安定になっていった。
泣き喚いたり、友達に八つ当たりをするようになった。
私が肥満化していく中で、私の出るはずだった大会では、私の代わりの選手が入賞した。
その選手は吉城恵美という私の友達のひとりなのだが、私は親友の活躍も、素直に喜べなかった。
私は生まれて初めて他人の成功を妬んだ。
私の心に汚く醜い感情が芽生えたのに気づいた。

 

夏休みあけ、学校中のみんなは目を丸くして私を見た。
夏休みの特訓にも関らず、急速に太り続けた私は、体重68s、もはや完全なデブの領域に差し掛かっていた。
みんな私を珍獣を見るような目で私を見た。
事実、私は驚異的な激太りをしたので、当然の反応である。
校内の話題は当初は私の激太りと、恵美の活躍で二分されていた。
しかし、デブ彩音をひととおり「いじり」つくすと、生徒の関心は恵美に向けられた。
かつての私がそうだったように、学校中が恵美の記録更新に注目した。
一方で私の体は痩せる気配がまったくなかった。
私の校内での存在感は一気に薄くなってしまった。

 

ついに、私は部活をサボるようになった。
一向に痩せられないのでは、部活は徒労にしか思えず、レギュラーへの復帰も諦めていた。
事実、重くなり続ける体では、思うようなトレーニングはもう無理だった。
もう私の意欲が無くなってしまったことに気づいていたんだと思う、コーチは練習に連れ出そうとはしなかった。
学校に行くと、部活の友達に部活に戻るように説得された。
善意から言ってくれてたんだと思う、だけど私にはただ煩わしいものでしかなかった。

 

部活の友達に会いたくなくて、学校にも行かなくなった。
そんな人間が合宿所に居座るわけにもいかず、私は退部届けを提出し、合宿所を出た。
顧問も学校も私を見限ったのか、なんの引きとめもなかった。

 

幸いなことに(?)退学は免れた。
だが、私は自分の惨めな「負け犬」姿を晒したくなくて、不登校は続けた。
不登校・引き篭り生活が始まった。
気づけば、私は一日中スナック菓子やらインスタント食品を貪り食っていた。
たぶんもう吹っ切れてしまっていたんだと思う、ヤケ食い的な意味もあったんだと思う。
食べている時、私は現実から逃避できた。

 

も ち ろ ん 、 肉 体 は 膨 張 し て い っ た 。

 

運動を辞めて、引き篭りの生活、ヤケ食いの生活。
肥満化は今までと比べ物にならないくらいに進んだ。
私はあっという間に立派なデブになり、大デブへの道を突き進んだ。
一ヶ月でブラが着けられなくなった。どうせ家の中にいるので、ノーブラで過ごすことにした。
ある日、パンツのゴムがぶちっと切れた時はさすがにヒいたけど、
さっきも言ったように、暴食は私の逃避の手段であり、痩せることへの熱望は消えうせていた。

 

だが、いつまでも引き篭もりが続けられるわけはなかった。
出席日数が足りず、更に試験を受けなければ、留年させるしかないと教師に言われた。
しかたなく私は、期末試験を受けるために、文字通り重い腰をあげることにした。
久しぶりに着る制服は、きつくなったなんてものじゃなかった。
スカートのホックがしまらない。
パンツを切れさせるくらいなのだから当然か。
ブラウスのボタンは一番下がどんなにがんばっても留められない。
他のボタンもかろうじて引っかかるくらいで、ボタンとボタンの間が開いて、肌が覗いた。
と言っても、そもそもブラウスで大きくなったお腹を隠すことができなくなっていた。
ぽよんと腹が布を押し上げ露出する。
布が被さる部分もぴちぴちで、胸や脇の下は少し動けばはち切れそうだった。
布はぴっちり肌に張り付くので、白いブラウスはうっすら肌色を透かしていた。
鏡に映るマンガに描いたデブキャラのような姿を見て、改めて自分が太ったことを認識した。
もう鏡の中には陸上で活躍していた白瀬彩音はいなかった。
XLの制服を特注した、制服ができあがるまで、家で着ていたゆるゆるの男性用ジャージでの登校を許された。
ノーブラで学校に行くわけにはいかないので、ブラを買いに行った。

驚いた、店員も驚いていた。
採寸の結果、Kカップになっていた。
もう一種の畸形だ。
店員に在庫をあさってもらって、輸入物のスポーツブラを購入した。

 

久しぶりの登校。学校に入ってきた肉塊デブを見てみんなが唖然とした。
その肉塊が元陸上部員白瀬彩音だと知って、また唖然とした。
哀れみの視線さえ感じた、「何かの病気なの?」と聞いてくれた友達もいた。
さてね、病気かもね。

 

試験は、まったく分からなかった。
授業に出てない人間が解けるはずがない。
ほとんど白紙の解答用紙を提出した。

 

次の次の週、結果が通知された。
もちろん順位はガタ落ち、底辺の成績だった。
みんなは、掲示板の常連「白瀬彩音」の名前が消えたのを見て、とうとう堕ちるところまで堕ちたのだと理解したようだ。
励ましも、哀れみの声も聞かなくなった。
私としては、現実に嫌気がさしていたので、寧ろありがたかった。

 

冬の大会のシーズン、退学にならない程度に引き篭もりをしていた時、吉城恵美が県大会で優勝したと新聞の地元欄で知った、
全国では優勝はできなかったけど、いい順位だった。
笑顔でインタビューを受ける姿を偶然ケーブルテレビで見てしまった。

 

本来なら私が彼女の場所にいた。
私なら日本一になれたかも知れない。
突然太りださなければ…不登校にもならず、学校の有名人でいれた。
失ってしまって初めて気づいた、自分の恵まれていた日々。
今はもう戻れない。
今の私ははかつての私じゃない。
今の私は、引き篭もりで、対人恐怖症の、不健康極まりない、無能な脂肪の塊である。
不意に、目頭が熱くなり、涙がこぼれた。
脂肪に埋もれたいろいろな感情がこみ上げ、一気に泣き出した。
気がついたとき、私は口いっぱいにお菓子を詰め込んでいた。

 

私は、残りの高校生活を、結局引き篭もり生活で過ごした。
学校には試験の日だけに行った。
ちなみに、高三の春の健康診断で、私の体重は83sもあった。
こんな無能なでぶを在学させたら、名門校の名折れになると考えたのか、留年はさせず、卒業させてもらえた。
卒業時は100sを軽く超えていたと思う。
親がうるさかったので、一応何校か大学を受験した。もちろん全部落ちた。
聞くところによると、件の吉城恵美は名門大学に推薦で合格したらしい。
私は大学になんて行きたくなかった。
将来の目標なんてない、ずっと誰にも会わず、つらい現実から逃げられれば後はどうでもよかった。
就職もせず、バイトもせず、再受験の勉強もしない。
「穀潰し」、「ただ飯食らい」とは真に私のことだ。
中学の同窓会の葉書が来た。
こんな醜く変わり果てた姿を晒せっていうの? 葉書は破り捨てた。

 

高校卒業後から三年目になった頃に、今まで黙っていた親の態度が変わってきたことに気づいた。
言葉では気遣いを見せるが、その目つきは「出来損ない」を見る目つきだった。
私は親に一人暮らしを提案した。
「新しい環境でやり直したい。」とか言ってはみたが、方便だ。
私はただ誰の目にも触れない場所に行きたかっただけだ。
親は、今のままよりかはと、承諾した。

 

私は隣の市のアパートに暮らし始めた。
と言っても何をするでもない、今までと変わらぬ、食っちゃ寝生活。
親の目がない分だけ余計に自堕落な生活になった。

 

一年後、父親が会社で倒れた。
母親は、歳と過労のせいだと言ってたけど、私には分かった。
原因は私だ、と。私は両親の幸せな生活も邪魔してしまった。
「お父さんの治療費で苦しいでしょ?」とかそれらしいことを言って、仕送りを辞めてもらった。
本当は、両親と縁を切りたかっただけだ。
これ以上迷惑をかけてはいけない。駄目娘は消えます。どうかお幸せに。
それ以来、私は実家に帰っていない。
父親の見舞いもしていない。連絡すらとっていない。

 

私は収入が無くなったので、自分で稼がなければならなかった。
街に出ると私は好奇の目に晒された。
街に出て気づいた、私はありえないくらいに太っていたと。
私以上のデブは街にいなかった。
よく大きなお尻が通行人にぶつかった。
体が大きくなると自分のサイズがうまく把握できないようだ。
ぶつけられた人は、初めむっとした感じで私を見るが、私の超肥満体を見て、哀れむような目に変わり。
「すみません」と言って、ちらちら振り向きながら逃げていった。

 

バイトをするには面接がいる、私を一目見た面接官の表情は誰も同じだった。
「なんだこの豚は。」
面接官は第一印象で不合格にしているんだろう、何処でも適当に質問をして、後日「残念ながら…云々」の連絡。
当たり前だ、誰だってこんな社会不適合者、もとい人間不適合者を雇用したがらないだろう。
私が雇用主だったら絶対にしない。当然の結果だ。

 

予想はしていたけれども、さすがに数十件の面接に落ち続ければ苦しいものがある。
その日も私は面接に落ち、ひとりバーで自棄酒をあおってた。
酔って、言葉にならない言葉でマスターに絡んでいたと思う。
そこに、ひとりの男が話しかけた。
白いスーツに派手なシャツを合わせた、如何にも胡散臭い男。
男は田邊といった。「タナベ企画」という会社の社長だと自己紹介した。

 

「仕事に困っているのかい?俺の店ならよ、あんたにぴったりの仕事を用意できるぜ。」

 

私は田邊の「お店」に招待された。
そこは、いわゆるデブ専向けのストリップバーだった。
むちむち太ったデブ女が、ステージ上できわどい衣装を着けて踊っていた。
田邊は電卓をはたいて、給料を示した。信じられないくらいの高給だった。
私は、人前で裸を晒す仕事に最初は抵抗があったが、こんな仕事くらいしか私には残されていないんだと気づいた。
私はデブストリップダンサーとしてデビューすることにした。
脱いでしまえば、あまり恥ずかしくなかった。
よくよく考えてみれば、私は今まで会う人会う人みんなに好奇の目で見られてきたのだ。
そう思うと、一気に気が楽になった。
まぁ自分でも親不孝ものだとは思うけども。

 

私は、デブ踊り子オンリーのこの店でも一番の巨体だった。
店で計測したのだが、体重は165sになっていた。
私は、デビューしてから一躍一番の売れっ子になった。
大型新人と呼ばれたのは高校入学以来だ。
もっとも、この場合の「大型」には、文字通りに体のサイズの意味も含まれるが。

 

ステージから降りて、テーブルで接客することもある。デブ専たちはたくさん料理を注文しては私に食べさせた。
私の存在は、店の売り上げにかなり貢献した。
田邊は毎晩ホクホク顔だった。
ボーナスもいっぱいもらえたが、代わりにお酒と料理のコンボで私はみるみる太った。
お客さんは太りゆく私をみるために、お金をお店にどんどん落としていった。

 

ある日のテーブルで、酔った勢いで、男性経験のないことを口走ってしまった。
田邊が目の色を変えた。

 

「どうしてそれを早く言わない!」

 

次の日、開店前の店に、田邊が若い男をつれてきた。
田邊のものとは明らかに違う、ゴージャスだが品のいいスーツ姿。
名前は宮木修哉、歳は27だと言っていた。
そういえば、VIP席にいたのを見たことがあった気がする。
突然彼はこんなことを言い出した。

 

「僕と一緒に暮らさないか?」

 

踊り子を引退してくれとも言った。
彼が全ての面倒を見ると言ってくれた。
田邊は売れっ子が引き抜かれようとしているのに、ニコニコしている。
ああ、そういうことか。
田邊はこの若い男に、大金で私を売ったのだ。

 

田邊も宮木も口では一言も金銭の話はしなかった。
表向きは客が踊り子にアプローチしている体裁をとっていた。

 

「返事は僕のことをよく知ってからでいいよ。」

 

私は男の車―なんと運転手つきのリムジンで―彼の住まいに向かった。
着いてみて驚いた。
都心からそう遠くない場所に、宮殿のような建物があった。
最初彼はホテル住まいなのかと思った。
しかし違った、建物はホテルではなくて、個人の邸宅で、彼はこの巨大な豪邸にひとりで暮らしているという。
中に入ってさらに驚いた。
大理石の床、部屋のあちこちを飾る美術品や花、サッカーができそうな庭に、プール、ジャグジー、ホームシアター…
こんな金持ちが日本にいたのかと思った。

 

「ここで、僕が君を一生養う。苦労はさせない。」

 

ああ、これが太りに太った私の運命なのか、彼の誘いを断ったとして、私は何ができる?
引き篭もり? ストリップバーで見世物扱い?
どう考えても、彼の提案する暮らしが、もったいない過ぎるくらい条件がいい。
金持ちの妾として生きる。
選択する自由なんてない。
もう堕ちるところまで堕ちている。
私は、彼の愛人になった。

 

私は、処女をあっさりと彼に捧げた。
なんら恋愛感情のない彼に。
でも後悔はない、豚がまともな恋愛を望むほうが間違いだ。
そう割り切った。
しかし、何故か初夜が明けた朝、私は泣いていた。
破瓜の痛みのせいだと、自分に言い聞かせた。

 

今私は、彼の妾として暮らしている。働かなくてもいい生活。
屋敷の外に出ることは禁じられたが、彼の屋敷には何でもあるし、無いものは買ってくれた。
そもそも禁止されなくても、外になんて出たくないけど。
時々彼の求めに応じて、彼の性欲を満たせば、他の時間は自由だった。
ケーキを頬張り、大型テレビをダラダラ見た。
テレビに突然、元親友の恵美が映った。
彼女は大学のミスコンで優勝し、テレビ局の女子アナになっていた。
テレビの中の彼女が眩しかった。
正直羨ましい。
私が引き篭もって、社会の闇に堕ちていく間に、彼女は遠くに行ってしまった。

 

どうしてこんなことになってしまったのだろう?
どうしてこんな人生になってしまったのだろう?
どうしてこんな体になってしまったのだろう?

 

たまに窓の外を見て考える。
あの時何で太りだしてしまたのだろう?
原因は分からない。
でもあの時が転機だった。
私の人生は以後転落し続けた。
今は、豪勢だが、自由のない生活。
楽しい人生とは思えない。
しかしこうするしかない。こうするしかないんだ。
あの頃に戻りたいと思うことがある、でもどうしようもないことを嘆いても虚しいだけだ。
楽しみがない代わりに、苦労ごともない暮らし。
充分じゃないか。

 

「彩音、また太ったね?下腹のお肉、分厚くて、柔らかくて…凄い気持ちいいよ。」

 

今夜も、変態のご主人様が私に乗っかり、私の肉を揉みしだく。現在、私は彼の子供を妊娠している。
彼の所有物である証を私は胎内に宿している。

 

「安定期まで挿入はしばらくお預けだね?でも妊娠太りもいいもんだね。ほら、乳輪も膨らんできたね。」

 

完全に私は彼の所有物だ。
そうだ、豚は飼い主の所有物なのだ。
豚がどうこうものを言ってはいけない。

 

「ははは、頸の後ろの肉も凄いよ。もう200s超えたかな?後で量ろうね。」

 

この男は太らせることに興奮を感じるらしい。
好きなようにすればいい、豚の調教は飼い主の自由だ。

 

「体重の世界記録は、アメリカのキャロル・イェガ―、726sだそうだ。がんばろうね。僕は一番が好きなんだ。」

 

もうすぐ私は歩けなくなるだろう。
このペースでは彼の言う世界記録も、あながち夢ではなさそうだ。
もうどうでもいい。
世界記録を達成すれば、私の人生も少しは報われるかもね。
さっきも言ったように、今の私は豚、家畜だ。
豚は豚らしい一生を送るのよ。
さようなら、人間の頃の私。
さようなら、人気者の白瀬彩音さん。

 

〜完?〜


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