208氏その3
何か、ボリュームつまみのように見えるが、気のせいかな?
「おまえ、なんか付いてるぞ」と言ったら、妹は首筋を触り
「何もないじゃん、寝ぼけてると遅刻するよ!」と言う。
うわ!遅刻だ、慌てて家を出る。
俺、寝ぼけてるかも知れない、なんかツマミの付いた女性を街中に見えるんだ。
昼、彼女とランチ。彼女の首筋にもツマミが!
よく見ると体から2〜3cm離れて宙に浮いていて、「weight」という銘板にmax-minと目盛が振ってある。
俺は気になって、彼女のツマミを回してみた。
すると急にスカートをおさえ、驚く俺を放って脱兎のごとく消え去った。
次の日。早退した彼女が心配で見舞に行く。元気そうじゃん、心配して損した。
彼女はいつものようにラフな格好で、いつものように笑顔で、いつものように
...って、いつもとは変わっちゃってるんですけど、体型が。
バストは大きくタンクトップからせりだしていて、パンツもピッチリして今にもはじけそうだ。
ぽっこりしたお腹や太くなった足腰も、愛嬌があっていい。
「なんか急に太っちゃって」と言う彼女の姿はとても色っぽい。
俺は我慢できなくなり、見舞いに行ったはずが彼女を抱いてしまった。
翌朝、寝息をたててる彼女の首筋には...まだ見えるよ。
「俺、狂ったのか?」
そう思いながら、とりあえずツマミの位置を元に戻しておいた。
月曜日。「おはよ〜!」と言う彼女は、いつもの体型に戻っていた。
聞いたら「今朝起きたら元に戻ってた、なんか夢でも見てた気分」。
うん、そうだ。きっと夢に違いない。俺もとっとと忘れよう。
あれからひと月、いまだにそれが見える。
「眼医者に行ったほうが良いかな?」と思っていた頃、自分のツマミをテープで固定している人を見掛けた。俺は思わず声をかけた。
その人曰く、
「わたし以外にもツマミが見える人間って居るのね、知らなかったわ。自分のは動かないようにテープで止めてるの。これって便利でしょ! いくら食べてもツマミを固定しとけば体型変わらないし」。
しかし俺はそんな気楽になれない。
「俺はそう思わない、彼女のツマミが気になって仕方ないんだ」。
そう言う俺に同情してくれたその人は、
「じゃあ、あなたの苦しみを除いてあげる」
と言って小声で何かを唱えた。
翌朝。久々にすっきりした気分で、「もうツマミなんかが見えて悩む事もないだろう」と思いながら何気なく妹の背中を見たら...なんだか増えてるんですけど。
「体年齢」や「脂率」などのツマミが幾つも。
あの人、何か勘違いしてたんじゃないのか? (涙)
付記:
その後、ツマミが見える人と何人も知り合った。
そういう人は結構いるようだ。でも消し方は誰も知らない。
「見えてしまうものは仕方ない」、そう思う事にして俺は諦めた。
結局あのツマミは、彼女と夜過ごすときに使っている。
灯りを消し、彼女のツマミをぐっと回してから愛しあう。
大きなバストと豊かなお尻、柔らかな体を抱く。
その後そっとツマミを元に戻す。
翌朝には元の姿に戻ってるから当人は気付かない。
最近、彼女のツマミをいじりすぎたせいか、戻す時に引っかって回りくい。
先日も半分しか戻らなくて、今朝もふっくらしたままだ。
後日、これが「ダイエット&リバウンドで痩せにくくなる」という事だと気づいた時にはもう遅かった。
その頃には....
[おしまい]