悪魔との契約・完結編

悪魔との契約・完結編

 

 

「うぉ!? どうしたんだよファト!」
朝、目覚めるとファトが巨大化していた。
昨日までは掌サイズだったのに、今は大人くらいの大きさだ。
外見も、以前のチープな虫歯菌のような外見から、少し威厳のある悪魔らしいフォルムになっている。
「お前の日頃の頑張りと、例の肥満薬事件の影響か、…どうやらパワーアップしたらしい」
「たしかにアレは不謹慎だが素晴らしい事件だったなぁ… 一夜にして大デブに… それもロマンだよな」
「で、能力もパワーアップしたぞ」
「マジでか!?」

 

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「あら、かわいらしいぽっちゃりさんね」
巨大な肉の塊が、バターをたっぷりつけた食パンを一斤丸ごとかじりながら呟く。
テレビには200kg以上の大デブが映されている。
肥大化による被害者の報道番組らしい。
しかし、350kgはあるこの巨大肉塊… 天野美紗緒にとっては可愛いものだ。
「まぁ、美紗緒ちゃんから見ればそうなるよね〜」
「それにしてもたちの悪い薬ですね。まるで博士が作ったみたいな」
「よく分かったね〜、面白い作用の薬だったから友人の製薬会社の社長に情報送ってたんだw 彼も僕と同じ趣味だから喜んでたな〜。今頃、大金手に入れて海外に逃げてるだろうね〜。大・成・功」
「…ホントろくな事に使いませんね、その才能」
「いやぁ、怒らないでよ〜。美紗緒ちゃん」
「…いえ、GJです博士。私よりスリムな女なんて世の中からいなくなればいいんです」
「…いやぁ、それはさすがに厳しいんじゃない?」

 

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「それで新しい能力なんだが、何かいいアイデア無いか?」
ファトの話によると、パワーアップ… 進化した魔物は魔界に帰り、上司に新しい能力の企画書を持って行き、それを付けて貰うらしい。
まるでサラリーマンだな… どうも人間が想像する魔界とは大分勝手が違うようだ。
「よし、ちょっと待ってろ… 前々から妄想してたネタがある。あぁ、一つ聞いとくけど本当に太らせた女は健康上は問題無いんだよな?」
「それは大丈夫だ。こっちとしてはなるべく長く絶望エネルギーをいただきたいからな。太り過ぎで病気になったり、心臓とかに負担がかかる事は絶対無い。重くなりすぎて動けなくなることはあるだろうが」
「それなら安心だ」
それから俺はレポート用紙に新しい能力のプランを書き出していった。
しばらくして、ファトに書き上げた用紙を渡す。
「どれどれ… ほう、ほう、凄いな…… お前… ホント悪魔だな」
悪魔のお前が言うか。
しかしファトの反応は上々で、それを持って魔界に帰っていった。

 

それから三日後、ファトが帰ってきた。
「いや〜、まったく大変だったぜ。上司の大魔王、暴食のベルゼブブ様と、怠惰のベルフェゴール様も大喜びで散々酒に付き合わされた。そうそう、新能力もばっちりだ」
新しい能力の解説をしよう。
まず一つ目は、「好きな場所の肉を増減できる」というものだ。
これにより、今以上に自由に肥満化ができるようになる。
まぁ、これは大した事じゃないな。そして次が本命の能力だ。
今までは俺がいちいち体重を奪い、それを他に移していた。
しかし、それでは俺の周囲がどんどんデブになるだけだ。
例の肥大化事件もあったものの、世の中はまだまだ痩せた女の方が多い。
かといって俺が全国を回り、いちいち肥満化させるわけにもいかない。
少しづつやっていてもまどろっこしいし、流石に一気にデブになる事件が続けば騒ぎになってやりにくくなるだろう。
そこで使い魔を使い、自動的に全国規模でそれを施す。
使い魔は各地の上空に待機し、男や中年以降の女から体重を奪い、どんどん
若い女を肥満化させていく。
使い魔には「かわいい子限定で多めにデブ化」「下半身中心にデブ化」など細やかな設定ができるようになっている。
目の前には小さなハエのような使い魔が袋の中に数百はいるだろうか。

これで全国をくまなくカバーできるらしい。
「さて、あとは設定だけだな。もちろん後からでも設定できるが、どうする? てっとり早く、女全員デブにするか」
ファトの問いに、俺はすぐに首を横に振る。
「甘いな。皆をデブにしたら「デブが普通」の世の中になって絶望感もすぐに無くなるぞ。標準体型がいるからこそ、デブがより引き立つんだ。標準体型を4割は残したほうがいい。デブになってしまった女はそいつらを見て、醜く太った自分と見比べ絶望する」
「確かにそうだな。じゃあ4割は手を出さないようにしよう」
「それと、太らせるのはなるべく容姿に自信のある子の方がいいな。その方が肥え太った時の… 美人から転げ落ち、周りから掌を返され、哀れなブタに成り下がる… その時の絶望は格別だろう」
「ふむ、お前の彼女の千晶みたいなのが増えるわけか。たまらんな」
「あとは… そうだ。太らせる女の中でも100kgまでを5割、200kgまでを3割、それ以上の超大型デブを2割に分けよう。これで「私はまだマシ」と自分より下を見る事で、こっちが手を下さなくても更にブクブクと太るはずだ」
「待て待て、いくら無害とは言ってもそこまで体重を増やしたら身動きできなくなるぞ。それじゃ楽しめないと前に言っていたじゃないか」
「それなら心配無い。お前が魔界に帰ってる間にいいニュースがあってな」
そう言って俺はファトに新聞を渡す。
見出しには「肥大化女性に希望の光」と書いてある。
「どこぞの科学者が発表した新薬だ。筋肉や骨格を強化し、相当な大デブでも自由に動けるようになるらしい。近日には出回るそうだ」
「成る程、これなら確かに大丈夫だな。しかし、いいタイミングで… これを作った奴も案外同じ趣味かもな」
「じゃ、地域ごとに設定しよう。まずは寒いところは肉が多いほうがいいだろうから限界体重を高めに設定…」
こうして、俺とファトは徹夜で調整を行い、俺たちには至福の、全国の女性にとっては絶望をもたらす使い魔は朝日の中、消えていった。

 

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一方、無人島の研究所では…
「ぶぇっくし!」
「はい、どうぞ」
美紗緒が手渡すティッシュを受け取り、木崎は鼻をすする。
「いや〜、最近働きすぎたから風邪ひいたかな?」
「珍しいですね。博士があそこまで熱心に仕事するなんて」
「まぁ、基本的には美紗緒ちゃんに使った奴と同じだからね〜。ただし、副作用をほぼゼロに抑えたから毎日服用する必要があるんだけど。お陰で本社は大儲けできるんじゃないかな?」
「どうして急に真面目に仕事する気になったんですか?」
「例の肥大化事件で動けないくらい肥った子が結構居たみたいだからね〜、さすがにかわいそうじゃない。それに俺の好みとしては、凄いデブがブヨブヨとみっともなく動くのが好きなんだよね。美紗緒ちゃんみたいに」
「…ホント、つくづく変態ですね」
「それに、凄いデブが街にいっぱい増えれば美紗緒ちゃんも目立たなくなるかもよ? 温泉とか行きたいってこの前言ってたじゃない」
「それはいいかも知れませんね… 美味しいご飯を山ほど食べて… 温泉…」
「よだれ凄いよ〜、美紗緒ちゃん。風邪気味だから、美紗緒ちゃんに添い寝して もらおうかな〜 肉布団みたいで気持ちよさそうだよね〜」
横になった美紗緒は肉がいっぱいに広がり、ベッドを楽々覆い尽くす程だ。
「…私、寝相悪いですから、この身体の下敷きになると骨の1本や2本じゃ済みませんよ? それでも良いならどうぞ」
350kgの重みでのしかかられれば下手をすれば死んでしまうだろう。

美紗緒に仕込んだ服従させる薬も、寝ている時までは効果は無い。
「あはは… 今日は風邪薬飲んで早めに寝るよ」

 

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それから、全国的に順調に若い女性の肥満化は少しづつ進んでいった。
原因不明のそれはもちろん防ぎようがない。
じきに若い女性はパニックに陥り、肥満化を防ぐという謳い文句の怪しい商売も続出したが、もちろん全て無駄で、落ち着いたというか、諦めというか… とにかく事態は次第に沈静化した。
高校を卒業する頃には、各地で3桁を超える女性はもはや珍しくなく、欧米でしか見かけない超大型のデブや、とても動けそうもない巨デブが頻繁に見られるようになった。
若い女性だけに限るなら、間違いなく世界一の肥満大国だろう。
俺も以前はぎりぎり日常生活に支障が無いように加減していたが、あの薬のお陰でその必要も無い。
体型を操作する愉しみもあいまって、少し張り切りすぎてしまい、俺の住む街を100kg超ですらぽっちゃりという程に異常にデブばかりにしてしまった(使い魔は俺の活動範囲には居ない)。
最近では感覚が麻痺しているのか、100kg程度では物足りなくなってくる。
我ながら、慣れというのは恐ろしいものだ。
しかし、細身の女性も意図的に残しているため「痩せているのがいい」という世の風潮を完全に崩すまでには至らない。
男や中年以降の女性は至って細身で、若い身体でぶよぶよに太りきった女達に対し、同情や哀れみ、侮蔑や嫌悪感の入り混じった視線を送る。
太った女性はそれを肌で感じながら、変わり果てた自分の姿に絶望し、残った細身の女性に羨望のまなざしを送りながら暮らしている。
全国規模で起こる肥満化は今までの日常を大きく崩していき…
結果、みるみる全国からエネルギーは集まった。(ファト談)

 

 

それから二年余りの月日が流れ… 今では俺は地元の大学に通う3年生だ。
いつものように、車で千晶の家に向かう。
「あら、おはよう。いつもご苦労様ね」
家の前には千晶の母親が居た。
千晶がかつてそうだったように、年齢を感じさせないモデル体型と美しい容姿を保っている抜群の美人だ。
「まったく千晶ったら豚みたいにブクブクに太っちゃってねぇ、ホントみっともないったら… ちゃんとお嫁に貰ってあげてね?」
「も、もう、何言ってるのよお母さん!」
そう言いながら、玄関から巨体を揺らし、顔を赤らめた千晶が出て来る。
横に並ぶと、母親より何倍も巨大になっているのがよく分かる。
あれから俺は千晶に自分の理想的な肉付けを少しづつ施し、それは既に完成していた。
顔には最低限の肉しか付いていないため、十分ぽっちゃりとした美人で通るだろう。
しかしその首から下が… いや、首はもう無かったか。とにかく凄い。
乳は一つ一つが大きなスイカ以上で、発達した乳首は服とブラの上からでもそれとなく分かるほど巨大化している。
腹は見事な三段腹で段差には携帯電話くらい軽く挟めそうだ。
尻と太股は最も拡大し、まるで巨大なクッションを付けたまま歩いているように見える。
見事なカーブを描いた究極の洋ナシ体型。

つい5年前まで、モデルとして活躍していたなど夢にも思えないだろう。
元モデルだけあって、超がつく程のデブだが洋服は気を使っており、今日は俺が3人は入れそうなワンピースに土管のような大きさのブーツ。
こんな大きなサイズのブーツ、以前ではまずお目にかかれないな。
しかもこれでもまだ着痩せするタイプなので、裸になった時の色香と肉量は凄まじいものがある。
もっともそう感じるのは俺だけかも知れないが。
全身がぷよぷよと気持ちよく、抱き心地は抜群だ。
ただし、その巨体ゆえ車の中などで気軽に行為に及べないのが弱点かな。
確か、体重は200kgをとうに超えたと恥ずかしそうに言っていた。
これでも、この街の基準ではやや大きめなデブといったところだ。

 

俺は千晶を助手席に乗せ、大学に向かった。
最近の乗用車はデブ用に中がゆったりしたつくりになっている為、千晶の異常な巨尻でも何とか座る事ができる。
肉が喰い込むシートベルトが何ともエロい。
大学に着くと、同世代の多種多様なデブ女達が盛り沢山で非常に暑苦しく、俺にはそれが心地いい。
全身パンパンに膨れ上がった女、脂肪が段差を作り垂れ下がった女、リンゴ型に洋ナシ型、自力移動すら怪しい肉の塊…
この大学のデブは全て、俺がこだわりを持って作り上げた「作品」だ。
俺は朝一から講義だったのだが、千晶の方は2限目からなので一旦別れ、俺は教室に向かう。
大方、食堂で軽く食事を摂るんだろう。
今では彼女は俺の3倍はゆうに食べるし、とても3食では済まない相撲取りも真っ青な食生活だ。
教室に向かう途中、ひときわ大きな肥満体がこちらに近づいてくるのに気づいた。
巨大なオーバーオールを着ており、もう秋も深まったというのに半袖のシャツ。
おまけに汗だくになっている。
この大学でも屈指のデブ、浅川里美。友人の杉山の彼女だ。
杉山とは入学以来交友があり、俺と同じ趣味を持ち、今では親友といっていい(俺の能力の事は流石に伏せているが)。
自然とその彼女である浅川とも、交流を持つようになった。
今では彼女は千晶とも仲良くなり、よく遊びに行っているらしい。

 

入学式で初めて見た時から肥大化により相当な肥満体だったが、今では更に二回り程巨大化し、もはや人間のシルエットは消えつつある。
もはや世界びっくり人間のレベルに近いな、これは。
千晶と違い全身にくまなくみっちりと肉が付き、重力に負けて肉が垂れ下がりつつある。
歩くたびに揺れるその贅肉は豪快の一言。
特に二の腕にはゴワゴワと脂肪がぶら下がり、重みでちぎれんばかりで目を引く。
これはこれでまた素晴らしい。
垂れ下がる胸は牛以上の大きさで、ゆったりとしたオーバーオールの前掛けの上からでも存分に存在感を主張している。
もはや衣服というより、脂肪を詰め込んだ袋のようだ。
杉山に昔の写真を見せてもらった事があるが、あのスレンダーな、貧乳の身体がここまで変わるとは…
杉山の話では300kgの大台ももうすぐらしい。
もちろん、俺が体重増加と体型操作に陰ながら協力したのだが…
まぁ、杉山は喜んでいたから構わないだろう。
友人として軽く手助けしたまでだ。
「ぷはー、ぷはー、おはよー」
「今日も大迫力だね、浅川さん」
「あはは、ぶひ〜、もう、レディに、向かって、し、失礼ね〜w ところで、ぷふ〜、宏見なかった?」

宏というのは、杉山の名前だ。
ちなみに、ここまで顔や喉に肉が付くと喋り辛いのか、あまりに太り過ぎた女性は少し動いただけで息が上がり、自然とこんな話し方になる。
大方、駅から歩いてきたんだろう。
この身体では車やバイクは到底運転できない。
なかなか豚のようで愉快だが、さすがに見苦しいので千晶はそうならないよう、俺が肉を調整している。
「今日はまだ見てないな。千晶ならたぶん、向こうの食堂で一休みしてるよ」
「あ、ありがと、じゃあ、ぶふぅ〜、私も、ふひぃ〜、食堂行こうっと。お腹も空いたし」
そう言うと浅川は食堂に向かい、のしのしと去っていった。
今はまだ朝の9時なんだが、一体1日にどれだけ食うんだ?
今度杉山に聞いてみよう。
ここまで太るとあの新薬が無ければ身動きできなくなってもおかしくないだろう。
よちよちと不恰好に歩いている姿は壮観で、思わず見入ってしまう。
巨大な尻を覆う生地は中からの圧力で破けそうになっていた。

 

二人の巨大な女性が肥満者用の特大の椅子に腰掛け、食後の紅茶を飲んでいる。
千晶と里美は談笑していた。
二人合わせると500kgはあるだろうか?
以前なら、こんな異常な肥満体が並んでいれば間違いなく人だかりができていただろう。
しかし、デブばかりの今の日本では大して珍しい光景ではない。
周りにも腹を減らしたデブ女達がごまんとおり、食堂は常に活気がある。
「でも、この街は凄いよね〜、私みたいなデブが歩いててもみんな、とくに驚かないし。高校の頃は、ぶふぅ〜、私が外歩いただけで皆ざわついてたんだよ?」
今、軽く食べたばかりだというのに里美は巨大な鞄からパーティーサイズの袋の
スナック菓子を取り出し、ガツガツとぱくつきながら言った。
千晶もそれに手を伸ばす。
「肥大化で大変だったんだよね。でも、そんな騒ぐほどかなぁ?」
たちまち二人によって菓子は食い尽くされる。
巨大な鞄からは次々に食べ物が飛び出し、また無くなる。
そんな作業が5回続いた。
いわゆる常人にとってのデザートというやつだ。
「ぐぇ〜っぷ、これでやっと腹八分目かな。何とかお昼まで持ちそう… いや、凄いデブだったんだよ私。今は、ほら、もっともっと太ってるし」

「う〜ん、たしかに里美は結構大きいけど… この街は若い女性が次々にデブになる怪現象が起きたから、みんなデブに免疫あるのかも知れないね」
いち早くデブが溢れたこの街の住人は、すっかり感覚が狂ってしまっているらしい。
「その噂を聞いて、この街の大学受験してホント正解だったな〜。私くらいのサイズの洋服もちゃんと売ってるし、食べ物屋さんはどこも安くて美味しくて量も多いし、ホント居心地良すぎ。お陰で、かなり体重は増えちゃったけど」
「でも世の中変わったわよね… ちょっと前までは体重3桁なんて絶対考えられなかったのに」
「今じゃ150kgくらいなんて普通だもんねぇ。ホントデブが増えたわ。まぁ、私はそれでもちょっと太り過ぎだけど… でも良かったんじゃない? もし皆痩せてたら、私とか恥ずかしくてもう外出られないもん。痩せてた頃の私が今の姿見たらショック死しちゃうかも」
「はは… ホント、それは言えてるね」
その時、二人の横を肥満化を免れた細身の女性がさっそうと横切る。
二人は自分の体型を見ながらぼそりと呟いた。
「うわ… 千晶〜、私の二の腕、あの子のウェストより太いよぉ… 何か、ちょっと前まであんなに細かったのが信じられないね…」
「…うん」

 

講義を終えた俺は携帯電話を取り出し、一見無茶苦茶な20桁の番号を押した。
この番号は特殊な魔界への直通電話で、ファトに繋がっていた。
「よう、そっちはどうだ? 魔王ファトエル様」
「その呼び方はやめろって」
ファトはあれから更に力をつけ、異例の大出世を遂げた。
半年前から魔界に帰り、今は魔王としての職務にあたっている。
よって、俺は今能力は使えないし、全国に散らばる使い魔も今は活動を停止している。
まぁ、もはや俺が手を下さずとも、デブが減る事は無いだろう。
あとは勝手にブクブクと各自で太っていく事は、俺が手を下さなかったこの半年間で明白だ。
「恐ろしい奴だよ、お前は。俺よりよっぽど魔王にふさわしいぜ。世の中まで変えるとはな」
最近はデブが増えたお陰で全国的に外食産業は大きな伸びを見せ、太る事で買い替え需要が増大した衣料分野も景気が良い。
自動車も軽では窮屈なので最近は大型車に買い換える家庭が増えた。
逆に、太ったことでだらしなくなるのか、若い女性を対象にした美容分野は大打撃を受けた。
しかし、全体的に景気は上向きで、不景気から脱却しつつある。
ニュースでは「脂肪景気」と言っていたな。傑作だ。
「俺的には楽しい世の中になったな。もっとも、そうじゃあない男には辛い時代かもな?」

大多数の男達は今まで忌み嫌っていたデブと妥協して付き合うか、好みを変え割り切るか、限られたデブになる事を免れた女を奪い合うかしかない。
まぁ、これは好みの問題なので時間が解決してくれるだろう。
「今忙しくてな… 近いうちに、そっちへ行って溜まった絶望エネルギーを回収したいんだがなぁ」
「凄い事になってると思うぜ? いつでも遊びに来いよ。そろそろ千晶の体型も崩れる前に一度調整しときたいしな。最近はすぐ太っちまう」
「おいおい、お前が仕組んだんだろ… それじゃあ、またな」
電話を切ると、俺は食堂で待つ千晶の元へ早足で向かった。


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