美と健 肥化治療と演じる女

美と健 肥化治療と演じる女

 

 

「朱の女」
 『夜の病院、重い病気やケガに苦しんでいる人の枕元に
  朱色の髪をした美しい女が現れる。
  数日後にまた現れて、抱えているケガや病気を治してくれる。
  しかし、その代償として美しさを奪い取ってしまう』

 

そんな怪談がこの地域に伝わっていた。
そしてそれは現実の話となった。

 

 

深夜の病院、その病室の一つ。ここにいる患者は、
長い黒髪を後ろでくくった30代前半の女、
下半身の複雑骨折で入院し全治6ヶ月と診断された二島佐奈子と
薄茶色の髪をツインテールにした11歳の少女、
心臓病で一年も入院している白田都美。

 

その二人の前に現れたのは夕暮れを思わせる朱色の髪の女、
女としては高い背丈にメリハリのある肢体、怪談通りだ。
ただ、着ている服は、その整った体を程良く露出させたタンクトップとスパッツで、
その顔の印象は、ぷっくりとした唇と紫色の大きな瞳から、美しいと言うより可愛いと思える。

 

 

「それじゃあ始めるけど、本当にイイの?」
「私は美しさを取っちゃうんだよ」
「醜くなってもいい、子供達の為に一日でも早く戻りたいんだ・・・」
「私も・・もう病院から出て学校に行きたい・・」
「そう、じゃあ奪わせてもらうよ」
女は二枚の札を取り出し、佐奈子と都美のヘソの辺りに貼り付ける。
「よろしくお願いします  えっと・・・」
どう呼んでいいのか分からずに、言葉に詰まった都美に
後ろを向き返答する。
「ああ、私は『リーファ』 美しさを奪い、命を治す」
背中を向けたまま、病室の片隅に置かれた誰かのバッグをまさぐる。
「朱の女」 リーファは振り返り、満面の笑みを向けた。
それを切っ掛けにして、佐奈子と都美の体に脂肪が付き、膨れ、太ってゆく。
にも関わらず二人は微笑みを浮かべていく。
体に脂肪が付き重くなると共に、
それまで抱えていた苦しみが抜けていくのを確かに感じていたのだ。

佐奈子が脚に感じていた痛みが、都美が胸に感じていた辛さは消えうせ、
それは重さに変わっていった。

 

 

「はい、これでオシマイ」 
「「あ・・りがとう・・・ございました」」
急激な肥満化に対応しきれず、息も絶え絶えに礼を言う二人。
しかし、その体は通常の肥満による弊害は最小限に抑えられており、
至って健康な、肥満体で間違っても美しいと、
言えるかどうかは見る人によるだろう。

 

「 た、頼・・だ・・・か、いが・・・・あつたよ・・・」
佐奈子の体は下半身を中心に肥満化していた。
病院着のズボンは完全に破れてしまい、
そのとても太く分厚い下半身が丸見えになってる。
特に腰周りの太さは、マワシを巻いた横綱を思わせる。
そんな下半身と比べると細いが、
上半身は上半身でかなり太く病院着もパツパツだ。
普通の人の腰並に太い二の腕に、
そんな腕が閉じきれない程になった脇。
そして、新たに子を宿したかの様な大きさのお腹に、
そんな腹を上回るサイズの胸はメロン大の爆乳である。
顔も丸々と膨れ、顎は軽い二重顎で、
頬肉が膨れすぎて鼻が低くなり目が少し細められている。

 

二島佐奈子(33)  162cm
55kg 80・58・71→106kg 103・90・127

 

 

 

「お、お父さんが言った通りだった・・・今日で治った・・・!」
これまで心臓病で苦しんでいた都美だったが、
そんな過去を覆い隠す厚い脂肪が付いていた。
言い換えれば、胸が重点的に肥大化した肥満体になっていた。
しかし、佐奈子と同じく胸以外も十分すぎる程肥大化している。
手足は以前の倍近い太さで、袖も脚も今にもはち切れそうだ。
小さかったお尻は大きくなりすぎて、
ズボンを裂いてブリンとはみ出している。
ほっそりとしていたお腹も、ドンと突き出して、
大玉スイカを入れた様なサイズの太鼓腹になってしまった。
そして、そんなお腹が括れて見えるほどに巨大になった胸。
こちらは片方ずつがスイカ並みの大きさである。
スリーサイズだけ比べれば、「ボン・キュッ・ボン」で、
ある意味、大人顔負けのナイスバディーだ。
そんな体とは逆に、顔は満月の様に真ん丸とした丸顔で、
幼く可愛らしい印象だ。

 

白田都美(11) 142cm
35kg 65・49・57→ 88kg 119・98・117

 

 

 

「あなた達の美しさはいただいたよ」
リーファは二人に貼り付けていた札を拾う。
二人には暗くて見えなかったが、札の裏は複雑な構造の電子機器になっていた。
「それじゃあ、二度と私に会うことの無い様にね」
リーファは、そう言って何故かさっきまさぐっていたカバンを抱え上げ、
窓から飛び降り、夜の闇に消えていった。

 

 

 

その頃、あの病室の真下、1Fにある応接室に、この病院の医師と
都美の父親がいた。
都美の父は深々と頭を下げ、数十万円相当の紙幣が入った封筒を医師に差し出していた。

 

「娘の治療、ありがとうございました」
「いえ、肥化治療という手段をとらざるを得ず申し訳ありませんでした」

 

 

肥化治療―――特定の栄養素を急激に送り込むことによって、肥満化と引き換えに
患者の回復機能を活性化させ、疾病を即座に完治させるという処置。
コストもリスクも現時点でかなり抑えられているが、
当然のことだが、世間からの批難の声が強く、
実用化に踏み切れないでいる。

 

 

「しかし何であんな形で治療を行ったんですか」
「いえ、それが彼女がそうしたい、と言ったので・・・」
「問題もないので、好きにさせているのです」
丁度その時、上から人影が飛び降りて、裏庭に敷かれていたマットに着地したのが
窓から薄らと見えた。
庭の照明に照らされたその人影は、紛れも無くリーファだった。
「本当に物好きな人ですよ」
「自分で作ったシステムなのだから特許を申請すればよいのに、
「必要経費以外ほぼ無償で私達医療機関に配布してくれて」
「・・・本当に変わった人ですよ」
少しの呆れと大きな感心が入り混じった医師の言葉はリーファの耳に届かず、
彼女は、子供の様な満面の笑みを浮かべて夜の闇へ駆け出していった。

 

おわり


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