荷と駆 試練の聖夜と走る乙女

荷と駆 試練の聖夜と走る乙女

 

 

聖夜、町の賑わいとは離れた静かな山。
その山道を走る少女がいた。

 

少女の体は、豊満、と言うにはやや肉付きが良すぎる。
厚手のジャージにそのボディラインをくっきりと浮かばせてる。
まず、括れとは無縁とばかりにぽっこりと突き出ているお腹。
そんなお腹が凹んで見えるほどに巨大な胸。
お尻も胸に次ぐ大きさで、そこから伸びる脚は
太すぎて、走るたび脚と脚が擦れ合ってる。
顔立ちは整ってるが、頬はふっくらとして、
顎も、二重あごは無いがコロコロと丸いラインをしてる。
大多数の異性からは敬遠されるが
同性からは可愛がられる、そんな印象の少女。
過龍光樹だ。

 

その光樹がこのクリスマス・イブに、付き合う相手は
木に寄りかかって休んでいた。

 

彼女は長く美しい黒髪をさっぱりと切りそろえた、
ゆったりとした巫女服を着た少女。
そしてその体は光樹と見比べると(良くも悪くも)程良い肉付きをしている。
――いや、『していた』。
光樹が声をかけようとした矢先に、
その娘の体が膨れあがり、巫女服に豊満と言うにはやや肉の付き過ぎたボディラインを浮かばせる。
見た目の重さは光樹と同等だが、
体型の印象は異なる。
彼女は、顔は殆ど変わってないが、胸よりもお腹が突き出ていて
ずんぐりむっくりとした、より「デブ」っぽい体型をしてる。

 

 

「 師月ちゃん!?」
「大丈夫です、光樹さん 残りの距離と比べると順調と言える位です」
師月(しづき)と呼ばれた黒髪の少女は、
この変化にあまり応えてない様だ。『予測』できていたのだろうか?

 

「・・・とにかく、行こうね あの二人にちゃんと断ってきたから」
「直接言っておかないとあの二人、何かあるって勘ぐると思うから」
「大事に、思われてるんですね」 
「うん、本当は嬉しいんだけど、今回はね・・・」
「・・・それじゃあ出発します!」
「聖夜の試練を果たすために!」
意気揚々と歩き出した光樹と師月。
・・・速度が遅いのは、ペースを考えてるからである。
体が重いからでは決して無い。

 

足取りは遅くても休むことなく二人は歩き続けて
目指す神の社がある山の麓まで来た。
「・・・ようやく見えてきました 神の社はあそこです」
師月が指差す場所は山の中腹辺りだ。
「あそこが目的地かぁ」
流石にしんどい、内心そう思っている光樹だが、
自分よりも明らかにしんどそうな師月を見てると
とても口には出せなかった。

 

光樹よりも長い距離を歩いてきたうえ、
社に近づくにつれて増えていく体重は光樹を軽く上回っている。
ここまで歩き続けた脚は、脂肪でパンパンに膨れ上がり
今や木の幹の様な太さだ。
しかし胸は余り大きくなってない。
メロン大のサイズなのだが、それでも師月の体においては小ぶりだ。
逆にお腹は一番の巨大化を遂げていて、背丈に並ぶ巨大さだ。
尻も胴体の一部として、お腹に次ぐ巨大化を遂げている。
ここまであまり肉が付いてなかった顔ももう丸々としてきて、
汗と脂でテカテカしている。

 

その様は何も知らない他人が見れば滑稽にしか見えないだろうが、
光樹は(自分も大差無いと認識してることもあって)全くそう思わない。

 

 

「 私が先行くから、師月ちゃんはゆっくり上がってね」
光樹が石段の一段目に脚をかけたその瞬間、
それは、余りにもあっけなく崩れた。
「あっ・・・」 「!」
頭を軽くとはいえ地面に打ち付けてしまい
光樹は意識を失った。

 

 

暖かく柔らかいゆりかごに揺られている。
そんな奇妙な感覚を覚えながら、光樹は目覚めた。
「・・・?」 まず目にしたのは、ユラユラと揺れる石階段。
「!」 そこからすぐに気づいた。
「師月ちゃん! どうして・・・」
師月は意識を失った光樹をおぶって、ここまで上ってきたのだ。
「これは私達末年の一族に与えられた試練ですから・・・」
「それにあなたは信じてくれた初めての人ですしね」
「師月ちゃん・・・ありがとう 私はもう大丈夫だから」
光樹は師月から降りた。

 

「ここまで背中で休んでおいてなんだけど、ここで一休みしない?」 
「いいですね、実を言うとここまで休み無しで歩き続けてもうヘトヘトで・・・」
「時間にもまだ余裕が有るはずだ・・・し・・・」
腕時計を見た光樹が凍りつく。
恐る恐る腕時計を見た師月も凍りつく。

 

 

「・・・・・・!」二人はどちらともなく、再び石段を登りだした。
体重が乗った重い足音が響く。

 

 

光樹は駆け上がる。
師月の試練を失敗させないために。
ただの荷物で終わらないために。
激しい振動に耐え切れずジャージのチャックが裂け、
胸がこぼれ落ちれても構わず上り続ける。

 

師月は駆け上がる。
光樹と共に試練を達成するために。
皆に災いを及ぼさないために。
更なる巨大化により巫女服が破れ、あちこちで肉が溢れようが
構わず上り続ける。

 

そして、二人はほぼ同時に
神の社にたどり着いた。
その時、腕時計の示していた時間は―――

 

23・57

 

「間に合った・・・」
「 ありが・・とう・・ございました・・」
光樹に感謝の言葉を言い残して師月は地面に倒れた。
光樹もその言葉に返事する前に倒れふした。
・・・・・そのまま、寝息を立て始める二人。
白い雪がチラチラと降り始めた。

 

 

過龍 光樹  19歳 165cm  75kg 110・81・104 

 

末年 師月(すえどし しづき) 15歳 143cm 51kg 83・69・80
→68kg 86・88・81
→89kg 96・126・112
→106kg 102・136・124

 

 

 

 

「聖夜、選ばれし乙女は、神の授けし重荷を背負い、荷の重さを知る者を一人連れて、
 神の社に行かなければならない」
「時と共に、少女の背負う荷はより重くなる。 だが何人たりも手助けは許されない」
「聖夜が終わるまでにたどり着かなければ、重荷は災いとなって
 乙女を取り巻く者達に降りかかるであろう」

 

「私達末年(すえどし)家に代々伝わるこの言い伝え。
 他人にとっては、単なるホラ話としか思わないだろうが、
 末月の一族は、当事者として『体感』してきたことです」

 

「――そういう訳だったんだ」
「なるほど、それでボクらに断りを・・・」

 

暖房の効いた家の中、布団を着せられすやすやと寝息を立てている師月と光樹。
彼女らの横には、リーファとライディ。
そして二人に事の経緯を説明した中年男性こそ師月の父親だ。

 

彼は神の社に先回りして光樹と師月を待っていた。
そして、試練を終え、そのまま眠ってしまった二人を拾った。
更に光樹が直接来て「明日のパーティーには行けない」と断ってきたために、
何かあるのではないと考え、後を追っていたリーファとライディと会い
この二人に事情を説明していたのだ。

 

「・・・驚かないんですね」
( まあ、似たような話を色々と見て、聞いて、体感してきましたからね)
そう思うライディだが、説明が面倒なので口には出さないでいる
(重さの神、肥らせの迷宮、それに朱の女・・・)
リーファに至っては太らせる当事者だが、
流石にその事は口に出せない。

 

 

「でも、光樹さんが初めて信じてくれたってことは、『荷の重さを知る者を一人連れて』、
 つまりぽっちゃりした人を連れて行くって所は守れてなかったんじゃあ・・・」
「ああ、そこは別に守らなくて良いんです これまでやって来た私の妻や師月の姉が言ってました」
「しかし光樹さんは信じてくれました」
「これまでとは違って、近くで待っていた姉ではなく結構離れていた師月が
 試練に選ばれた証に太り出して・・・これまでとの違いに狼狽えていた所に来てくれました」

 

ベッドですやすやと眠っている光樹。
同じくその横で眠っている師月は、痩せた、
試練が始まる前の体に戻っていた。

 

「試練が終わると、元の体に戻れるのか、良かったね」
「・・・でも、付き合ってくれた光樹さんが戻れないとは・・・」
「・・・ボクらは少し残念ですけど、光樹ちゃんはそんなこと全く思ってませんよ」
「ともかく、今は二人が起きた時のためにパーティーの用意をしておかないと!」
「巻き込んだ私達があなた方のクリスマスパーティーに参加しても本当にいいんですか」
「はは、何を言ってるんですか さあ行きましょう」
ライディとリーファは師月父を連れて寝室から出た。

 

残された光樹と師月。
二人の枕元には、『何か』を詰め込まれた
靴下が三つずつ置かれていた。

 

「「「メリークリスマス」」」


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