獣のタタリと心に立つ旗

獣のタタリと心に立つ旗

 

 

曇り空で、月明かりも薄いそんな夜。
人の手が届いてないこの森、
それもこの最奥の場所は犬や猫、イタチといった動物たちの在り処だった。
しかし今日は3人の少女がいた。
薄い月明かりでは、そのシルエット、
丸く大きな影しか分からない。
彼女たちの6つの瞳の先には、一つの蕾があった。

 

月を雲が覆い隠しわずかな明かりも消えた。
だが動物たちにはしっかりと景色が視えていた。
あの蕾がすくすくと育っていくその様も、
蕾が開き花をつけた。
そして花が色褪せてゆく、
植物は光を得ることで成長する筈、
だがこの花は闇を得ることで成長しているのか?

 

花が枯れて、実が生った。
3人の少女はその実をとって口に入れた。
動物の視点から視れば、栄養が満ちた健康的な体。
だが、その体が急に萎んでいく。
大きな胸も、ぽっこりしたお腹も、ふっくらしていた頬も・・・
動物たちはたまらず、少女たち目掛けて飛びかかった。

 

ここで視点を少々変えよう。
3人の少女とは、
「いやぁ、私たちだけでも元に戻れてよかったですねえ♪」
モモ・ベリア・デビルーク。
「・・・うう、ペッタンコに戻っちまった・・・」
ナナ・ベリア・デビルーク。
「やはり、こっちの方が動きやすいですね
村雨静。
彼女たち、前回のジューン・メアリースの事件の余波(正確には半ば自分の意思)
で太ってしまった3人だ。
今回、宇宙からきたある実を求めてきたのだ。

 

その実をつける花は、
月明かりも無い暗闇で急成長し、実を残す植物である。
つまり本当に闇を養分として急成長していたのだ。

 

そしてその実には急速に脂肪を燃焼させる痩身効果があるのだが、
効果は体重に左右され、御門達のような100kgを越す様な肥満体には全く効果が無い。
そこでモモが掛け合って、まず自分たち3人がその実を食べて
その体から解決のためのデータをとってみるという名目をつけた。
 お静はモモに説得されて、
 ナナはモモに無理矢理連れてこられた。

 

(御門先生や古手川さん、リト、いえリコさんには悪いけど
やっぱり太っているのは嫌だった・・・
私たちが引き受けた分は無くなったから、義務は果たしたことになるし)

 

「では帰って御門先生に調べてもらいましょう」
「お、おう か、帰ろう、なんかこの森、で、出そうだしな」
出るも何も、幽霊が側にいるのだが。
しかしそのお静がぽつりと言った。

 

「き、来ます・・・!」 
「来ますって、まさか」
「で、出るのか!?」
出てきたのは前述の動物たちだった。
ただしその姿は青白く透けている。そう幽霊である。

 

「「「!!!」」」

 

動物たちは3人に飛びかかり、貪り食うかの様にその細い体を蹂躙する。

 

いや貪り食われているのは動物たちの方だった。
正確には動物たちの霊は自分から、モモ達の体に入り込んでいった。

 

 

襲われている3人、だがその表情に苦しんでいる様子は無い。
むしろ、ナナとお静は悲しんでいるようだ。
そして、モモは何かに驚き固まっていた。

 

そのモモの体が膨れていく。
冬に備える動物のように、脂肪が蓄えられていき、
先ほどまでの小デブ体型をあっという間に通り越す。
痩せた体に合わせていた服は破れ、飛び散ってしまった。
そして今の御門達と同等の肥満体にまでなったところで動物たちの霊は消えた。

 

 

彼女には悪いが、モモの現状を確認させてもらおう。
服が破れ、丸裸になったこともあり、
その体は大型動物を連想とさせる、真ん丸とした巨体だ。
とても太く肉でパンパンな手脚は丸太、というよりかは
熊や象のそれを彷彿とさせる。
同じく太い尻尾の付け根は、これまた巨大なお尻で
まさしく巨大な桃、もしくは丸々とした家畜を連想させる。
程よいサイズの美乳は、その整った形のままに巨大な爆乳と化した。
肉が満ち充ちとしていて、まるで乳牛の様である。
その下のお腹も同じくらいに巨大化している。
こちらは丸く大きく突き出た、狸の太鼓腹だ。
顔は、元の美しさを保った上で丸顔と化してるが、
これは紛れもなく人間のそれだ。(?)

 

モモ・ベリア・デビルーク 151cm 45kg 78・54・78
→110kg 125・118・123

 

 

「・・・・・」 言葉の出ないモモ、体が変貌したこともだが、
その原因の動物たち、伝わってきたその心を知ったからだ。
(あの幽霊からは敵意が感じられなかった・・・それどころか私を救おうとしていた?
ナナとお静さんの方も一緒のはず、でもどうして私だけ太ったの・・・)

 

モモの疑問に答えるために、ナナがぽつりと呟いた。
「あの動物たち・・・この森で死んだんだ、それも飢えや病気で・・・」
お静が二の句をつぐ。
「ですから痩せた私たちを見て・・・助けようとして」

 

森の動物にとっては痩せ細ることは死に繋がること、
だが町に住む人間にはそうでない。
元の体型も命に差し支えるほど痩せてるわけでない、しかし
「・・・そういうことは動物には分かることじゃない」 
モモが結論を出した。

 

「動物の幽霊だから、私とお静は何とか話が通じたんだ」
「でも止められませんでした・・・ごめんなさい」
「いえ、構いません」
「自分だけ痩せようとしたから、罰が当たった・・・」

 

「いや、罰なんかじゃなくて・・・大事なことを教えてくれた」

 

「・・・ということがあったんです」
「そうだったのか・・・」
翌日の朝、結城家の食卓でモモがリコ(リト)に
昨夜の出来事を伝えていた。

 

「・・それでどうして」「今回のことでダイエットはしっかり食べて、
しっかり運動してやらなければならないことに気づきました」
 「いやと、だったらなんで・・・こんなご飯を!?」
食卓には、美味しそうな、カロリーの高そうな料理が並べられてた。

 

「死んでいた動植物を材料にしてみました」  「いや聞きたいのはそこじゃなくて・・」
「せめて食べてあげようと思って・・・」 「それは良いことだと思うけど・・・」
「食べても安全ってことは確認済みです」 
「うん、それも良いことだ」(ってどうやって確認したんだ・・・?)
「そして命を栄養という力にして」 「でも限度ってものが・・・」
「明日から運動しましょう!!」 「・・・」 

 

森で死んだ動物たちの思いを受け取ったモモは
心に誓いの旗を立てていた。
「・・・このご飯、美柑達にも食べさせる気か?」
「ええもちろん!」
(こりゃ止めないとマズイよなあ・・・でも料理は旨そうだし)
(今日だけは・・・)
「 い、いただきます」
「召し上がってください♪」
そう、脂肪フラグを。


トップページ 肥満化SS Gallery(個別なし) Gallery(個別あり) Database