ヒミツの博物館

ヒミツの博物館

 

 

その1 三咲町にて

 

「なぜこんなところに・・・」
錬金術師のシオン・エルナトム・アトラシア。

 

「お店を開いてるの・・・?」
吸血鬼の弓塚さつき。

 

2人の少女が暮らしている路地裏の正面を塞ぐ様に、
見知らぬ少女が露店を開いていた。

 

「すみません。すぐに場所を移しますから」
後ろの2人に気づいた露店の少女は、
路地裏に人がいたことには動じずに、移動しようとした。

 

「あっ、構いません・・・それでどんな物を売ってるんですか?」
さつきの質問に、露店の少女は、一瞬口元に笑みを浮かべ、それから答えた。
「中々終わらない水に、結構使えるライター・・・その他、様々な小物が今ならタダですよ」
「え、タダ?」「タダで手に入る・・・」
少女の言葉に、お金の無い2人は食いつきだした。
それを見た露店の少女は、自分にとっての本題を切り出した。
「はい、『ヒミツの博物館』に来てくれれば、無料で配布しますよ」
「ヒミツの・・・」 「博物館・・・」(あ、怪しすぎる・・・)

 

 

『ヒミツの博物館』
町の片隅にそんな看板を掲げた小屋があった。
さつきとシオンは、露店の少女に案内されて、そこに来た。

 

その前には、2人の見知った顔が3つと、見知らぬ顔が1つあった。
「秋葉。琥珀と翡翠も、どうしてこちらに?」
シオンが秋葉達に尋ねる。
少なくとも、無料の小物を求めて来る筈は無かった。
「 私は 」秋葉が説明しようとしたところで、琥珀が割り込んだ。
「秋葉様ったら、家に押しかけてきた、自称『出張メイド』さんのサービスを受けて、
その代金と今後の契約について説明したいからってここに来たんですよ~」
「そうなんです」
「・・・で、この2人は勝手について来たの」

 

「まぁ、あたしは、代金としてここに来てくれたらそれで十分さ」
ここで、『出張メイド』が口を開いた。
彼女は、シオンたちよりも少し年上の女性で、
その言葉とは裏腹に褒められたのが嬉しいのか、
得意げな顔で、大きな胸を張っている。

 

「それで、あなた達2人の名前は?」
シオンの問いに、名前を聞かれた2人は黙り込んだ。

 

「私の名前は・・・翌菜(よくな)、とでも呼んでください」
『露店の少女』が、少しの間を置いて名乗った。

 

「あたしは・・・えーと、そうそう夜美希(やみき)でっす」
『出張メイド』も、少しの間を置いて名乗った。

 

(自分の名前なのに、今考えた様な感じね?)
秋葉は2人の名乗りに違和感を覚えたが、
それを突き詰める前に、当の2人が彼女らを小屋の扉に連れて行く。

 

 

「私は帰ります」その前にシオンが言った。
(この2人、いよいよもって怪しすぎる・・・)

 

「じゃあ、シオンの分も私が貰ってくるね」
「はい。試供品も2人分差し上げますよ」

 

「さつき・・」
(・・・まぁ、秋葉も一緒なら危険は無いでしょう)

 

 

こうして、シオンは帰り、さつき、秋葉、琥珀、翡翠の四人が
『ヒミツの博物館』に入ることになった。

 

 

小屋に入ってみると、下への階段があり、そこを下がった先には、
博物館というよりは、色とりどりの建物がある遊園地の様な空間が広がっていた。
最も、本物の遊園地には遠く及ばない広さだが。

 

 

「ようこそ、『ヒミツの博物館』へ!」
「ここは肥満化をテーマにしたテーマパークなんです!」

 

 

「「「「・・・・・」」」」

 

踵を返し、出ようとする秋葉たちだったが、
2人の職員がその前に立ち塞がる。
「メイドのサービスを受けた以上、30分はここにいてもらわないと駄目なんすよ」
「弓塚さんも、一度入った以上30分はいてください。試供品は帰る時にあげますから」」

 

 

「でも、ここの入園料とかは・・・」
「30分以上1時間以内だったら、無料で出れますよ」
「そして、ここの施設の利用は時間を変換した『タイムポイント』で判定します。
このミュージアムカードで記録しますので」

 

翌菜が秋葉達に一枚ずつカードを配っていく。

 

「しようがないわ。30分経ったらすぐに出ましょう。弓塚さんもいいですね」
秋葉は渋々といった感じでカードを受け取った。
琥珀と翡翠も続いてカードを取った。
「あ、はい」
最後にさつきがカードを取った。
「それじゃあ、皆さん。 好きな施設を選んで下さい、私たちが案内しますから」
翌菜がここの地図を広げた。
4人が選んだ施設は・・・

 

 

秋葉達3人が選んだのは、
緑色の壁に覆われた建物、『自然の小庭園(ナチュラル・ガーデン)』だった。
案内するのは、夜美希だ。

 

「御三方には、入場料として、タイムポイントを10加算しましてと」
「あ、それから建物から建物への移動の時間は計算しませんから安心して下さい」
夜美希が、3人から預かったミュージアムカードを入口の端末に読み取らせた。
「それじゃ、無難に時間を潰したいなら、私の後に付いてくださいな」
「付いていかなかったら、どうなるんですか?」
含みのある案内をする夜美希に、琥珀も含みのある質問をした。
「命は保証するし、持ち物の破損もできる限り補償しますよ」
「安全な道の案内をお願いします!」
含みのある返答をする夜美希に、秋葉は率直な要求をした。

 

 

『自然の小庭園』の中は植物園になっていた。
植物園としては、見事なもので、
三人が全く知らない様な植物もちらほらあったが、
施設のテーマの割には、そういうことにつながりそうなものは無かった。
   秋葉が、その木を見つけるまでは。

 

「恩返しの木・・・?」
庭園の中でも、一際見事な木。 雄大な姿に美しい色合い、
それに見るからに美味しそうな大きな果実がいくつも枝になっている。
 その根元に、煙草の吸い殻が落ちていた。
「・・・・・」秋葉はそのゴミに手を伸ばした。
柵を超えなくても、ぎりぎり手は届いた。拾い上げて・・・
そこで、前を歩いていた翡翠と琥珀、そして夜美希が気づいた。
「秋葉様、そんなことは私が「お客さーん!ありがたいけど、そんなことしたら!!」
翡翠の声を、夜美希の焦りを含んだ大声がかき消した。

 

「木が恩返しします」 「「「え?」

 

夜美希の声を秋葉が聞いたのは、彼女が吸い殻を拾った後だった。

 

その直後、恩返しの木のツタが動き出し、自身の果実をもぎ取り、
吸い殻を拾った秋葉と拾おうと言った翡翠に向けて、2人の口に向けて伸ばしだした。

 

「!?」
ツタの伸びる速度は案外速く、
秋葉はともかく、翡翠に逃れる術は無かった。

 

そして、果実は口の中に放り込まれた。翡翠の前に出た琥珀の口に。

 

「琥珀!?」 「姉さん!?」
果実を飲み込んだ琥珀の体が膨れあがり、太っていく。
これだけ急激に太ると、服が破れてしまいそうなものだが、
はち切れそうになりながらも、ギリギリで留まっている。

 

 

「・・・なるほど。肥満化をテーマにしたというのは、こういう意味だったんですね」
「はい、そうなんす」
琥珀の納得を、夜美希が全く動じずに肯定した。

 

そして、人違いに気づいた木は再度、ツタを翡翠の口へ伸ばす。
「姉さん!」
翡翠は姉を引っ張って、逃げようとするが、
当の姉に止められた。

 

「えっ・・・」
不意打ちで重りを括りつけられた様なものだった。
今度こそ、翡翠に逃れる術は無かった。

 

「・・・どうして」
「さっきは何が起こるか分からなかったから、毒見してみたけど
太るだけで、特に害もないようだったし、
折角だから、翡翠ちゃんに恩返しをきっちり受けてもらいたかったの」
琥珀は本気でこう思ってる様だ。

 

「・・・これ、燃やしたら弁償ですよね」
「今回の場合は過剰防衛ってことで、タイムポイントの1時間分追加で済ませますよ。 
後、これによる変化もここを出るときには元に戻します」
「・・・・・」
結局秋葉は、恩返しを甘んじて受けたのだった。

 

 

 

20分後、秋葉達四人は植物園から出てきた。
その体は、とても丸々としていて、口にした(放り込まれた)果実の様な体型だ。
先も言った様に、服はパツンパツンながらも形を保っており、
却って、3人の丸いボディラインを強調している。

 

手足はとても太く、それでいて短くなった様に見え、今にも胴体に埋もれしまいそうだ。
対して、メートル越しのバスト・ウエスト・ヒップは、
その存在感と重量感をはっきりと主張している。
胸はそれこそ、メロンの果実の様な巨大さである
(元のサイズの差か、秋葉のそれが一番小さく見えた)
お尻も胸に次ぐ巨大さであり、安定感すら醸し出している。
そして一番大きなお腹周りは、身長と並びかねない程の大きさであり、
今の3人が手を伸ばしても、全く届かないだろう。
顔は真ん丸く膨れながらも、元の顔立ちは保っているが、
首は肉に埋もれ、胴体と一体化を果たした。

 

 

「お疲れ様です。太った分を戻すのは需要が無いので、パパッと済ませますが・・・」
「その次はどこに行きます?」

 

(次は・・・・)

 

 

 

秋葉達が次にどうするかはさておき、
ここで視点をさつきの方に移そう。

 

黄色を基調とした明るい色合いの建物、自業の食事処(グラトニー・レストラン)
翌菜に案内され、さつきは一人でここに来た。

 

「私は露店の方に行きますので、後の説明はここのコックに聞いてくださいね」
こう言って、翌菜は戻っていった。

 

代わりに、カウンターに立つ妙齢の女性がさつきに対応する。

 

「私はここのチーフコックの・・・」
「えーと、オリジナルが兄で朱だから・・・」
「妹坂碧子です」
(また自分の名前を言うのに間が空いた・・今小声でオリジナルとか言ってたし・・)
流石にさつきも疑問を抱きだしたが、
それを知ってか知らずか、妹坂は説明を始めた。

 

「こちらのシステムは、最初に任意のタイムポイントを払って、
それと同じだけの時間食べ放題になるバイキング形式です」
「あちらのテーブルに置いてある分から取っても、私に注文しても、お好きな方を選んでください」

 

「それじゃあ、30・・いや40分でお願いします」
「では、ミュージアムカードを出してください。」
「それから注文した料理を残すと・・・・」
「・・・罰金ですか?」  「呪うわよ」

 

 

「さて、初回のお客様へ特別サービス♪」
「私オススメの大漁海鮮丼です!」

 

 

妹坂は、海の幸をふんだんに使用した大盛りの海鮮丼をさつきのテーブルに置く。
正直、初回のお客様に出す様なメニューでは無いと思うのだが。
「おっきぃ・・・」
(これ、残したら呪われるんだよね・・・)
さつきはその巨大さに圧倒されながらも、おそるおそる箸を伸ばし、
一口食べてみた。
(美味しい!)
その一口でその美味しさに心奪われたさつきは、
猛然と食べ始めて、僅か10数分で完食した。

 

「ごちそうさまでし・・・!?」
食後の余韻に浸ろうとしたさつきだが、
自分の変化に気づき、愕然とする。
いつの間にか、自分の体が太っていた。
ここから見える胸や腕、お腹だけでもかなり太くなっていて、
この具合なら、顔もかなり膨れてるだろう。
まるで、今食べた物がそのまま脂肪になったかの様に・・・

 

 

「メニューを見てちょうだい」
「えっ、これって・・・」
さつきが開いたメニューに乗っている料理には、
「カロリー」に加え、「増加体重」が記載されていた。
今食べた大漁海鮮丼は、「+13kg」となっていた。

 

 

「そう。ここの料理は食べた分とは別に脂肪を付けるの。」
「でも、安心して頂戴。食べた分を消化したら、その脂肪は消えるから」
「そ、そうなんですか?」
「そう。だから、ゆっくり召し上がっていって下さいね♪」
姉坂は満面の笑みを浮かべて、山盛りの桃まんをさつきのテーブルに置いた。
「注文してないんですけど・・・」
「サービスです♪」

 

 

40分後、さつきはのっそりと『自業の食事処』から出てきた。
あれから、姉坂がサービスとして勝手に持ってくる料理はどれも美味しくて、
それに加えて、自分で注文した分を時間いっぱい食べ続けた。
その結果、
ベンチに座り込んでいるが、その重さで今に折れてしまいそうに見える。

 

お腹は食べた分で、パンパンに膨らんでいるだろうが、
それ以前に脂肪で、臨月の妊婦の様に膨れ上がっていた。
服を押し上げ、丸見えになっているそのお腹は、とても重たげで、それでいて柔らかそうだ。
その上に乗っかっている胸は、これまた柔らかそうで、
お腹程では無いが大きくて、重たげだ。
脚もとても太くなって、『自然の小庭園』に生えている木の幹に並ぶ程の太さである。
自分の変化が信じきれないのか、さつきは腕でお腹周りをさすり、揉んでいるが、
腹肉はそれに応え、柔らかく変形していて、彼女に現実を教えている。
おまけに、腕の脂肪も動かす度に揺れている。
顔にはそれ程肉は付いておらず、丸くふっくらとする程度で済み、
ギリギリだが、首も一体化してない。

 

 

そして、しばらくして秋葉達4人は
『ヒミツの博物館』から帰ろうとしていた。
全員の体型は処置と時間の経過で元に戻っている。

 

「それじゃあ、みなさんお帰りですね」
出口のカウンターに座る翌菜が、
4人のミュージアムカードを受け取り、端末の中に入れる。
「えーと、秋葉さんたちが90分なので、超過タイムポイントは30」
「弓塚さんが110分なので、超過タイムポイントは50ですね」

 

秋葉達は『自然の植物園』を出た後、一種の怖いもの見たさで他の施設も一通り見回ってみた。
夜美希が説明した通り、建物間の移動は計算しないのだが、一度中に入っていったので、
入場料が発生したのだ。なので、30(自然の植物園)+60(他の施設)=90となった。

 

さつきは『自業の食事処』を出た後、食べ過ぎでしばらく動けずにいた。
(『自業の食事処』の料理は太る分とは別に、食べた分だけは外の食べ物と同じように胃に溜まる)
さらに、翌菜の店で自分とシオンに持って帰る分の小物を選ぶのに迷った。
なので、40(自業の食事処)+50(休憩)+20(売店)=110となった。

 

 

「で、1ポイントにつき幾ら払えばいいんですか?」と、秋葉。
「そんな、『ボッタくるなら出るとこ出ますよ』みたいな顔で睨まないで下さいよ~」
「1ポイントにつき20円。皆さんからはこれに相応する分を取り立てます」

 

「それでは、皆さん。またのご来店をお待ちしています」
翌菜がミュージアムカードを秋葉達に投げつける。
ミュージアムカードは光となって、咄嗟のことに反応できない秋葉達を包み込んだ。
そして光が消えた時、秋葉達の姿も消えていた。

 

 

「まぁ、もう来てくれないでしょうけどね・・・」

 

 

 

こうして、秋葉達四人は『ヒミツの博物館』から、帰った。

 

その代金は・・・

 

「・・・その体というわけですか・・・」(行かなくて良かった・・・)
そう言ったのは、『ヒミツの博物館』について調べるために遠野亭に行って、
帰ってきた四人を迎えることとなったシオンだ。

 

「ええ、そうよ・・・!」
秋葉は、『落とし前はきっちり付ける』と言わんばかりの怒りをその目に宿している。
その鋭い眼光とは裏腹に、体の方はどこを取っても柔らかいであろう、
ふくよかな体になっていた。
流石に『自然の小庭園』での肥満化程ではないが、
それでも、元の体型と見比べるとかなり太って見える。

 

まず、スカートから伸びる太すぎる足は、足どうしでピッタリと密着している。
元の端正さを損なわない程に丸く膨れた顔に、
桃の様に大きくなって、スカートをはち切れんばかりに押し上げている尻。
平らだった胸が立派な巨乳となったことは嬉しかったが、
締まっていたウエストがその胸と同じくらい突き出てしまっている。

 

遠野秋葉 160cm 45kg 73・57・79
→ 154kg 121・142・119
→60kg 89・84・85

 

仕事に勤しむ琥珀と翡翠も秋葉と同様に太っていた。
2人が動く度に厚手の割烹着とメイド服の上からでも、大きな胸とお尻、
それにぽっこりとしたお腹が弾み、揺れているのが分かる。

 

翡翠/琥珀 156cm 43kg 76・58・82
→ 150kg 132・143・125
→ 58kg 90・85・89

 

そして、ソファで横になっているさつき。
彼女は食事での胃もたれに苦しんでいるのだが、
その体は秋葉達も一回り太っていて、
メートル越しのウエストが服を押し上げて、
立派なお腹が顔を出している。
そしてうっすらとだが、二重あごが出来てしまっている。

 

弓塚さつき 161cm 45kg 79・59・82
→104kg 112・121・107
→60kg 94・104・98

 

 

後日、調査と復讐のために秋葉とシオン達は
『ヒミツの博物館』に向かったが、入口があった筈の場所はもぬけの殻となっていた。

 

 

シオンは一人考える。
(彼女たちは、一体何者だったのだろうか。人間は勿論、吸血鬼とは全く別の存在であることは
間違いないだろうが・・・)
(しかし、彼女たちは既にここでは無い何処かへ行って、私たちと会うことはもう無いだろう)
(今、私が考えるべきなのは・・・)
シオンが意識を現実に戻した時、目の前の食卓には豪勢すぎるほどの食事が広がっていた。
その向こうでは、まだ太ったままの秋葉が笑顔でこちらを見ている。

 

(いかに自分が太らずにすむか、ですよね・・・)


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