メイルのファト・ファイト

メイルのファト・ファイト

 

 

ネットワーク技術が発展した近未来の世界。
宇宙から来た大いなる存在「デューオ」が人類抹殺を開始し、
世界に恐怖と混乱を巻き起こす犯罪組織「ネオWWW」が現れたが、
これらの驚異と人々は直接関わることなく
平穏に暮らしていた。

 

その一つとして、あるレストランを紹介しよう。
『バーニング・グルメール』

 

濃厚な味と特大のボリューム、
そしてリーズナブルな値段を誇るこのレストランは、
秋原町中の女性から莫大な支持を得ていた。

 

・・・どういう訳か、「女性」しか行けなかった。

 

「ちぇ― どうして女の人しか行けないんだよ」
「さぁ・・・」
光熱斗とそのネットナビ・ロックマン。
世界を守る為にネットセイバーとしてアステロイドと戦っている主人公コンビ、
なのだがこのSSでは脇役である。

 

そんな脇役コンビを尻目に「バーニング・グルメール」の料理を満喫している少女が一人。
「オイシ〜 やっぱりいつ来てもここの料理は最高だわ!」
熱斗の友人の桜井メイルだ。
彼女もこの店の料理の虜となり毎日の様に来ていた。
その結果がぽっこりと膨れたお腹周り、
そしてパンパンなそこに確かにある柔らかい「何か」なのだが、
気づいてない。

 

 

そんなメイルを始めとする客達を、
嘲笑、もとい微笑を浮かべながら見ている
バーナーの炎の様な青い長髪をした妙齢の美女。
この店のオーナーシェフにしてSSオリキャラである
焼ノ内遼香(しょうのうち りょうか)。
彼女は今TVレポーターの緑川ケロのインタビューを受けている。

 

「この美味しさの秘訣は一体何なんでしょうか?」
「残念ながら、一番の秘訣は教えられませんよ」

 

 

 

深夜のバーニング・グルメール。
客は勿論、焼ノ内以外の店員は入れない隠し部屋に
焼田と一体のナビがいた。
「まさか、美味しさの秘訣はアステロイドだなんて・・・」
「口が裂けても言えませんわ」
「言ってるじゃねーか」
アステロイドとは、「デューオ」が人類に与えた試練、
悪しき者に与えられる強力なナビだ。

 

そして、焼ノ内の独り言に返事したナビこそ、
そのアステロイド・バーナーマンだ。
焼ノ内はバーナーマンの炎を操る能力を活かして
自分の考案した病みつきになる程美味な料理を実現させているのだ。
「バーナーマン、この調子で頼みますわ」
「で、あんたの目的は何なんだ? まさか今やってる事が本当の目的な訳ないだろ」
「ふふふ、そろそろ芽が出てくるころですわ」

 

 

このやり取りから数週間が経過した。
この頃には秋原町全体が「重」苦しい雰囲気に覆われていた。

 

 

「メイルちゃん・・・その・・・なんて言うか・・・」
「・・・熱斗、気をつかわなくていいよ」
「だって自分でも分かってるし・・・」  
メイルが一歩歩くたびにズシンズシンと重い足音が響き、
全身の脂肪も揺れる。
今の彼女は、シルエットからして真ん丸い。
脚は丸太の様な太さでソックスをはち切れんばかりに押し上げ、
腕も同様に服の袖をパンパンにしている。
お尻も丸々とした巨大な桃尻と化した。
お腹は一番の巨大化を遂げた立派な太鼓腹であり
その巨大さは、寝転がるとお腹がつかえてしまって
一人で起きれなくなるほどだ。
膨らみかけだった胸も立派な巨乳となって、
重々しくお腹に乗っかっている。
顔立ちはあまり変わってないが、
頬はふっくらとしているし、

顎のラインは真ん丸で首がほぼ見えなくなってる。

 

本日の学校での体重測定では実に94、7kgを記録してる。
しかしこれでもクラスで一番の体重という訳ではないのだ・・・

 

桜井メイル 体重 94、7kg(学年第4位)
バスト 115cm(学年第1位)
ウエスト 134cm(学年第3位)
ヒップ  119cm(学年第4位)

 

 

そう、メイルだけなく、秋原町全体で女性の肥満化が問題となっていた。
その発端は勿論「バーニング・グルメール」だ。
あの店の味とボリュームを知った女たちは、通い続け
結果、太ってしまいその上に食欲も増大し、
体が重くなったせいで運動は出来なくなり、
更に太っていくという悪循環に陥ってしまう。

 

とりわけ成長期であるメイル達の年代の被害が一番大きかった。
学校側でも給食や体育の授業、生活指導で肥満化を食い止めようとはしているが・・・

 

 

 

「じゃあ、また明日・・・」  「・・・バイバイ」
熱斗と別れ、あの店に向かうメイル、
その背中は哀愁と肉で大きく見えた・・・
辺りを見れば、同じように太った女たちが
同じ方向へ重い足取りで向かっていた。
足音だけなく、腹の音まで辺りで響いてる。

 

彼女たちの今の食欲を満たせるのは
ここしかない、更に太ると分かっていてもここに行くしかない。
そんな悲しき太めの乙女たちが今日も
「バーニング・グルメール」を訪れる・・・

 

その様を隠し部屋でバーナーマンと焼ノ内が見ていた。
「おいおい、あれがあんたの目的かよ」 
「まさか、芽とは『保険』のことよ」
「そう、火災保険」
悪巧みを企てる焼ノ内だが、
そんな彼女を狙う者もいた。

 

『美味しさはそのままにカロリーを抑えた料理を作らせる専属料理人にするから、捕まえてこい』
「って、会長も無茶な命令してくれるなぁ」
裏口でそう愚痴っているガンマン風の格好をした優男。
彼はネオWWWの砂山ノボル。
アステロイド・デザートマンをナビとしている。

 

 

「これまでの調べだと、焼ノ内はこの時間帯に必ず裏口から出てくる
そこを狙って・・・」
砂山がそう考えている所に、のっそりと出てきたのは、メイルだ。
砂山は知らなかったことだが、焼ノ内は今日から
裏口からも客が出入りできる様にしたのだ。
(これまではバーナーマンが居る隠し部屋に近づかない様に、客を裏口に近づかせなかったが、
もうそうする必要も無くなるためだ)

 

「あ・・・ネオWWWの!?」
「・・・どけよ」 「えっ?」 「・・・どいてください」
後ろは行き止まりなので、砂山が逃げるには
メイルの横を抜けて前に進むか、裏口から入るかのどちらかだ。
しかし、どちらも出来ない。
・・・そう出来なくする程に今のメイルは横に大きいのだ。

 

「ふ〜ん、私のせいで出れないんだ」
その事を察したメイルは、ジト目で砂山を見つめている。
もし普通の人相手なら、恥ずかしさのあまりすぐにどいていたが
犯罪者の砂山がそう思っていると知ると
怒りの方が込み上がってくる。

 

「えい」 「なっ!」
メイルは砂山に体当たりをかました。
不意をつかれた砂山は倒れ、メイルの巨体の下敷きとなる。

 

「お・・・重いぃ!! ど、どけ!・・・いえどいて下さい、お願いします」

 

当然、メイルはネット警察が来るまでどく気などない。
砂山もその事に気付き、(この重さから)逃れるために最後の手段をとった。
「デ、ディメンショナルチップ スロットイン!」
砂山のPETにスロットインされたディメンショナルチップの力で
砂で構築された巨大な顔面と両手が、
デザートマンが邪魔な壁を崩しながら実体化した。

 

「!!」
「デザートマン! このデブをどけろ!・・・いえどけて下さい」
ダメージのあまり、ナビにまで下手に出てしまう砂山だった。
そんなことを気にしないデザートマンは片手でメイルを軽く押した。
「キャ――!!」 メイルは後ろに転がっていき、壁を頭に打ち付けてしまう。
「こうなりゃ、力尽くで焼ノ内を捕まえてとっと帰ろう・・・」
そう言って、よろけながら立ち上がった砂山だが
その前に熱斗が立ちふさがった。
「砂山! デザートマン!」
「メイルちゃんを直接襲うなんて・・・」
「「絶対に許さない!!」」

 

「いや、襲われたのはむしろオレの方だから!!」
突っ込む砂山だが、熱斗とロックマンにその言葉は届かなかった。

 

「シンクロチップ スロットイン!」
「「クロスフュージョン!!」」
熱斗とロックマンは、一体化―クロスフュージョン―する。

 

「・・・こうなりゃヤケだ!行けデザートマン!!」
「ライオンヘッド!」 「ロックバスター!」
デザートマンとCFロックマンが戦いを始めた。
同時に、メイルも意識を戻した。
「 ロールを助けなきゃ・・・」
「バーニング・グルメール」では、客のPETを預かって、
ナビのメンテナンスとエネルギー補給を行うサービスをしている。
その場所は店長室の真横の部屋である。

 

店の前に出たCFロックマンとデザートマンの戦いを、
焼ノ内は2階の店長室から見ていた。
バーナーマンも自分のPETに移している。
「チャンスですわ 今からあなたを実体化させるからこの店を燃やしなさい」
「おい、どういうつもりだ」
「ネオWWWのアステロイドが実体化している間近での
もう一体のアステロイドによる放火」
「ここから、私が疑われる可能性はほぼ無し」
「莫大な火災保険が手に入りますわ、フフフ、オホホホホ!」
「・・・な、なんてことを」
(・・・結構セコイ)
「ア・・アウ・・・」
「あっ」
PETを取ったメイルは避難を促すために
店長室の扉を開けて、焼ノ内の計画を聞いてしまったのだ。
彼女のナビのロールとペットの電脳犬ラッシュも聞いてしまってる。

 

 

「おい、こいつらに聞かれたようだぞ」
「しかたありませんわ、店と一緒にこの子ブタちゃんも焼いてしまいましょう」

 

「ディメンショナルチップ スロットイン!」
焼ノ内のPETにスロットインされたディメ(ry)
バーナーマンが実体化した。

 

「 アステロイド!?」
(絶対逃げ切れないし、他の人たちも巻き込まれちゃう だったら・・・!)
「ラッシュ! お願い!!」
「ア・・・・・アウ!」
メイルの意を察したラッシュが一枚のチップに変化し
メイルはそのチップを手に取る。
「メイルちゃん、その体で戦うのはムリよ!」
「でも今は熱斗も戦ってるし、私達で何とかしないと!」
「・・・分かったわ」

 

「ラッシュシンクロチップ スロットイン!」
「「クロスフュージョン!!」」
メイルの太すぎて密着している両足にロールのものを象った装甲が着く。
両手にも装甲が付くが、その大きさは隠せてない。
そして大きさだけならメロン大の巨乳な胸にロールのナビマークが浮かび、
そこから胴体をワンピース状の装甲が覆い、
その丸々としたボディラインを強調する。
最後に頭にヘルメットが、これは何の問題もなく装着される。

 

メイルとロールもクロスフュージョンした。
・・・・・メイルの体の表面積が広がりすぎたせいで
装甲がやや薄くなった様に見えるが、成功している。

 

 

「クロスフュージョンした所でそんな体ではロクに戦えませんわ!」
「うっ・・・」
「バーナーマン、まず外に連れ出しなさい!」
「おうよ バーニングドライブ!」
炎を噴出させ、バーナーマンがメイルに突っ込んでくる。

 

「きゃっ!」 
とっさに身を翻すメイル、
突撃したバーナーマンは彼女の大きな背中を掠め、
そのまま壁を突き破り外へ飛び出していった。
「かわしやがった!?」 「かわせた・・・?」
クロスフュージョンによって
今の体でも十分に動ける程パワーアップしてるのだ。
「 そうだ!外に出ないと」
戦うにしても逃げるにしても、外に出た方がいい。
そう考え、メイルはバーナーマンが開けた穴から、飛び降りた。

 

飛び降りた所には丁度デザートマンがいた。

 

グシャァ!!
「グゥオォ!」 「デザートマン!」
真上からメイルの下敷きにされたデザートマンは
苦悶の声をあげる。その重さを身をもって知る砂山も悲鳴をあげる。
「えっ・・・」
しかし、精神的に一番ダメージを受けたのは当のメイルだった。
「メイルちゃん!離れて!」 「・・・熱斗!」
しかし、今までデザートマンと戦っていた熱斗の声で
正気を戻し、すぐにデザートマンから離れる。
・・・・・クロスフュージョンで十分に動けるパワーができても
今のメイルが重心の偏った丸い体型であることに変わりない。
その体でデザートマンから飛び退いた結果、
こけた。
丸い体はそのまま転がっていく。
「「ひぃやぁぁぁ・・・」」
デザートマンの横に居た砂山の方に

「!」

 

「ハイキャノン!」それと同時に、メイルが離れたことを確認した熱斗が
デザートマンに追撃を撃つ。

 

 

「グウオォ!!」
「うぎゃぁあ!!」
ハイキャノンが直撃したデザートマンは実体化を維持できず、
−ログアウト−砂山のPETの中に送還された。
砂山は転がるメイルに跳ね飛ばされ、ディメンショナルエリアの端に激突し
そのまま気絶した。

 

転がり続けるメイルをCFロックマンは受け止めた。

 

「しかし、こんな体で助けに来てくれるなんて
・・・サンキュー、メイルちゃん」
「クロスフュージョンまでしてくれて、本当に助かったよ」
「 ち、違うの!ロックマン!それだけじゃあ・・・」

 

「おい、俺を放っておいて何やってんだよ!」
そう、まだバーナーマンがいた。

 

「バーナーマン! アステロイドがもう一体いたのか!」
「誰だか知らないが、ピンクの子ブタごと丸焼きにしてやる! ストライクバーナー!」
バーナーマンが両手のバーナーから火炎を放射する。
熱斗がバスターのチャージショットで迎撃しようとするが、
「バブルショット!」 「メイルちゃん!?」
メイルが撃った水属性の射撃は、
バーナーマンの攻撃と相殺し、水蒸気となって辺りを覆った。
「ちっ、見えねえ!」

 

「メイルちゃん、後はオレに任せてくれ!」
「 でもあのアステロイドのせいで、こんなに太ってしまって・・・
私だけなく、大勢の女の人たちが・・・だから」
「・・・メイルちゃんはその人たちの悲しみの分も戦いたいのよ だからお願い!」
分かったよ
「よし!オレがサポートするから、止めはメイルちゃんに任せる!」

 

実を言うとバーナーマンにメイル達が太ってしまったことへの責任は殆ど無いのだが、
そこに気づくものは居なかった。

 

 

水蒸気が消え、バーナーマンの視界が戻った時、
眼下にいたのはCFロックマンだけだった。

 

「ピンクの子ブタは逃げたか? もっともディメンショナルエリアがある上にあの体じゃ
逃げられるわけないだろうが・・・お前から焼いてやる!」
「プログラムアドバンス! スーパーワイド!!」
バーナーマンの後ろに回ったCFロールが水属性のワイドショットを三連発する。
「なめるな!」だが、バーナーマンは全てかわしきる。
ワイドショットはディメンナルエリアの端に衝突し、四散する。
その欠片は水滴となって雨の様にディメンショナルエリア全体に降り注ぎ、
バーナーマンの体も濡らす。
「バトルチップ ブリザード!」 今度はCFロックマンがブリザードを放つ。
ブリザードはワイドショットを交わした体勢を崩していたバーナーマンを捉えた。
「ふん、このオレが凍るわけ・・・」
そう、炎を操るバーナーマンの体はもともと高温であり、
ブリザードが直撃したとしても凍りはしない。しかし、
その体についた水滴は凍っていき、バーナーマンを覆い動きを封じた。
「しまった!」
CFロックマンは更にブリザードを打ち続ける。

空気中の水分が凍りつき、氷を作る。
そして氷のすべり台が完成した。
すべり台のゴールは動けなくなったバーナーマンである。

 

「まさか、お前ら!?」
「そのまさかよ!」 すべり台のスタートにCFロールが立つ。
「あんた達に太らされたメイルちゃんの怒りを思い知りなさい!!」
「「行っけぇぇ!!」」熱斗とロックマンの後押しを受けて、
CFロールはすべり台をすべり、いや転がり出す。
氷のすべり台は回転を加速させ、
その様はピンクの砲丸である。

 

「でりゃぁ!!」
CFロール、いやメイルの丸い巨体はその速度と質量をもって、
バーナーマンの胸部をぶち抜き、風穴を開けた。
「ぬわぁぁぁ!!!」
致命傷を受けたバーナーマンは大爆発――完全にデリートされた。

 

「勝った!」 「やったぜ、メイルちゃん!」
しかし、CFロールは止まらぬ勢いで転がり続けてる。
「止めてぇ〜〜」 「あ!」 「・・・い、今助けるから!」

 

その後、逃げようとしていた焼ノ内は、駆けつけたネット警察に取り押さえられ
メイルの証言により保険金詐欺と放火の罪で逮捕された。
砂山は他のネオWWW団員の助けにより逃げおおせた。
しかし、あのダメージでは表に出るのは当分先の話になるだろう。
そして、メイル達被害者、もとい太ってしまった人たちは
当然のことながら、自力で痩せてもらうしかなかった・・・

 

それから数日、町で暴れるアステロイドの前に熱斗とメイルが立ち塞がる。

 

「って何でメイルちゃんも来てるんだよ!」
「 これからは私もクロスフュージョンして戦うわ、運動になるし
(というか、クロスフュージョンしないと運動できないの・・・)
・・・熱斗達の助けにもなるしね」

 

ロックマンとロール、
それにラッシュもクロスフュージョンに備えてPETで待機してる。
「・・・よく引き受けたね、ラッシュ」
「今のメイルちゃんとクロスフュージョンするのが気持ち良いんですって」
「「・・・・・・」」
同じくクロスフュージョンしたロールと受け止めたロックマンには、
ラッシュの気持ちが分からなくもなかった。

 

「行くぞ、ロックマン!」
「うん!」
「行きましょう、ロール、ラッシュ!」
「ええ!」 「アウ!」
「「「シンクロチップ スロットイン!」」
「「「「クロスフュージョン!」」」」

 

デューオの紋章を持つ二人の地球を救うための戦いは続き、
今また少女の痩せるための戦いが始まった。

 

   少女が後者の戦いに勝てたかどうかは定かではない。


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