二人のデブと二つの奮闘

二人のデブと二つの奮闘

 

 

デンサンシティのネットナビ・メディカルセンター。
今、ここには死んだ様に眠りこけるネットナビが多数収容されていた。
彼らの共通点は、あの「バーニング・グルメール」でエネルギー充電サービスを受けたこと。
・・・あえてもう一つあげれば、現実で彼らの安否を心配しているオペレーターは、
全員が丸々と太った女性である。

 

 

科学省にて、熱斗は名人からこの事態についての説明を受けていた。
「バーニング・グルメールでやっていたネットナビへのエネルギー充電サービス、あれも焼ノ内の仕組んだ罠だったんだ。一部のナビに数週間の潜伏期間の後に発動しナビをデリートしてしまうウイルスが感染するよう仕込み、それを業者のミスに偽装して保険金をだまし取る計画だったんだ」
「あいつ・・・そんなことまで!」
「だが焼ノ内は誤って店のプログラムを破壊しない様に、ワクチンプログラムを用意していた。君がメイルちゃんと倒したバーナーマンの残存データからそのありかを割り出した、場所はそう遠くないネット倉庫、詳しいアドレスをPETに送ろう」
名人のPETから熱斗のPETの中のロックマンに倉庫のアドレスが送られた。
「・・・座標確認。 急げば30分ぐらいで行ける場所だよ」
「よし!すぐに行って取ってくるぞ、ロックマン」
「ただ、その残存データにはコピーされた形跡があった、恐らく砂山を助けたネオWWWの団員によるものだ。連中もワクチンプログラムを狙ってくる可能性が高い、気をつけてくれ」
「分かった! 行ってくるよ、名人さん!」
「行ってらっしゃい!あと、「さん」はいらない!」

 

 

約30分後、目的のプログラムがあるネット倉庫の電脳にロックマンは居た。
しかし・・・

 

「くっ!」ロックマンがロックバスターを連射するも、敵である獣型ナビ、ネオWWWのアステロイド・ビーストマンはその連射を紙一重で掻い潜り、ロックマンに迫る。
「ハイキャノン!」
ロックマンがハイキャノンを撃つ。
「ガオォォ! ビーストレイ!」
しかしビーストマンは爪でハイキャノンの砲弾を細切れにしてしまう。

 

「ロングソード、スロットイン!」
ロックマンはロングソードを装備し、ビーストマンの爪と切り結ぶ。

 

現実世界にはロックマンとビーストマンの戦いを自分のPETから冷ややかな目で見ている
ピンク色の服の男(?)がいた。ネオWWW団員ナルシー・ヒデ(本名・山下日出ノ助)だ。
「さっ、戦うのは野蛮なヤツに任せてアタシたちのお仕事をしましょ、ビデオマ〜ン」
「おうよ!」ナルシーのナビ、アステロイド・ビデオマンはネット倉庫内に居た。
「カプセルボム!」「ぐわー!」そのビデオマンを背後からの攻撃が吹き飛ばした。

 

看護婦を模した外見の(スタイルの良い)少女型ネットナビ・メディだ。
今回、オペレーターのジャスミンと共にロックマンの助太刀に来たのだ。

 

「バカ!そのプログラムは油の特性があるんだぞ!下手に攻撃するな!」
メディはビデオマンの忠告(?)に耳を傾けたりせず、
骨付き肉(型ワクチンプログラム)へ手を伸ばす。
「そうはさせるか!」 ビデオマンの両腕のテープから出た光が、
(骨付き肉型)ワクチンを覆い、メディの体よりも巨大な骨付き肉となった。

 

「えっ!?これは・・・」
「さすがね、ビデオマン。アドリブにしては上出来よ」

 

ビデオマンはその名の通りビデオに関する能力を持っており、
先ほどテープにコピーした骨付き肉型ワクチンプログラムのデータを拡大再生し、
巨大な骨付き肉型プログラムを実体化させ、
骨付き肉型ワクチンをその中に埋もれてしまったのだ。

 

「要するにワクチンプログラムはあの中にあるのよね・・・こうなったら!」
メディが巨大骨付き肉(コピー)を砕くためにカプセルボムを構えたが、
ビデオマンが笑いながら止める。
「おっと、そのコピーも油の特性があるからね。攻撃するとそれこそ火に油を注いだみたいに大爆発するよ」
「もちろん、中のワクチンは木っ端微塵♪」と、ナルシー

 

「バカが!そのデカイコピーを持っていけば済むじゃねーか!」
そう指摘したのは、ロックマン、と戦いながら倉庫に入ってきたビーストマンだ。
「 あ」指摘を受けたビデオマンは硬直する。
「いやそれは・・・」
「それは無理だよ・・・こんな大きなサイズのコピーだと中身の方はちゃんと再現できてないはずだから、ワクチンとしては使えない・・・」 
しかし、メディとロックマンはその指摘に反論する。

 

「 あ、あぁ!それも計算のウチだったのさ!」
「ならいいんだよ」
硬直の解けたビデオマンは慌てて取り繕うが、
ビーストマンはこれで納得した。

 

「じゃぁアバヨ!」
「それじゃ、さようなら!」 
「アタシ達の芸術的な作戦を刮目して見てってね♪」
ビデオマンとビーストマンがプラグアウトし、ナルシーもその場を離れる。

 

 

 

「ちくしょう、もっと小さなコピーだったらビーストマンが言ってた様にそれを持っていけたのに・・・」 
この熱斗の言葉でジャスミンが閃いた。
「・・・それネ!」 「え?」

 

数分後、熱斗達四人はジャスミンのアイディアを実行しようとしていた。
「おし、アクアソード、スロットイン!」
「アクアソードなら油のデータでも切れるはず・・・・」
ロックマンがアクアソードを装備し、巨大骨付き肉(型プログラム)にゆっくりと刃を入れて、巨大骨付き肉から小さな欠片を切り取っていく。
その欠片をメディが両腕で抱え込み、解析をはじめた。

 

「うっ・・・やっぱり」
「どうして!?」
ロックマンは驚くがメディはある程度覚悟していたようだ。

 

どうして、こうなったのか。
それはロックマンとメディが予測していた様に
ビデオマンが無理矢理サイズを巨大化させてコピーしたために、プログラムが劣化して、解析するだけでもナビに無駄なデータが大量に流れ込むようになったのだ。
そのためにナビの方で容量の圧迫に対応するために体の面積を広げざるを得なくなり、
外見は太った様に見える

 

 

「メディ・・・」
「ちくしょう!ネオWWWめ! メイルちゃん達だけでなくメディまで!!」
ジャスミンは悲しみ、熱斗は怒る。
・・・・実を言うとネオWWWはメイル達の肥満化には関わってないし、メディも覚悟の上である。

 

「  ロックマン、次の欠片を早く!」
「でもメディが・・・・」
「私が、いや私達がなんとかしないとこんな風に太ってしまった女の人達がナビまで失うことになる、だから今は私たちの出来る精一杯をやらないといけないの!」
「・・・分かった、ボクも自分の出来ることをやる!」
「よし!オレ達も頑張るぞ!」「はいネ!」

 

熱斗がソード系チップを送り、ロックマンが骨付き肉型プログラムを切り取っていく。
ジャスミンはメディがバグを起こさないように調整する。
そしてメディがその身体を肥やしながらプログラムを解析していく。
その結果―――

 

 

その頃、ネットナビ・メデイカルセンターには、
太目のオペレーターの中でもトップクラスに大きな肥満体の少女――
メイルも来ていた。ロールのウイルスチェックのためだ。
PETに戻ったロールが告げたその結果は・・・・
「メイルちゃん、私はウイルスに感染してなかったよ」
「よかった・・・」
安堵するメイルだが、その丸い笑顔はすぐに曇る。
(ロールは無事だったけど、沢山のナビがウイルスに犯されてる、
でも私に出来ることは・・・)
「あっ、熱斗さんからメールが来てるわ」
「・・・『ネオWWWが来るかもしれないから、手伝ってほしい』?」

 

 

 

その数十分後にメディカルセンターに一台のトラックが来た。
「みなさんワクチンプログラムがとどきました・・・」
「こちらにプラグインしてワクチンをインストールしてください・・・」
運転席から救急隊員達が出てきたが、
目のハイライトが消えてたり、声の抑揚が無かったりと、少し様子がおかしい。

 

しかし、ナビが追い詰められた太目の乙女達にそこを気にする余裕は無かった。
救急隊員の指示通りにトラックの荷台の電脳にナビをプラグインしていく。

 

荷台の電脳には、巨大な修復システムが用意されていた。
修復システムは、地面に寝かされたナビ達とコードで繋がっていて、
その中央にはあの骨付き肉型ワクチンプログラムが設置されている。
――ビデオマンが造ったコピーだが。

 

トラックの荷台の中には三人の男が、窮屈そうに押し合いながら、座っていた。
「子ブタちゃんたちがワラワラと群がってきて、正直暑苦しいワネェ」
真ん中に座ろうとして左の男と押し合っているのは、ナルシーだ。
「まあ、ナビの命がかかってますからね。彼女らのためにも助けてあげましょうね」
右に座っているスキンヘッドの男、ネオWWW団員西古レイ。
催眠能力を持つアステロイド・フラッシュマンをナビにしている。
「恐怖と混乱をもたらすダークナビとしてな!」
そして左に座りナルシーと押し合ってる強面の男、
ビーストマンのオペレーター・犬飼だ。

 

ダークオーラを混ぜ合わせ、ダークチップと同様の中毒性を持つ様になったワクチンプログラムのコピーを使い、ナビ達の命を救い、その後暴走させることが今回のネオWWWの作戦だった。

 

「そんなことは!」 「絶対に!」 「させないヨ!」 「 ゲプ・・ええ!」
熱斗とロックマン、ジャスミンとメディはネオWWWのトラック近くのビルの屋上に
駆けつけていた。そして、トラック目掛けて躊躇いなく飛び降りた。
ビルの真ん中より少し上を過ぎた辺りでディメンショナルエリアが展開される。

 

その様を西古がPETから見ていた。
「あいつら、クロスフュージョンして突っ込む気か!?」
「迎え撃て、ビーストマン! ディマンショナルチップ、スロットイン!」 
犬飼がディメンショナルチップを使い、荷台の上にビーストマンを実体化させる。

 

「ガオォォ!」ビーストマンはシンクロチップを取り出した熱斗目掛けて飛び上がった。
しかし、それを遮る様に、真下の階から窓を突き破って、ピンクの大玉が飛び出てきた。
「ガァ!?」「やらせない!!」
そうクロスフュージョンしたメイル――CFロールである。

 

不意をつかれたビーストマンはメイルの巨体でのぶちかましを受け、
そのまま地面に落下していった。
巨大なビーストマンと肥満体なメイルが落下した衝撃はトラックまで揺るがす。
「「「おわぁぁ!」荷台の犬飼達が衝撃で目を回している間に、
こっそりクロスフュージョンしたCFロックマンがジャスミンを抱えて近くに着地して
そこからすぐにクロスフュージョンを解除し、
「プラグイン!ロックマンエグゼ!トランスミッション!」
「プラグイン!メディ!トランスミッション!」
熱斗とジャスミンはロックマンとメディをトラックにプラグインさせる。

 

ロックマンはすぐさま修復システムの中央の骨付き肉型プログラムに飛びかかる。
「フミコミザン!」
加速してのソードの斬撃が骨付き肉型プログラムを修復システムから切り離した。

 

着地したロックマンを電撃が襲う、
控えていたフラッシュマンが放ったネオンライトだ。
「フラッシュマン!」
「それで止めたつもりか!」
そう、ビデオマンのテープにダークオーラ入りワクチンのデータが残っていて、
修復システムも稼働し続けている。
しかしその修復システムの中央に白くて横に大きな、大玉の様なシルエットがへばり付いた。
「な!?」
「どけ!ワインドカッター!」遅れてプラグインしたビデオマンが
システム中央に巨大テープを撃つ。
しかし、へばり付いている大玉は全体を大きく振動させながら、
弾力でワインドカッターを弾いた、

 

「・・・もしかして、あいつ・・・」
「ビデオマン!何を手間取ってる!俺も手伝ってや・・・」
「させない!」「ちっ!」

 

フラッシュマンはビデオマンに加勢しようとするも、
ロックマンにバスターの連射で足止めされていた。

 

 

現実ではCFロールがビーストマンと戦っている。
「フレイムソード!スロットイン!」
CFロールが炎属性のソードを装備し切りかかるも、
重心の偏った攻撃では素早いビーストマンを捉えられなかった。

 

しかし洗脳された救急隊員はこんな戦いが行われていることなど全く気にとめず、
フラッシュマンの指定した時間に従い、リカバリーシステムを起動させた。
「リカバリーシステム、起動します」
リカバリーシステムはその起動し、コードでつながったナビ達に
そしてナビ達は生気を取り戻し次々に目を覚ましていく。

 

「これで決めるぜ!バトルチップ、ハイキャノン!トリプルスロットイン!」
熱斗が3枚のチップを一定のタイミングでスロットインしたことにより、
ロックマンがプログラムアドバンス(PA)を発動させる。
「PA!ギガキャノン!」
ロックマンは両腕を合体させた砲台から巨大な光線を放つ。

 

その光線は体勢を戻したフラッシュマンとビデオマンにはかわされるも
後ろにあったリカバリーシステムに当たり、大爆発。その余波が2体を吹き飛ばした。
「うわぁーーー!!」 「あんなデブにしてやられるなんて〜〜〜!!」
フラッシュマンとビデオマンはログアウトし、西古とナルシーのPETに送還された。

 

 

現実世界では、CFロールとビーストマンの戦いが続いていた。
CFロールのフレイムソードの攻撃が当たらずにいる、
スピード自体はあるのでビーストマンも無闇に反撃できないのだが、
「ハッ!そんなもん振り回して、自分が汗だくになってりゃ世話無いぜ!」
(体力が尽きたところを一気に料理してやる!)
ビーストマンがこう言うように、フレイムソードの熱さと肥満体での戦闘
でメイルは汗だくになっていて、足元に汗の水たまりができている。
ビーストマンが体力の限界を待とうと判断するのも無理はない、
しかしその汗の水たまりが自分の足元まで広がってることには気づいておらず―――

 

「ブリザード!」CFロールが撃ったブリザードが自身の汗で濡れた地面を凍らせていき、そのままビーストマンの脚まで凍らせ、動きを止める。
「ナッ!動けねぇ!?」
CFロールの方は、ブリザードの反動で少し転がってから、何とか起き上がった。
そこからビーストマンの頭上に飛び上がり、
「アースクエイク!」ウイルス・ポワルドを模した分銅を呼び出し、
自分の体重も加えて、ビーストマンを押しつぶした。
「グギャアァァ!!」
メイルの押しつぶし(+アースクエイク)が直撃しては
実体化は維持できず、ビーストマンもログアウトした。

 

「くそっ!ビーストマンもやられちまった!」
「おデブちゃんを侮りすぎたわ・・・」
「こうなったら!」
「「「覚えてろよ!!!」」」
犬飼達三人が乗るトラックは一目散に逃げ出していった。

 

 

「ふぅ・・・今回もなんとかなったわね」
メイルがクロスフュージョンを解除し、座り込む。
ドスン! それだけで、結構大きな音がしたが、
メイルはもう慣れてしまってる。
まして、自分だけでなく周りの女性もかなりの割合で同じような体格なのだし。
(・・・それだけでも大変だけど、その上ナビを失うなんてことになったら・・・)
その事態を回避できたことに改めて安堵するメイル、
その彼女の大きなお腹へジャスミンが抱きついてきた。

 

(え、ラストで抱きつくのは私じゃあ・・・) 
*OPより・・・今の体型でやれば、大惨事必須だが、
困惑するメイルだが、抱きつかれたお腹に案外心地よい感触が来たのと、
ジャスミンの満面の笑みを見てすぐに受け入れるのだった。
「メイル、手伝ってくれてアリガトウね♪」
「・・・あなたのメディこそあんなになるまで頑張って・・ご苦労様」

 

ジャスミンのPETの中にあの白い大玉がいた。
大玉がごろりと少し転がると、その上には
真ん丸ながらも顔つきは保ったメディの顔が乗っかていた。
「ふー・・・何とかなったね」

 

メディは巨大骨付き肉型プログラム(コピー)を解析して、
ワクチンプログラムを探し当てたが、
その代償としてここまで太ってしまった。
見た目ではメイルに並ぶほどの肥満体だ。

 

先述の様にネットナビなので、本当に太ったわけでなく
あくまで無駄なデータを大量に抱え込み、
それに合わせて外見が変わっているだけなのだが、
(つまり肥満化というよりは膨体の方が近い)
ここまで容量が大きくなると、ナビとしての動作にも支障が出てくる。
いわゆる処理落ちだが、傍から見ると「運動不足なデブ」にしか見えない・・・

 

そんな状態で奮闘したメディが一息つくかの様に、
PET内をコロコロと軽く転がってると、ロールがプラグインしてきた。
「お疲れ様、メディ」
「・・・・・」 自然に話しかけてきたロールにどう返していいか分からず言葉に詰まるメディ、そんな彼女の大きなお腹にロールが抱きついてきた。
「 え!?」 
「・・・最近メイルちゃんや他の人達を見て、太ることのきつさを改めて知ったから、
いくら他のナビを助けるためでも正直私には真似できないと思って・・・」
「いや、私の体型はデバックで元に戻せるから大丈夫よ」
(ここまでになると、それも結構時間がかかるけど・・・)
「それでも・・・ありがとう」 「・・・ふふ、どういたしまして」

 

メイルとジャスミン。  メディとロール。
仲よさげにじゃれ合う二人を熱斗とロックマンはそれぞれ遠くから見ていた。
「・・・なんか、オレ達蚊帳の外じゃね?」
「しかたないよ、ボクらここじゃ脇役コンビだし・・・」


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