孫策、于吉に一矢報いんとするの事

孫策、于吉に一矢報いんとするの事

 

 

「それであなたは、私に協力しようと言うの」
「小覇王」の異名を持つ、呉の国の若き王である孫策。
彼女に謁見する者は、謎の導師、于吉。
「ええ、私も微力ながらも力をお貸しします」
「共に天下統一へ進もうではありませんか」

 

 

「断るわ」
その申し出を、孫策ははっきりと拒絶した。
「そうですか」
于吉は全く気にしてない様だ。
断られることを覚悟していたのか。
それとも・・・

 

「貴方が信頼に値する者とは思えないの」
「では、私の力を見せましょう」
于吉が妙な手振りをし、呪文を唱えた。

 

そして、孫策の体が膨れ始めた。
「!?」それも目に見える速度で脹れていく。

 

細長い手足が、大きな胸が、
括れた腰回りが、張りのある尻が、
どんどん膨れ、大きく、太くなっていく。
(顔は、他よりも肉付きが大人しいが)

 

 

「孫策様、これが私の力です。私が自分の意思でこの城を去るまで、貴方の変化は止まりません」

 

「ぐぅ・・・!」
尚も孫策の体は太り続ける。
現代の単位で言えば、1秒毎に1kgのペースで太っている。

 

「貴様!」 「この左道士が!!」
孫策の側に控えていた親衛隊が飛び出し、于吉に切りかかるが、
その剣は于吉の体をすり抜けた。
「これも私の力。いかなる剣を持ってしても、私を斬ることは出来ません」
「もし、まだ私を疑うならば、更なる力をお見せしましょう」
言い換えれば、『抵抗するそぶりを見せたら、別の祟りを与える』ということか。

 

ここで、孫策の服の留め具が弾け飛んで、
于吉の肩に当たったが、流石に動じなかった。

 

「まぁ、今のは、無かったことにしますよ」
宇吉は先の言い換えを裏付ける言葉を言った。

 

親衛隊は于吉を睨みつけるも、それ以外のことは何も出来ずにいた。

 

「・・・・・・」
孫策は1秒ごとに太ってゆきながらも、冷静に考えていた。
自分が太るのを止めるには、于吉が自分の意思でここから去らなければならない。
しかし、この状況で協力を認めるのは、服従と変わらない。
国の王として、それだけはしてはならない。
なら、どうするべきか――

 

更に100kg程太ったところで、孫策は答えを出した。
「分かったわ、あなたの協力を受けることにする」

 

「ありがとうございます。では、今日のところはこれにて」
その言葉を聞くなり、于吉は足早に去ろうとし、親衛隊は安堵しかけたが、
「まぁ、待ちなさい」当の孫策が引き止めた。

 

「いいのですか?私が自分の意思でここを去らない限り、貴方は」
「同盟の証として、この城に伝わる秘密の宝をあなたに譲るわ」
「・・・では、お言葉に甘えさせていただきます」

 

 

ひとまず、別室で少し待たされてから、
于吉は城の蔵に案内された。

 

案内する兵の歩みは遅く、于吉を案内することにあからさまに不服そうだが、
于吉はそれに苛立ったりはせず、別のことを考えていた。
(私は本当にあれで済ませるつもりだったのに何を考えている?
まぁゆっくりと見せて貰えるなら、何か使えるものがあるかもしれない)
それこそお言葉に甘えさせてもらいますか)

 

于吉は蔵の前の部屋まで案内された。
その部屋はやや狭く、前後の部屋への扉と
上に大窓があるだけだった。

 

于吉は、渡された鍵を蔵への扉に差し込む。
鍵は開き、古い造りの扉がゆっくりと開いてく。

 

ここで、不意に、彼の周囲が少し暗くなった。
まるで、太陽に雲がかかったかの様だ。

 

「?」
上を見上げる于吉
目に入ったのは、落ちてくる巨大な肉の塊。
そう、彼の祟りで今や肉塊の域にまで太った。孫策の尻である。

 

「!」
逃れようとするも、扉を開いた先には即席の壁が張られていた。
後ろの入ってきた扉は、宇吉を案内してきた兵によって、
外から固く閉ざされていた。
そして、孫策の体はこの部屋を満たすまでに大きくなっていた。

 

これが孫策の策だった。
従うふりをして、于吉を逃げ道の無い部屋におびき寄せ、
その準備の間にここまで太った自分の体を持ってして、于吉を押しつぶす。

 

(留め具が当たったとこいうことは、武器以外による攻撃なら有効のはず)
(分の悪い賭けだが、ここまで太らされてはその体を使って一矢報いなければ、気が済まない。
そして、あわよくばこれで仕留める!)

 

そして、その狙いは当たっていた。

 

于吉の姿が孫策の体の下に消え、
そして轟音が響いた。

 

 

 

前後の扉が開かれ、親衛隊や他の兵達が顔を見せる。
・・・部屋いっぱいに、孫策の肉が広がっているので、入ってはこれないのだ。
「孫策様――!!」
「お怪我はありませんか!」
「ええ、大丈夫よ」
(ここまで肉が分厚くなったから、全然痛くなかったとは言えないわね・・・)

 

「あの男は仕留められましたか!?」
「おそらくは、生きてる。直前でその手ごたえが消えたから
何らかの術で逃げたと思う」

 

確かに、于吉は潰される直前で、咄嗟に転移の術を使い、逃げ延びていた。
だが、彼が自分の意思で逃げ去っていったことにより、
孫策の肥満化はようやく止まった。
現在の体重は、実に956kg。
約15分間、祟りで太り続けたことになる。

 

(あの男、もしこの呉の国に仇なす敵として、また現れたのなら、
その時こそ確実に倒す。 この体の落とし前も兼ねてね・・・)

 

 

その後、于吉は太平妖術の書の力で、中国全土を脅かそうとした。
それに立ち向かう諸侯の一人に、彼女はいた。
その名は孫権、字は伯符、真名は雪蓮。
そしてその姿から新たに付けられた異名は「大肉の覇王」であった。

 

(おわり)


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