ふえるエプロン

ふえるエプロン

 

 

私は広田徳子、お父さんとお母さんが仕事で成功してこの一軒家を建てたのはいいけど、
この家が条件が良いからって急に引っ越しして、
しかも仕事でもっと頑張るため二人とも単身赴任しちゃって、
私はひとりぼっちになってしまった。

 

 

12月22日
クリスマスムードの明るい町、
そこをただ一人暗い気持ちでぶらついていた私、
いま中学校は冬休みだが、休み直前になって急に転校してきた私に
誰かとの予定があるはず無い。

 

老婆が路地裏で露店を開いていた。
しかし一つしか商品が無いあたり露店とも言えないかも知れない、
商品は 「ふえるエプロン」?
「おばあさん、ふえるエプロン、ってどういう意味なんですか」
「ふえる、という意味でございます」
「その、『ふえる』ってのが分からないんですけど・・・」
「それはお買いになった方だけが分かるのでございます」
気になるなあ、買ってみようか、 
どうせお金は余ってるしね・・・
「お買い上げありがとうございます」

 

買ってきたふえるエプロンを早速着けてみた。
しかし、一体何がふえるのだろうか。 
とりあえず今日の昼ご飯は余った鮭をムニエルにしてそれに野菜サラダを添えて・・・
  あ、あれ? 手が勝手に動いて料理し始めた?
鮭と野菜が一つの皿に・・・これは、カルパッチョ?

 

ふえるエプロンは、つけた人の料理のレパートリーがふえるエプロンだった。
知らないはずの料理でも材料さえあれば作れる。
この商品を使って私はある商売を始めてみた。

 

 

1月4日
「いらっしゃいませ!2名ですね」
「俺は、この刺身と白飯で海鮮丼1つ」
「こっちは、このミンチ肉でハンバーグ1丁お願いします」

 

そう相手が持ってきた材料を好きな料理にして出すという疑似料理店。
クリスマスから年末年始というめでたい時期に出したので興味本位でくる客が多かったのと、
相手の好みを聞いておいて下ごしらえと仕上げにそれを取り入れるという
軽い工夫がうけたのもあって、手間と経費から考えると大きな利益が上がった。
(こうゆうことには色々な許可がいるはずだが、
ダメモトで市役所に申請に行ってみたら、私の顔を見るなりあっさりOKを出された。
どうやら両親が引っ越してくるときに鼻薬をかがせたらしい・・・)
  つまりお金も増えた。   ただ・・・
「この店も今日までか」 
「残念だなあ、安くて上手くて店長可愛かったし」
「まあ顔は可愛かったけど、体の方がなあ」
「料理人だから、あれ位の体つきで良いんじゃないか」

 

 

そう、増えたレパートリーを試すのと、
店を出す前の味見のせいで体重まで増えてしまった。
前は結構ほっそりとした体型だったのに今では立派なぽっちゃり体型だ。
エプロンの上からでも分かるほど大きな大人並みの巨乳、
こちらは分からないだろうが、お腹はくびれがかなり消えてポコンとせり出しつつある。
私からは見えないが、手触りからするとお尻も胸と同じくらい大きくなってる。
「顔は可愛い」とさっきの客が言ってたけど、私としては実感がわかない。
結構丸くなってるし。

 

 

1月5日
元は十分取ったし、これ以上このエプロンを置いていたらもっと太ってしまいそうだ。
返品できないかなあ。 あ。あのお婆さん、またお店開いている。
今度の商品は、「ふえるジャージ」?
「今度のふえるの意味は一体なんですか?」
「ふえるという意味でございます」
「やっぱり教えてはくれないんですね」まあいいや。 
休み明けまでに少しは体型を戻したいし、
ダイエットの為にも買ってみよう。
「お買い上げありがとうございます」

 

よし、早速このジャージを着てジョギングしてみよう。
家を出た私に、車が跳ねた泥水がかけられた。
すぐさま、車が止まり運転していた相手が飛び出してきて頭を下げる。
「すみません!!急いでいるのでこれで勘弁してください!」:
そう言うなり、相手は一万円札を渡して行ってしまった。
ジャージだしクリーニングに一万円もいらないだろうけど今更返せないし・・・
とにかく帰って洗わないと・・・
あれ?洗おうとした汚れが消えてる?

 

 

そう、ふえるジャージは自分の汚れを増やす代わりに汚した相手にお金を渡すようにして、
お金をふやすジャージだったのだ。 
ジャージ以外は汚れないし、ジャージの汚れもいつの間にか消えてしまうから
しかしそれ以外のものまで増えてしまった・・・

 

 

1月9日
「やっと来たよ新しい服・・・」 
そうジャージを着て外出する度に汚れてしまうなら運動など出来ない。
当然運動できなければ太る。
その事に気付いた時にはもう他の服は着れなくなってた。

 

袖を通すためにジャージを脱いだ私の姿は真ん丸いデブの肥満体。
体重は70、もしかしたら80を越してるかもしれない。
出るべき所は出て引っ込むべき所は引っ込んだ体を「ボン・キュッ・ボン」と評するが、
元の私は「ポッコン・キュッ・ポッコン」って感じだった。 
そのバランスを保ったまま太った今の体型は「ドッコン・ボン・ボッコン」って具合だ。
具体的に言うと、まず胸はメロン並みの大きさになって
元のブラジャーは全然着けられず、歩く度に大きく揺れてしまう。
一応くびれの残っていたお腹周りも大きくせり出して、
胸を押し上げ円形を維持させている。
もっともお腹自体は垂れ気味で二段腹になってしまってる。
お尻もパンツをはち切れんばかりに押し上げていて、
大人というかオバサンだ。
手足も胴体にあわせてず太くなってしまってる。
顔も完全に丸顔だ。

 

うう久しぶりに歩けたけど、しんどい。 やっぱり体力落ちてるなあ。
あ、またまたあのお婆さんだ。 今度の商品は「ふえるトレーニングセット」?
どうせ「ふえるという意味でございます」としか教えてくれないし、
まさか脂肪が増えるってことはないだろうし、
歩き続けるのはかなり無理っぽい・・・
値段も手頃だし、買っちゃおうか。 
「お買い上げありがとうございます」

 

さて早速使ってみよう。 まずはこのダンベルを・・・
うう、腕の筋力も落ちてる。上げ下げが辛い・・・
・・・あれ辛くなくなってきた。 
やっぱりふえるのは筋力なんだ。
トレーニングセット一式を1時間も使ってたら、軽々と使えるようになった。
次の日から学校だったが、昨日は数百m歩くのもしんどかったのに、
自転車で通っていた数kmの距離を汗一つかかずに行けるようになった。
そう、「軽々と」・・・「汗一つかかずに」・・・

 

 

1月16日
どんどんっと軽快な足取りで重厚な足音を立て町を行くのは、
巨体の少女。
3桁近い重量がありそうだが、
その足取りからはその重さは全く感じられない。
胸や尻、お腹が歩く度に大きく揺れている。
その揺れ方は筋肉に支えられたものだ。
顔は丸顔だが、目鼻立ちは整っていてどこか可愛らしい。
言うまでもなく徳子だ。

 

トレーニングセットを使うと、すぐに筋肉がふえて
筋力は上がるが、体に負担をかけないと脂肪は燃えない。
それなのに筋肉がついては体重は増えてしまう。
私の体はついた筋肉とその事に気付かずに油断して食べた分の脂肪でもう2周り太ってしまった。
(顔の筋肉はトレーニングセットで鍛えなかったので変わりがなかった)

 

怒りのままに、例によって店を開いていた老婆の前に今まで買った品物を叩き付ける。
「これ、お引き取りできないでしょうか!?」
「引き取りはお断りしてます」
「ああ、そうなんですか・・・」 私の怒りは老婆の断りにすぐに消えてしまった。
冷えた頭で見てみると、また新しい商品がある事に気付けた。
「ふえるストーブ」・・・ 何がふえるのか全く分からない。 
でもこれまでの商品も利益自体はくれた。
それにまた太ってしまうことになっても、ここまで太るとどうでも良いと思えてくる。
「お買い上げありがとうございます」

 

 

「ただいま、って誰も居なかったか」 
「「「徳子!!」」 「あっ・・・」
居た。 怒りに身を震わしている肥満体の中年の男女、この家の主で私の両親。
「  何しに来たのさ」 
「私達の家でもあるんだ、何しに来たはないだろう」
「それよりも!貴方何だって家で料理屋なんかやっていたのよ!」
「噂で聞こえてきたのよ、子供一人でそんなことしていい訳ないのに! 
「だいたいそんなに太ってしまって・・そんなになるまでどうして相談してくれなかったの・・・」
「  うっさい!! 今まで放っておいて今更親面すんな!」
「 太ったのだってあんたらが放っておいたせいだよ!!」

 

そう言い捨た私は今まではそれ程使ってなかった自分の部屋に籠もって
少し考えてみた。 「言い過ぎたかな・・」
「でも太ったのはともかく、ひとりぼっちでほっとかれたのは本当だし・・・」 
思い返してみれば、両親は私が物心ついた時から太っていたが、
私のことを気遣ってくれる、いわば陽気で優しいデブだった。
でも仕事で成功してからは更に利益を求めて、
私を放ったらかしにして・・・何というか陰気なデブに・・・

 

「寒っ・・・」 悲しいことを考えているとなんだか寒くなってきた。
そうだ、ふえるストーブを使ってみよう。 これ、油はここから入れるのかな?
給油ノズルらしき部分を握ると同時に空だった油量メーターが上昇していった。
 それと同時に、私の体が少しずつ痩せていって !
慌てて給油ノズルから手を放すとメーターの上昇も体の減量も収まる。
そうか、「ふえるストーブ」は給油ノズルを持った相手の脂肪を減らして、
油に変えてふやすストーブってことなのね。
 これを使えば普通に痩せられる!!
 ・・・せっかくだし最後に陽気なデブらしいことやって見ようか

 

 

数日おいてクラスの皆をさそってホームパーティーを開いてみた。
ってか、急なパーティーなのに大勢来たなぁ。
もしかして、私結構好かれてるの?
「とにかく今日は楽しんでいってね!!」

 

徳子の部屋から、家の庭で行われているパーティーを見ているのは徳子の両親。
「あんなに多くの友達が・・・」
「私達のせいで無くしてしまったのに・・・」
「徳子の幸せを思ってお金を稼いだのに、間違っていた様だ・・・」
二人は「ふえるストーブ」のスイッチを入れた。
「ふえるストーブ」のことは、油の無くても使えるストーブとして、
徳子から知らされている。「暖かいな」 
「こういう暖かみを友達や私達と楽しむのが徳子にとっての幸せだったのね」
給油ノズルを握っているため使っても、油量メーターは減少するどころか上昇する。
そして、メーターは頂点に達した。

 

 

2月10日 

 

あれから何を思ったのか、両親は今の仕事から手を引きこの家で私がやっていた疑似料理店をやり出した。
「ふえるエプロン」のことは教えてないから普通に料理しているけど、
その分堅実な利益を出している。
そして毎日私と一緒にいてくれる。 嬉しい、嬉しいんだけど・・・

 

 

両親は、「ふえるストーブ」ですっかり痩せてすっきりとした体になった。
しかし、私は・・・
「徳子!これ食べてくれ、今度店のメニューに加えようと思っているんだ」
「・・・・・無言で体重計に乗る。 
映った数字は私には見えない。
「数字は?」 「142kg」 「それがどうかしたの?」
「どうかしない訳ないでしょ! 中学2年で142kgって!!」
「徳子、私達はお前がどんなに太ってもお前を愛するよ」
「貴方は金の亡者になった私達に本当の愛を思い出させてくれたしね」
「そういう問題じゃなーい!!!」 

 

油量メーターが頂点に達した「ふえるストーブ」は私の脂肪を減らしてくれなかった。
油を取り出せる様には出来てないし、壊してしまっては意味がない・・・
その事を知らなかった私はあのパーティーで自分が作った料理をたくさん食べてしまって・・・
また食事量が増えてしまって・・・最近になってようやく体重の増加を止められたけど、
今やかっての3倍以上の体重を持つ超肥満体だ。

 

友達(いつの間にかできていた)が言うところには、
(以前つけた)筋肉と(新たについた)脂肪が丁度良い具合で釣り合っていて、
張りと柔らかさが両立している、ってらしい・・・
その体型を擬音で示すと「ドコン・ドン・ドコン」って具合、
具体的に表現すると、まずお尻はバレーボールの様にパンパンに張り詰めているが、
大きさと柔らかさは大振りの桃の様だ。
胸はかっての体重に近い重さと身長に近いサイズを持つ立派な爆乳だ。
そんな胸よりかは小さいが、十分すぎるほど大きくせり出したお腹は太鼓腹以外の何者でもない。
両足は最早ドラム缶で・・どうやっても内股が密着してしまう。
顔も真ん丸くなってしまい、二重顎が出来てしまった。
そろそろ首が消えてしまいそうだ・・・
目鼻立ちは圧迫されてなくて顔つきもまだ保ってるけど、もうギリギリだ。

 

 

 広田徳子(14)
  144cm 40kg 77・58・73
  → 58kg  90・72・87
  → 76kg 106・93・103
  → 92kg 113・96・106
  →142kg 137・125・132

 

 

元の体型まで痩せる気はもう無いがこれ以上太る訳にはいかない・・・だから

 

「愛してくれてありがとう」
「   でも、もう少し厳しくしてよーーーー!!」
私は、家から逃げ出した。
なお、今の運動能力は同年代の女子の平均よりやや上といった具合だ。

 

お金も愛も増えると、人の心を歪めてしまうかもしれない。
体重は言わずもがな。
やはりこういうことなのか。

 

「おーい、徳子、待ってくれ。後店にもっと調味料を増やすべきだと思うか?」
「無闇にふやしていいものなんて何も無いんだよーーーー!!!」

 

 

 おわり


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