ただと±0は別物

ただと±0は別物

 

 

栗宮 萌葉(くりみや もえば)20歳 身長161cm 体重42kg B:81 W:53 H:79
課金無料のゲームにハマッている女性。
無料ゲームの筈なのに気付けば月の課金代が10万位行く事もザラにある。

 

栗宮 康歩(くりみや やすほ)17歳 身長173cm 体重58kg
萌葉の弟。ぐーたらな姉に愛想を尽かし、お金を回収するために『美貌換金屋』に出向く。

 

 

 

 

 

「はぁ・・・マジありえねぇ」
「栗宮、どうした?」

 

下校途中。康歩は友人に愚痴を言っていた。

 

「いや、ウチの姉貴さ・・・結構前から無料のスマホゲームにハマっててさ」
「ああ、よくCMやってる奴とかの?」
「そ、それ。でさ・・・この前月の使用量がやばい事になっててさ」
「幾ら位いったん?」
「10万超えてた」
「うわぁ・・・」

 

栗宮が呆れるのも分かるな。と友人が同情する程に酷い利用料金だ。

 

「一応働いてるから自分のお金なんだけどさ・・・このままだと破滅しそうでさ」
「あー・・・」
「見てくれだけは良いんだからもう少し気をつけてくれねーかなぁ・・・
 あーあ、どっかに金貰える場所とかねーかな」
「そんな良い場所ある訳・・・あ」

 

そこで、ふと友人が足を止めた。

 

「どうした?」
「いや、最近変な噂聞いてさ」
「噂ぁ?」

 

胡散臭せぇと言わんばかりの態度で顔をしかめる康歩。

 

「おう。なんでもよ、美貌をお金に換えてくれる店があるらしいんだわ」
「・・・なんじゃそら?」

 

友人の変な話に対して、康歩は意味分からんとジェスチャー付きで突っ込みを入れる。

 

「まぁ聞けって。どうもあれよ、昔からあるじゃん?髪の毛売ったりしてお金貰う奴。
 この前授業で習ったろ?」
「ああ・・・なんだっけ?賢者のなんとか?」

 

友人が言うのは、この前授業で取り扱った短編小説の話だ。
その授業の中で、そういった商売は以前からあるというのも聞いている。
羅生門でも同じく遺体から髪の毛を毟る婆が出ている。

 

「成る程ね・・・要はそういう店なのか」
「らしいぜ。ただなぁ・・・」
「あん?」

 

急に顔が曇る友人。
あーとかうーだとか暫く唸ってから、ぽつりと。

 

「ただ・・・店の場所は分からんらしい」

 

そう呟いた。

 

「なんだそれ、意味ないじゃん」
「いやーなんでも?普段は見えないくせに、そいつが必要だと思う時にだけ見える店らしいぞ」
「アホくさ・・・大体、そんな店ねーちゃんに教えたら余計ドツボハマりそうだからいいわ」

 

そんな事を話しつつ、帰り道を行く二人だった。

 



 

「ただいまー」
「おかえり」

 

康歩が帰って来ると、姉の萌葉が部屋から出てくるところだった。

 

「なんだ、姉貴居たのか」
「んー・・・まぁ」
「なんだよ、歯切れ悪いな」

 

ポリポリと頭をかいて、どうにもバツの悪そうな感じで萌葉は言った。

 

「仕事やめてきた」
「・・・は?」

 

康歩は驚いてその場で立ち止まる。

 

「・・・どういうことだよ?」
「糞上司が悪いんだよ。少し休憩時間にスマホでゲームやってたぐらいでぐちぐちさー。
 だからつい売り言葉に買い言葉で・・・」
「ついって・・・ふざけんな!」
「しゃーねーじゃん!やっちまったんだからさぁ!」

 

そのまま萌葉は言うだけ言うと、そのままトイレへと行ってしまった。

 

「姉貴・・・これからどうするつもりだよ」

 

立ち尽くす康歩を残して。

 



 

「姉貴・・・これなんだよ!」
「ごっめーん!どうしても足りなくてさ!」

 

萌葉が仕事を辞めてから暫く経った頃、康歩は萌葉の部屋を尋ねていた。
その理由は康歩の手に握られた紙についてだ。

 

「姉貴仕事やめてるんだからそりゃ金無くなるだろうよ!
 だからって俺の小遣いまで使うなよ!?」

 

康歩の手に握られていた紙にはこう書いてあった。

 

『お小遣いお借りします 許してね☆ 姉より』

 

康歩と萌葉の両親は海外に出張中で、生活費と康歩の小遣いを毎月振り込んでいる。
その小遣いを勝手に萌葉は使ったというのだ。

 

「まじ信じらんねぇ!普通弟の小遣い勝手に使うか!?」
「まぁまぁ・・・その内返すからさ!」

 

余り反省したとは言えない萌葉の態度についに我慢の限界が来たのか、
乱暴に部屋の扉を開けると康歩は家から出て行った。
頭を冷ましたいし、何より姉とこれ以上居たら何か取り返しの付かない事をしそうだったからだ。

 



 

「・・・ったく。頭痛てぇ」

 

街をフラフラと、当てもなく歩き回る。
こう言う時はいっそ何も考えず適当に歩き回るのが良いと、
康歩は昔祖父に言われて以来ずっと続けていた。
実際効果はまぁまぁあるようだ。

 

「・・・ん?」

 

ふと、目に付いた店があった。
路地の方にひっそりとある店で、店には看板が出ているだけの寂れた風貌の店。

 

「・・・『美貌換金屋』?」

 

その時、康歩は友人の噂話を思い出した。

 

──なんでもよ、美貌をお金に換えてくれる店があるらしいんだわ──

 

「・・・ここの事なのか?」

 

美貌換金。
噂通りの店名だ。

 

「・・・面白そうだな」

 

康歩は、好奇心に押されその店の扉に手をかけた。
扉を軽く引くと、カランカランとベルが鳴る。
店の中は思ったよりも広い。
だが、それは“何もないから広い”のだと康歩はすぐ気付いた。
店には簡単なテーブルと椅子。
それとカウンターだけだった。
そして、女性が一人。
黒いワンピースだろうか。その上に赤いジャケットを羽織っている。
その女性がニコニコと笑いながらカウンターの向こうで立っている。

 

「いらっしゃいませー。ご利用は初めてですね?」
「え、ええ・・・まぁ」
「はい、では説明させていただきます!
 当店はお客様のご希望をお客様の美貌と引き替えに変えさせていただきます!
 例えるならば・・・お金が欲しいという方にはその代金に見合った分の
 お客様の美しさを頂くシステムです」
「・・・美貌って言うのはどんなのを?」
「例えば美しい髪の毛をお持ちならそれを、綺麗な肌をお持ちでしたら
 その質感をといった感じですね」
「はぁ・・・」

 

どうやら噂通りらしい。
だが、髪の毛は分かるが、肌の質感というのはどうするんだろうか?

 

「それと、当店は美容をお預かりすることは出来ましても返すことは出来ません。
 例えば何かを美容と交換した場合、それをその商品とまた交換すると言ったことは出来ませんの。
 また、今よりも美しくと言ったご希望も不可能ですわ。
 ここまではよろしいでしょうか?」
「はい・・・」

 

胡散臭い。
何というか色々と。
そう考えつつも、康歩は何故か店を出る気にはならなかった。

 

「それで、どのようなご用件でしょうか?」
「あー・・・いや、何となく入っただけなんで・・・」
「おや、そうでしたか。
 ですがお客様?何かお困りの事がお有りのようですが」
「困ってる事・・・」

 

一つある。
そう、康歩の頭には姉の事がよぎっていた。

 

「お有りのようで。
 でしたらいかがでしょう?当店をご利用なさっては」
「・・・一つ聞いてもいいですか?」

 



 

「ただいま」
「おかえり・・・その、勝手に使って悪かったわよ」
「あー・・・うん。その件なんだけどさ」
「ん?」

 

家に帰ってきた康歩を萌葉が迎えてくれた。
どうやら玄関で待っていたらしい。
ただ、横で液晶を光らせるスマホを見る限りでは反省の度合いが足りてないようだ。

 

「ほい、これ」
「ちょ・・・どうしたのよこのお金!?」
「生活費崩してきた」

 

康歩は、懐から封筒を出して萌葉に手渡した。
中には諭吉さんが10人ほど見える。

 

「はぁ!?なんで!?」
「それのお金を自由に使って良い。
 ただし、この契約書にサインしたらな」

 

そう言って康歩はもう一枚紙をだし、萌葉に渡す。
そこに書いてある事を要約すると、
今10万円渡す代わりに新しい仕事(アルバイトでも可)を見つける事と、
期限までにある程度のお金を返す事。
期限が過ぎてもお金が返されない、及び就職出来ない時には契約に従いしかるべき処罰を下す。
そう書いてあった。

 

「なにこれ?」
「契約書だって。要はこのお金を今は渡すけど、後で絶対返さないと酷い目に遭うよって話」
「・・・酷い目って?」
「秘密」
「あっそ・・・」

 

萌葉は暫く悩んだ後、その契約書にサインをした。

 



 

「・・・お願いします」
「・・・」

 

以前かわした契約期限の日。
萌葉は土下座をしていた。
勿論康歩に対してである。
実はお金を返すどころか仕事が見つかってすら居ないのである。
そのために、期間の延長を頼み込んでいるのだ。
これが不景気だけの問題なら仕方ないでいいのだが、
萌葉は真面目に取り組んだと言いづらく、どちらかと言えばスマホを弄ってる時間の方が長かった。

 

「・・・ちょっと考えるから部屋から出て」
「はい」

 

すごすごと、萌葉は康歩の部屋から立ち去る。
そして10分程経った後、改めて康歩から呼び出された。

 

「これに改めてサインして。次は無いから」

 

そこには以前とは別の契約書が有り、それには期間の延長について書かれていた。
今度破った場合は今までよりもさらにきつい罰を与えるとも。
萌葉はそれにサインをすると、改めて謝ってから部屋を出て行った。

 



 

「で、思いっきりぶっちぎった訳ですが」
「面目次第もございません」

 

二度目の期限の日。
結局この日にも萌葉は間に合わなかった。
現在は萌葉は自分の部屋で正座をして康歩のお説教を受けている。

 

「・・・はい、じゃあ罰ね」
「うぅ・・・分かったわよ、おとなしく受けるわよ」
「その言葉が聞きたかったのですよ!」
「うひゃぁ!?」

 

うなだれている萌葉の横から、美貌換金屋の店員がにゅっと現れた。
それに驚き、バランスを崩して萌葉は転倒した。

 

「どちらさん!?というかどこから・・・」
「細かい事はさておきまして。
 ではこちらの契約通り、美貌の方頂きますね」
「は・・・?ちょっと康歩、これどういう──」

 

萌葉が言い終わる前に、萌葉の体をじわりと、何かが蝕むような感覚が襲った。
それが収まったかと思えば、次は徐々に体が引き延ばされるかのような感覚。
まるで内側から膨らむかのような。
それが急速に太っているのだと、萌葉が気付いたのはスカートのホックが外れた時だった。

 

「ちょっと!何よこれ!?」
「罰だってば。足りない分のお金は姉貴の体で返して貰うってだけ」
「なのになんで太って・・・きゃあ!」

 



 

「ふぃ・・・ひぅ・・・なんなのよぉ・・・これぇ・・・」

 

ようやく萌葉の体の膨張が終わった頃には、萌葉の体は激変していた。
余り大きいとは言えなかった胸はまるでスイカのように。
括れていたはずのウエストには分厚い脂肪がまとわりついて。
形の良かった尻はまるで巨大な桃型のクッションのように押しつぶされて変形していた。
太ももはまるでドラム缶のようで、肉同士が干渉し合って閉じる事が出来そうにない。
頬も顎も首も分からないような顔付きになり、瞳は肉で狭まっている。

 

「はい、では美貌確かに頂きました。お題の方は後ほど振り込んでおきますので。
 これからもご贔屓にお願いしますね〜」

 

女性はそれだけ言うと、まるで最初から居なかったかのように消えてしまった。

 

「まぁこれで暫くは姉貴が働かなくても大丈夫だろ。
 これに懲りたら少しはスマホのゲームやめろよ。
 ただより高いものはないってな」

 

女性を見送った後、康歩は萌葉を見下ろしながらそう話しかけた。

 

「・・・分かったわよ。ところでこの体どうすんのよ!」
「痩せるしか無いな。動けるようにはなってるはずだし、明日からダイエットだな」

 

にたりと嫌な笑みを浮かべる康歩に、萌葉は明日からの事を思い、うんざりしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

栗宮 萌葉
身長:161cm 
体重:42kg→357kg
B:81→201
W:53→218
H:79→198


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