魔法のスイッチ

魔法のスイッチ

 

 

香川 睦美(かがわ むつみ) 28歳 身長158cm 体重52kg B:89 W:62 H:86
若い女性社員が入ってきたことに少々焦りを感じているアラサー。
結婚したいが“良い人”はまだ居ない。
そんな時に街中で変な店を見つけて・・・

 

 

 

 

彼女、香川睦美は焦っていた。
新入の女子社員、それもなかなかの美人だ。
男性社員が彼女の事を噂しているのを良く聞く。
それだけなら別に良い。
だがこっちが狙っている社員まで彼女にぞっこんとあれば
それは既に危機としてすぐ近くにあるのだ。
とは言え、彼女がどうこうできる物では無いのだが・・・

 

「・・・はぁ。見てくれなら負けてないと思うんだけどなぁ」

 

帰宅途中。ため息を吐きながら彼女は思案する。
これでも彼女なりにファッションなどに気にかけている。
元々の素材も悪くない筈だと自負している。

 

「やっぱり年齢かなぁ・・・」

 

彼女もアラサーと呼ばれる年齢となった。
世間ではまだ結婚しなくても大丈夫。寧ろ女は30代になってから等と言っているが
彼女としては早めに結婚して家庭を持ちたいのだ。
夢が素敵なお嫁さんだった頃が彼女にもあったのだ。

 

「あーあ・・・良い人見つからないかなぁ・・・ん?」

 

ふと、彼女の目についた店があった。
看板には『美貌換金屋』とある。
見たところとても小さく、古いノスタルジックな佇まいだ。

 

「・・・あんな店あったっけ?」

 

よくランニングでこの辺を走るが、睦美には見覚えが無かった。

 

「・・・新しくできたのかな?」

 

つい興味本位で店を開ける。
カランカランとベルが鳴り、お香なのか奇妙な香りが鼻孔をくすぐる。

 

「いらっしゃいませー」

 

店の中には変な格好の女性が居た。
黒いワンピースだろうか。その上に赤いジャケットを羽織っている。
その女性がニコニコと笑いながらカウンターの向こうで立っている。
言葉遣いからして店員だろう。

 

「えっと・・・ここってどんなお店ですか?」
「ご利用は初めてですね?では説明させていただきます!
 当店はお客様のご希望をお客様の美貌と引き替えに変えさせていただきます」
「び、美貌・・・?」
「はい!例えるならば・・・お金が欲しいという方にはその代金に見合った分の
 お客様の美しさを頂くシステムです」
「・・・美貌って言うのはどういうのを?」
「例えば美しい髪の毛をお持ちならそれを、綺麗な肌をお持ちでしたら
 その質感をといった感じですね」
「はぁ・・・」

 

胡散臭い。
睦美はそう感じ、視線を泳がす。

 

「ふーむ・・・お客様、何かお悩みですね?」
「い、いや・・・別にそんな・・・」
「隠さなくて良いのです!
 どうやら自分よりも若くて綺麗な子が新入社員として入ってきたから焦っているようで」
「・・・!?」
「あははは、そんなお顔をしてたのですよー」

 

そんな馬鹿なと睦美は店員の女性をにらみつける。

 

「あらあら・・・嫌われてしまいましたかね。
 お詫びと言っては何ですがこちらをどうぞ」
「何ですか・・・これ」

 

女性に渡されたのは手の平に収まるサイズのスイッチだった。
形状としては100円ライターの着火部分が丸々ボタンになったような物だ。

 

「そちらは【指定した相手を太らせることができるスイッチ】です。
 使い方は簡単。頭の中で相手を指定してスイッチを押すだけ。押す度に相手が5kgづつ太ります!
 しかも一度指定した相手は何度押しても平気という優れものです!」
「・・・は?」
「そう言う物なんですよ。
 ただしそちらはお試し品のため【太らせられるのは20人まで】となっております」
「・・・ふざけてるの?」
「まさか!私は至って本気です。まぁまぁ良くあるでは無いですか。
 お試し品を無料でお渡しして気に入って頂けたら改めてご購入頂くというアレですよー」
「・・・」

 

睦美は何をと思いつつ、何故かそのスイッチを使いたい気持ちに駆られていた。

 



 

その後のことを睦美は良く覚えていない。
気付けば家に帰ってきていて、手にはスイッチを握っていた。
覚えているのは店員の最後の言葉だけ。

 

『これを使うと使われた対象は【元々その体型だった】と周りに思われます。
 覚えているのは使用した方だけ。
 ああ、そうそう。気をつけて下さいね?20人以上にお使い頂きますと代金として
 それなりの額をお支払い頂きますのでー』

 

まるでキツネに摘まれたかのような気分のまま、睦美はじっと手の中にあるスイッチを見つめた。

 

「・・・ちょっとだけ」

 

試してみたい。
そんな気持ちになり、睦美は新入社員の彼女を思い浮かべながらスイッチを何度か押してみた。

 



 

翌朝、睦美が出社したが特に変わった様子は無かった。
本来なら後輩の彼女が既に出社しているはずだ。
だが太った女性の姿なんて見えない。

 

「やっぱり騙されたのかしらね?」

 

そう考え、睦美が自分の席についたときだった。

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・おはよう・・・ございます・・・」

 

荒い息と共に一人の女性社員が入ってきた。

 

「なっ・・・」

 

それはあの後輩の面影を持っていたのだった。

 



 

その日一日それとなく睦美は女性の事を探ってみた。
結果、間違いなくそれは後輩であった。
だが周りは彼女が痩せていた事を忘れ・・・
いやそもそも“そんな記憶は無かった”と言わんばかりだ。
結果として、あの商品は本物と証明された訳だ。

 

「・・・もしかしたら私はとんでもない物を手にしたんじゃ・・・」

 

睦美はスイッチを見つめると・・・にやりと笑った。

 



 

それから彼女は様々な──例えば取引先の美人な社員や
別の部署の女性社員などの──人を太らせた。
そして社内で自分が一番美人であるようにしたのだ。
彼女の予想通り、男性社員からは熱い視線をいっぱい浴びるようになった。
それが彼女にとって堪らなく快感になっていくのを、彼女は止められなかった。
そして・・・

 

「今日から受付の子変わるんだってよ」
「まじか、どんな子?」
「これが美人でよ!俺今晩誘っちゃおうかな〜」
「やめとけって。お前じゃ断られて終わりだよ」

 

その噂を聞いた睦美は、ポケットの中のスイッチを握り、ほくそ笑んだ。

 



 

受付では初々しくなれない作業に追われる女性社員が居た。
確かに美人だ。ほんわか系とでも言おうか、ゆったりとした雰囲気を持つ女性だった。

 

「へー・・・確かに美人ね。もしかしたら私以上かしらね。
 でも私よりは下になるわ、今からね・・・」

 

彼女の顔を確認した睦美はゆっくりとスイッチを握ると、
いつものように彼女の事を思い浮かべながらスイッチを連打した。
見る見るうちに彼女の体が太っていく。
面白い事に服まで一緒にサイズアップしていくのはまるで漫画か何かのようだ。
少しして、彼女の膨張が止まると、そこにはでっぷりと太った女性が受付で窮屈そうにしていた。
周りの人間はそれになんの疑問も抱いてないようだ。

 

「ふふ・・・これでこの辺りで一番の美人は・・・」

 

その様子を見て満足した睦美に・・・

 

「あらあら。20人以上に使ってしまったようですね」

 

横から急に声がかけられた。

 

「っ!?」
「お久しぶりです。中々お使いになったようで」

 

そこにはスイッチを渡してきた女性が立っていた。

 

「あ、貴方!どうやってここに!?」
「さぁ?それよりも体験版はおしまいです。
 21人にお使いになったのですから代金を頂きますね?」
「だ、代金ね・・・いくらなの?」
「そうですね・・・ざっとこの位でしょうか?」

 

そういうと彼女は指を2本立てる。

 

「二万円?なんだ安いじゃない」
「いえいえ〜うちは『美貌換金屋』ですよ?
 勿論美貌に決まってるじゃ無いですか」
「え・・・じゃあその2本は?」
「こう言うことです」

 

女性が指をパチンと弾くと、睦美の体がぶよぶよと膨らみだした。
まるで1秒ごとに”太っていく”かのようだ。

 

「なぁ!?」
「以前申しましたよね?『それなりの代金を頂く』と。
 大丈夫です、動ける程度にしますから」

 

にこりと笑う女性の目の前で睦美はぶくぶくと太っていく。
おかしい事に、服も一緒にサイズアップしていく。
まるで先ほどの受付の女性のように。

 

「あ・・・が・・・うぐ・・・」
「もう数分で終わりますので。では代金の方は確かに頂きました。ではでは。
 またのご利用をお待ちしておりますね」

 

言うが早いか、女性はすっと音も無く消え去った。
だが今の睦美にそれを気にしている余裕は無かった。

 



 

「おはよう・・・ございます・・・」
「おはよう。香川君。今日も暑そうだね」
「え、ええ・・・まぁ・・・」

 

数日後、睦美が出社すると上司に皮肉を言われた。
息も絶え絶えに自分の席に何とか着くと、深いため息をついた。
その際、飛び出た腹が大きく動く。
あの日、“支払い”とやらのせいで大きく太った睦美は大いに慌てた。
醜く、まるで脂肪の塊のようになった体に。
社内で一番の美人へ二度と戻れないことに。
周りの反応はいつも通りだった。
いつも通り“ぶくぶくに太った睦美”への対応だったのだ。
痩せていたことを覚えているのは睦美だけ。
それが何よりも辛かった。

 

「はぁ・・・」

 

もう一度ため息をつき、睦美は自分の身体を見渡した。
特注で作ったことになってるスーツはぴったりと体を包んでくれるが、
その分自分の身体がどれだけ大きいかを確認しやすい。
細く、引き締まっていた足はまるでドラム缶の様。
スカートを押し上げる尻は巨大な桃。
ドデンと突き出た腹は大太鼓だ。
その上に鎮座する胸はまさにスイカだった。
腕も太く、男性の腰程もありそうである。
顎にもたっぷりと脂肪がつき、首との境界線を完全に消していた。
手鏡を覗くと、頬肉に押し上げられて細まった目がこちらを見ている。

 

「・・・いくらなんでも酷いわ・・・」

 

そう力なく呟く。
ふと、睦美は社内を見渡した。
痩せているのは自分が「そこまで美人では無いだろう」と考えた女性だけ。
いまやその女性達が一番の美人だ。
睦美は体の感覚のズレを感じながら、重い体を引きずって仕事をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

香川睦美
身長158cm
体重52kg  →  252kg
 B:89cm → 159cm
 W:62cm → 184cm
 H:86cm → 172cm


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