ダイスの幸せ
里中 美琴(さとなか みこと) 25歳 身長157cm 体重46kg B:89 W:58 H:81
何かと運が無い女性。
ある日路地裏で不思議な店を見つけて・・・
「はぁ・・・なんでこうなんだろ・・・」
私はとぼとぼと会社からの帰り道を歩きながらため息をついた。
昔から何かとツイてないが、今日は特に酷い。
まず朝目覚まし時計が壊れて遅刻したし。
普通3つとも壊れるなんてないよわよ・・・
さらにバスを待ってたら子供がぶつかってきて、
その拍子に定期を落としてバスを一本乗り損ねるし・・・
会社に着いたら着いたでお茶をかけられるし・・・
上司が通達忘れてた仕事が今日までだったせいで他の予定が押して結局残業・・・
「やってらんないわよ・・・」
手にした空のペットボトルを、近くのゴミ箱に向けてぶん投げる。
軽い音を立てながらペットボトルゴミ箱の手前に落ちて跳ね、近くに居た野良猫に当たる。
フニャ−!!と叫びながら私に飛びかかってくる猫から、私は必死に逃げた。
「やっぱりこうなるのね・・・」
荒い息を整えながら、私は辺りを見渡す。
周りは見たことの無い通路で、どうやら変なところに迷い込んだみたいだ。
「あれ・・・このお店・・・」
目の前にはなんだか奇妙なお店が有った。
寂れた外見に、外に小さな看板だけが出ているだけのお店・・・
だけどその看板が変わっていた。
『美貌換金屋』
その看板の意味は分からないけど、私は妙に心惹かれてその店に入ってしまった。
カランカランとドアに付いて居るベルが鳴り、店の奥で動く気配がする。
「いらっしゃいませー」
店に入ると、変な格好の女性が居た。
黒いワンピースに上に赤いジャケットを羽織って、
ニコニコと笑いながらカウンターの向こうで立っている。
「ご利用は初めてですね?」
「は、はい・・・」
「ではでは説明させていただきます!
当店はお客様のご希望をお客様の美貌と引き替えに変えさせていただきます」
「美貌ですか?」
「はい!例えるならば・・・お金が欲しいという方にはその代金に見合った分の
お客様の美しさを頂くシステムです」
「・・・?」
「そうですねぇ・・・例えば美しい髪の毛をお持ちならそれを、綺麗な肌をお持ちでしたら
その質感をといった感じですね」
「そ、そうなんですか・・・」
うーん・・・胡散臭い・・・
でも・・・なんか気になるんだよね・・・
「じゃ、じゃあ・・・幸運になる物とかありませんか?」
「ございますよー」
そう言うと、お店の女性は奥へと引っ込んでいった。
少しして戻ってきた女性の手にはいくつかのさいころ・・・いや、ダイスって言うのかな?
普段なじみのある六面体以外にも見慣れない多面体等様々なダイスが握ってあった。
「これは?」
「こちらは振った目の数だけその日とてもとても良いことが起きるというダイスで、
一日一度だけ振れます。
ただ、振る度に対価を頂きますが・・・」
対価・・・美貌って事ね。
「その対価って何です?」
「さぁ・・・それはお客様次第ですので。あ、そうそう。面が多い程対価は高くなりますので。
ああ、そのダイスは差し上げますよ」
「・・・では頂きます」
私は女性からダイスを受け取った。
ただならいいかと思ったし、何となくそのダイスの効果という物が気になったからだ。
「はい、またのご来店をお待ちしております」
一応の礼を言って店を出る私に女性は声をかけた。
私はそれを聞きながら店の扉を閉める。
だから、女性の最後の言葉は聞こえなかった。
「もしも来られれば・・・ですがね」
その小さな呟きを・・・
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家に帰った私はじっと貰ったダイスを見つめた。
貰った物は・・・6面、8面、10面、20面、それと・・・
「なにこのゴルフボール・・・」
100面ダイスという物らしい・・・が完全にゴルフボールである。
「面が多い程対価が多いんだっけ・・・とりあえず6面ね」
試しにと私は6面ダイスを振る。
出た目は・・・
「1・・・」
これが私よね・・・
というか寝る前に振って良かったのかしら・・・?
あ、でも12時回ってる・・・
「・・・とにかく寝ましょう」
私は布団に潜り込むと、新しく買った目覚ましをセットしてからそのまま眠ってしまった。
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翌朝、すんなり起きられた事に感謝しつつ、そのまま朝食を作る。
が、電気ポットが壊れる。
「・・・」
朝の味噌汁は諦めよう。
気分転換にテレビを付ける。
『──でですね、最近は老朽化した建物が数多く放置されてるわけです。
これらは何も地方だけではなく、都心部等でも同様の現象が起きているのです。
いつ、どこで崩落事故が起きてもおかしくは無いわけです!!』
テレビの音声をBGM代わりに食事を摂る。
目玉焼きをかじったところで口にガリッとした感覚が伝わる。
「・・・殻」
どうやら目玉焼きに殻が入っていたようだ。取り除いたんだけどな・・・
なんとも言えない気分で食事を終えた私は着替えて家を出た。
そして、その途端である。
【ガラッ・・・】
頭上で何か音がした。
上を見上げると何かが落ちてくる。
それは私の目の前にドスンと音を立てて落下した。
舞い立つ土煙。
私はそれにむせ返りながらも何が落ちてきたのか確認する。
落ちてきた物、それは向かいのマンションの壁の一部だった。
「な、なによこれ・・・」
呆然とする私。
気付けば音を聞いたのだろう、周りに人が集まっていた。
それから暫くはすごい大騒ぎだった。
警察は来るし、救急隊員は怪我が無いかと必死に聞いてくるし、
マンションの管理人は平謝りするし。
とりあえずこちらにも怪我が無いので警察等にはお帰り頂いた。
ああ・・・仕事場に連絡しなきゃ・・・
そんな事を考えながら、私は事後処理をする羽目となった。
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数日後、慰謝料と言う事でなかなかの額を頂いた私は、またあのダイスをじっと見つめていた。
「・・・あの時がれきに当たらなかったのはこれの御陰なのかしら?」
あの時出した目は1。
だったら・・・
私はダイスを手に取るともう一度転がした。
出た目は4。
「これで・・・」
私はあらかじめ買っておいた宝くじをちらりと見る。
今日はこのくじの当選発表の日。
もしもこれが当たれば・・・!
私ははやる気持ちを抑えながら、発表の時を待った。
そんな時だった。
【ピンポーン】
突如インターホンが鳴った。
私は何気なくその受話器を取って声をかけた。
「はい」
「あ、美琴?私よ!」
「・・・誰?」
「うっそ!忘れちゃった!?三木彩夏よ!!」
ミキアヤカ・・・ミキアヤカ・・・
私は頭を働かせてその人物を検索した。
そして、一人だけ該当する人物を思い出した。
「もしかして・・・高校の時の?」
「そーよ!!久しぶり〜」
三木彩夏。高校の時同級生だった子。
確か本屋の娘だったはず・・・
確かにそれなりに仲は良かったけど、高校以来ずっと連絡は取ってないし・・・
「久しぶりだけど・・・どうしたの?急に来るなんて・・・」
「新聞読んだら美琴の家にがれきが落下したって書いてあったから心配で来たのよ!」
「えっ・・・あ、ありがとう・・・とりあえず上がって」
私は玄関に向かい鍵を開ける。
扉を開けると、おしゃれにこそなったが、確かに彩夏が立っていた。
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「それで・・・どうしたのよ?
本当に心配だから来たって訳じゃ無いでしょ?」
なにやら大荷物を持っている彩夏を家に上げた後、私はお茶を淹れてから彩夏と話し始めた。
「酷いわね・・・まぁそうなんだけど」
またやっかい事か・・・勘弁して欲しい。
「まぁ心配だったっていうのは本当。
・・・実はね、私結婚したの」
「えっ・・・おめでとう」
突然の話しに一瞬固まる。
「ありがと。でさ・・・彼の実家が北海道でこっちに色々海産物を送ってきてくれるんだけど・・・
正直多いのよね・・・二人で暮らしてるのにこんなに食えるかって位でさ〜
親に渡したりしてるんだけど全然はけなくて・・・
美琴のお見舞いがてら色々渡しちゃおうかな〜って」
「ふーん・・・ありがとうね。わざわざお見舞い来てくれて」
「いいのよ〜こっちもこのままじゃ腐らせちゃうし。
それに久しぶりに美琴とも話ししたかったから丁度良いし。あ、中身みせなきゃね」
そういって彩夏は荷物を袋から取り出す。
中から出てきたのは大量の野菜と大きな蟹。
「うわ・・・随分と大きいわね」
「これでも良いのは大分はけたのよ?一人暮らしにはちょっと多いかもしれないけど、
冷凍すればそれなりに持つって言ってたから良かったら食べて?」
「うん・・・本当にありがとう」
「だから良いって・・・それじゃあ私そろそろ帰るわ」
「そうなの?暇なら・・・」
「ううん。帰って旦那にご飯作ってあげなきゃいけないし。
じゃあね。また今度ゆっくり話しましょ?」
そういって彩夏は帰っていった。
私は頂いた物を冷蔵庫に詰めると、パソコンに向かった。
ブラウザを起動し、宝くじの運営サイトにアクセスする。
ディスプレイには私が買ったくじと同じ番号が表示されていた。
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それから私は毎朝ダイスを振るのが日課となった。
出目は安定しなかったが、確実に一個は良い事が起きるのだ。
振らない手は無かった。
ただ・・・
「うっ・・・服がきつい・・・」
暫く経ったある日。私は持ってる服が全然入らない事に気付いた。
どうやら太ったらしい。
「そりゃ良いものを食べ続ければそうなるか・・・」
私は近くにあるゴミ箱に目を向ける。
中には彩夏から貰った北海道の食べ物や、当たった宝くじで買ったちょっといいお値段する
おやつなんかのゴミが入ってる。
「ちょっと調子に乗りすぎたかな・・・?」
ダイエットする事を心に決め、私は新しい服を買おうと思ってブラウザを立ち上げた。
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「よっし、今日も大当たり!」
私は宝くじを握りしめて腕を突き上げる。
その際に自分の二の腕の辺りがぷるんと揺れるのが分かった。
あれからダイエットは遅々として進んでいない。
あれから色々と痩せようとも思ったのだが、どうにも億劫になっていた。
まぁダイスを振ればかなりの確率でお金が当たるのだ。仕事も辞めて最近はずっと家に居る。
勿論外れるときもあるけれど・・・
そんなわけで最近はめっきり運動をしなくなってしまった。
「・・・」
私は二の腕を一瞬見てから、その後自分の体を見つめる。
ちょっと前ならぽっちゃりで済ませられたが、最近はもうデブに片足突っ込んでるだろう。
ズボンの上に乗る腹。かなりのサイズになった胸。
太くズボンを内側から圧迫していく太もも。
体を触って感覚を確かめると、かなりの脂肪がついてるのが分かる。
「・・・太ったわね」
そうぽつりと呟いて私は宝くじを机の上に置いた。
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パリポリと買ったせんべいを囓る。
お取り寄せ品としてなかなかいい値段がした。
その分だけ味は良い。
ここ最近、大きな目のダイスばかり振っている御陰か、かなり良い事だらけだ。
20面ダイスで1が出たときは悲しいけれどもね。
「こんな良い思いができるなんてダイス様々ね・・・でも・・・」
物足りない。
確かに現状20面でも十分と言えば十分だ。
だけど。
「やっぱりあれを使うべきかしら・・・?」
視線をダイス置き場に向ける。
そこには今まで一度も使ってない100面ダイスが置いてある。
椅子から降りて、ダイスを取りに歩く。
それだけで体中の肉が揺れる。
太りすぎたのか、体が重くて仕方ない。
だらんと垂れ下がった腹は丸でエプロンみたいになってるし、胸はその上にだらしなく乗っている。
太ももは最近すれて痛くなってきたし、お尻は椅子を二個並べても足りないほどだ。
そんな体を揺らしながら、私はダイスを手に取った。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
それだけで息が荒くなり、汗がにじんでくる。
「・・・やってやる!!」
勢いよく──自分では振ったつもりだけど実際はぽてっと転がり落ちただけだった──
ダイスを振る。
出た目は・・・54!!
その途端、私の体が爆発した。
いや、実際に爆発したわけじゃ無い。
けど、そう思うほどの衝撃が襲った。
みるみるうちに私の体が太っていく。
「う・・・ぐ・・・うぐぅぅううううう!!」
思わず変な声が出る。
それでも体の肥大化は止まらない。
ぶくぶくと太っていく。
思わず尻餅をついてしまう。
「いやぁ・・・いやぁ・・・!!」
私の悲鳴もむなしく、どんどんと体は広がっていった。
・
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あれから数日経った。
私はそれでもダイスを転がしている。
もうどれだけ体重が増えようとも気にしない。
そんな事よりも、幸福な事が多い方がいい。
「さぁ・・・今日はいくつかしら・・・」
私は手にした100面ダイスを必死に振るのだった。
里中美琴
身長:157cm
体重:46kg → 54kg → 84kg → 160kg → 210kg → 287kg
B:89cm → 93cm → 108cm → 137cm → 147cm → 169cm
W:58cm → 64cm → 97cm → 149cm → 168cm → 191cm
H:81cm → 89cm → 99cm → 128cm → 157cm → 188cm