縁取った世界で

縁取った世界で

 

 

塩谷 由里(しおや ゆり) 18歳 身長152cm 体重60kg B:97 W:69 H:89
所謂オタク系女子。大学一年生で16歳から同人誌を自分で刊行するなど精力的に活動しているが、
最近スランプに陥っており、それに時間を割きすぎて学業が疎かになっている。

 

 

 

 

 

「・・・だぁあ!!駄目だ!全く浮かばん・・・!!」

 

思わず声を上げながら頭を抱える。
締め切りまで後一ヶ月弱。
遅々として作業が進まない。

 

「まずい・・・いい加減下書きに移らないといけないのに、ネームすら終わってない・・・!!」

 

今度の即売会は絶対に落とせないのに・・・
それにそろそろ試験があるし・・・そっちの勉強も全然出来てない・・・!!

 

「なんでこういうときに限ってアイデアが出ないかなぁ・・・!!」

 

しばらくじたばたしてみたが、結局解決方法は見つからなかった。

 

「・・・しょうがない。少し気分転換しよう」

 

こういう時は焦っちゃ駄目だ・・・
少し散歩してネタになりそうなものを探そう。
外をちらりとのぞくと、降っていた雨は止んでいた。

 



 

「雨の降った後のにおいって割と好きだけど・・・降りそうな天気はやめてほしいわ・・・」

 

空を見上げながらそう呟く。
曇天というのかな、目を離したら降り出しそうだ。

 

「・・・傘持ってきておいて良かったかも」

 

手にした傘をいじりながら私はぶらぶらと歩く。
人ごみを避け、細い路地へと入っていく。
こういう時は騒がしくない場所が良い。
考えながら歩くとどうしても注意が散漫になるから。

 

「うーんどうしよう・・・大まかな流れしか決まってないんだよねぇ・・・
 オチ・・・オチ・・・どこかそこいら辺に落ちてないかな・・・」

 

そんなつまらない事を呟きながら色々と歩く。
すると、私の目の前に小さなお店が見えた。
レトロチックな感じの佇まいで、表には看板がぽつんと立ってる。

 

「・・・美貌換金屋?」

 

変な名前だ。
窓ガラスから覗くと中には色々な小物が置いてある。

 

「・・・何かネタになりそうな物あるかな?」

 

なんとなく面白そうな感じがする。
扉の取っ手を手に取り、ゆっくりと開ける。

 

『カランカラン・・・』

 

ドアベルが鳴り、少し古い感じのする匂いが鼻にくる。

 

「いらっしゃいませー」

 

店に入ると、変な格好の女性が居た。
黒いワンピースに上に赤いジャケットを羽織って、ニコニコと笑いながら
カウンターの向こうで立っている。

 

「あ、どうも・・・中、見ても良いですか?」
「ええ、どうぞ!わからないことがあればお聞き下さい」
「あ、はい」

 

笑ってる店員さんに背を向けて色々と物色する。
・・・変な薬に奇妙な人形。
ちょっと変わった形の瓶に綺麗だけどどこか不気味なアクセサリー。
なんというか、昔読んだファンタジー小説の雑貨屋みたい・・・

 

「なにかお探しですか?」

 

少ししたら、カウンターの方から声がかけられた。

 

「あ、その・・・今ちょっとしたその・・・漫画を描いてまして。
 それのネタになりそうなものが欲しくて・・・」
「ああ、それなら良い物がありますよ」

 

そう言うと店員さんはカウンターの奥へと引っ込んだ。
しばらくごそごそやってから、こちらへと来る。

 

「はい、こちらです」

 

そう言って渡してきたのは眼鏡だった。

 

「・・・眼鏡?」
「ええ、これを通して覗けば見たいものが見える素敵な眼鏡ですよ」

 

・・・見たいものが見える?
レンズすら入ってない、どう見ても伊達眼鏡なのに?

 

「ふふ、実はこれは魔法の眼鏡なのです!」

 

仰々しくそういう店員さんに、私は疑いの目をかける。

 

「む、その顔は信じていませんね?
 初回サービスで一度お試ししてみてください!」

 

そう言って眼鏡を私に押し付けると、店員さんは奥へと引っ込んだ。
そしてすぐさま何か本を持ってくる。
・・・洋書だ。
しかも明らかに難しそうなやつ。

 

「さぁ。その眼鏡をかけてこの本を読んでみてください。
 そうすればわかりますから」

 

ノリノリの店員さんに押されて、仕方なく眼鏡をかける。
その状態で本を受け取って眺めてみた。
・・・英語ですらないぞこれ。

 

「えっと・・・この世界における霊魂のあり方と我が眷属についての──って、なにこれ!?」
「ふふふ・・・どうです?素晴らしいでしょう?」

 

店員さんが誇らしげにする横で、私は固まってしまった。
明らかに見たこともない様な文字の本を、読んでしまったのだ。

 

「す、すごい・・・!!」
「ええ。どうです?買って見ますか?」
「ぜ、是非!!」

 

これなら試験の勉強をしなくても・・・いけるかもしれない!

 



 

「わ、わかる・・・!」

 

試験本番。
思わず小声でつぶやき、試験官の先生ににらまれる。
まるで蝶々結びされた紐を解くかのように、私はすらすらと問題を解いていく。

 

「これなら・・・!!」

 

私はあの時店員さんに説明された事を思い出しながらも解いていく。
そう、この眼鏡を通してみれば、見たいことが何でも見える。
例えば目の前の人の名前であったり、飾ってある絵が本物かどうかだったり。
そういう『私が知りたいこと』が文字として見えるのだ。
だが、使うたびに私の『美貌』が何らかの形で失われるらしい。

 

「失われる美貌がなんであるかは私にも・・・
 ですが、決して健康に影響が出るようなことにはなりません。
 まぁこれの一回の使用で失われる美貌の量はそう多くはありませんけど・・・」

 

店員さんはそう説明してくれたが、本当かはわからない。
だから使うのはかなりためらったが、今のところ違和感は全くない。
とにもかくにも、今はこれを解かないと・・・

 



 

「う”−・・・」

 

試験が終わり、家に帰った私はいつものように原稿を前に唸っていた。
相も変わらずネタが上手くまとまらないのだ・・・

 

「・・・眼鏡かぁ」

 

机においてある眼鏡をチラッと見る。
確かにこれを使えば漫画は描けるだろう。
だが、あんまりほいほいと使うのも・・・

 

「でも落としたくはないし・・・ええい!」

 

仕方なく眼鏡をかけて原稿に向かう。
すると目の前には私の漫画の続きが浮かび上がる。

 

「やだ・・・これ面白い・・・!!」

 

思わずそんなことを呟いてしまう。
目の前に現れたネームはそれまでの流れをきちんと汲みつつ、きれいに落ちをまとめていた。
私はペンを取ると、ひたすらそのネームに沿って漫画を描く。

 

「・・・良いもの買ったかも」

 

原稿をひたすら埋めつつ、私は今までにない手ごたえを感じていた。

 



 

それから私は何かと眼鏡を使っていった。
例えば見たこともない骨董屋に行って、安値で売られている良い品を買って、
きちんとした場所に転売してみたり。
海外小説を翻訳する内職をちょっとやってみたり。
試験も終わり、原稿も終わった私は長期休暇を使って小遣い稼ぎをしていた。
それなりの額が稼げたおかげで、即売会用の資金用よりも大量にたまったお金で
色んな円盤やグッヅが買えてホクホクだ。
軽い足取りで、私はさらにお金を稼ぐのだった。

 



 

「あ、あれ?」

 

ある日の事。
私は違和感を感じた。
服がきついのだ。

 

「・・・縮んだ?」

 

うちの洗濯機は古いタイプだから、そういう事もあるかもしれない。
私は深く考えずに服を着ると、外へといつものように小遣い稼ぎをしに行った。

 



 

「いや、おかしいよねこれ」

 

私は自分の体を触りながら色々考える。
いつの間にか、私の体は完全にデブになっていた。
いや、確かにそもそも少し太めだったけど、ここまで酷い有様にはなってなかったはず・・・

 

「・・・まさかこれがあの『支払い』とか言う奴・・・?」

 

お腹の肉を摘みながら、あれこれと考える。
なにか代償が必要だとは言われて居たけど・・・

 

「これが代償・・・?」

 

醜く太った腹。
下品な胸。
脂肪だらけの尻。
丸太みたいで邪魔な太もも。

 

「・・・別にコスプレするわけでも無いし、いいか」

 

動けなくなるならともかく、健康に被害が出ることは無いって言ってたし、
ちょっと太るぐらいなら別に良いか。
そう考えて、私は放置することにした。

 



 

「うーん・・・何とか捌けたけど、次も買って貰えるかな?」

 

即売会が終わり、私は出費と売り上げを比べながら電車に揺られる。
刷った分の7割が消化出来たとは言え、次回はどうか分からない。

 

「・・・まぁこれが有るし大丈夫でしょう」

 

何となく癖でかけてる眼鏡を触りつつ、ボーっと窓の外を眺める。
大分暗くなった外のせいか、ガラスに私が反射して映る。

 

「・・・」

 

目の前に映る私は巨デブと呼ぶにふさわしい体型だった。
最近体重を量ってないが、もしかしたら三桁なのかもしれない・・・

 

「流石に少しは痩せる努力するかな・・・?」

 

少し恥ずかしい気持ちになった私は、ダイエットを決意するのだった。

 



 

「うぅ・・・痩せない・・・」

 

私は鏡の前で様々なポーズを取ってみる。
どこもかしこも肉だらけだ。

 

「これでも運動してるんだけどな・・・」

 

毎日暇な時間はランニング等をしているのだが、一向に痩せない。

 

「・・・原因は分かってるんだけどね」

 

そう、あの眼鏡だ。
一度付いた癖は中々抜けない。
ついついあの眼鏡を使ってしまい、ダイエットが全然進まないのだ。
御陰で私の体は相撲取りかなにかかというレベルまで来てしまった。
Tシャツの柄を酷い有様にする胸。
そもそも丈が足りなくてヘソが丸出しになるお腹。
ズボンじゃもうはけるサイズが全然無く、スカートもロングスカートじゃないと捲れてしまう尻。
太すぎて内側が擦れる太ももに、まるでハムみたいにまん丸な腕。
顎だって肉が付いてたぷたぷだし、顔は丸顔どころの話じゃ無い。

 

「はぁ・・・仕方ない。なるべく押さえるように努力するか」

 

流石にこれ以上はなけなしの女としてのプライドが許さない。
なるべく頼らないように、ケースに入れて置くようにしよう・・・

 



 

「・・・そう思ってたんだけどなぁ・・・」

 

原稿に向かいつつ、私はあの時のことを思い出していた。
あれから数年。
大学をなんとか卒業した私は漫画家になっていた。
一応大手の出版社で月刊誌に出してる。
・・・まぁまだまだなんだけどね。
あの即売会の作品が今の編集さんの目に偶然止まり、
あれよあれよと漫画を描くことが決まっていった。
とは言え学生だった私は、卒業までは読み切り作品を何本か出した程度だったけど。

 

「御陰で結局眼鏡は常に使う羽目になっちゃったな・・・」

 

丸々とした自分の体を眺めながら、私は一人呟いた。
この前測ったときは230kgだったっけ・・・
一応動けるけど、最早人じゃないなぁ・・・
最近じゃ面倒で漫画を描く事と食事とトイレ以外は全く動いてない。
それなりに単行本が売れた御陰で資金に余裕があるから
ハウスキーパーさんを雇っているから出来る芸当だけど・・・
でも流石にトイレを手伝って貰うのは毎度心苦しい・・・
痩せようという気が無いわけじゃ無いけど、この体重じゃどうしようも無いという気もする。

 

「・・・原稿やろう」

 

なんだか考えるのも面倒になった私は、原稿に向かってペンを走らせる。
勿論、眼鏡をかけて。

 

「・・・胸が邪魔で描きにくい・・・」

 

・・・やっぱり少しは痩せようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塩谷由里
身長:152cm
体重60kg  →  65kg  →  89kg  → 106kg  → 134kg → 248kg
 B:97cm → 101cm → 115cm  → 122cm → 134cm → 149cm
 W:69cm →  74cm  →  97cm  → 104cm →  121cm → 194cm
 H:89cm →  91cm  → 107cm  → 116cm → 129cm → 160cm


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