ナイナイ?アルアル?
向坂 夢子(こうさか ゆめこ) 15歳 身長151cm 体重33kg
自分に全く自信が持てない少女。かなり貧弱な体つきで、それを隠す為に常に猫背。
「・・・はぁ」
ため息を付いて、私は少しだけ上を向いた。
・・・と言っても俯いたのから普通になっただけだけど。
高校に入って3ヶ月とちょっと。
夏休みだっていうのに私は沈んでいた。
それは・・・
「友達・・・出来なかったなぁ・・・」
自分の不甲斐なさにだ。
昔からどうも周りと比べて駄目だった。
運動は駄目だし、ドジだし、可愛く無いし。
だからどうしても話しかけるのに気後れしちゃう。
そんな感じで小学校も中学校も過ごしてきた私に友達なんて出来る訳がなかった。
高校で頑張ってみようと思ったけど、それも駄目だったし・・・
「はぁ・・・」
もう一度ため息を付いて俯く。
「・・・あて!」
その拍子に看板に足をぶつけてしまった。
ぶつけた膝を擦りながら看板を眺めてみる。
「・・・美貌換金屋?」
変な名前のお店だ。
ぶつけた拍子にずれた看板を元に戻してから、そのお店を覗いてみる。
小物系のお店なのか、窓から覗くと色んな商品が沢山並んでいるのが見える。
「・・・ちょっと面白そう」
そう思った私は珍しく好奇心を働かせてお店の中へと入っていった。
扉を開けるとカランカランとドアベルの音が鳴る。
中はひんやりとしていて心地良い。
「いらっしゃいませ」
「あ・・・どうも・・・」
奥のカウンター越しに店員さんが話しかけてくる。
黒いワンピースに真っ赤なジャケット・・・正直ちょっとアレなセンスだと思う。
「当店のご利用は初めてですね?」
「あ・・・その・・・はい・・・」
「では当店のシステムをご説明させていただきます!
当店はお客様のご希望をお客様の美貌と引き替えに変えさせていただきます」
「美貌・・・」
「はい!例えるならば・・・お金が欲しいという方にはその代金に見合った分の
お客様の美しさを頂くシステムです。
例えば美しい髪の毛をお持ちならそれを、綺麗な肌をお持ちでしたら
その質感をといった感じですね」
「はぁ・・・」
やっぱり変な店だ・・・
そういうジョークグッズでも売ってるのかな?
「何か欲しい物がございましたらお気軽に」
「じゃあその・・・友達の出来るグッズとありませんか?」
そう尋ねると店員さんは少し私を見つめた後、ふむと一言言って奥へと戻ってしまった。
やがて戻ってきた店員さんの手には、小さな髪留めが一つ乗っていた。
「お友達を作る・・・というアイテムはございませんが、
お友達を作るお手伝いをする物ならございます。
こちらは付けている間、身に着けている人にどんどんと自信をつけるという物でして・・・
貴方ならきっとこれを着ければすぐにお友達も出来ますよ」
「・・・はぁ」
そう言って店員さんに渡された髪留めを見つめる。
小さな模様の付いた至って普通の髪留め・・・
店員さんの言葉は信用出来ないけど、普通に可愛いデザインかも。
「じゃあ・・・それ一つ貰えますか・・・?」
「はい。今お包みしますね」
そう言って店員さんは慣れた手つきで紙袋に髪留めを入れると私に渡してくれた。
「えっと・・・」
「先程も申し上げた通り、御代は美貌で頂きますので」
財布を出そうと鞄を漁っていた私にそう声をかけてくる店員さん。
私はでもと食い下がったが、店員さんは一向に受け取ろうとはしなかった。
なんだか夢でも見てたかのような気分のまま、私はお店の外へと出るのだった。
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「・・・暑い」
翌日、折角だからと髪留めを着けてみた私は何となく散歩に出ていた。
・・・正直暑くて後悔してる。
「・・・戻るかなぁ」
そもそも自信を付ける髪留めを着けてるからって外に出る必要は無かった気がする。
「・・・あ」
ふと、そんな時にクラスメイトの大村さんを見かけた。
当然話した事なんて無い。
・・・だけど。
「・・・何か困ってるのかな?」
何かを探してるような・・・そんな感じだった。
普段の私ならここで迷うだけ迷って、大村さんがどこかに行ってしまうというオチだろう。
でも、今日の私は・・・
「あ、あの!」
大村さんに駆け寄って声をかけていた。
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大村さんの困り事は割と簡単な事で、行きたい場所に行きたかったけど
全然そこが見つからないという話だった。
『ホントありがと!すっごい助かっちゃった!』
偶然だけど、私が知っている場所だったから案内したら大村さんが
スゴイ嬉しそうにお礼を言ってくれた。
なんだか・・・それだけでもスゴく嬉しかった。
「・・・自信、出たのかな?」
なんて言うか自信というか勇気って感じだったけど。
とにかく・・・プラシーボ効果かもしれないけどこの髪留めの御陰かな?
「・・・しばらく着けておこうかな?」
そう決めると、私は夏休みの間殆どを髪留めを着けてみた。
2週間ぐらいすると、何となく考えが変わった気がするようになった。
昔なら私じゃ絶対駄目だと思うような事に挑戦してみたくなった。
ずっとかけていたメガネをやめてコンタクトにしてみたり、ずっと似合わないと思ってた化粧を
うっすらとだけどしてみたり。
段々そう言うのが楽しくなってきて、いつもだったら行かないようなファッション系のお店とか
行ったり。
そんな事を繰り返してたら、夏休みが終わる頃にはちょっと前の私とは全然違う雰囲気になってた。
自信が付いた御陰か貧相だった私の体も色気っていうか、そう言うのが出てきてた。
登校日に学校に行ったらみんなビックリしてて、可愛い可愛いって褒めてくれた。
・・・私って可愛いのかも。
そう思ったらもう少し積極的になっても良いのかもしれないと思えてきたのだった。
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「・・・あれ?」
9月も終わりの頃、私は自分の体に違和感を覚えた。
「私ってこんなに太ってたっけ?」
鏡に映る私の体は貧弱なんて言葉をどこかに置いてきたようになっていた。
ぽっこりと出たお腹に丸くなってきた胸。
腕や足も記憶に有る物より一回りは太い。
「・・・少し食べ過ぎたかな?」
最近友達と一緒に買い食いするのが増えたからかも。
・・・でもまぁ、元々貧弱だったしこの位なら別に良いか。
みんなも可愛いって言ってくれるし。
「ブラとかは買い換えなきゃなぁ・・・」
お金の出費だけはどうにかならないかなぁと思いながら、
私はすこしきつくなった制服を着るのだった。
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「はぁ・・・こたつっていいなぁ」
冬休みに入り、私は毎日ごろごろしていた。
こたつに入りながらポテチを食べて、テレビを見る。
宿題はまだ終わってないけど・・・まぁ何とかなると思うし。
「あんた・・・少しは勉強してる?最近だらだらし過ぎよ?
気付いたらブクブク太っちゃってるし!」
「ん〜・・・大丈夫だよ〜」
「本当でしょうね?全く・・・この間まで真面目な子だと思ったのに」
お母さんに言われ、私は自分の体を見る。
前にでぷんと出たお腹。
その上にぽよんと乗る胸。
Lサイズのズボンじゃないと入らなくなった足に大きく横に広がってきたお尻。
世間ではデブって言われる体型かもしれないけど・・・別に大丈夫でしょ。
みんなも可愛いって言ってくれるし、この位の体型の人いっぱい居るし。
高校生だからって痩せてなきゃいけないって事は無いでしょ。
「・・・ふぁ」
お菓子を食べ過ぎたのか、急に眠くなってきた。
私はテレビを消すと、そのままこたつの中で横になって寝るのだった。
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新学期が始まって、私は学校で妙な声を聞くようになった。
なんて言うか、クスクス笑うような声。
「・・・なんだろ?」
よく分からないけど、多分私に対してじゃないと思う。
笑われる要素ないし。
「おはよ〜・・・ユメっち大丈夫?」
「オーちゃんおはよ。大丈夫って何が?」
「いや・・・制服全然サイズ合ってないよ?」
そう言って大村さん・・・オーちゃんが私を指さす。
そこには私の特大のお腹があった。
まん丸で妊婦みたいなお腹に、これまた特大の胸。
スカートは大きくなったお尻でと殆どめくり上げられてるし、足は太すぎて丸太みたいだ。
最近じゃ背中にもお肉の段が出来るし、アゴも立派に二重顎だ。
当然去年の初めに測ったサイズの制服じゃ足りる訳無い。
でも・・・来年度になったら買い換えるし、大丈夫でしょ。
「ああ・・・別に大丈夫だよ?」
「ホントに・・・?」
「うん!それより今日何か食べに行かない?」
「良いけど・・・お金とか大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!」
クレープ食べるぐらいのお金ならまだあるし。
太っちゃうかもしれないけど、私は可愛いって評判だし大丈夫でしょ!
私はそのままオーちゃんと教室に向かう。
そういえば今日宿題の提出日だっけ・・・やってないけどまぁ大丈夫でしょ!
向坂夢子
身長:151cm
体重33kg → 39kg → 72kg → 113kg
B:69cm → 74cm → 92cm → 114cm
W:47cm → 53cm → 79cm → 107cm
H:70cm → 79cm → 101cm → 126cm
「あらあら・・・髪留めを外す自信は付かなかったようですね・・・
きちんと説明しましたのにねぇ・・・
『付けている間、身に着けている人にどんどんと自信をつける』と・・・
まぁ彼女も幸せそうですし、結果オーライですかね。
・・・まぁこのままですとどこまでも太ってしまいますが・・・
そこまではサポート対象外ですわね」