巡る想いは蜷局を描き

巡る想いは蜷局を描き

 

 

狩野 凜(かの りん)16歳 身長161cm 体重41kg B:83 W:54 H:76
卯楼学園の二年生でミスコン準優勝者。プライドが高い美少女。

 

亀木 愛瑠(かめぎ める)17歳 身長164cm 体重43kg B:86 W:52 H:81
卯楼学園の二年生でミスコン優勝者。

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃないわよ・・・!何で私が二位なのよ!」

 

私は学校からの帰り道を肩を振るわせながら歩いていた。
頭に来る。
何故・・・あんな女が優勝するの!

 

「私は・・・一番であるべきなのよ!」

 

今日文化祭で行われたミスコンで私は二位だった。
一位は亀木・・・
周りは清楚で大和撫子なんて言うけど、あんなの地味で根暗なだけじゃない!
別にミスコン自体はどうでもいい、単に優勝できないのがむかつく!

 

「あー・・・もう!」
『ふむ、中々どうして面白い』
「・・・!?」

 

やばっ!見られた!?
外では猫被ってきたのに・・・!

 

『ああ、安心したまえ。君の本性を言いふらすようなことはしないさ』

 

声のする方に振り返ると、男が立っていた。
背はかなり高い方で、全身真っ白い服装という変わった出で立ち。
帽子を深くかぶっているから顔はキチンとは分からないが、どうもは虫類のような印象を受ける。
その男が薄ら笑いを浮かべながら突っ立っているのは中々に不気味だ。

 

「ああ、そう。そりゃどうも!じゃあ私は急ぐから」
『まぁ待ちたまえ。君にいいニュースを持ってきたんだよ』
「はぁ・・・?」

 

いいニュースですって?
どこの誰とも知らない男が?

 

「結構、いきなり知らない男にそんなこと言われても意味分からないし」

 

そう言って男の横を通り過ぎようとすると──

 

『ミスコン。残念だったね』
「──ッ!」

 

こいつ・・・私の気にしていることを!?

 

『そう警戒しないでくれ。これでも神様でね?』
「・・・生憎と無神論者よ」
『そうかい、じゃあ認識を改めて貰おうか』
「・・・」

 

この男・・・何が言いたいのよ。

 

『君はこう思っている。
 ─なんで私が勝てないのか。私の方が優れているのに─と。
 違うかな?』
「・・・そうだとしたらどうなのよ」
『彼女を陥れる方法がある。興味はあるかな?』

 

ニタァと嫌な笑顔を見せながら男が笑う。

 

「・・・」
『沈黙は肯定として扱うよ。
 なぁに、簡単さ。君はただ、これを持っていれば良い』

 

男が何かをこちらに差し出してくる。

 

「・・・蛇の人形?」
『ああ、そうだとも』

 

キーホルダー位のサイズで、白い小さな蛇を模した人形だった。

 

「これがなんだってのよ」
『君の願いを叶えてくれる素敵な物さ。
 さぁどうする?君はそれを持っているだけで願いが叶うんだ』
「・・・」

 



 

【チャラ・・・】

 

「・・・はぁ」

 

結局私はあの人形を貰ってしまった。
まぁ貰うだけならタダだし。
ベッドの上でゴロゴロとしながら人形を眺める。

 

「・・・?」

 

なんとなく、この人形があの男とかぶって見える。
男の格好が真っ白だったからだろうか?
それとも──

 

「・・・寝よ」

 

布団をかぶってまぶたを閉じる。
下らない。
あの男の顔がこの蛇に似ているなんて下らない考え事をしないで寝よう。

 



 

「おはよう!狩野さん!」
「おはようございます、森川さん」

 

学校に登校して、クラスの連中と挨拶をする。
態々片付けのために来なきゃ行けないのが面倒で仕方ない。
何より猫かぶらないと行けないし。

 

「昨日は残念だったねぇーでも二位もすごいよ!」
「ありがとうございます、ですがあれは私よりも亀木さんが優れていた証拠ですよ」

 

・・・この子、空気読めないというか無神経よね。

 

「そういえば亀木さん、今日体調不良でお休みしてるらしいね」
「そうなのですか?まぁ彼女に限ってズル休みと言うことは無いでしょうから、風邪ですかね?」
「そこまでは分かんないなぁ〜」

 

まだアレが効いたと判断するには早いけど、何かあったのは事実だ。
・・・暫くは様子見ね。

 



 

「・・・ありがとうございます。亀木さんによろしく伝えて下さい。」
「いやいや、やっぱりライバルの動向は気になるのかな〜」
「ふふっ。心から亀木さんを心配してるだけですわ」
「まぁアタシとしてはどっちでもいいけどね〜じゃ!また何か有ったら教えるよ」
「はい、頼りにしてますわ」

 

手を振りながら立ち去っていく女子生徒の後ろ姿を見送りながら私は考える。
文化祭が終わってから亀木は姿を見せてない。
家からの説明だと「体調不良」だと言うが・・・
そこで彼女と親しい女子生徒──名前は・・・なんだったか──に
亀木の体調について聞いて貰った。
結果としては激しい腹痛だとかなんとか。

 

「・・・効果あったのかしらね?」

 

まだ断定ではあるが、こいつは本物の可能性が高い。
そろそろ昼休みが終わる・・・
私は蛇の人形を弄りながら教室へと戻った。

 



 

『やぁ、久しぶりだね』
「・・・」

 

その日の帰り道、またあの男が道に立っていた。

 

『その様子だと効果は出たようじゃないか』
「何したの?」
『君の願いをかなえただけさ』
「私の願い・・・?」

 

ニヤニヤと薄気味悪い笑顔を見せながら話しかけてくる。

 

『まだ彼女とは直接会ってないようだね。見ればわかるさ』
「そう・・・一応感謝すればいいのかしら?」
『いや結構、こちらとしてもメリットがあるからね』
「メリット?」

 

変な発言に疑問を抱く。
亀木が登校してないことと、こいつに一体何の関係が?

 

『さて、私はそろそろ戻る事にしよう。ではまた』

 

男はそのまま細い路地へと入っていく。
すぐに追いかけたのだが、男の姿はもう見えなかった。

 



 

私が男の言葉を理解したのはそれから2週間ほどたったことだった。
亀木が文化祭以降初めて登校した。

 

「・・・なっ!?」

 

そこには学園のアイドル亀木愛瑠の姿は無かった。
居たのは醜く肥え太った見るからに愚鈍そうな女だった。
一歩歩くごとに体を大きく揺らし、ふひーふひーと荒い呼吸をする。
目は頬肉のせいで細まり、顎は首共々肉に埋もれている。
腕を振るうごとに揺れる二の腕は、酷く窮屈そうだった。
かなり大きめの制服を着ているはずなのに、それでも弾けそうな胸元からは
色白い肌がちらりと見え隠れしている。
それよりも育った腹は最早ボタンを留めることすら出来ないのか、完全にヘソが見えている。
スカートを押し上げるかのように育った尻が正面からでもはっきりと見える。
歩く度にこすれる太ももは、片方だけで私の腰よりも太いだろう。

 

「か、亀木さん!?どうなさったんですか!?」
「ふぅ・・・ああ、狩野さん・・・はぁ・・・はぁ・・・
 お久しぶりです・・・」
「え、ええ・・・お久しぶりです・・・そ、それでその体は・・・?」
「分かりません・・・文化祭が終わったぐらいから急激に太り始めてしまって・・・」

 

見れば分かる。
それはつまり・・・

 

「そ、その・・・ごめんなさい、なんて言葉をかければいいのか・・・」
「いえ、いいんです。
 お医者様も健康だと言ってますし、意外とこの体も悪くないですから」

 

そういう彼女の笑顔は辛そうで。

 

「・・・ごめんなさい」
「いえ、謝らないで下さい。狩野さんが悪い訳じゃ無いんですから」

 

違う。
悪いのは私で──

 

「それでは、そろそろ行かないと遅刻してしまいますから」
「・・・ええ、ではまた」
「はい、また今度」

 

彼女の後ろ姿を私は直視出来なかった。

 



 

『会ったようだね?彼女と』
「アンタ・・・ッ!?」

 

学校から帰る途中、やっぱりアイツと会った。
こいつの見透かしたような態度にイライラする。

 

『まぁそう怒らんでくれ。こっちは君の願いを叶えただけだ』
「誰があそこまでやれって言ったのよ!?」

 

そもそも私はあんな事を望んでない!

 

『自分はあんな事を望んでないという顔だね。
 それは違う。君に渡したその人形は君の願いをこちらへ送り届ける物。
 こっちはそれを叶えただけ』
「私の願いですって・・・!?」
『そうだとも、君の願い。願望。「あの女が私よりも醜くなればいい」という自分勝手な願い』
「仮にそれが私の願いだとしても、あれはやり過ぎよ!」
『まぁそんなことはどうでもいい』

 

男は静かにそう言い切った。
それが酷く無関心そうで。
なおのこと私をイライラさせる。

 

「ッ!いいから!アンタがあれをやったなら元に戻しなさい!今すぐ!」
『おやおや・・・自分勝手だな、君は』
「うっさい!何でもいいわよ!」
『だが、それは出来ない』
「はあっ!?」

 

ふざけるんじゃ無いわよ!

 

『別にふざけてないさ、君の願いを叶えるために"力"を使ったからね。
 そのお陰で使えないのさ』
「・・・どうやったら回復出来るのよ、その力とやらは」
『自然に待つしか無いな』
「・・・どの位かかるの?」
『ざっと4、50年かな』
「アンタねぇ・・・!?」
『まぁ方法が無い訳じゃ無い』

 

勿体振りやがって・・・!

 

「聞かせなさい!」
『君が私に協力してくれればいい』
「協力?」

 

一体何に?

 

『私の因子を君に埋め込む。
 そうすれば君を通して力の源が簡単に集まるのさ』
「・・・それだとどの位で元に戻せるわけ?」
『ざっと3ヶ月かな?』
「・・・いいわよ」

 

その位してやる・・・
そうじゃないと私のプライドが許さない。

 

『交渉成立だ。ではこれを飲みたまえ』

 

男が手渡してきたのは赤い液体の入った小瓶。
それをひったくるように奪って、私は一気に飲み干した。

 

「・・・うげっ」

 

まるで廃工場のような腐臭と鉄臭い匂い。
どろりと粘っこい液体が喉に絡みつく感触。

 

「気持ち悪い」
『素直で結構。さて、そろそろかな?』
「何が──!?」

 

どくりと、体が脈打つ。
体がぶるぶると震える。
まるで内側から押し出されるような感覚。
ミシリと、骨がねじ曲がるかのような激痛が駆け回る。

 

「がっ・・・はぁ!」
『今は痛いだろうけど、すぐに収まるさ』

 

ふざけんな!
この痛みが治まったら、その憎たらしい顔、ぶっとばしてやる・・・!

 



 

『さて、鏡を見てみるかい?』

 

ようやく痛みが治まり、一発ぶん殴ろうと思った時、アイツが鏡を差し出してきた。

 

「・・・これ・・・なんなのよ」

 

受け取った手鏡で自分を見た時、私は固まってしまった。
なぜなら、そこに映ったのは人じゃなかったからだ。
顔の形状や髪の毛なんかは私のままだけど、皮膚が真っ白な鱗に変わっていた。
瞳はは虫類独特の物になり、黄色く輝いている。
驚いた拍子に開いた口の中には、細く先割れた舌が見える。

 

「ちょっと!どういうこと──!?」

 

男に詰め寄ってやろうと思い、立ち上がろうと足に力を入れようとして、また愕然とした。
足が無かった。
正確には足が──正確には股下辺りから──まるで蛇のような姿になっていた。
上半身は肌が鱗になっている意外は"いつも"と変わりないのに、下半身は完全に蛇だ。
これではまるで──

 

「化け物じゃない・・・!」
『自分の事をそう卑下しなくてもいいじゃないか。
 顔は今まで通り可愛いままなのだから』

 

クスクスと笑うかのような声でこちらに話しかけてくる。
なんとかバランスを保ち、体を起こす。
前に進もうとすると、意外にも体は答えてくれた。

 

「なんなのよこれ!!」
『見たままさ、私は元々蛇だからね。力を受け取る時に送る側が蛇の姿でいてくれると楽なんだ』
「だからって・・・なんの説明も無しに!」
『君が聞かなかっただけだよ。分からないことは聞きましょう。
 きちんと頭を働かせましょうってね』
「くっ・・・!」

 

心の底から腹が立つ。

 

「・・・とにかく、これで亀木は元に戻れるんでしょうね?」
『嗚呼、勿論だとも。
 では私の住処に行こうか?そのままでは目立つだろう?』
「・・・分かった」

 

男は私の返事を聞くと、私の手を取ってすっと飛び上がった。

 



 

『──亀木さんは今年度の新人アイドル賞に見事当選。
 一時期原因不明の激太りを経験しましたが、今では──』

 

テレビでは亀木がアイドルとして成功していることを大々的に取り上げている。
あれから大分経った。
私はあの男──蛇神とか言うらしい──に連れられ、アイツの住処で過ごしている。
この姿になってから家族とは会っていない。
まぁ会える訳無いんだけどね。
仮に会えたとしても、向こうは私のことを忘れている。
私はアイツの眷属とやらになったらしく、
人であった時に関わった人々の記憶からは消えているらしい。
それに、もう一年以上経つ。
どの道みんな忘れているだろう。

 

『ただいま。今日もしっかり食べたかな?』
「・・・見れば分かるでしょ」
『結構結構。では追加だ』

 

私の仕事はただひとつ。
こいつのエネルギー源としてひたすらに食べ物を食べて、肥え太ること。
二ヶ月ひたすら食べて一度吸収、また二ヶ月ひたすら食べるのを繰り返している。
今は二ヶ月目の後半。
この時期になると、私の体も酷い事になる。
ふと、私は自分の腕に目をやる。
太く育った腕は鱗のせいでアナコンダとかああ言った大蛇を
想わせるような見た目になってしまった。
その手で頬を触る。
鱗独特の感触の下にやわらかな贅肉を感じる。
この部屋に鏡が無いから分からないが、顎は恐らく首と一体化してるだろう。
そのまま俯くように下を見る。
巨大になりすぎた胸が視界の半分以上を覆う。
お陰で下に落ちた物を拾うのに苦労する。
触ってみるとずしりと重みを感じる。
因みに誰も見ないので服を着ていない。

もっとも乳首もどこかに消えてるし、見られて困る場所は精々アソコ位な物だ。
そのアソコも腹肉で覆われて見えないけど・・・
それ位に育った腹は胸を押し上げるように支えている。
まぁ自分では見えないんだけどね。

 

『どうかしたのかね?』
「・・・別に」

 

アイツに注意されて、止まっていた食事を再び再開する。
恐らく私はこれからここで一生を過ごすのだろう。
ひたすらに食べて吸われてを繰り返して。
そうして一生を送るのだ。

 

「・・・最悪ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやはや、まさかここまで上手くいくとはね。
 現世の人達は単純で助かるよ。
 まぁ、彼女が単純なだけかもしれないけどね。
 まぁいい、彼女が私の手の中に入ったことを喜ぼう。
 嗚呼、我が愛しき君よ。ここで二人で──』


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