蝶の羽ばたきはいつ消える

蝶の羽ばたきはいつ消える

 

 

岡 弘道(おか ひろみち)21歳 身長178cm 体重58kg
近所では有名な変人で、自称「発明家」である。

 

龍田 麗香(たつだ れいか)21歳 身長165cm 体重43kg B:89 W:54 H:79
弘道の幼なじみで、日々弘道の事を心配している優しい人物。

 

 

 

 

 

「弘君、はいこれ。煮物余ったから」
「ん、さんきゅ。でも態々持ってこなくて良いんだぜ?」

 

俺がいつもの通り発明を作っていると、幼なじみの麗香が差し入れを持ってきてくれた。
いつも感謝しているが、なんとなく口に出すのが恥ずかしい。
結局軽口を叩いてしまった。

 

「まま、いいじゃない。それより何作ってるの?」
「あー・・・言っても判らないと思うから言わね」
「えーケチー!聞いてみないと分からないじゃない」

 

俺のことを心配しているのか、こいつは良く俺の発明にちょいちょい首を突っ込みたがる。
これだけは本当に勘弁して貰いたい。

 

「あー・・・あれだ。某猫型ロボットの持ってる道具に
 『自分の願いを叶える電話ボックス』ってあるだろ?
 アレみたいなもんだよ。正確には全然別物だけど」
「え!それすごいじゃない!」

 

分かりやすく一言で説明するにはこれが分かりやすいだろう。

 

「そーそー、すごいの。だから続きやりに戻っていいか?」
「あ、そうだね。ごめんごめん。
 ・・・よかったらさ、それ見てもいい?」
「別にいいけど、分かってるとは思うが」
「『余計な物に手を触れるな』でしょ?大丈夫だって!」
「分かってるならいいけどよ・・・お前時々とんでもないポカやらかすから怖いんだよ」

 

こいつは以前、完成前の試作品を動かして爆発させた経歴の持ち主だ。
まぁあれから数年経っているし、流石に大丈夫だとは思うが・・・

 

「じゃあ上がって行けよ。茶ぐらい出すから」
「お邪魔しまーす」

 



 

「じゃあそこでおとなしくしてろよ?見る分には構わないから」
「はいはい。分かってますよーだ」

 

麗香を研究室で一人残すのは少々不安だが、かといってお茶を出さない訳にもいかん。
結局俺は麗香を残し、お茶を入れに台所までやってきた。

 

「問題は、茶葉があったかどうかだが・・・そーいやこの前もらい物があったような・・・」

 

そうやって俺があーだこうだ探しつつ、ようやくお茶を入れて研究室に戻ろうとした時だった。

 

「キャァアアアアアア!」
「麗香!?あのバカ!」

 

お茶を置いて慌てて研究室に向かう。

 



 

「お前なー・・・触るなって言っただろ・・・?」
「だって・・・その・・・指輪が・・・」
「指輪?」
「う、うん・・・ちょっとした拍子に外れて・・・」
「で、落ちたのを拾おうとして機械に当たった訳か・・・」

 

これだから嫌だったんだよ、こいつ部屋に上げるの・・・
まぁ事故だから仕方ねーか・・・

 

「とりあえず聞くけど、体の方は大丈夫だよな?」
「あ、それは別に何ともないよ」
「ならいい、とりあえずお茶持ってくるからそれ飲んで落ち着け」
「うん・・・」

 

俺はお茶を入れたポットを取りに台所まで戻った。

 

「お湯は魔法瓶に入れてて良かったぜ、流石にぬるいお茶は嫌だからな」

 



 

「・・・ところで、この発明ってなんなの?」
「あ?さっきそれは説明しただろ?」
「そうなんだけど・・・もう少し詳しく聞いてみたいなって。
 それにさっき『正確にはアレとは別物』って言ってたし」
「まぁいいけど・・・『因果律』ってわかるか?」
「???」
「ああ、分かんないのね・・・簡単に言うと『原因』があって『結果』があるって事」
「うん?」
「例えば・・・そこの湯飲みが机から落ちて割れたとする。
 この場合、『湯飲みが割れた』という結果があって、
 それには『机から落ちた』という原因があるわけだ。
 こんな感じで、物事にはその『結果』が発生するための『原因』が必ずある訳だ。
 で、この『原因』と『結果』の関係ってのはひっくり返らない訳だ。
 『湯飲みが割れた』から『机から落ちた』ってのはあり得ないだろ?」
「・・・何となく分かったけど、それがこの発明と何か関係があるの?」
「この発明はその『因果律』を弄る発明なんだよ」

「え!?」

 

そりゃ驚くよな。
普通に奴なら絶対に信じないし。

 

「『原因』に働きかけて『結果』を弄る。
 口で言うには簡単だけど、ものすげー技術の塊なんだぜそれ?」
「じゃあ、思い通りに結果を弄ることが出来るの?」
「まぁな。ただ・・・完成すればの話だけどな」
「ふーん・・・つまりは『某猫型ロボットのアレ』と同じじゃ無いの?」
「アレは平行世界に座標軸をずらすものだから別物」
「・・・?」
「わかんねーならいいよ・・・」

 

そもそもこいつにこういう話をする事が間違いだった気がする・・・
結局この後こいつはお茶飲んで帰った。
まぁ意識もはっきりしてるし、病院に行っておけとも言ってあるから平気だろ。

 



 

「弘道、はいこれ」
「また差し入れか」

 

昨日の続きで装置を弄ってると麗香がまた差し入れを持ってきてくれた。

 

「またって何よー少しは感謝して欲しいんだけど」

 

俺が入れたお茶を飲みながら怒りをあらわにしている。
まぁおふざけだろうがな。
これでも内心感謝はしてる。
でもなんとなくうざいからいわねぇ。

 

「・・・ん?」

 

微かな違和感。
何かが違う。

 

「お前・・・口調そんなんだっけ?」
「へっ?何かおかしかった?」
「いや・・・もう少しおしとやかっていうか・・・女の子ぽかったような気がしてな」
「そうだっけ?昔からこうじゃない?」

 

いや、確実に違う。
というか普段はこいつ俺のことを『弘君』って呼ぶはずだ。

 

「・・・まさか!?」

 

間違いないだろう。
あの時、装置が発動して、なんらかの『因果律』の操作が行われたらしい。

 

「お前、そこに居ろよ!!絶対動くなよ!?」
「え?え?」

 

きょとんとする麗香を置いて俺は装置の置いてある部屋に移動した。

 



 

「やっぱり・・・ログに一度起動した証拠が残ってる。
 あとはどう『因果律を弄ったか』を調べれば・・・!」
「ねぇねぇ?何をしてるの?」

 

ヒョイと、麗香が顔を出してきた。
そしてそのまま装置をつかもうとする。

 

「ばっ!!お前やめろ!!」

 

だが・・・俺の静止虚しく、装置に麗香の手が触れる。

 



 

「っは!おい!大丈夫か!?」

 

一瞬目の前が真っ暗になった。
『因果律』を弄ると言う事は世界を弄ること。
意識が世界の変化によって一瞬遮断されたらしい。
慌てて麗香に尋ねる。

 

「ええ、大丈夫ですわ・・・」
「ですわ・・・?」

 

ですわってお前何ふざけているんだ?
そう言おうと思った。
だが、俺の目の前に飛び込んできたのはさっきまでと違って、ぽっちゃりになった麗香だった。
元々大きめだった胸だが、それこそグラビアでも中々見ないサイズに成長している。
細めのウエストからはくびれが消え、明らかにスカートの上に肉が乗ってる様に見える。
顔もほっそりとしていたのにコロコロと丸くなった。
尻はむにっとはみ出すように安産型と言える様な感じだ。

 

「おま・・・!?その体どうした!?」
「・・・?なにか変ですか?」

 

体をしげしげと見回してる麗香。
こいつ気付いてないのか?
違う・・・『こいつにはこれが正しい』んだ。

 

「なぁ・・・俺のこと分かるよな?」
「ええ。岡 弘道、二十一歳。私の幼なじみですわ。趣味は発明で」
「いや、もういい」
「?」

 

変な弘道さんと、小首をかしげる麗香。

 

「とりあえずお前そこから動くな。何も触るな。俺は周りを見てくるから」
「え、ええ・・・わかりましたわ」

 



 

「・・・特に違和感は無し。テレビもきちんとしてるし、男と女が入れ替わってる訳でも無い」

 

麗香が装置を弄った所為で何が起きていても不思議じゃ無いからな・・・
そう思って辺りを見回したり、テレビで色々確認したが、
麗香の口調と体型が変わった以外は特に問題なし。
ならログを解析して、世界を元にあった方向に変えないと・・・

 

「戻ったぞ」
「あ、お帰りなさい」

 

研究室に戻り、装置のログを見る。
幸いだが、ログはきちんと記録されており、問題なく閲覧出来る。

 

「・・・とりあえず一度に修正するとまずいから、小さく少しずつ修正していくか」

 

一度に大きく弄ったらどうなるか予想が付かない。
装置を弄り、少し修正するようにセットする。

 

「まずは一回っと!」

 



 

「っあ!」

 

一瞬、意識が途絶え、戻ってくる。
改めて周りを確認する。
研究室の様子は変わってない。
装置も無事、テレビはさっきのニュースの続きを流している。

 

「麗香、大丈夫か?」
「んー?なにがー?」

 

周りを調べながら麗香に声をかけると、やけにぽわぽわとした声が返ってくる。
振り向くと、そこには随分と太った少女が居た。

 

「・・・麗香だよな?」
「うん、そうだよ弘道お兄ちゃん」
「おにっ・・・!?」

 

どうやらこの世界では俺と麗香の間にはかなりの年齢差があるらしい。
改めて見ると、確かに俺の記憶にある10年位前の麗香とそっくりだ。
体型は全く別物だが・・・
なんというか・・・まさに太った子供と言うべき体型だ。
胸は無い訳じゃ無いが、貧乳なのが太った分脂肪で胸板が厚くなった感じで、自己主張が薄い。
代わりに元が寸胴体型な分、お腹の丸さが目立つ。
ドデンと前にせり出す感じの腹はまるで妊婦か?と思えるような感じだ。
尻はスカートで覆われているが、子供にしてはでかいのが良く判るほどで、
腰の幅よりはみ出ている。
まぁ座っているからってのもあるんだろうが・・・

 

「・・・とにかくそこでじっとしていてくれ。お菓子あげるから」
「うん!」

 

とりあえず、台所からお菓子を探してこよう・・・

 



 

意識が暗転して、すぐに色が戻ってくる。
この感覚も慣れてきた。

 

「ふぅ・・・」

 

頭を振って意識のもやを払う。
すぐに先ほどと同じように辺りを見回し、世界のズレを確認する。
調べたが問題なさそうだ。

 

「何してるの?弘ちゃん」
「え?」

 

弘ちゃん・・・?

 

「もう、何変な顔してるの?」
「麗香・・・だよな?」
「あら?呼び捨てだなんて、急にどうしたの?」

 

声に振り返ると、いつもの麗香が居る。
いや・・・いつもよりも色気があるというか、艶美というか・・・
今度は俺よりも年上になったらしい。
その所為で俺が呼び捨てにするのがおかしいらしい。

 

「い、いや別に・・・」
「あ、またそれ?ホント弘ちゃんは昔から何か有るとすぐに誤魔化すんだから」

 

もうしょうが無い子!とぷりぷりと怒る様な、からかうような表情をする。
その際、腰に手を当てたのだが・・・
なんというか、アレだ。太い。
全体的に太い。
つーかさっきよりも太い。
胸とか完全に奇乳とか魔乳とか言われるようなサイズだ。
ウエストは他より成長著しいのか、服で隠れなくなってるし。
その所為かヘソの辺りを堂々と出してるし。
お陰でへそが洞窟みたいに見える。
頬は目を細めるかのように肉が付き、顎は首と一体になるまで脂肪が広がってる。
二の腕も太く、元の麗香の腰位の太さだ。
太ももは丸太というかドラム缶というか、とにかくぶっとい。

 

「その・・・装置弄るから」
「わかってるわよ〜動かなければいいんでしょ?」
「ああ、頼む」

 

なんというか、反応に困る。
姉は居なかったし、麗香はどちらかというと妹系だったから・・・
こう、『お姉さん』っぽいことをされるのに慣れてない。

 

「・・・えい!」
「うぉっぷ!」

 

突然後ろから抱きしめられた。
なんというか、全身が包まれる感じで、柔らかい。
ズブズブと体が埋まっていくのがわかる。

 

「ほら、これで落ちついたでしょ?」
「え?」
「弘ちゃんって昔から緊張すると瞬きの数が増えるの知ってる?」
「・・・そうだったのか」

 

知らなかったが、そうなのかもしれない。

 

「大丈夫、弘ちゃんなら出来るって」
「・・・何するか知らなくくせに」
「そうね、でも弘ちゃんだもん。私は信じてる」
「・・・」

 

暫くそうして居たが、すっと麗香の腕をどける。
そのまま装置に向かって作業を開始する。

 

「・・・戻さない訳にはいかないよな」

 



 

目の前が一瞬暗くなってまたすぐに明るくなる。

 

「・・・」

 

あれから何度か『因果律』を弄った。
最初の世界とこれでほぼ、99.9998%同じはずだ。

 

「麗香?」
「ん?どうかした?弘君」

 

そこにはいつも通りの麗香が居た。

 

「・・・いや、なんでもない」
「・・・?変な弘君」

 

置いてけぼりになっている麗香を置いて、俺は装置の回路を止めた。
こいつは仕舞っておかないとな。

 

「結局その装置なんだったの?」
「・・・『夢を見る機械』だな」
「なにそれー。弘君って意外とロマンチスト?」
「残念だがリアリストだよ」

 

そう言って機械を保管室に仕舞う。

 

「まぁいいけどさー。
 うーん・・・でも夢を見る機械なら私ももっと痩せたいなぁー」
「何言ってるんだよ。人間『いつも通り』が一番だよ。
 お前は太ったままでいいの」
「そんなもんかな?」
「そうだよ、お前は昔からデブのまま。それでいいの」
「もー!女の子にデブって言うのは禁句だよー!」
「はいはい」

 

改めていつも通りの麗香を見る。
体重は一体何kgあるんだか。
胸は特大のスイカのようなサイズだし、腹はまるで双子か三つ子か。臨月の妊婦のような腹だ。
これが全部脂肪だというのだから凄い話だ。
尻はスカートをせり上げ、特大サイズのロングスカートの筈なのに太ももがちらりと見えている。
その太ももは大樹の幹か何かのようだ。
二の腕はそこら辺の競輪選手の太ももよりも太く、動く度にぶるぶると揺れる。
首は脂肪で埋まり、顎と一体になってる。
顎は顎で肉の段を作り、頬は大量に付きすぎて目を細めている。
何度見てもいつも通りの麗香だ。

 

「全く・・・女心がわかってないんだから」
「悪かったな・・・ほら、このお菓子やるから」
「あ、ありがと!」
「やれやれ・・・」

 

こいつが単純で助かった。
元の世界に戻れたことだし、あの装置をもう使うことは無いだろうな。
やっぱり人間、いつも通りが一番だ。


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