森の泉

森の泉

 

 

ある街には二人の少女が居ました。
一人は地味ですが性格の良いマリー。
もう一人は美人ですが欲深いエリナ。
二人は家が近く、小さな頃から良く遊んでいました。
ある日、マリーが野草を摘みに森へと行きますと、傷ついた一匹の狐が居りました。
心優しマリーは狐の手当をしてあげました。
するとその狐はマリーを誘うように森の奥へと向かいます。
マリーがついて行くと小さいけれどとても綺麗な泉がありました。

 

「まぁ綺麗。喉も渇いたし少し飲もうかしら?」

 

マリーは一口泉の水を飲みました。
そして一息つくと街へと帰っていきました。

 



 

次の日。
マリーが朝起きて顔を洗おうとすると、そこには見た事も無い美人が鏡に映っていました。
実はマリーが泉の力でとても綺麗になっていたのです。
街の人はとても驚きました。
それまで地味だった筈のマリーがまるでお姫様のようになったのですから。
中には結婚を申し込む街の人まで居ました。
これに驚いたのはエリーもでした。
エリーはマリーに聞きました。

 

「ねぇマリー?貴方はどうしてそんなに綺麗になったの?」
「分からないわエリー。でももしかしたら昨日見つけた泉の水を飲んだからかもしれないわ」

 

エリナはマリーからその泉の場所を聞くと、自分のより綺麗になりたいと泉へと向かいました。

 



 

そして、エリナは泉へとたどり着きました。
泉を見て、エリナは言いました。

 

「この水を飲めば良いのね。あの子よりももっともっと綺麗になりたいから
 たくさん飲みましょう!」

 

そういうとエリナはごくごくと泉の水を飲みました。
暫くして、エリナが泉から口を離すとエリナのお腹は泉の水でぽっこりと膨れていました。

 

「これだけ飲めば十分でしょう。これで誰よりも私は美しくなれるわ!」

 

エリナは満足げにお腹をさすると家に帰っていきました。

 



 

翌日、エリナが起きようとすると体が重く、全然起き上がれませんでした。
なぜなら、エリナの体はぶよぶよに太っていたからです。

 

「ああ!なぜ!?なぜなの!?」

 

確かに顔は美人のままです。
いや、もしかしたら以前よりもより美しくなったかもしれません。
ですが、アゴにはたっぷりと醜い贅肉が付き、体はまるで丸々と太った豚のようです。
大きく育ったお腹はまるで空に浮かぶ満月のよう。
横から見れば大きな樽のような体です。
狩人の腰ほどもある太ももに、丸太のような腕。
胸は大きくなりましたが他の部分が圧倒的に目立つため全然嬉しくないでしょう。
当然こんなに太ったエリナは着られる服がありません。
なんとか歩けますが、扉を通る事が出来ないので外にも出られません。
それはエリナにとってとてもショックであり、恥ずかしい事でもありました。

 

「いやよ!いやぁあ!」

 

エリナは叫びます。
騒ぎを聞きつけたマリーが様子を見に来た時、エリナは裸のままワンワンと泣いていました。
マリーが話を聞くと、エリナはマリーに聞いた泉の水をいっぱい飲んだ事を話しました。

 

マリーはエリナの頭をなでながらこう言いました。

 

「エリナ。昔から欲が多いのが貴方の悪いところ。
 これに懲りたらもう少し遠慮して行きましょうね?」
「もうしないわ!もうしません!」

 

エリナは深く反省し、マリーに手伝って貰いながら暮らしていきました。

 



 

「──で、教授。この話がどうしたんですか?」

 

車での移動中。
私は教授から渡された資料──というなの童話──を読み終えてから教授に質問をした。
「森の泉」という童話で、中身はよくある教訓物だ。
欲張った女は泉のせいでぶくぶくと醜く太った。
みんなはもっと遠慮をして生きましょうね。
舌切り雀なんかと同じだ。

 

「実はだね。最近の研究でこの泉が実際に有った可能性があるんだ」
「・・・は?」

 

このお伽噺の?

 

「うん。この童話は1800年頃に書かれた物なんだが、
 どうやら実際に有った出来事を元に書かれたらしい。
 それは子供向けに多少アレンジされた物だが、
 大本の方ではもっと事細かに場所なんかが記されていてね?
 それを当時の地図と比べるとその地点に確かに泉があるらしいんだ」
「・・・もしかしてこんな辺鄙なところまで来たのは」
「そう、その通り!まぁ学会の発表もあったから丁度良いと思ってね」

 

イギリスのとある地方。
昔から存在する深い森が有る以外は特に何もない場所。
なんだってこんな所まで来るのかと思えばそういう事か。
というかわざわざ調べに来るのか・・・

 

「はぁ・・・で?その泉って言うのはどこに?」
「多分あれじゃないかな?」

 

教授が指さす方向には小さな泉がポツンとあった。
・・・綺麗な泉だけど。
でもおかしい。周りの道は完全に獣道というか人がそう立ち入ってる感じじゃ無い。
なのに泉の周りだけ綺麗に草が整えられてる。
まるで森の中にぽっかりと穴が開いたような・・・

 

「ふむ・・・どうもあれっぽいね」
「とりあえず調査ですか?」

 

教授が頷くのを見た後、私と教授は泉の方へと近寄っていった。

 



 

近寄ってみるとやはり少し異質だ。
この場所だけ木や雑草が避けるようになっていて、ここにだけ光が当たって居る。

 

「見た目は普通の水のようですけど・・・」
「だねぇ・・・とりあえず僕は周りを調べるから済まないけどこれにサンプルの回収を
 お願いできるかな?」

 

そう言って教授は小さな試験管を渡してきた。
それを受け取り泉に近づく。

 

【ガラッ・・・!】

 

「きゃ!」

 

突然、私の足下が崩れた。
そのまま私は泉の中へと落ちて・・・

 



 

「──ん!──君!しっかりしなさい!」

 

教授の声が聞こえる。
どうしたんだっけ私・・・?
ゆっくりと目を開ける。
そこには心配そうに私の顔をのぞき込む教授の顔があった。

 

「教授・・・?私・・・」
「さっき君は泉に落ちたんだ、覚えてないかい?」
「・・・あ」

 

そうだ、さっき私は泉に落ちて・・・
泉の横で教授が介抱してくれたらしい。

 

「応急手当だが一応してある。
 まぁ心配だし、サンプルも回収してあるから今日はここで帰って病院で検査して貰おうか」
「はい・・・済みません、ご心配おかけして」

 

そういって私は体を起こして、ゆっくりと教授と一緒に街へと戻った。

 



 

【Pipipipipi・・・】

 

「・・・んぅ」

 

携帯電話のアラームに起こされ、私はのそりと体を起こそうとして──

 

「あれ・・・?」

 

全く起き上がらなかった。
寝ぼけ眼でよく体を見渡すと、どういうことだか・・・

 

「これ・・・私の体・・・?」

 

たっぷりと脂肪の付いた体がぷよんと揺れたのだった。

 



 

「とりあえず回収したサンプルは解析して貰ってるけど・・・
 しっかしまぁ童話が本当で大発見万歳とみるべきか、
 それともそうなってしまった君の心情を察して悲しむべきなのか・・・」
「いっそ笑って下さい・・・」

 

起きた後、私は教授を部屋に呼び事情を説明した。
教授はどうしたら良いのか分からないと言いたげな表情を見せている。
これでもすらりとした体つきには自信があったのだが、それも見る影も無い状態だ。
美乳だった筈の胸は下品に育ってるし。
お腹はどどんと突き出てて服なんか無かったかのように弾け飛ばしてる。
結構お気に入りだったパジャマはお尻の部分で裂けて、
ぱっくりとお尻に食い込んでる下着が見えてる。
太ももは何とか布が残っているが、締め付けられてボンレスハムみたいになってる。割と痛い。
二の腕はもしかしたら昨日までの私の腰より太いんじゃ・・・
アゴは見事に二重顎というか最早首と繋がってるわけで。
そりゃぁもう見事なデブです。

 

「とりあえず結果が出るまではどうしようも無いね・・・
 発表会終わる頃には結果も出るはずだからそれ次第だね」
「ですね・・・あと教授お願いが」
「ん?何かな?」
「・・・服の手配とかお願いできますか?」

 



 

結局、泉の成分は基本極々普通の成分だった。
ただ、一つだけどうやっても分析出来ない成分があった。
この水をマウスに与えてみたが別に何も変化はなかった。
・・・本当はいけないことではあるが、何人か立候補した人が自己責任でこの水を飲んだ。
結果、全員美形と呼べるようになった。
どうやらこの水は【人間を美しくする】効能がある。
が、【大量に摂取するとぶくぶくと太る】らしい。
恐らく分析出来ない成分のせいなのだがこれがどうも自然界に普通にある物質では無いらしい。
では何なのか?
今でも私達はそれの研究に追われている。

 

「教授、頼まれた資料です」
「はいごくろーさん。しっかしなんなのかね、アレ」
「さぁ・・・私としては早く解明して元の体型に戻りたいです」
「そういえばこの前資料室で棚の間で挟まったんだって?」
「──っ!そ、その話はやめてください!」

 

教授に資料を渡しに行ったらこれである。
この体型のせいで今までと体の感覚が全然違っており、よくお腹をぶつけるわ、
すれ違おうとして人とぶつかるわ、散々だ。
この前なんか資料を取ろうと思って棚の下に潜ったらお尻がつっかえて一度はまってしまった・・・
・・・もう二度とあんな事は経験したくない。

 

「と、とにかく!頑張って解析しましょう!」
「はいはい・・・頑張りましょ頑張りましょ」
「もっとやる気出して下さいよ!」

 

やる気の無い教授に対して思わず声を荒げて机を叩く。
その拍子に・・・

 

【ブチッ・・・カラカラ・・・】

 

「・・・お腹のボタン、飛んだよ?」
「──っっっ!失礼します!」

 

無理して着ていた服のボタンが飛んでしまった。
慌ててそれを回収して部屋から出る。

 

「もういや!こんな体ー!」

 

もう・・・泣きたいわ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?どうやら僕の泉に誰か来たみたいだね。
 まぁいいさ、随分前にお遊びで作った物だし。
 最近は地下遊技場もイイ感じだし、この水を使って新しい罰ゲームでもやってみるかな?
 全く、人間っていうのは本当に見てて飽きない生き物だよ・・・
 アハハハハハハハハハハハハ!!!」


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