私の幸福、貴方の不幸 その2
福田 幸子(ふくだ さちこ) 17歳 身長148cm 体重38kg B:79 W:52 H:75
森光高校の三年生。
幼い感じの体つきが実はコンプレックス。
どうしてこんなことになったのかな。
あの日、私が学校に着いたとき、朋ちゃんのメールを見たあの日。
今思えば、あの日から私の生活は変わっちゃいました・・・
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「さっちゃん、見てよこれ」
「朋ちゃん?おはよう。どうしたんですか?」
教室でかばんから教科書を出していると、朋ちゃんが寄ってきました。
手には・・・携帯?
「今朝さー、変なメール着ちゃって。これなんだけど」
「どれどれ?」
朋ちゃんの携帯を借りて、メールを確認。
そこには・・・
『このメールは幸せのメールです。
仲のいい友人を叩きなさい。
そうすれば貴方は幸せになれるでしょう。
ですが・・・やらなかったら貴方は不幸になります。
さぁ、期日はこのメールを確認した日の昼11時までですよ・・・』
「・・・なんですかこれ?」
「ね?変なメールでしょ?」
「最近流行のチェーンメールって奴ですか・・・?
でもお決まりの"何人にまわせ"って書いてないですし」
「大体さぁ、なんで叩かなきゃいけないの?」
「さぁ・・・?」
へんてこなメール。
朋ちゃんは送ってきたアドレスに覚えはないって言うし、悪戯なのかな・・・?
「どうするの?試してみる?」
「えー・・・でも誰か叩くのはなぁ・・・それにただの悪戯っぽいし」
「うーん・・・」
ここは・・・
「無視しちゃって良いと思いますよ?」
「やっぱり?」
「はい、ただの悪戯だと思いますし。多分無作為に送ってるんだと思います」
「かなぁ?じゃあいっか!」
朋ちゃんはそのメールを削除して、私と先生が来るまで雑談してから席に戻りました。
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「えー。みんなに連絡がある。
うちのクラスの佐々木朋美だが、先ほど警察から連絡があった。
どうやら交通事故に巻き込まれたらしい」
「えっ・・・?」
次の日。朝のHRで先生が衝撃の一言を口にしました。
クラスのみんなもざわめきます。
「はい、静かに。
まだ詳しいことは余りわかってないが、命に別状はないらしい。
ただ暫くは入院することになるそうだ。そこでだ、福田」
「あ、はい!」
「お前確か佐々木と仲良かったよな?あとで見舞いがてらプリントとか持っていってやってくれ」
「わかりました」
「頼んだぞ。みんなも事故には十分気をつけるように。
それじゃあプリント配るぞー」
朋ちゃん・・・大丈夫かな・・・
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「ごめんねー!わざわざ届けてもらって」
「いいですよ。それより怪我大丈夫ですか?」
放課後。
先生から病院の場所と部屋番号を聞いたプリントとノートを持って朋ちゃんの病室に来ました。
割と元気そうでしたが、両足のギブスが痛々しいです。
「いやさー。今朝学校行こうとしてたら角から原付が飛び出てきて。
なんとか避けようとしたんだけど足轢かれちゃった」
「それ、そんな軽く言う話じゃないと思います。とにかく無事で・・・でもないですけど、
平気でよかったです」
「ふっふっふ。私は健康なのが自慢ですから!」
「でも気をつけてくださいよ?」
「はーい、わかってまーす。あ、何か飲む?一杯あるからどうぞ。冷蔵庫あけていいから」
「あ、いいんですか?じゃあ貰いますね。朋ちゃんはどれにします?」
「私飲むよーぐるーのブルーベリー味で」
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「えー・・・最近事故が多発しているのは知っているな?
昨日も2年C組みの子が事故にあった。6月に入ってからすでに4件目だ。
みんなも十分に気をつけるように。じゃあ1時間目の用意しろよ。日直、号令」
「起立、礼。着席!」
朝のHRで先生の報告を聞き、なんとなく暗い気持ちになりました。
ここの所の事故発生数は異常ともいえる程です。
それもこの地域に集中してるのが気になります・・・
「なぁ。あの噂聞いたか?」
「噂?」
「ああ、最近事故に遭ってる奴多いだろ?」
「うん」
「そいつら全員、『変なメール』貰ってるんだよ」
「メール?」
クラスメイトの金田君と、小林君の会話を何気なく聞いていたら、気になるワードが聞こえました。
「ああ、なんでも『こうすれば幸せになれる。逆にしないと不幸になる』って奴らしい」
「え?」
それって・・・朋ちゃんが貰ったメール・・・?
「なにそれ。本当なのか?」
「らしいぜ・・・」
金田君は何か確証があるのか、自身がありそうな話方をしてます。
・・・ここは。
「ごめんなさい、その話詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
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「・・・このメールは・・・あれですよね」
噂を聞いた数日後。
私の元にも例のメールが来ました。
金田君に聞いた噂の確証・・・それは警察官である金田君のお父さんがぽつりと洩らした事でした。
なんでも、事故に遭った人の名前なんかを確認するために、
携帯電話の履歴なんかを調べた時の事だったそうです。
その携帯に例のメールが届いていたそうです。
なんとなくほかの被害者にも聞いてみたところ、
例のメールは被害にあった殆どの人に届いていたそうです。
そして、そのメールが届いた被害者の方は、みんなメールを無視していたそうです。
事故にあった人の中には亡くなった方も居るらしく、
警察としてもメールが怪しいとは踏んでいるものの、物的証拠が何一つない上に、
送られてくるアドレスも出鱈目で何もわからず仕舞いだそうです。
「つまり・・・このメールの内容を無視すると何か『悪いこと』が起きるメール・・・」
なんともふざけたメールですが、でも・・・
「内容を守らないと私も事故に遭うかもしれない・・・」
そう思うと急に怖くなりました。
恐る恐る、メールを確認しました。
『このメールは幸せのメールです。
体重を120kg増やしなさい。
そうすれば貴方は幸せになれるでしょう。
ですが・・・やらなかったら貴方は不幸になります。
さぁ、期日はこのメールを確認した日から一年後までですよ・・・』
「そ、そんな・・・!」
私はメールの内容に愕然としました。
増やさなきゃいけない体重量が予想以上に多かったのもそうですが、
一年もこのメールに怯えながら行かないといけないのが怖かったのです。
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「もうすぐ夏休みだねー」
「ですねー・・・家族旅行どうするんですか?」
「キャンプとか無理だから、温泉とか行く事になったよ〜」
「あ、行けるんですね!良かったです!」
「まぁ車椅子だからみんなに迷惑かけちゃうけどね」
夏休みを控えた7月。
私は学校の帰りに朋ちゃんの様子を見に病院に足を運んでました。
最近は少しずつリハビリなんかもしているようで、二学期からは上手くいけば通学出来るそうです。
朋ちゃんは毎年夏休みに家族旅行に行っているので、今年も無事行けるようで良かったです。
「・・・にしてもさ」
「はい?・・・むぐむぐ・・・はもはも・・・」
「さっちゃん、よく食べるねー」
「・・・そうですか?」
持ち込んだクリームパンを食べていると、朋ちゃんからつっこみが来ました。
流石に理由は言えませんよね・・・
「それに・・・ちょっと太った?」
「・・・最近甘い物が恋しいのです」
寧ろより太らないと困るのですが・・・
「まぁ・・・気をつけなよ?」
「はーい・・・」
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「二学期だるいぃ〜・・・なんで学校なんて有るんだろ・・・」
「そう言う事言わないでくださいよ・・・私まで気が参っちゃうです」
夏休みを終えた私達は、また学校に通う日々が続いてます。
まぁクラスのみんな、特に朋ちゃんと一緒に学校に行けるのは楽しいのですが。
とは言え・・・
「ふぃ・・・」
「疲れちゃった?」
「ちょ、ちょっと休憩していいですか?」
太った体が重くて大変です。
「なんか太ったもんね、さっちゃん」
「お菓子食べ過ぎですね・・・」
とは言えやめる訳には行かないですけど。
「・・・えい!」
【モニュ】
「ちょっと!やめてください!」
「はは、よいではないかーよいではないかー」
突然、朋ちゃんが私のお腹を揉み始めました。
むにむにと、ずっと揉み続けます。
「ん〜やっぱかなり太ったねー」
言われて、改めて体を見回します。
くびれが無くなり、ぽこっと出始めたお腹。
でもその割には胸が全然成長してくれません。
ブラジャーは胸囲が増えたので新しくしましたが、カップ自体は変わってません。
というかなんで成長しないんですかね・・・
お尻はこの前鏡で見た時、スカートの上からでも形が分かるほどになってました・・・
正直、立派なおデブちゃんです。
「この揉み心地は最高だけどさぁ・・・大丈夫なの?」
「朋ちゃんこそ・・・骨折で入院してる間少し太ったみたいですけど?」
「ぐっ・・・痛いところを・・・」
両足が骨折していたため、朋ちゃんはリハビリするまでベッドに寝たきりでした。
お陰で一回りむっちりとしたように見えます。
「だってさー・・・動けないし、食事はきちんと採らないと骨治らないって先生が言うし。
そりゃ嫌でも太りますわ」
「入院はどうでした?」
「あんまり不便ではなかったかなぁ。トイレとか看護士さんがついててくれたし。
車椅子も慣れれば自力で動けたし。あと割りと消灯時間過ぎても指定の場所なら
夜更かしおっけーだった」
「へぇーなんか足骨折してる以外はホテルに泊まるのとそんなに変わらないですね」
「だねー。あ、ホテルといえばさ。夏休み旅行行ったじゃん?泊まった先の旅館がいい所でさー」
良かった、話題逸らせたみたいです。
でも・・・このペースで間に合うでしょうか・・・
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「ふひぃ・・・冬でも寒くないのは利点ですね・・・ふぅ・・・ふぅ・・・夏は地獄ですけど」
冬休みも始まって、私はお菓子を買いに近所のコンビニまで買い物に出かけていました。
寒がりな私にとっては、冬も暖かい体はちょっと嬉しいですね。
「ふぅふぅ・・・今日は何食べましょう・・・ポテチとチョコ系は確定として・・・
あ、肉まんも買いましょう」
以前ならこんなに大量にお菓子を買うことも、
コンビニまでこんなに息切れすることも考えられませんでした。
でも人間なれれば意外と何とかなるものですね。
ジュースを飲みながらだらだらする生活も、息切れしながらなんとか歩くのも。
・・・払った犠牲は大きいですが。
「あ、後アイスも忘れずに買いましょう。冬場に食べるアイスも乙なものですから」
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「ありがとうございましたー」
コンビニでたっぷりと買い物をすませ、ゆったりと歩きながら
今買ったばっかりの肉まんを頬張ります。
やっぱり暖かい方がおいしいですから。
かぶりつくと、じわっと肉汁があふれ出て、餡の豊かな味が口の中いっぱいに広がります。
その後、買ったばっかりのコーラで喉を潤します。
これが最近のお気に入りだったりします。
シュワっとした炭酸が喉を通り抜け、喉を鳴らすたびに爽快感が体を駆け巡ります。
「・・・けぷ」
少し下品ですが、コーラを飲んだ後は仕方ないのです。
もう一度肉まんを頬張って、コーラを飲む。
なんとも幸せな瞬間です。
「・・・確実に駄目な女の道ですねこれ」
不幸のメールを回避するため。
そんな大義名分を手にした私はだらけにだらけまくってます。
本当はただの偶然かもしれないのに・・・
「あ・・・」
ふと、お店のショーウィンドウに自分の体が映りました。
ぶよぶよと脂肪に覆われたお腹。
その上にある程度大きくなったのに、カップサイズが変わってない胸。
最近は男物のシャツをXLで着てるので丈に余裕はありますが、可愛くはないです。
一応ロングスカートを穿いてますけど、大きくなったお尻に持ち上げられて、
足首がちらちら見えちゃってます。
その足首も普通の人よりも大分太くて、ふくらはぎや太ももがどれだけ太いか良くわかるようです。
二の腕は服がぱっつんぱつんになるほどむっちむちで、立派な二重あごになった顔は頬を触ると
ふにふにとしてます。
「・・・こんなに太ってたんですね。私」
最近、ずっと鏡を見てませんでした。
忙しいからとか、見なくても太ったのぐらい分かるとか。
そんな事を言って、無意識に見るのを避けていたんです。
でも・・・
「今更、やめられません」
ここまできたら後戻りなんてできません。
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【ギッ・・・カラララ】
「・・・」
そしてある日。私は体重を量っています。
最大軽量200kgの体重計。
高校を卒業した辺りで家にあった体重計では量れなくなったのでこちらに切り替えました。
結果は・・・
「162kg・・・!」
無事に期限までに目標を達成できました。
ふぅと、安堵のため息が出ます。
それと同時に、良く分からない達成感の様な物も感じていました。
ゆっくりと顔を上げてみると、近くにあった洗面台の鏡が見えました。
何気なく鏡を見てみると、見たことがないような程に太った女性が居ました。
勿論それは私なのですが、予想以上に太って居たので最初は頭が理解してなかったのでしょう。
首と一体になって、顎なのかなんなのか分からなくなった顔。
頬が太りすぎて目を細めてます。昔・・・といっても一年前まではくりっとしてるよと
よく言われたんですが・・・
その下の胸は確かに大きいんですけど、明らかにほかの部分と違って成長が悪いです。
というか何で胸だけこんなに成長しないんでしょうか・・・
胸を下から持ち上げる様にドデンと飛び出たお腹は、
つまむと電話帳ぐらいの脂肪が軽々と掴めます。
最近は少し垂れ下がって、お母さんに「アンタ裸になっても下着要らないねぇ」
なんて笑われました。
そんな体系のせいか、まるでお相撲さんみたいです。
お尻は前から見ても確認できるほどで、最近は二人がけのソファじゃないと窮屈になってます。
太ももは足を少し開かないとお肉同士がぶつかってしまいます。
指は一本一本がフランクフルトみたいな太さになってます・・・
ここいらでは多分男女含めても私が一番のおデブさんでしょう・・・
「でも・・・これでいいんです!事故にあうよりはきっとマシなんです!」
そう言い聞かせないと多分心が折れてしまいそうでした・・・
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「はい、これもどうぞ」
「ありがとうございます!」
そして現在。
私は大学で知り合った幸田さんと一緒にハンバーガーショップに居ます。
資産家の息子だという彼は、どういうわけだか私のことを気に入ってくれたらしく、
こうやって良く奢ってくれます。
「ところで・・・話があるんだ」
本日三個目の特大のハンバーガーを食べていると、幸田さんが真剣な面持ちで話しかけてきました。
「・・・もし、もし良かったら。僕と付き合ってくれないか?」
「ふぇ・・・?」
「君のたくさん物を美味しそうに食べる様子が堪らなく好きなんだ。
だから・・・こんな僕でよければ交際して欲しい」
「え・・・あの・・・その・・・」
予想外すぎます・・・
てっきり私をペット感覚で付き合ってくれてる物だと思ってましたから。
「で、でも!私じゃなくても幸田さんはイケメンですし!もっといい人が」
「君じゃないと駄目なんだよ。君のその笑顔が好きなんだ」
「あ、ありがとうございます・・・」
・・・
「わ、わかりました。こんな私でよければ・・・」
「ありがとう!さぁもっと食べてくれ!」
「あ、はい・・・」
嬉しいし、幸田さんの事は好きです。
いい人ですし、私のこと変な目で見たり馬鹿にしたりしないし。
ちゃんと女性扱いしてくれるし、男性として好意を抱いていましたけど・・・
でもまさかこんな展開になるなんて思ってませんでした。
もしかして・・・メールの『幸せになれる』ってこれの事なんでしょうか?
・・・私には分かりません。でも・・・
「さ、これもどうぞ。ここのオニオンリングはなかなかいけるよ」
「あ、本当ですね」
今はまぁ・・・とりあえず幸せを噛みしめましょうか。ハンバーガーと恋の味を。
福田幸子 17〜19歳
身長148cm
体重38kg → 42kg → 62kg → 105kg → 162kg → 173kg
B:79cm → 82cm → 86cm → 90cm → 109cm → 118cm
W:52cm → 56cm → 81cm → 119cm → 149cm → 152cm
H:75cm → 78cm → 92cm → 115cm → 143cm → 148cm
「ねせ、知ってる?あのメールの噂」
「あ、知ってる!『メールの神様』でしょ!?」
「それそれ!メールの通りにすれば幸せになれるってやつ!」
「でもメールの通りにしないと死んじゃうんでしょ?」
「事故に遭うらしいね。まぁ死んでない人の方が多いらしいよ?」
「へー・・・そうなんだ。あ、ごめんメール」
「お、誰から?もしかしてカレシ?」
「居ないよそんなの・・・誰だろこれ。知らないメルアドだ。
タイトルは・・・『幸せのメール』・・・?」