幸せの奴隷
リース 16歳 身長154cm 体重39kg
借金のかたに奴隷として売られた少女。
魔族との和平が結ばれ、平和になったエルード国。
それは同時に貴族の腐敗を誘うこととなった。
本来貴族とは先陣を切って戦い、その代わり民から支援をもらう者の事を言う。
だが、平和になるにつれ、少しずつ変わって行った。
貴族は民から搾取することだけを考え、道楽を興じていた。
勿論、そんな貴族だけはないが、それでも大半の貴族はそうであった。
そんな彼らの一番の遊びは「奴隷自慢」であった。
単なる奴隷ではなく、丸々と太った奴隷を自慢するのである。
顔が良く、賢い奴隷は非常に高値で売れる。その奴隷をさらに太らせることによって、
「自分はこれだけ裕福である」と誇示するのだ。
それはいつしか貴族の中で遊びから一種の"ステータス"へと変わって行った。
よりかわいく、より太った奴隷を持つものがよりすばらしい貴族だと。
皆躍起になった。
ある者はひたすらに食べさせ、ある者は魔術を用いた。
そして、今また一人。
奴隷が売られたのだった。
・
・
・
【ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・】
馬車に揺られ、リースは街道を進んでいた。
先日、借金のかたに売られたリースは、早くも新しい主人の下へと運ばれているのだ。
体は貧相極まりない体系で、服もボロボロになった簡易な物。
唯一の持ち物は彼女が売られた際、借金を全て返済しても少しだけ余裕が出たとして、
両親が最後にくれたお守りだけ。
リースはそれをぎゅっと握り、これから会う主人の事を思っていた。
『せめてやさしい人でありますように』
ゆっくりと移ろい行く景色を横目に、リースは不安におびえていた。
・
・
・
「初めまして。君の主人という事になるリンデンバットだ」
「初めまして・・・リースと申します」
彼女を迎えたのはメガネをかけたなかなかの優男だった。
長く美しい金髪を後ろでまとめ、細身の体に質の良い服を纏っている。
「僕としてはこんな低俗な遊びは気に入らないが、周りが持てとうるさくてね。
君には申し訳ないとは思うが付き合ってもらうよ」
「いえ・・・」
大体こんな事で優劣をつけるなんてナンセンスだ。なんだってこんな事を──
ぶつぶつと呟くリンデンバットを見たリースは、変わった人だと感じた。
だが、同時に
『やさしい人かもしれない』
そう感じていた。
・
・
・
「さて、ここが君の部屋だ。広さは問題ないだろう。何かあればメイドを呼びたまえ。
僕は研究があるからあまり君と会う事はないだろう。
もし用事があるならメイドに言いつけてくれ」
「わぁ・・・」
リースが通された部屋は豪華絢爛とはいえないものの、きちんと整頓された素晴らしい部屋だった。
調度品は全て一級品で、家主のセンスが一級である事を示すものだった。
「・・・まぁいい。とにかく何かあればメイドに言ってくれ。
それから食事は一日2食で朝と夜だ。その代わり量はあるからな」
それだけ言うとリンデンバットは部屋を出て行った。
リースは部屋を軽く見渡し、ベッドへと歩み寄ると腰をかけた。
ふわりと優しく包み込むベッドに体を預けると、気疲れからか、そのままスヤスヤと寝てしまった。
・
・
・
「こちらがお食事となります」
「・・・これ全部ですか?」
「はい」
夜、起きたリースの目の前には大量の食事が用意されていた。
まるで宴会でもやるのかと思えるほどの料理がリースの視界を埋め尽くしている。
「では何かあればお呼びください」
そういうとメイドは部屋を出て行った。
リースは恐る恐る、一口、口にしてみる。
芳醇な香り高い味わいがリースの舌に満ちる。
気付けばリースはバクバクと、少々下品なぐらいに食事をかきこんでいた。
・
・
・
「・・・けぷ」
今までの生活の一週間分はあろうかという食事を食べきり、リースはかわいらしいげっぷをした。
リースの腹は不自然なほどに膨れており、それが全て今食べた食事であることを
ありありと感じさせる。
「ちょっと気持ち悪いかも・・・」
重くなった体を抱え、ゆっくりとベッドへと戻ると、満腹感からか、
リースは昼寝をしたにもかかわらずすっと眠りに落ちた。
・
・
・
「そういえばご主人様の研究ってなんなんですか?」
一週間ほど経ったある日、リースは食事が終わった皿を下げにきたメイドに尋ねてみた。
あんなにガリガリだったリースの体は一般的な少女のそれとなり、
やつれていた印象を払拭してあまりある物になっていた。
「ご主人様は魔道人形の研究をなされています」
「魔道人形・・・ゴーレムってやつですか?」
「はい。一般的にはそう呼ばれていますが、正式には魔道人形と言います。
ご主人様は以前から新型の魔道人形の研究に取り掛かっておられます」
「新型?」
「はい、今の魔道人形は術者の命令道理にしか動きません。よって非常に単調な動きとなります。
ご主人様はそれを自立型へと改良なさっておられるのです」
「自立型・・・自分で考えて行動するんですか?」
「はい。成功すれば新しい魔道人形を創ったとして、ご主人様の名声も高いものとなるでしょう」
リースは一通りの話を聞いた後、メイドにこう言った。
「その研究って見れませんか?」
・
・
・
「まぁいいが、僕の邪魔はしないでくれ」
リースが頼むと、リンデンバットは以外にもすんなりと許可を出した。
リースはゆっくりと部屋を見て回る。
なんだかわからない部品がそこかしこに散乱しており、一歩間違えば何かを壊しそうで怖い程だ。
「あれが今研究してる魔道人形ですか?」
「ああ、そうだ。だが、なかなか上手くいかなくてな・・・
出力が足りないのか上手く魔術が動作しないんだ」
「魔術?」
「魔道人形はコアと呼ばれる魔素を出す機械からエネルギーを抽出し、
それを元に魔術を走らせてる。要は心臓から血が送られて初めて人間が動けるのと一緒だ」
「は、はぁ・・・」
「このコアの出力が上手く上がらん。一級品のコアを使っているんだがな・・・」
「コア・・・これが・・・」
リースは目の前にあったコアをまじまじと見つめる。
正六角形の形状をしており、紫色の水晶のような輝きを放っている。
「これ二個つけたらどうなんですか?」
「二個ではコア同士が反発するのか上手く動かないんだ」
「反発・・・人間でしたら間を取り持つ人がいれば丸く収まるんですけどね」
「・・・今なんと言った?」
「え?ですから間を取り持つ人がいれば・・・」
「それだ!反発するならそれを収める新しい装置をつくればいいのだ!いいぞ!
これは研究のし甲斐がある!」
「え?え?」
「リース!助かった!今から作業をするからすまないが出て行ってくれ!さぁ忙しくなるぞ!」
それだけ言うとリンデンバットはリースを研究室の外へと追い出し、
バタバタと慌しく動き回りだした。
リースはしばしぽかんとしたが、仕方なく自分の部屋へと戻って行った。
・
・
・
リースが“かわれてから”二ヶ月ほど経った。
二月ほどすると、流石に体の変化も顕著になる。
完全にデブの体系と言っていいほどに太ったリースは一日を食事か睡眠。
そしてリンデンバットとの会話だけで過ごしていた。
リンデンバット曰く、リースの発想は目を見張るものがあり、
会話する事で行き詰った問題がすんなり解決するのだという。
いつしかそれは日課となり、リンデンバットはリースと会話をする事を楽しく感じていた。
「中々楽しかったよ。ではもう少しで夕食だろう。僕は先にまとめたいからこれで失礼するよ」
「はい、こっちこそ楽しかったです」
「それにしても、中々育ったじゃないか」
「はは、こんな生活を続けていれば嫌でも太りますよ」
そういって、リースは自分の身体を誇示するかのように突き出す。
たわわに実った胸は、ずっしりとした重さが見て取れるようだ。
その胸が乗る腹は、まるで臨月を迎えた妊婦の腹のようだ。
尤も、入っているのは子供では無く脂肪だが。
ローブ状の服──体系的にこういった服装が楽なのだ──の上からでもはっきりと分かる程の
巨尻は、リースが身動きをとる度にぷるぷると揺れ動いている。
そこから伸びる太ももはローブを横に押し広げるかのように
はっきりとした自己主張をしている程だ。
二の腕はぷっくりと丸くなり、昔のリースの太ももよりも太いだろう。
顎にはうっすらと二重顎が形成されつつ有り、頬はプニプニとしている。
「それもそうか。ではな」
「はい、また」
・
・
・
「おお、良くおいで下さいましたな」
「いえ、こちらこそお招きいただき、ありがとうございます」
ある日、リンデンバッドはとある集会に来ていた。
その名は貴族会。
貴族同士の交流を深めるとは名ばかりで、現状は奴隷を自慢し合う場と成り下がっている集まり。
リンデンバットは今まで奴隷を持っていなかったことも有り、
自身の性格もあって出ることを拒んでいた。
だが、奴隷を持ったとあれば流石に断る訳にはいかず、仕方なしに出てきたのである。
『下衆が・・・』
内心で考えていることをおくびにも出さず、リンデンバットは主催者の案内の元、
会場へと足を運んでいた。
とはいえ、こういった集まりは貴族が自信の誇示のために開く会だ。当然パーティ自体の質は良い。
貴族同士での腹の探り合いや、派閥への取り込みをかけてくる連中の相手にある程度目をつぶれば
そこそこには居心地が良いのだ。
「・・・ところで、リンデンバット殿も奴隷を買われたとか」
「ええ、まぁ・・・」
「はは、この会に出てらっしゃるのだ。お持ちに決まっているだろうが」
「それもそうでしたな!あっはっは!」
パーティが開始されてから暫くし、リンデンバットの周りには何人かの貴族が集まってきていた。
要は初めて来た奴を偵察に来たと言ったところである。
「どうですかな?我々にお見せいただきたいのですが宜しいでしょうか?」
「ええ、構いません」
ここで下手に逆らっても面倒を起こすだけなのを理解しているリンデンバットは二つ返事でリースを見せることを承諾する。
それにそこそこ金をかけた自慢の娘でもある。
『・・・成る程、確かに盛況する訳だ』
なんとなくだが、貴族連中がはまる理由を感じつつ、リンデンバットは近くのメイドに声をかけた。
・
・
・
「おお・・・これがリンデンバット殿の・・・」
「素晴らしい!初めてとは思えませんな」
「初めてだからこそ力を入れてるのですよ」
「ははっ!それも道理ですな!」
ステージの上で動くリースを見ながら貴族達はあれやこれや好き勝手に話している。
そんな中、リースは太りきった体を揺らしながら様々なポーズを決めている。
リンデンバットの元に来た当初からは想像出来ないほどに太った彼女は、
ふぅふぅと息を切らしながらも一所懸命動いている。
その度に全身の肉が暴れる。
およそ200kg近い巨体が動く様は、ある種の神聖さすら感じる。
バルンバルンと音を立てながら揺れる胸。
肉のエプロンの様になった腹。
露出の高い服とは言え、それでも隠しきれない尻。
それらに負けない太ももや二の腕に付いた脂肪。
首との境界が曖昧になった顎。
それらは最早動く芸術でもあった。
「どうですかな?今度私の奴隷と比べてみては」
「いえ、まだまだ新参ですので。もう暫くは彼女に専念する予定ですよ」
「それは残念。ではまたの機会に」
「ええ、また」
内心、相手のことを見下しながらリンデンバットは愛想笑いを浮かべると、
リースを連れ静かに会場を後にしたのだった。
・
・
・
「どうかな、調子は」
「ふぅ・・・ふぅ・・・ええ、大丈夫です・・・」
月日は経ち、リンデンバットとリースの生活も長くなった。
その間にもリースの体はぶくぶくと太り、今では一人では何も出来ないほどになっている。
立ち上がることが出来ない為、床にクッションを敷いておかないと汗で大変な事になるため、
体の下にはまるでベッドのようなクッションがある。
周りには常にメイドが付き添い、様々な事をしている。
「今日はなんの・・・ふぅふぅ・・・ご用ですか?」
「いや、何。新型の魔導人形が出来たのでな。君に知らせておこうと思って」
「そうですか!それは良かったですね!」
「見せて上げよう」
リンデンバットが手を叩くと、ガチャリと扉を開けて人が入ってきた。
いや、正確には人型の何かが入ってきた。
服装こそメイド達と同じだが、人の物では無い肌。目の下に走る線。
女性型ではあるが、それは間違いなく魔導人形であった。
「これが・・・」
「そうだ。僕の傑作だよ」
ぺこりと、魔導人形はまるでお手本のように綺麗に頭を下げる。
勿論、リンデンバットは何もしていない。
つまり、きちんと魔導人形が自律している証拠である。
「まだまだ改良の余地はあるだろう。でも、これは世紀の発明だ!」
「おめでとうございます・・・本当の良かったですわ・・・」
喋るのも辛いのか、言葉の端々に荒い息づかいが見えるが、リースはにこりと笑いかけた。
リンデンバットが魔導人形に合図をすると、魔導人形はすっと踵を返し、部屋を出て行った。
それを見届けると、彼は彼女に近づいていった。
「君には感謝している。君のお陰でここまでこぎ着けることが出来た」
「いえ、私は・・・」
「謙遜は良い。君の発想は素晴らしいよ。
・・・その・・・なんだ・・・」
「どうかしましたか?」
急に歯切れが悪くなるリンデンバットに、リースは疑問を投げかける。
「いや、その・・・君にプレゼントがあるんだ」
「まぁ・・・」
そういってリンデンバットは、服のポケットに手を入れると、中から小箱をとりだした。
リースが小箱を開けると、中から綺麗な指輪が出てきた。
「これは・・・」
「その・・・元々は奴隷を強制労働させる目的で作られたらしいんだが、
空気を吸うだけで栄養を取り込む事が出来る指輪らしい。
他の効果は外して貰っているが、良かったら・・・その・・・付けてくれると嬉しい」
「・・・はい」
リースは今までで一番の笑顔を見せると、そっと指輪を指に嵌めたのだった。
身長:154cm
体重34kg → 45kg → 82kg → 196kg → 362kg
B:75cm → 83cm → 101cm → 142cm → 194cm
W:49cm → 54cm → 95cm → 161cm → 215cm
H:71cm → 86cm → 108cm → 151cm → 208cm
「ほぉ・・・これが新型かね?」
「はい、自立起動型魔導人形です。」
「成る程、女性型というのも珍しいな」
「女性の思考パターンを元にしてますので」
「そうか。・・・名前はあるのかね?」
「私は・・・"リース"と名付けました」
「リース・・・ふむ、良い名前では無いか。」
「はい。私の最も好きな名前です」