赤い縁

赤い縁

 

 

富士田 香奈(ふじた かな) 28歳 身長162cm 体重46kg B:88 W:56 H:82
アラサーと呼ばれる年齢になり、出会いを求める女性。
何気なしに聞いた縁結びの神様が祀られた神社に御参りしたところ・・・

 

 

 

 

 

「先輩、今度の合コンどうします?」
「あー・・・参加で」

 

ある日、香奈は後輩に以前から話題として出ていた合コンに誘われた。
相手は以前から付き合いのある会社の若い連中だとのことだ。
世間一般で言う所のアラサーとなった香奈。そろそろ人肌恋しい時期だ。
ここ最近、両親にチクチクと結婚の事を言われるようになった事も、
今回の話を受けた事と無関係ではあるまい。

 

「先輩も参加っと・・・先輩が参加するの珍しいですね」
「まぁね・・・最近親が・・・」
「あー・・・でも先輩まだ若いじゃないですか」
「わかってないわねぇ・・・30見えてくると色々考えるのよ。結婚とか色々」
「うわー怖い。あ、それならこんな話知ってます?」

 

香奈の話にさして怖がる風でもなく、後輩はとある噂話を話し始めた。

 

「ちょっと会社からだと遠いんですが、縁結びの神様が祀ってある神社があるんですよ。
 そこに御参りするといわゆる『赤い糸』が見えるようになるっていう話です」
「赤い糸ぉ?あの小指だかに見えるっていう?」
「それです。結構有名な話なんですよ?」
「どうせいつもの雑誌のネタでしょ」

 

香奈の言う雑誌というのは後輩がよく読んでいるレディース雑誌の事だ。
中身はよくあるゴシップ記事やら女子力アップなんかを謳った物で、
パワースポットなんかも載ってるらしい。

 

「そういいますけどこれは結構当たるって噂で」
「はいはい。とりあえず合コンは参加するから、今日の仕事片付けましょ」

 

それだけ言うと香奈は話を打ち切り、机に向き直った。

 



 

「あー・・・今回は外れね」
「ですね・・・」

 

合コンの終わったあと、香奈は後輩と共に帰り道を歩いていた。
今回は四対四だったのだが、相手方が明らかに酷かった。
二人はチャラいというか、視線が露骨過ぎた。
一人はなんと言うか完全にやることなすこと空回りするタイプで、
最後の一人は明らかな数合わせなのかやる気が全くなかった。

 

「やる気無いのはいいけどさぁ・・・せめて会話位しなさいよ・・・」
「二人はもうやる事しか頭に無い感じでしたし・・・最後の一人は・・・」
「あれが一番無いわね。流石に騒ぎすぎだし寒いし・・・」

 

相手についての愚痴を暫く言いあった後、帰り道が違うため香奈は後輩と別れた。
それから一人ゆっくりと歩く。
ふと、電柱の看板が目に留まった。

 

『伊鼓神社 この先右折して300m』

 

「・・・この神社ってこの前、あの子が言ってた縁結びの・・・」

 

先日の話を思い出し、香奈は腕時計を見る。

 

「午後10時・・・神様ってこの時間まで起きてるかしら?」

 

今日の合コンがそんなに酷かったのか、殆ど憂さ晴らし同然に
香奈は神社へ御参りする事にしたのだった。

 



 

「二拝、二拍手、一拝っと・・・」

 

賽銭を投げ込み、作法通りに御参りをする。

 

(どうか私の良い人が見つかりますように。出来れば来年までに・・・)

 

香奈自身も都合が良いなとは思っているが、どうせ願うなら大きく願っておいた方が良い。
そう考えてちょっと大げさに願った。

 

「さて、帰りますか」

 

神社に背を向け、ゆっくりと離れる香奈。

 

『・・・その願い、しかと聞いた』

 

「え?」

 

一瞬、誰かの声が聞こえたような気がして、香奈は後ろを振り返る。
だが相変わらず誰も居ない。

 

「・・・気のせい?幻聴が聞こえるほど飲んだつもりは無いけど・・・」

 

自分が思ってるより酔ってるのかと考えた香奈は、それ以上考える事無く自宅へと帰っていった。

 



 

「・・・なにこれ」

 

翌朝、香奈が朝起きて最初にとったリアクションがこれである。
その原因は香奈の左手の小指にあった。
小指の第一間接に見覚えの無い赤い糸が巻き付いている。
触っても感触は無く、それどころか壁を突き抜けてどこかに続いている。

 

「・・・やっぱり飲みすぎたか・・・今日休日でよかった」

 

二日酔いの様な頭痛はしない。
つまりこんな幻覚が見えるということはまだ酒が抜けきってないんだ。
そう考え、香奈は二度寝をする。
だが、昼過ぎに起きたときも糸ははっきりと香奈の目に映っていた。

 



 

現実なんだと何とか受け入れた香奈は、糸について色々と調べてわかった事をメモにまとめていた。
一つ、香奈にしか見えない。
二つ、触れることは出来ない。
三つ、ある一定の方角を常にさしている。
四つ、どうやらこれはあの神社のご利益である。

 

「・・・まとめたけど、アホくさ・・・」

 

こうして実際に見えなければきっと信じなかっただろう。
だがこうして見えるのだから現実なのだろう。
とすれば・・・

 

「・・・探してみちゃう?」

 

運命の相手。
香奈も女性だ。そういうものに憧れた時期もある。
幸い、今の世の中は何かと便利になった。
方角を割り出し、とりあえずそっちの方角へ、糸が動けばそれを目安にさらに割り出せる。

 

「よっし!折角の機会なんだから探して見ますか!」

 

気味悪がっていた事なんて無かったと言わんばかりに意気込む香奈。
だが、人生そう上手くはいかないのだ。

 



 

「・・・だぁ!なんでこんなに忙しいのよ!」
「しょうがないじゃないですか・・・大口の契約が来ちゃったんですから」

 

運命の人探しを決意した香奈を待っていたのは仕事に追われる毎日だった。
今回の件が上手くいけばかなり稼げるらしく、
会社もとても乗り気でとても人探しをしている余裕なんか無い程に忙しい。
休日出勤なんてざらである。

 

「やってられないわ・・・」
「言っても仕方ないですって・・・」

 

愚痴をこぼしつつ、香奈は慌しく動き回る羽目になってしまった。

 



 

「・・・ん?」

 

ある日の朝、仕事に行く為に着替えていた香奈は違和感を感じた。
腰回りがきついのだ。

 

「やば・・・太った?」

 

ここ最近の不規則な生活を考えれば十分にありえる。
残業で夜遅くまで会社に残れば、夜食を摂るし、早く帰れても疲れのせいで
簡単なカップ麺等の食事が多かった。
それだけ偏ればそれはそれは簡単に増えるだろう。

 

「まずいわね・・・ちょっとはダイエットしましょうか」

 

なんとかスカートに押し込めると、香奈は出社した。
だが、この決意も無駄に終わる事となる。

 



 

「先輩、最近太りましたよね」
「うっ・・・」

 

暫くしたある日。仕事中、香奈は後輩から恐れていた一言を貰っていた。
痩せようと決意した香奈だったが、仕事の忙しさに追われ、結局実行に移せず仕舞いだった。
結果、更なる体重増加を果たした香奈は、現在服のサイズを一つずらす羽目となった。
とはいえ、元々細めの彼女である。現状はぽっちゃり美人といった感じだ。
これ以上のサイズアップをすればぽっちゃりからデブになるだろうが・・・

 

「仕方ないじゃない。こう仕事が忙しいと結局何もできないんだから」
「夜食を控えたらどうです?」
「夜食べないと持たないのよ・・・」
「そうかもしれませんけど・・・折角綺麗なんですから」

 

嫌味ではなく、どうやら本心から思ってるようで、後輩の言葉は心配に溢れている。
それは香奈もわかっているのだが・・・

 

「・・・わかった。もう少し努力してみる」
「そうしてください。私も仕事手伝いますから」

 

後輩の言葉に『そんときは任せるわ』と答えながら、香奈は資料のまとめを再開した。

 



 

「なんで・・・なんで減らないわけ?」

 

後輩の叱咤を受けてから暫くたったある日。
体重計の上で、香奈は絶望に塗れた声を出していた。
仕事も一段落した香奈はダイエットを開始した。
したのだが・・・体重は右肩上がりに増量中である。

 

「食事にも気を配ってる。運動もしてる。なのに・・・なんで減らないの!?」

 

油っぽいものを控え、食事はまず野菜物を取り、それからタンパク質、糖質と言うようにしている。
食後に時間があればなるべくランニングを30分以上行っている。
それでも、香奈は痩せてないのだ。

 

「こんなんじゃ運命の人探しも・・・」

 

鏡を見ながら全身を確認しつつ、悲しそうな声を出す香奈。
大きく育った胸はハンドボール大で、たわわに実ったというべきである。
括れていたはずの腰は、腹にたっぷりとついた脂肪が綺麗さっぱり消し去った様だ。
巨大な桃のようになった尻は、最近会社の椅子でははみ出すようになった。
太ももはむっちりと太く、歩くたびにブルブルと揺れる。
二の腕も一般的な女性より二周りは太いだろう。
頬にも大分贅肉が付いたのか、顎のラインが丸くなり大分童顔に見えるようになってしまった。
痩せた女性が美しいとされる今の世の中では、仮に運命の人に会えたとしても
いい関係になるかは怪しい。

 

「それは嫌・・・それだけは嫌!!」

 

折角のチャンス。
それも運命の赤い糸なんていう貴重すぎるチャンス。
絶対に失いたくない。
香奈は体重計から降りると、新たな決意を胸にしたのだった。

 



 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

仕事の帰り。
香奈は息を切らしながら駅の階段を上っていた。
一歩一歩が重く感じる。
ダイエットを開始してから3ヶ月。
秋も深まりもうすぐ冬へと変わる季節となったが、一向に香奈は痩せる気配が無い。
ついに100kgを突破した体は、動くたびにブルンブルンと体中の肉が揺れる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・やっと着いた・・・」

 

ようやくホームに着くころには、体中から汗が噴出していた・・・

 



 

「・・・」

 

家に帰った香奈は、浴室でシャワーを浴びながら自分の体を調べていた。
バレーボールほどに育った胸も、それを支える臨月のような腹も。
まるでクッションのようになった尻も、大きめに開かないと内側が擦れる様になった太ももも。
両手でつかんでも指が回らないだろう二の腕も、たぷついてしっかりと二重になった顎も。
香奈には何もかもかが醜く映った。

 

「なんでぇ・・・なんでなのよぉ・・・」

 

その場にぺたんと崩れ落ちる香奈。
後輩にも色々手伝ってもらった。
食事だってかなり厳しく制限している。
運動だって欠かしていない。
それなのに痩せない。
痩せるどころかどんどん太っていく。
それは、香奈の心を折るのに十分であった。

 



 

「出張・・・ですか?」

 

それから一ヵ月後。
香奈は上司から出張を命じられていた。

 

「ああ、今度向こうで新しい部署が出来てね。そこに行ってもらいたいんだ」
「はぁ・・・」
「なに、旅行みたいなものだ。気軽に思ってくれ。
 行ってくれるかな?」
「わかりました・・・」
「では詳しいことはまた後でメールか何かで連絡するから」
「はい、では失礼します」

 

上司との会話を終え、香奈は自分の席へと戻った。
そして机の上に置いてあるお菓子を食べ始める。
今の香奈には全ての事がどうでもよかった。
ダイエットもすでにやめており、一ヶ月前よりも二周りは太ったように見える。
後輩も今までの努力を知っているからか、香奈に痩せようとは言わなくなった。
それですら、今の香奈にはどうでもよかった。
チョコ菓子を頬張りながらパソコンに向かう。
すると、一件のメールを受信した。

 

「・・・ああ、出張のか・・・場所は・・・ん?」

 

メールに書いてあった出張先。
それは以前調べた赤い糸の向かう先だった。

 



 

「今日からお世話になる富士田香奈です。
 よろしくお願いします」

 

出張先で挨拶を交わす香奈。
パチパチと拍手が鳴り、その後他の人の簡単な自己紹介を聞く。
しかし、香奈はどこか上の空だった。
それもそうだろう。
こっちに来てから赤い糸がぐるぐると激しく動くようになったのだから。
つまり、相手はこの近くにいるということになる。
最初はそこまで期待していなかった。
どの位の距離までこの糸が伸びるかわからないのだ。
もしかしたら外国に行っている可能性だってある。
だがこっちに近づくにつれてどんどん糸が激しく動くようになり、期待感は高まっていった。
だが、同時に残念にも思っていた。
この体型だ。運命の人としても流石に第一印象が悪ければ駄目なのではないか?と。
糸が見えているのは香奈だけ。糸が結ばっていると証明する手段は無い。

 

「・・・でも気になるわよね」

 

香奈は左手の小指をじっと見つめた・・・

 



 

「ふぅ・・・こんなものかしらね?」

 

香奈が出張先へ来てから二週間ほど経った。
職場にも少しずつ慣れはじめ、同僚とも多少は打ち解け始めた。
香奈は仕事が一段落したのか、ぐっと背伸びをしてからゆっくりと立ち上がる。

 

(丁度いいタイミングだし、少し飲み物でも買って休憩しようかな・・・)

 

そう考え、香奈は巨体を揺らしながら近くの自販機に向かった。
その途中である。

 

【ドムッ・・・】

 

「きゃ!」
「あ、ごめんなさい!」

 

曲がり角を曲がった拍子に誰かとぶつかってしまった。
相手は見覚えの無い男性で、少々頼りない感じもあるがなかなかの美男子だ。

 

「いえ、こちらこそ・・・大丈夫でしたか?」
「い、いえいえ!こっちこそ、急いでいるとはいえ女性にぶつかるなんて・・・」
「ふふ・・・大丈夫ですよ。そちらこそ、この体とぶつかって大丈夫ですか?」

 

必死に謝る男性が、なんとなくおかしくなり、自然と笑みを浮かべる香奈。
ふと、香奈の目に相手の左手の小指が目に付いた。
赤い糸が結ばれていた。
その糸が伸びた先に有るのは、香奈の小指。

 

「は、はい!大丈夫です!で、では失礼します!
 こ、今度お詫びしますので!!」

 

そういうと男性は小走りで去っていった。
後にはぽかんとしたままの香奈が残された。

 



 

「はぁはぁ・・・お、お待たせしました・・・香奈さん・・・」
「大丈夫ですよ。私も来たばかりですから」

 

香奈が運命の相手と出会ってから一ヵ月後。
二人はデートをしていた。
あの時ぶつかったのは香奈の会社の下請けをしている会社の社員だった。
あの後本当に香奈に詫びに来た彼は、その後もちょくちょくと香奈と連絡を取り、
いつしか二人はなんとなく良い関係になっていた。

 

「あ、あははは・・・今日のエスコートは任せてください」
「ふふっ・・・お任せしますね」

 

出会った時よりもさらに大きくなった体を相手に摺り寄せる香奈。
二人ともまだどこか他人行儀だが、なんとなくこの人は"合う"と二人とも感じていた。
彼にエスコートされながら、香奈は遠いあの神社に感謝していた。

 

(良い人が見つかりました。本当にありがとうございます、神様)

 

未だに少しずつ大きくなる体を揺らしながら、香奈は幸せそうに歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身長162cm
体重46kg  → 50kg  → 63kg →  88kg  → 122kg → 132kg
 B:88cm → 91cm → 99cm → 114cm  → 128cm → 134cm
 W:56cm → 59cm → 71cm →  92cm  → 118cm → 121cm
 H:82cm → 87cm → 95cm → 107cm  → 121cm → 126cm


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