機械の進み方

機械の進み方

 

 

バーファ 身長165cm 体重58kg B:91 W:52 H:88
体の90%以上が生体部品で出来ている新型アンドロイド。
ベースパターンAIが徐々に発展していくのが売りである。

 

 

 

 

 

『ピーンポーン』

 

朝早く、俺は電子音に起こされた。
いや、訂正しよう。昼過ぎだ。
太陽が随分と高いわ。

 

「はーい」

 

ろくに確かめもせず、ガチャリと扉を開ける。
目の前には黒猫をあしらったエンブレムを付けた作業服の人が立っていた。

 

「宅急便でーす。サイン下さい」
「はい、どうも」

 

出された端末に指を出す。
最近は指紋認証も精度が上がったらしいのか、こういったのも増えたな。
宅配の兄さんは端末を確認した後、廊下の方に声をかける。
どうやらもう何人か居るのか、廊下の奥で他の何かが動く気配がする。
ちらっとそっちをのぞき込むと、奥で何かでかい箱がこっちに向かってくるのが見えた。

 



 

数分後、俺の部屋の中にドドンと鎮座するどでかい箱。
人一人入れそうなカプセル状。
金属光沢が寝起きの俺にまぶしい。

 

「・・・で、なんだろうなこれ」

 

俺は暫くそれをしげしげと眺め、そして思い出した。

 

「これ・・・もしかしてこの前の懸賞のか?」

 

それは気まぐれで買った雑誌の懸賞にあった、アンドロイドが当たるなんつーアレ〜な奴だ。
昔はハワイ旅行とかの方が多かったらしいが、今はこういうののがメインになったよな。

 

「・・・これどうしよ」

 

当たるなんて思ってなかったから置き場所とか全然考えてなかったぞこれ。
そもそもこんなボッロイマンションに住んでる俺にこれを維持する余裕なんて無いよな・・・

 

「・・・どっか適当に売るか」

 

これを売れば少しは余裕も出るだろ。
そうなれば話は早い。

 

「業者まで持って行くか」

 

とりあえずどうやってもここは邪魔だな・・・ずらすか。
そう思って箱に触れた瞬間だった。

 

『ピッ』

 

「え?」

 

箱の上部にあるディスプレイに電源が入ってる・・・
ってちょとまてよ!

 

「おいおい待て待て待て待てって!」

 

確か起動するとマスター登録とかいうのが発生して売れなくなるんだよな!?
慌てて電源ボタンを探すが、見当たらない。
そもそも俺ってどこ触った!?
そんな慌ててふためく俺を横目に、プシューと音を立てながら箱の蓋は開いてしまったのだ・・・

 



 

「おはようございますマスター。
 私本日よりお世話になりますビューティフルベーシックワールド社製、Fatima29です。
 よろしくお願いします」
「・・・まじかよ」

 

俺は頭を抱えながら目の前に立っている奴を見上げた。
金色の綺麗な髪、蒼い澄んだ瞳の美女。
だが中身はカーボンで出来た骨格に、シリコンで出来た体を持つアンドロイドだ。
しかもご丁寧にマスターだとかどうとか・・・

 

「マスター?どうかなさいましたか?」
「いや・・・なんでもない・・・」

 

可愛らしく小首を傾げるそれを相手に、俺はさらに頭を抱えていた。

 



 

「はぁ・・・つまり私は望まれない誕生であったと?」
「うん、そうだけど言い方悪いよなそれ」

 

人聞きが悪いってレベルじゃねーぞ。

 

「ですがすでにマスター登録は完了していますし」
「いつだよ」
「最初からですよ?」
「・・・は?」

 

いまこいつ何って言った?

 

「ですから最初からです」
「それは宅配される前からってことか?」
「はい。すでにマスターの登録は完了した状態で私たちは出荷されますので」

 

転売とかそういうの対策か?
どちらにしても面倒くさい事を・・・

 

「ああそう・・・まぁいいか。お前って何が出来るの?」
「私は汎用タイプですので、家事は一通り出来ます」
「ふーん・・・食事とかは?」
「あちらの専用ベッドで充電すれば十分に持ちます」
「そうか・・・」

 

俺はそのベッドとやらを見てみる。最初にこいつが入っていた箱だ。
っていうかこれベッドだったのかよ。
ベッドには充電時に使うのか端子がいくつか付いている。
横にはディスプレイが付いていて色々と設定がいじれるらしい。

 

「これどういうのが設定出来るんだ?」
「はい、私達のシリーズでは体型の変化などが出来ます。
 他にはAIの性格設定、新しい技術の習得、システムのヴァージョンアップなどが可能です」
「色々できんのな」
「汎用型ですから」

 

なるほど分からん。

 

「体系の変更って言ってたけど、どこまで出来るんだ?」
「身長は±10cm、各スリーサイズは±20cmまで出来ます」
「へぇ〜」

 

当たっちまったモンは仕方ないか。
そういうので少しでも楽しむか。
・・・確かアンドロイドにセクハラすると強制機能停止した上にしょっ引かれた気がするけど。

 



 

俺はアンドロイド──面倒だからバーファと呼ぶことにした──に指示を出し、
ベッドに横になってもらった。
そしてディスプレイを立ち上げてみる。
色々な情報が画面に表示される。
俺はそれっぽい情報を見つけると、自分好みに弄り始めた。
データの入力が終わり、バーファの体が硬直する。
どうやら体の変化する時に不備が出ないようにする為らしい。

 

「さっき変化には二時間位かかるとか言ってたよな・・・」

 

流石に少し長いな。
腹も減ったし、カップ麺でも食うか。
そう思って俺は電気ポッドに水を入れてそのままスイッチを入れる。
その途端、プツンと嫌な音が、聞こえた。

 

「やっべ!ブレイカーが飛んだか!?」

 

そりゃそうだよな。あんだけでかい物が少ない電力消費で終わるはずがねえよ。
慌てて俺はブレイカーを上げる。
ベッドのディスプレイはうんともすんとも言わない。
中をのぞき込むと、バーファが丁度起動するところだった。

 

「おはようございます。
 体型に変化が見られないのですが、変更なさるのでは無かったのですか?」
「スマン、ブレイカーが落ちた。体は大丈夫か?」

 

俺の問いかけに、バーファはベッドから起きると各関節を確かめ始めた。

 

「大丈夫です。問題は見られません」
「ああ・・・それなら良かった」

 

そう俺が安堵した直後だった。
ムクムクとバーファの体が膨らんでいく。

 

「・・・は?」
「こ、これは・・・!?」

 

本人も予想外なのか、慌てているようだ。
というかAIも慌てるのな。

 

「じゃなくて・・・おいどうしたんだよ!?」
「わ、私にも何がなにやら・・・」

 

俺の目の前でまるで風船みたいに膨らんでいくバーファ。
ゆったりとしていた服はパッツパツになり、やがて・・・

 

『ビリッ・・・!!』

 

脇腹に亀裂が走る。
そこからは決壊したダムのように服がビリビリと破けていく。

 

「何とかして止められないのか!?」
「む、無理です!!体型の変化はあのベッドでしか行えないので」
「マジかよ!!」

 

俺はベッドを触ってみるが、うんともすんとも言わない。
どうやらブレイカーが飛んだせいでどっかが壊れたらしい。
俺がベッドと格闘している横で、バーファはどんどんと膨らんでいった。

 



 

「で、こうなった訳か」
「ですね」

 

数時間後、俺の目の前には変わり果てたバーファが居る。
ズドンと飛び出た巨大な太鼓腹。
その上に乗っかる化け物じみた胸。片方で頭よりもでかいなこれ。
尻は座っているからか横につぶれ、昔ウチにあったクッションを思い出す。
太ももは正座が出来ないほどになり、足を投げ出している。つーか閉じてないし。
二の腕は俺の腰ぐらい有るな。俺も華奢な方だけど腰回り55は有るはず。
ぶっとくなった指はフランクフルトが連なったようになって、何か作業をするには向かなそうだ。
首は完全に埋まり、頬はまるでつきたての餅みたいになってる。

 

「サポートセンターは?」
「現在業務時間外です」
「糞が」

 

もう少しがんばれよ、夜八時頃まではやってろよおい。

 

「しゃーねぇ・・・明日電話するわ」

 

俺はなにもかも面倒になってそのまま寝転んだ。

 



 

結局、ベッドの修理自体はすぐ出来た。ヒューズが飛んだだけとか・・・
だが、本体の方の修理は本部に届けないといけないらしく、しかも別途で金がかかるらしい。
値段を聞いた俺は払う気を失せ、とりあえずそのままにしている。
つまり・・・

 

「マスター。食事が出来ました」
「おうさんきゅう。良く動けるな」
「私は学習しますから」

 

バーファはデブのままだ。
でかい体を器用に動かして食事をてきぱきと用意する様は本当にあの体型なのか疑わしくなる。
どでかい服を着ながら甲斐甲斐しく俺に尽くしてくれるのは正直嬉しい。
嬉しいんだが・・・

 

「これで体型がなぁ・・・」
「どうかなさいましたか?」

 

ボッキュボンが好きな俺からするとこれはある種地獄でしか無い。

 

「はぁ・・・金が欲しい」

 

バーファが作ってくれた食事を食べつつ、俺は一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

バーファ
身長165cm
体重58kg  → 219kg
 B:91cm → 147cm
 W:52cm → 162cm
 H:88cm → 155cm


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