氷の熱
平川 香澄(ひらかわ かすみ)21歳 身長171cm 体重43kg B:82 W:53 H:79
すらりとした女性。最近恋人が出来たが・・・
檜山 寛(ひやま ひろし)20歳 身長148cm 体重39kg
香澄の恋人。童顔低身長と、二十歳の男には絶対に見えない。
大学の帰り道、僕は目の前を歩く人物を見つけ、思わず叫んだ。
「香澄さ〜ん!一緒に帰りませんか〜?」
声が聞こえたのか、香澄さんはこっちを振り返ってくれる。
「あら・・・ヒロくん。勿論一緒に帰りましょう」
優しい声で僕の手を握ると、香澄さんは横に並んでくれた。
小柄な僕が並ぶと香澄さんの背の高さがよく分かる。
すらっとしてモデルさんみたいな香澄さんとチンチクリンな僕では
なんだか姉弟というか親子というか・・・
せめてもう少し背があればと思う。
「ヒロ君?どうかしました?」
「い、いえ!なんでもないです!」
心配そうにこっちをのぞき込む香澄さん。
慌てて僕が否定するとクスッと笑ってくれる。
ああ・・・こんな人が僕の彼女になってくれるなんて・・・
あの件が無かったらこんな関係には絶対なれなかっただろうなぁ・・・
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あの日、サークルの飲み会で遅くなった僕は、ぎりぎりで終電を逃しどうするか迷っていた。
終電といっても家までは4駅程、歩いて行こうと思えば十分いける距離だ。
ただ、そうすると朝になりそうだった。
どこかで泊まるか、それとも帰るか迷う僕の前に、香澄さんが現れた。
いや、現れたというか通り過ぎたって感じだけど。
僕も男だし、可愛い女性の事は気になる。
それがこの大学でも一番可愛いと言われる香澄さんならなおさらだ。
「こんな時間に何してるんだろう・・・?」
彼女の事が何となく気になり、僕は香澄さんの後をついて行ったんだ。
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「ここ・・・大学?」
駅から暫く歩いて、香澄さんが向かった先は僕達の通う大学だった。
夜遅い大学は気温とかそういう物じゃ無い肌寒さを感じさせる・・・
「門も閉まっているのに・・・どうするつもりなんだろ?」
そう呟く僕の目の前で香澄さんはひょいっと門を飛び越えた。
「あ・・・え・・・?」
余りの出来事に固まる。
門の高さが3mぐらいだから、それをジャンプで越えた事になる。
しかも助走も何も無しで。
「嘘でしょ・・・?」
僕は門に駆け寄って調べてみる。
いつも通りの大きな門。
夜だからか鉄製の門は酷く冷たい。
「よいっしょっと・・・」
なんだか尋常じゃ無い雰囲気を感じた僕は門をよじ登り、香澄さんを追った。
そう、今思えばあれが分岐点だったんだろうなぁ。
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「どこだろ・・・」
大学の中を探してみても香澄さんは居ない。
でもアレは見間違いなんかじゃないし・・・お酒なんか飲まないから酔ってたわけでも無いし。
『ギィン・・・ガン・・・』
「ん?」
諦めて帰ろうかと思った直後、どこからか物音が聞こえてきた。
それもなんだか争い事をしているような音が。
「なんだろ・・・」
音の鳴る方へと駆けていくと、どんどんと音が近くなる。
そして僕の目の前に現れた光景はとんでもない物だった。
二人の人がまるでバトル漫画みたいに空を飛び回りながら戦っていたんだ。
片方は香澄さん。でも体中に傷やらを負っているし、服も血だらけだ。
もう一方は真っ黒い影のような奴で、顔が全く見えない。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
目の前で香澄さんが息を荒げている。
素人の僕でも分かる。香澄さんはもう動けないんだ。
さっきから一度も影の奴に攻撃できてない。身を守るだけで精一杯だ。
そしてついに・・・
「がはっ・・・!」
香澄さんが膝をついた。
影は香澄さんに近づくと、手にした武器を香澄さんの首に・・・
「やめろぉぉぉおおおおおお!!!!」
何で突っ込んだのか、僕も分からない。
でも僕は大声を上げながら香澄さんの方へ走り寄っていった。
影は僕の声に気付いたのか、一瞬動きが止まった。
僕はそのまま影にタックルをして、香澄さんを抱きかかえる。
身長差のせいで少し引きずるみたいに不格好だったけど、香澄さんを連れて逃げたんだ。
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がむしゃらに大学の中を逃げ回った後、僕は保健室の中に逃げ込んだ。
ベッドに香澄さんを寝かせた後、僕もその場に座り込んでしまった。
「はぁ・・・はぁはぁ・・・」
「き、きみは・・・?」
「えっと・・・檜山寛って言います・・・」
「そうですか・・・とにかく速く逃げてください・・・ここは危険です」
「そうはいかないですよ・・・だって傷だらけじゃ無いですか・・・」
「いつものことで・・・うっ!」
立ち上がろうとした香澄さんは、傷が痛むのかそのままうずくまってしまった。
「無理ですよ・・・少し休んでて下さい」
「でも・・・」
「いいから!」
ちょっと失礼だとは思ったけど、僕は強めに香澄さんの体をベッドに押した。
その時、香澄さんの顔色が変わった。
「あ・・・痛かったですか?」
「いえ、そうじゃなくて・・・檜山さん、手を見せて下さいますか?」
「え、ええ・・・」
僕は言われるままに香澄さんに手を見せる。
香澄さんはまじまじと僕の手を見て、すごい顔をした。
「貴方も・・・でもまだ覚醒は・・・」
「ど、どうかしたんですか!?」
そのままぶつぶつと呟く香澄さんに、僕はただおろおろとするだけだった。
「檜山さん、良く聞いて下さい。
貴方にも協力して貰うことになりそうです」
「きょ、協力ってなんの!?」
「それは・・・最悪あの影と戦って貰います・・・。
こんな事を頼むのは心苦しいんですが・・・貴方には戦う力が──」
その時、ガシャンと音を立てながらガラスを割り、部屋の中にあいつが飛び込んできた。
これだけ近づいて分かった。
影のようなっていうか、完全に影が人型に浮かび上がったみたいで気持ち悪い。
「くっ・・・檜山さん逃げて!」
香澄さんは無理矢理立ち上がるとその影に向かっていった。
だけど・・・
「無理ですって!!」
動きが悪すぎる。
明らかについて行けてない・・・
でも・・・それでも香澄さん止まらない。
それなら・・・
「・・・どうすれば良いんですか?」
それならせめて・・・
「どうすれば戦えるんですか!?」
香澄さんのように戦うにはどうすれば良いんですか!?
「・・・本能に・・・戦闘本能に訴えかけて・・・」
途切れ途切れに香澄さんの声が聞こえる。
戦闘本能・・・戦いたいっていう気持ち・・・
香澄さんと助けたい・・・!!
そう強く念じると、僕の両手が急激に熱くなってきた。
「それをこいつに・・・!」
「これを・・・くらえぇぇええええええ!!!」
両手を突き出すと、僕の手から炎が火の玉となって飛び出していった。
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僕は何とか影を吹き飛ばすと、その場に崩れ落ちた。
どうやら上手いこと影を倒せたらしい。
「はぁ・・・はぁ・・・」
疲れる・・・
ただ炎を投げただけなのに・・・
それなのにもう歩けない程に重い。
「こんなのを続けて居たんです・・・か・・・!?」
僕は香澄さんの方を向いた。
向いたんだ・・・
「ふぅふぅ・・・見られてしまいましたね・・・」
あのすらっとした体つきなはずの香澄さんは、見るも無惨な体つきになっていた。
恐らく僕の三人・・・いや、下手したら四人分は体重がありそうだ。
服は見るも無惨に飛び散って、何とか胸の先だけを両手で隠している。
その腕も僕の腰ぐらい有りそうだ。
胸は腕からあふれ出し、お腹は股間を隠すほどに飛び出ていた。
お尻はまるでクッションみたいに柔らかそうにその形を歪めている。
「ひ、平川さん・・・?その身体は一体・・・?」
「・・・今檜山さんが出した炎のせいです。
私の特殊体質のせいでもありますが」
香澄さんが言うには、僕が炎を出せる様になったのは特殊な遺伝子を持っているかららしい。
その御陰でこんな超能力が出来るし、特殊な体質にもなる。
僕の身長が低いのもそれかもしれないと言う。
・・・まぁ後で違ったと言うことが判明したけど。
そして、香澄さんが言うには、香澄さんの能力は氷を出す能力で、
持っていた武器も氷を固めた物らしい。
そして、特殊体質というのが熱を受けると身体が太るという物らしい。
どうも熱をまさしくカロリーとして変換出来るらしい。
で、僕の出した炎の熱を受けたせいでこうなってしまったと言う。
「そ、その・・・申し訳ないです」
「いえ、寧ろこちらこそ助かりました。
・・・あの檜山さん?」
「は、はい!」
「今日のことは内緒にしておいて下さいね?」
指を唇につけてシーってジェスチャーをする香澄さん。
それを見た僕は、なんだか酷く落ち着かなくなっていた。
多分、この時僕は彼女に恋をしたんだろうな。
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あれからかなり経った。
影達との戦いも何度も体験し、香澄さんとも親密になれた。
「香澄さん・・・」
「何ですか?」
香澄さんを見上げながら、僕は香澄さんに告げる。
「好きです。香澄さん」
「私もですよ」
他愛も無い言葉を交わしながら、僕達は一緒に帰っていった。
手を強く握りながら、ゆっくりと。
平川香澄
身長171cm
体重43kg → 158kg
B:82cm → 127cm
W:53cm → 149cm
H:79cm → 131cm