人の楽園

人の楽園

 

 

レジェス・ミクーナ 18歳 身長170cm 体重43kg B:78 W:56 H:79
デーバの第一世代として作られたデザイン・ベイビー。
高い身体能力を持ち、免疫力の向上などデーバとして標準的な調整がされている。

 

 

 

人類が地球の外へ移住するようになって約百年。
人類はついに太陽系の外へと進出する事を決意した。
だが、何が起こるか全く分からない未知の旅路に志願する者は居らず、
またそれら緊急のトラブルに対処できる能力を兼ね備えた者も居ない為、計画は難航していた。
そんなある時、医学の分野でヒトゲノムの解明、つまりゲノム・リーダーの発見がなされる。
これを受け、地球統一政府は極秘裏に有る計画を進める。
優れた遺伝子を持ち、ある程度命令に従順な性格に調整した人類。
遺伝子操作によって産まれるデザイン・ベイビー・・・通称【デーバ】を生み出す計画である。
人のエゴの塊である彼等の誕生には、ある科学者が関わっていた。
ゲノム・リーダーの発見者であり、遺伝子工学の権威でもあるメニア博士である。
彼はこの計画に反対であったが、政府は彼をこの計画に無理矢理ねじ込んだ。
彼自身は有神論者であり、神が作りし人の摂理に介入すべきでは無いという持論を持っていた。
ゲノム・リーダーの研究は神へ至る道の一つだと信じているのである。
だが、彼は計画に参加せざるを得ない状況へと追い込まれてしまった。
それだけ政府が本気であったとも言えるが、これが良くなかった。
追い詰められた博士は計画に参加することを承認。

だが、これは博士の復讐の始まりでもあったのだ。
彼はデーバ達の遺伝子にある“時限爆弾”を仕掛けた。
ある一定の年齢に達すると、彼等デーバの体に異変が生じるようにしたのである。
ゲノム・リーダーを知る彼だからこそ出来た事であり、同時に彼以外は恐らく解けないだろう。
そもそもこのゲノム・リーダーは公式には発表されていない。
なぜならば、この存在を知られた場合、大規模戦争が勃発する可能性があったからである。
毒への抗体を持ち、病気になる遺伝子を根本から消せる上に、
身体能力の強化が最初からある程度可能なのだ。
手軽に、死ににくい屈強な兵士が量産出来るのである。
これを恐れた政府は、博士の研究を公表していないのだ。
御陰で博士以外にゲノム・リーダーをきちんと解読出来る人間は居ないのである。
博士はここに目を付けた。
博士以外解けない時限爆弾。
これが博士の政府に対する最後の反抗であった。
もしくは・・・彼は彼の信じる神のように人を弄る事を心のどこかで求めていたのかもしれない。
何にせよ、彼は時限爆弾を仕掛け、その上でデーバを完成させた。

そして、自殺したのである。

 

「我が人生において、彼等を作った事は恐らく罪であろう。
 だが、私は選んだのだ。神に成ることを。神の御心を学ぶために」

 

博士の遺書にはそう記されていた。
博士が死に、誰もデーバの爆弾を取り除けない。
そして、それに気付かない政府は第一世代のデーバを製造する。
そして、18年の月日が流れた。
時限爆弾の目覚めは近い。

 



 

「全く・・・私の有用性を表すのに何故態々こんな事をせねばならないのか」

 

レジェスは船の中で愚痴をこぼした。
18となった彼女はいよいよ太陽系の外へ向けて出発する事となる。
が、その前に彼女がどの位通常の人間より優れているのかを改めて測る必要がある。
そう感じた政府は彼女に火星での開拓作業を命じたのである。
既に大部分が開拓されているとは言え、その作業は困難かつ精神的疲労もかかる物である。

 

『そうは仰いますが、レジェス様はデーバの第一世代でございます。
 様々な可能性を検証するのも立派なお仕事でございます』

 

船に積まれたAIがその呟きに対して返す。
無機質極まりないその返答はレジェスをさらに怒らせる。

 

「フン・・・私を作ったのは奴らだろう・・・一体何が心配だと言うんだ」
『何事も検証が必要でございます』

 

AIの面白味の無い答えを聞き、レジェスはつまらないという顔をして操舵室から出た。
冗談の一つも言えないAIと居るよりは自室に戻って別の作業をした方が
よっぽど効率的だと考えたのだろう。
カツンカツンと音を立てて廊下を歩くレジェス。
ふと、窓の外の光景に目をやる。
数多の星々が目映く輝く。
過去、この光景を見た者は正しく英雄であった。
国の威信を賭け、帰れるかも分からない道を進んだのだ。
だが、それも今では誰もが見られる安い物となってしまった。

 

「・・・私の働きも、そうなるのか?」

 

レジェスの任務は外宇宙への進出が可能かどうかの調査。
確かに歴史に名を残す偉業であろう。
だが、それもすぐに忘れ去られるのでは?
この任務の為だけに作られた私達の存在意義とは?

 

「・・・無意味だな」

 

レジェスは脳裏に浮かんだ考えをかき消すかのように頭を振ると、再び自室に向かって歩き出した。

 



 

部屋についたレジェスは、ベッドにその体を投げると、腕を頭の後ろに組んだ。
そのままじっと天井を見る。
ホログラムで地球の青空を映し出す天井も、今のレジェスにはゴミほどの価値も無かった。
無言で彼女は壁にあるスイッチを押す。
途端にホログラムは消え、元の無機質な天井が表れる。
レジェスはそれを見つめながら考えを巡らせる。
それは見たことの無い両親の事であったり、同期のデーバ達の事であったりした。
おっとりとしていたが決断力のあるミリア。
小動物の様に可愛らしく、学力に優れたリーン。
何かとこだわりのある頭でっかちなグリーニ。
力自慢であったゲルガッシュ。
他にも色んな同期が居た。
各々別の任務を負わされているため、レジェスは連絡こそ取っていないが彼等の事は気にしている。
そんな事を考えている内に、レジェスの意識はいつしか闇へと落ちていった。

 



 

「む・・・寝ていたか」

 

暫くして、レジェスは目を覚ました。
時計を確認すると大凡2時間程寝ていた計算になる。
レジェスがベッドから体を起こし、伸びをした瞬間だった。
ふいにレジェスの目の前が歪んだ。
それと同時に体がまるで燃えるかのように熱くなる。

 

「う・・・が・・・ぁ!!」

 

体を押さえ、必死に熱さに耐えるレジェスだが、やがてその膝を床につけた。
体の熱さは留まるところを知らず、燃えさかる炎のようにレジェスを焦がす。

 

「な・・・なんだ・・・!?」

 

荒い息を吐き、焦点の定まらない目で彼女は壁のコンソールを見る。
コンソールを弄れば緊急時用の医療チェッカーが起動出来るからだ。
震える体を何とか起こし、彼女が一歩を踏み出したときだった。

 

【ブルン!】

 

「なっ・・・!?」

 

彼女は感じたのだ。
自らの体の変化を。
慌てて体を触る。
返ってくるのはあり得ない感触。
脂肪、贅肉、脂身。
そこには彼女には存在しないはずの存在がひしめいていた。
腹に、胸に、尻に、脚に、腕に、顔に。
あってはならない物があった。

 

「な・・・なんだこれは!!」

 

脂肪は見る見る内に増えていく。
まるで体からあふれ出していくかのように。
ギチギチと音を立て、服という拘束具を破くかのように。

 

「や・・・やめろ!!やめてくれ!!」

 

普段の彼女を知る者なら、この叫びを聞いて驚愕するであろう。
凛とし、刃物の様に鋭い雰囲気であるレジェスが、子供の様に騒いでいるのだ。

 

「やだ・・・やだやだやだやだ!!」

 

その叫びを聞き入れる事は無く、彼女の体は瞬く間にその質量を増していく。
そして・・・

 

【ブチッ・・・ブチブチブチブチブチビリィ!!】

 

「いやぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

ついに彼女の服は腰の辺りを中心にばらばらにちぎれ飛んでしまった。
その衝撃でバランスを崩した彼女はその場に座り込む。
ドスンと重々しい音を立て、彼女の体が弾む。
未だ膨張を続ける体を、レジェスはただ見つめるしか無かった。

 



 

ようやく膨張が終わったとき、彼女の体は大きく変貌していた。
細く、引き締まった体は見るも無惨な脂肪の塊へと変わった。
決して大きくは無かったが、形良く纏まっていた胸は大きく垂れ下がり、下品極まりない。
その下にある腹は、うっすらと腹筋が浮かんでいたはずであったのに、
まるでそんな事実は無いと言わんばかりに飛び出ている。
臨月の妊婦の腹よりも一回り・・・いや二回りは大きく育ったそれは、
重りのようにレジェスの体を縛りつける。
尻はだらしなく垂れ下がり、彼女の体重を受けて床に広がっている。
クッションの様なそれから伸びる脚は、正しくドラム缶の様なという形容詞がしっくり来る。
破け去った服の代わりに胸を押さえる腕は、以前の彼女の腰をも上回りそうな程太くなった。
顎肉はたっぷりと付き、首を埋め尽くさんとして、頬は丸く育ち目を細めている。
そう、この急激な肥満化こそ、メニア博士の仕掛けた爆弾なのだ。
普通の人間がこの様な急激な肥満化をすれば心臓への負担や、皮膚の膨張性。
さらに言えば筋肉量の関係から動くどころか下手すれば死に至る。
運良く生きられたとしても、今度襲うのは様々な病気だ。
だが、デーバはそれらの問題を解決出来る様に設計されている。

つまり、この肥満化を耐えられるだけの体を持っているのだ。
だが、当然デーバ達も無事では済まない。
まず移動の大きな制限。
これだけの肉量ならば当然間接の可動範囲は狭まり、増えた質量は筋肉に大きな負担をかける。
さらに、デーバ達の存在意義その物に対してもこの爆弾はその威力を発揮する。
デーバ達の最も重要な部分は【如何に優れた人間を生み出すか?】である。
太った人間は、果たして宇宙空間で優れた人間と言えるのだろうか?

 

「ぐすっ・・・ひぐっ・・・いやだぁ・・・いやだぁぁぁぁあああああああああ・・・」

 

レジェス達デーバは賢い。
学力だけでは無く、知能がそもそも高いのだ。
そして、それは自分たちの価値が失われたことを容易に気付かせる。
レジェスは、ただただその太りきった体を震わせながら泣くしかなかった。

 



 

結局、デーバ計画はそのまま使われることとなった。
時限爆弾の事を知った政府は、デーバ達を一旦回収し研究した。
その結果、身体機能自体の低下は余り認められない。
脂肪自体は除去出来る事を発見する。
が、脂肪は一度除去しても暫くするとまた増えるのだ。
政府はデーバ達に定期的に脂肪除去をさせる事を決定。
彼女達を使えれば、彼女達にかかる脂肪除去代よりも遙かに高額の利益を生み出すことが出来る。
そう政府は考えたのだ。
そういった点では、メニア博士は仕事をきっちりとこなしたと言えるだろう。
レジェスも火星での開拓任務を終え、ついに外宇宙へと旅立つこととなった。
なったのだが・・・

 

「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

必死に服を着るレジェス。
今は脂肪の増加期であり、一分事に体が重くなるかのような速さで太る。
当然服は合わなくなるのだが、そう何着も持っていくわけにも行かない。
結果、一つ下のサイズを必死に着ているというわけである。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・くそ、デーバが聞いて呆れる」

 

愚痴りながらも何とか着替えを終えたレジェス。
その体はさながらトドの様であった。

 

「く・・・もう少し太れば上のサイズを着られるのだが・・・」

 

忌々しげに呟く彼女の声を聞いてか、服のボタンが嫌な音を上げ始める。

 

「お、おい・・・!待って!!」

 

レジェスは停止する声を上げるが、ボタンはブチンと音を立ててちぎれ飛んだ。
だらしなく腹を見せる己の姿を見ながら、レジェスは羞恥心に耐えるハメとなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レジェス・ミクーナ
身長:170cm
体重: 43kg  → 179kg → 107kg
  B:78cm → 133cm → 108cm
  W:56cm → 158cm → 118cm
  H:79cm → 141cm → 112cm


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