繭のゆりかご

繭のゆりかご

 

 

山下 花衣(やました かい)17歳 身長154cm 体重45kg
高校二年生。バスケ部に所属する少女。
ややボーイッシュとも言える姿からか男子女子共に人気が高い。

 

 

 

 

 

じゃらりと、鎖の音が響く。
花衣は自身の腕も足もろくに動かないことを確認すると、何度目か分からないため息をついた。

 

「なんだよ・・・これ・・・」

 

周りはコンクリートむき出しの殺風景な部屋。
あるのは目の前にある鉄の扉と、天井にぶら下がった蛍光灯。それに壁に不自然に開いた穴。
窓はなく、時計もないため、今が何時なのか、昼なのか夜なのかも分からない。
そもそもなぜ、ここに連れてこられたのか?
花衣にはそれすら分からなかったのだ。
部活動が終わり、帰宅する途中で急にさらわれた。覚えているのはそれだけである。

 

「一体・・・僕をどうするつもりなんだ・・・?」

 

疑問という漠然とした不安が、恐怖となって花衣に積もる。
そんな時だった。

 

【ガチャ・・・】

 

目の前の鉄の扉がゆっくりと開いたのだ。

 

「こんばんは〜お元気かしら〜?」

 

カツンカツンと足音を立て、一人の女性が入ってくる。
派手な服を着て、胸元を無駄にはだけさせた妖艶な女。
その声はこの場に似つかわしくない明るい声。
人をおちょくっているのか言わんばかりである。

 

「だ、誰・・・?」
「あら、誰だって良いじゃない?
 私は攫った人、貴方は攫われた人。ね?」
「ね?って・・・僕をどうするつもりなんだよ!!」

 

その台詞を受け、女はにやりと笑う。
パチンと、指をはじくと、女の後ろから男が何人も現れる。

 

「な、なんだよ!!」
「ああ、ほら!!暴れないの!!」

 

異様な雰囲気を察し、花衣は暴れる。
が、手錠がはめられ、両足が縛られた花衣ではどうすることも出来なかった。
花衣は男達によって押さえられ、身動きすらとれなくなったのだ。

 

「もぅ、せっかちね〜
 ほら、アレ、この子にあげて頂戴」

 

女がそう言うと、男の一人が注射器を手に花衣に近づいた。
そして、叫ぶ花衣の腕に突き刺す。
中に入っていた液体はスルスルと花衣の中に入っていく。

 

「なんだよぉ・・・何を入れたんだよぉ・・・!!」
「ふふっ、素敵なお・く・す・り!すぐ分かるわ〜」

 

女の言うとおり、花衣はすぐに異変に気づいた。
体に力が入らないのだ。
いや、正確には手足・・・四肢に力が入らない。
だらんと、その場に吊される花衣。

 

「ふふ・・・良い感じみたいね。離してあげて」

 

女の命令で男達は花衣から離れ、鎖も外していく。
花衣の体は、地面にみっともなく崩れ落ちた。

 

「うーん・・・素敵!!」

 

その様子を見てはしゃぐ女。

 

「あ、ぐ・・・」

 

そんな女の前で、苦しげに息を吐く花衣。

 

「ふふ・・・じゃあ後は任せたわよ?」

 

女は満足したのか、扉から出て行く。
花衣は、その様子をただ見ることしか出来なかった。

 



 

女が出て行った後、男達もすぐさま出て行った。
その直後である。壁の穴からごろごろと何かが転がってきた。

 

「・・・おにぎり?」

 

簡易なパック詰めされたおにぎりが数個、転がり落ちてきたのだ。

 

「食べろって訳・・・?」

 

逃げないために四肢の自由を奪い、最低限の食事を与えて餓死を防ぐ。
女の目的は分からないが、ここから逃す気はないらしい。
花衣はそう考え、おにぎりの包みまで這って歩く。
まるで芋虫だ。
バスケ部で“ならした”花衣にとって、これ以上ない屈辱であった。

 

「いいよ・・・生きてここから出て行ってやる・・・!!」

 

口で必死に梱包を開けながら、花衣は決意をした。

 



 

その日から何日たっただろうか。
花衣はただひたすら出された食事を食べるだけの日々を送っていた。
相変わらず四肢には力が入らず、芋虫のように無様に這うしかない。
そして、それも・・・

 

【むにょん】

 

腹部についた脂肪によって辛くなってきた。
腹部だけじゃない、胸も、足も、腕も。
一回り以上は確実に。
花衣は明らかに太っていた。
それも仕方ないだろう。
なにせ、出来ることと言えば這って動くか、食事をとるか、寝るかである。
排泄は、したくなったら壁の穴から出てきた紐を引く。
そうすれば女性が何人か現れて、世話を焼いてくれる。
これも花衣には堪らなく屈辱であった。

 

【ガチャ・・】

 

そんな時、ふと扉が開いた。

 

「どうも〜調子はどうかしら?」

 

あの女が変わらぬ様子で部屋に入ってきたのである。

 

「・・・いいわけないだろ?」

 

じっと女をにらみつける花衣。
女は花衣の方をじっと見ると、にこやかに笑った。

 

「ふふ・・・良い調子ね!じゃあね!」

 

そしてすぐに部屋の外へ戻っていく。

 

「ま、待て!!」

 

花衣は制止するが、女は手をひらひらと振ると、そのまま出て行ってしまった。

 

「・・・なんなんだよ!!」

 

花衣は悔しそうに愚痴を言うが、誰もその問いには答えなかった。

 



 

さらにしばらくして、花衣は自分の体の変化に気づいた。
髪の毛が白く、絹のようになっていたのだ。
ストレスによる白髪。
そう片付けるには少々無理があるほどに綺麗な色であった。
また、色の変化に合わせるかのように、髪の長さもどんどんと伸びていった。
そして、食欲もどんどん増えていったのである。
気づけば、スレンダーなスポーツ少女だったはずの花衣は、
まるまると太った芋虫その物になっていた。
昔の腰回りに有ったくびれは消え去り、たぷんと立派な段腹が現れ、
胸はまるでスイカを乗せたかのように大きく育ち、
使っていない足はだるんとした脂肪の塊となっていた。
腕は服に食い込み、まるでハムを縛っているかのようである。
顔にも多くの肉がつき、細かったあごはすでになくなっていた。

 

「ふご・・・ふぐ・・・んぐんぐ・・・」

 

今の彼女はただ、こうやって食事をとるだけである。
そう、太った芋虫は、さらに太っていくのだ。
次の段階のために。

 



 

「お久しぶりねぇ!お元気かしら?」
「元気なわけ・・・ないでしょ・・・」

 

ある日、女が花衣の元を訪れていた。
女はにやにやとした顔で花衣の髪を触ると、突如ハサミで髪を切り裂いた。

 

「な、何を!!」
「ねぇ・・・貴方も女の子なら、シルクぐらい見たことあるわよね?」

 

突然の質問に、花衣は一瞬戸惑う。

 

「そ、それがどうしたんだよ!?」
「シルクってどう作るか知ってる?」
「・・・蚕を使うんだろ?昔育てたよ」

 

蚕。正確にはカイコガの幼虫。
彼らの繭がシルク・・・絹の正体だ。

 

「はい正解!・・・でも最近蚕農家が少ないって知ってる?」
「・・・知らない」
「そう・・・私って実はシルク大好きなの」
「・・・それが?」

 

女は切り取った花衣の髪の毛を弄りながら答える。

 

「蚕農家が消えたら私悲しいのよ〜
 だって、大好きなシルクが消えちゃうんですもの。
 で、私考えたのよ。蚕農家がなぜ少ないかをね。
 ナイロンって知ってるかしら?あれって実はシルクの代用品なのよ。
 しかも大量に生産出来るの。加えてシルクって作るのが大変なのよね。
 さらに言っちゃうと、農家さんの量って年々減ってるのよね。
 しかもあんまり儲からない。これじゃあ増えるわけないわ」
「・・・だからなんなのよ」
「つまり、シルクを安く、大量に、しかも質良く作れればシルクは消えないの。
 でも、普通の蚕を使うんじゃ駄目。変わらないわ。
 となれば・・・普通じゃない方法を使わないと駄目なのよ」
「・・・まさか!?」

 

花衣は、女の手に握られた自分の髪の毛を見る。

 

「ご明察、貴方の髪の毛はシルクなのよ。
 貴方には悪いけど蚕の遺伝子を無理矢理組み込ませてもらったわ。
 まぁ、ここまで良質の物がとれるとは思ってなかったけど・・・結果ラッキーって奴ね」
「ふ・・・ざける・・・な!!」

 

女に飛びかかろうとする花衣。
だが、重くなった上にまともに動かない体では無理であった。

 

「あら怖い。まぁ私は優しいから許してあげる。
 じゃあね?精々良いシルク作ってね?」

 

女はそれだけ言うと部屋の外へと出て行った。
花衣は、自分がもう普通の生活を送れない事という事実を噛み締めるしかなかった。

 



 

「むしゃむぐ・・・がふがふ・・・もごもご・・・」

 

暗い部屋でひたすら咀嚼の音が響く。
花衣の食事の音だ。
あの後、心が折れた花衣は、生きることを見失った。
今の彼女は、ただひたすらに食事を食べ、髪の毛を・・・シルクを伸ばすだけだ。
その目に光は灯っていない。
体はすでに人の限界近くまで膨れあがり、"餌"も自力ではとれない。
目の前にはなんだか分からない物が山を築いており、それをただ食べるだけだ。
排泄も完全に人任せである。

 

「まさに蚕ねぇ・・・」

 

そんな様子を見ながら、女がぽつりと呟く。
花衣はその女にすら気づかない様子だ。

 

「まぁいいわね!これからもよろしくね花衣ちゃん」

 

女はそれだけ言うと、ツカツカと部屋を出て行く。
ひどい匂いがし、汚く汚れたの部屋の中、花衣の髪の毛だけが蛍光灯の光を受けて輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山下花衣
身長:154cm
体重: 45kg  → 53kg → 76kg  →  109kg
  B:78cm → 85cm → 98cm  → 112cm
  W:55cm → 61cm → 88cm  → 105cm
  H:81cm → 90cm → 101cm → 124cm


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