月夜の彼女

月夜の彼女

 

 

神月 桜(こうづき さくら)20歳 身長161cm 体重52kg B:89 W:57 H:84
おとなしい女性で、私立大学に通う三年生。
ほぼ毎月一度は大学を休む日があって・・・

 

 

 

「・・・だりぃ」

 

二学期も始まって、ようやく蝉が鳴きやんだと思ったら、最近鈴虫がやかましい。
御陰で夜寝るときにうるさくてかなわん・・・
貧乏学生にクーラーを酷使する財力は無いから基本小さい窓開けっ放しだし。
これで夏と同じだけ暑かったら地獄だな・・・
蝉は昼間だから寝るとき問題無かったのが救いだったな・・・
俺はそんなことを考えながら歩いて居ると、目の前に見知った奴がいた。

 

「おはよう、神月」
「あ、おはようございます。吉岡さん」

 

目の前に居たのは神月。
同じ学科で、俺の所属する料理サークルにも所属している、今時珍しい“女らしい女”だ。
見た目も良くて、仮にこの学校にミスコンがあれば入賞間違いなしだな。

 

「今日は一限からですか?」
「ああ、小林教授。あの人の授業しつこいんだよなぁ」

 

あの教授・・・妙に細かいところ気にするんだよなぁ・・・
自分で作った資料なのにあーでもないこーでもないと追加でどこまでも説明していくし・・・
そんな下らない事を話しながら俺達は大学の中を歩いて行く。
そんな時、ふと俺の携帯にメールが届いた。
どうやら以前登録したニュースサイトのメールだ。

 

「へぇ・・・今日スーパームーンだってよ」
「・・・らしいですね」

 

神月は急に静かになって、俯いた顔をする。

 

「・・・?どうかしたか?」
「あ、いえ・・・スーパームーンってあれですよね。
 月が一年で一番近いときになる満月と新月の日ですよね?」
「だな。いつも以上に明るくて綺麗なんだよなぁ・・・」

 

こう見えても俺は割と夜空を眺めるのが好きだ。
別段望遠鏡を覗くって訳じゃ無いが、“風情”みたいなのがあるから好きなんだ。
そんな事を考えていたら、メールがもう一通届いた。
サークルの馬田からで、今日飲み会ついでにちょっとした月見でもしないかという誘いだった。
この馬田は分かり易い男で、料理サークルに入ったのも完全に女子目当てである。

 

「馬田から今日飲み会に来ないかってメール。
 良かったら神月も来るか?」
「あ、その、えっと・・・!ご、ごめんなさい!今日はちょっと駄目なんです!」

 

神月を何となく誘ってみたら、神月は慌てた様子で俺の誘いを断った。

 

「そ、そうか・・・じゃ、じゃあ俺あっちだから」
「あ、はい!それじゃあまた・・・」

 

気まずくなった俺達はその場をそそくさと離れたのだった。

 



 

「え?休み?」

 

翌日、料理サークルに出た俺は、一緒にピザ生地をこねていた先輩から
神月が休んでいることを聞いた。
確かに今日授業中見かけなかった気がするが・・・
てっきり席が遠いから気付かなかっただけだと思ってた。

 

「そうだよー・・・毎月一回ぐらいかな?
 彼女休む日があるの・・・っと!はい、こっち生地出来たよ−!発酵よろしく!」

 

サークルの先輩が他のメンバーにボウルを手渡す。
ピザ生地が出来たのは良いが、どうやら具材でまだ向こうは悩んでいるらしい。
言い争いの声をバックに、俺は神月がなぜ休んだのか考えていた。

 

「・・・ほっほー。犬君も桜ちゃんが気になるのかな?」
「心配してるだけッスよ」

 

片付けをしながら、先輩がからかうような口調で俺のことを呼ぶ。
因みに“犬君”というのは俺のあだ名で、俺の名前が健一であることと、
どこか犬っぽい顔立ちだからだという。

 

「隠さなくても良いじゃないの。
 桜ちゃん美人だもんねー・・・よし、犬君は割と気に入ってるし、
 この先輩が一肌脱いであげようじゃ無いか!」
「いや・・・別にそういうんじゃ・・・」

 

確かに気にならないと言えば嘘になるが・・・
それにしたって別に休むことぐらい有るだろうし・・・まぁ月一というのは気になるが。

 

「照れない照れない!ピザ出来上がったらさ、桜ちゃんに渡しに行ってあげなよ。
 住所教えてあげるから」
「え・・・いやそれ不味いでしょ」

 

個人情報保護法とかそういうので。

 

「大丈夫っしょ。別段やましいことあるわけでも無いし。それともなにかな?
 有ったりしちゃうのかな〜?」
「いや無いッスけど・・・」
「ならば良し!じゃあ宜しくね?」

 

先輩はそれだけ言うと、片付けを終えて他のメンバーの方へと行き、
具材決めの作業に加わってしまった。

 



 

「・・・結局やって来てしまった・・」

 

俺はピザ入ったの包みを手にしつつ、神月の自宅の前に来ていた。
神月もこちらで家を借りているらしく、マンションの端の方の部屋だ。

 

「・・・ここまで来ちゃったしな・・・何も言わないのもアレだよな・・・」

 

意を決してインターホンを押すと、中で何かが動く気配がする。

 

「・・・はい?」
「あ、神月?俺だけど・・・」
「よ、吉岡さん!?なんでここに!?」
「いや・・・先輩が今日作った料理を持ってけって・・・」
「料理・・・あ、今日サークル活動の日でしたね・・・」
「ああ、ピザ焼いたんだけど・・・食べるか?」

 

俺の問いかけにどうやら迷っているのか中々答えない神月。
だが、インターホンの向こうから、意外な形で答えが聞こえてきた。

 

『ぐぅぅううう・・・』

 

「あっ・・・!!」

 

どうやら神月の腹の音らしい。

 

「・・・聞こえました?」
「いや・・・なにも・・・」

 

一応誤魔化しておく。

 

「・・・」
「あー・・・そのなんだ・・・とりあえず郵便受けに入れておくか?」
「あ、ここの郵便受け立て付けが悪くて・・・
 その今上手く力が入らないので開けられなくて・・・」
「そっか・・・なぁ。ドア、開けて貰えないか?」
「その・・・今なるべく姿とか見て欲しくないんです」

 

すっぴんが見られるのが嫌だとか?神月も女子だからな・・・
となると参ったな・・・こういう時はっと・・・

 

「じゃあこうしよう。俺はドアの横に背を付けて手だけ伸ばす。
 神月はドアを開けてピザだけを受け取ってくれ。そうすれば俺からは姿見えないだろ?」
「・・・わかりました。絶対にこっちは見ないで下さいね」

 

俺の提案を受け入れ、神月はインターホンを切る。
俺はドア横に移動し、ドアが開くまで待機する事にした。
数分後、ドアの奥で何かを引きずるような音と、何かが動く気配がした。
そしてカチャンという解錠する音と共に、ドアが開く。
俺はなるべく部屋を見ないようにしながらピザを持った左手を伸ばす。
袋を掴む感覚が指先に伝わり、手を離そうとしたときだった。

 

「あっ・・・!」

 

そんな声と共に凄まじい地響きが起きた。
ガンッとドアが思いっきり叩き付けられる音がし、思わず俺は横を振り向いた。

 

「大丈夫か神づ・・・き・・・?」
「い、いや!見ないで!!」

 

俺の目の前に広がっていたのは、手にピザの袋を持って、床に倒れ込んでいる
神月に似た顔の太った女だった。

 



 

「・・・で、何と何のハーフだって?」
「寝肥と狼男です・・・」

 

あの後、何とか神月を起こした俺は、神月の部屋に上がっていた。
この部屋が角の部屋で良かった・・・本当にそう思う。
今、目の前には神月が座っているが、本当にあの神月なのかと今でも思う。
ぶっくぶくに太りきったその姿は、どう見ても不摂生極まりない
生活をして過ごした外人女のそれだ。
だらしなく垂れた胸に、バカみたいに前に飛び出た腹。
俺の腰以上ある太ももに、肉が付きすぎて動かしにくそうな腕。
尻はクッションいらずだし、首は完全に顎と同化してる。
入る服が無く、タオルケットを体に巻き付けただけの格好は、
エロさよりもがっかり感が強いな・・・

 

「・・・寝肥ってあれだっけか、寝ている間に太る女の妖怪だっけか」

 

なんか前にそんなのをアニメでやってた気がする。

 

「はい・・・私の母さんがそうだったんです。父さんが狼男で・・・」
「で、何だってそんな状況になってるんだ?」
「えっとですね・・・寝肥はさっき吉岡さんが言ったように夜太る妖怪です。
 で、狼男は満月の夜に狼人間に変身する妖怪です。
 そのハーフな私はその二つの要素が重なって・・・満月の夜にだけ太るんです」
「・・・なんじゃそりゃ」

 

頭が痛くなりそうな話だった。

 

「でもなんで朝なのに痩せてないんだよ?普通寝肥って起きたら痩せてるんだろ?」

 

確かアニメでもそうだったはず。

 

「いえ、正確には夜の間太っているのが正解ですね。
 あと他人に憑依するタイプの寝肥も居ますけど、うちは最初から寝肥っていう種族です」
「そうなのか・・・それで?」
「あ、でですね・・・私、ハーフだからかどっちの血も上手く制御出来てないみたいで・・・
 一回変身しちゃうと丸一日太ったまんまなんです」
「・・・そりゃあ難儀だな」

 

本格的に頭が痛くなってきた。

 

「あ・・・ごめんなさい。気持ち悪いですよね・・・私」

 

目頭を押さえている俺を見て勘違いしたのか、でかい体を縮こませて神月が謝った。

 

「あ、いや。そうじゃなくてだな・・・非日常過ぎて理解が追いつかないんだ」
「いいですよ、無理しなくて。
 私だって自分の体気持ち悪いと思いますから。
 だって、この体200kg超えてるんですよ?ホント動く肉みたいで・・・」

 

どうやら勘違いがさらに進んでいるようだ。
とはいえ俺は嘘は付いてない。
非日常過ぎて頭が痛いのも確かだし、不思議と神月を気持ち悪いとも思わない。
・・・まぁちょっとびっくりしたのは否定しないが・・・

 

「いや、ホント別に気持ち悪いとか思ってないって」
「あ、気にしなくて大丈夫ですよ?私慣れてますから」

 

あー・・・意外と頑固だな・・・

 

「じゃあどうしたら俺が気持ち悪がってないって信じてくれる?」

 

俺の問いに神月は暫く悩んだ後、こう言った。

 

「・・・なら、私と付き合えますか?」
「え?」
「男女の交際が出来ますか?私と」

 

真っ直ぐ見据え、そう聞いてきた。

 

「・・・ふふっ、冗談です。無理ですよね?こんな気持ち悪い女となんて・・・」

 

俺はその言葉を聞き流しながら、神月の横に移動し、そっと肩に手を置いて神月と向き合う。

 

「無理なもんかよ」
「・・・え?」
「神月は十分可愛いって。今でもそう思う」
「でも・・・だって私こんなにデブで・・・それで・・・」
「別にいつまでもその状態って訳じゃ無いだろ?それに俺はこの状態だって別に何とも思わないぜ」
「な、なんで・・・?」
「んー・・・俺もわかんねぇや」

 

俺自身、なんで神月が太っていても平気なのか分からない。
だが、多分よっぽど俺は神月が好きなんだろう。
この機会を逃したくなくて必死だ。

 

「だからさ、俺と付き合ってみるか?」

 

それに俺に“付き合ってみるか?”なんて提案するんだから、多少は脈有りで考えて良いだろ?

 

「・・・はい」

 

俺の目を見たまま、神月は小さな声で頷いた。

 



 

「・・・ふーん、本当に付き合うとは思ってなかったよ」
「先輩の御陰ッスよ」

 

後日、俺はサークルに来ていた先輩にこっそり報告した。
・・・まぁ先輩が俺の背中を押したようなモンだし。

 

「じゃあ可愛い後輩君は何してくれるのかなぁ?」
「いっ・・・それはその・・・」
「あははは!じょーだんだよ冗談!そんなこと言わないから安心して。
 ま、これから頑張りなさいよ?」
「・・・ウス」

 

背中をパーンと軽く叩かれながら、俺は返事を返す。
どうにも照れくさい・・・

 

「・・・あーあ、取られちゃったか」
「ん?なんか言ったッスか?」
「べーつーにー?それよりも彼女の方へ行きなって」
「あ、はい!」

 

先輩に背中を押されて、俺は別のテーブルに居た桜の方へ行く。
桜は既に調理を終えたのか、片付けに入っていた。

 

「あ、吉岡さん」
「終わったら一緒に帰ろうぜ」
「はい!」

 

それだけを短く交わす。
今日は参加人数が少ないし、みんな忙しそうだけど、なるべくばれない事に超した事はない。
俺は自分の片付けをとっとと済ませると、先に玄関の方へと移動する事にした。

 



 

「・・・そういえば、なんであの時付き合うか?なんて言ったんだ?」

 

帰り道、何となく気になった俺は神月に聞いてみた。

 

「えっと・・・怒らないでくれます?」
「・・・内容による。だが話してくれなくても怒る」

 

そう言うと神月は露骨に慌ててわたわたしだした。

 

「はは、冗談だよ冗談。無理して話さなくても良いし、話しても怒りゃしないよ」

 

それを聞いて安心したのか神月の挙動不審が止まる。
それから一旦呼吸を置いて、神月は話し始めた。

 

「その・・・私の父さんに似てるんです・・・」
「似てるって・・・顔?」
「はい。どこか懐かしくて・・・もうちょっと毛深かったら多分より・・・」
「・・・」

 

それってやっぱり俺が犬顔って言いたいのか?

 

「・・・はぁ」
「あ、あれ?」

 

どうやら神月的には褒め言葉らしい。

 

「神月、次の満月はぴっちりした服着ること」
「えっ?えっ!?な、なんでですか!?」
「別に、何となくだよ」
「い、いやです!だって苦しいし・・・服破いちゃうし・・・
 あ、もしかして怒ってます!?私何か変な事言いました!?」
「別に?何も言ってないぞ」
「あ、嘘ですよねそれ!?吉岡さん!?謝りますから!謝りますから機嫌直して下さい!」

 

後ろで抗議の声を上げる神月を尻目に、俺はやや早足で歩き出した。
なんというか、今年の冬は楽しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神月桜
身長:161cm
体重: 52kg →  214kg
  B:89cm → 149cm
  W:57cm → 167cm
  H:84cm → 159cm


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