体質は誰のため?
桐州 佳子(きりす かこ) 18歳 身長155cm 体重47kg B:87 W:59 H:78
正義感が人よりも強い少女。
ボランティアの最中に・・・?
「こんにちは!」
私は玄関の扉を開けつつ、なるべく元気よく挨拶をする。
中に居たシスターさんがこっちに笑顔を見せてくれた。
「こんにちは佳子ちゃん、今日も元気ね」
「はい!私は元気が取り柄ですから!」
シスターさんと仲良く笑う。
このシスターさんとはなんだかんだで長い付き合いだ。
以前・・・まだ私が子供の頃、とにかく正義感が強かった私は
いじめとかそういうのが許せなかった。
だから男の子だろうが女の子だろうが大人だろうがお構いなしに
何かあれば首を突っ込む少女だった。
それで私がハブられたりもしたけど、そう言う物だと思ってた。
テレビの中のヒーローはいつも正しくて、一人だったから。
今では少しは世の中が分かってきて考え方もちょっとは変わったけど、
当時はそうだと信じ切っていた。
そんな時、シスターさんに出会った。
確か、シスターさんが買い物の帰りで荷物が多くて困ってるのを助けたんだったと思う。
教会でシスターさんと一緒にお茶をしながら、私は色んな事を話した。
シスターさんは私の考えを一切馬鹿にはしなかった。
でも、こうも言ってくれた。
『いい?貴方の考えはとても立派なの。でもね、それは一人で抱え込むことじゃないの。
だって、貴方を守る人がいないんですもの』
多分、私は凄く変な顔をして居たと思う。
だって、正義の味方が守られるのはおかしいことだから。
その後シスターに散々ヒーローは負けないとか色々言ったと思う。
シスターはただただ私のわがままみたいな主張を聞いてくれて、その度に諭してくれた。
・・・まぁその言葉の意味が理解出来たのは最近だけど。
とにかく、それからシスターと私は色んな事を話すようになった。
最近はシスターのボランティア活動も手伝ったりしてる。
子供だからって参加させてくれないんだもなぁ・・・
「今日は街の清掃でしたよね?」
「ええそうよ。さ、頑張りましょう」
私とシスターは掃除道具を持つと、一緒に街へと出かけていった。
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「シスターさん、ここもやるんですか?」
掃除も残す所後一ヶ所・・・だけど。
私は目の前の最後の場所を指さしてシスターさんに尋ねる。
目の前には古い石の階段が続き、その上にはどう見ても神社が見える。
「ええ、ここも街の施設ですもの」
「でも宗教的に・・・」
「日本の神様達は寛容だから大丈夫。きちんと礼儀を通せば許してくれるわ」
シスターさん・・・どこの国かは知らないけど外国人だよね?
私より日本に詳しいんじゃないのこの人・・・?
「さ、行きましょう」
「あ、はい!!」
先に登っていくシスターさんを追いかけ、私も石段を登る。
登った先には下から見たとおり神社があったけど・・・誰も管理してないのかあちこちぼろぼろだ。
「酷い・・・」
「きっと別の場所に移されたままここだけ放置されてるのね・・・
とにかく目に付くところからやりましょう?」
「はい!」
シスターさんと一緒に掃除を開始する私。
シスターさんは境内の方をやるというので、私はちょっと無礼かもしれないけど
本殿の方を掃除することにした。
近くで見れば見るほどぼろぼろなのが見て取れる。
「うーん・・・とりあえず壁は触ると壊れちゃいそうだし・・・
うん、床をぞうきん掛けとかしよう」
袖をまくり上げ、私は雑巾を絞ると床掃除を始めた。
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「お疲れ様、佳子ちゃん」
「お疲れ様です・・・」
2時間後。
私はシスターさんと一緒に神社を眺めていた。
本殿の壁なんかは流石に補修しないと駄目だけど、それでも大分綺麗になったと思う。
「さ、今日はこの辺にして帰りましょう?」
「ですね・・・流石にちょっと疲れました」
「ふふっ・・・じゃあ教会に戻ったらお茶を入れてあげるわね」
「ありがとうございます!」
そんな事を言いながら帰る私達。
『後で礼をせんとな』
「・・・ん?」
ふと、私は誰かの声を聞いた気がして、後ろの方を振り返った。
だが、古ぼけた神社に誰か居るはずが無い。
「どうかしたの?」
「あ、いや・・・気のせいみたいです」
私はそうシスターさんに返すと、一緒に教会までの道を歩いて行った。
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その日、私は奇妙な夢を見た。
背の高い黒髪の男性が、私を見下ろしてこう言っていた。
『今日は助かったのぅ。礼として何かワシの出来る範囲で一つ、願いを叶えてやろう』
私はそれに対してこう答えた。
『そこに居るだけで誰かが幸せになれるようにしてください』
男性は分かったと一言呟いて、すっと姿を消してしまう夢。
朝起きても、その夢だけは何故か忘れなかった。
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翌日から、私の周りでは変なことが起き出した。
なぜか私の周りだけ急な雨に濡れなかったり、私の乗ったバスだけ渋滞に巻き込まれなかったり。
そういう小さいけど幸せな事が起き出した。
最初は私も偶然だと思っていたけど、毎日こうやって続いていけば
偶然じゃ片付けられないようになった。
「・・・あの夢のおかげ?」
神社を掃除した日に見た夢。
あの夢のおかげで私の周りだけ幸せになる?
「・・・にしては私が幸せになってないなぁ・・・」
私は自分のお腹を軽く摘みながら呟く。
最近ずっとボランティアやなんかで運動してるはずなのに、お腹にはむっちりと脂肪が付いていた。
いつの間にかパンツの上に乗るようになったそれは、私にとっては忌々しい物でしかない。
「うーん・・・なんでだろ・・・」
疑問に思いつつも、私は今日もシスターさんに会いに行こうかどうしようかを考え出すのだった。
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「やっぱりおかしい・・・!」
夢を見てから二ヶ月後。
私は鏡を見ながら自分の体の異常さを改めて確認していた。
お腹はくびれがきえさり、ぽっこりと前に出るようになった。
胸は大きくなったけど、別にそんなに嬉しくない。
太ももはまるで男の競輪選手みたいに太いくせに、付いているのは脂肪だけ。
腕も最近制服の袖口がきつくて堪らない。
「病院に行っても異常は無いって言うし・・・運動しても食事制限しても痩せないし・・・
もうなんなの!?」
私は悪態をつきながら、これからの事を考える。
別に無理に痩せなきゃと思うわけじゃないけど、いくら何でも太りすぎは良くない。
何か効果的なダイエットを考えなきゃ・・・
「とりあえずシスターさんの所に相談しに行ってみようかな・・・」
あの人、歳は分からないけど凄い綺麗だし、スタイルいいし・・・何か秘訣とか持ってそう。
私はそう思い立つと、休日なのを良いことに昼間からシスターさんの所へ向かうのだった。
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「はぁ・・・はぁ・・・」
私は手に掃除道具を持ちながら、ゆっくりと階段を上る。
数ヶ月前、掃除をしたあの神社の石段を登っているのだが、前に来た時とは全然疲労感が違う。
「あんなに・・・ぜぇぜぇ・・・サクサク登れたのに・・・!!」
やっとの思いで登り切った私は、その場に座り込んでしまった。
その拍子に、お腹の脂肪が足に乗っかる感触が伝わる。
「・・・そりゃこんな体じゃねぇ・・・」
前に突き出たお腹を見ながら、私はそんな事を呟く。
妊婦さん顔負けのお腹の上にはこれまた大きく育った胸がある。
太ももは最近XLのズボンじゃないと足が通らないほどで、女の足とは思えない。
腕は贅肉で最近垂れ気味だし、顎は最近肉がたぷついて二重顎っぽい。
「全く・・・なんでこんな体になっちゃのかしら・・・ほんとついてない・・・」
ひとしきり愚痴って気分が少しは晴れた私は、休憩も取れたので神社の掃除を開始した。
今日はシスターさんが別の所をやっている間に私一人でこの神社を掃除するつもりだ。
・・・そうじゃなきゃ痩せそうに無いし。
「先ずは境内の掃除からかな・・・?雑草とか多いし・・・」
袖をめくって草むしりを始める私。
その際に自分の腕の贅肉に触れて少しがっくりしたが、気にしないことにした。
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「はぁ・・・おわりぃ・・・・」
息も絶え絶えで縁側に座り込む私。
ほぼ丸一日かけて掃除した結果、以前二人でやった時ぐらいには綺麗になったと思う。
だけど、その代償に明日は筋肉痛だろう。
「はぁーあ・・・なんで痩せないんだろう・・・」
私は縁側で一人愚痴りながら自分の腹を揉む。
憎たらしい脂肪が両手で電話帳みたいに掴めるのを見て、私は余計に落ち込んだ。
『そうか・・・嫌だったかのぉ・・・』
そんな私の後ろから、誰かが声をかけた。
「えっ!?」
慌てて振り返る私の目の前には背の高い黒髪の男の人が立っていた。
「だ、誰!?」
『むっ、ワシか?ワシはこの神社の神よ』
男性はまるで老人みたいな口調で、私の問いに答える。
「か、神様?」
『そうじゃよ?ほれ、以前一度会っとるじゃろ』
そう言われてふと、目の前の男の人に見覚えがある事を思い出した。
「あ・・・夢の中で・・・」
『うむ。久しぶりじゃの』
男性は軽く笑うと、片手をあげて私に挨拶してきた。
「あ、あの!嫌だったとかっていうのは・・・?」
『うむ、お前さんがここを掃除してくれた日の夜、お前さんの夢の中で願い事を聞いたじゃろ?
あの時お前さんはそこに居るだけで誰かを幸せに出来るようになりたいというからの・・・
ワシなりに考えてお前さんに一つ能力をあげたのじゃが・・・』
「の、能力?」
なんだか漫画みたいな話だ。
『お前さんは周りの空気を吸って、幸福を蓄える事が出来るのじゃ。
この幸福はお前さんから少しずつにじみ出ていって、周りの物にも影響を与えるんじゃ。
以前はこの方法で美人になれたと言われてたんじゃなのぉ・・・』
いつの話だろうか・・・
「と、とにかく!なんとか痩せられませんか!?」
『出来なくは無いが・・・そうするとお前さんの貯めた幸福も消えてしまうぞ?』
「・・・消えるとどうなるんです?」
『幸福というのは指向性を持ったものじゃからのぉ・・・ワシにもよく分からん』
無責任過ぎる・・・
この人?がいつの人かは知らないけど、頼むから時代のズレとかは知っておいて欲しかった・・・
「・・・この幸運って何かに使えませんか?」
『そうじゃのぉ・・・お前さんは今一種の座敷童に近い体質じゃからな・・・
誰かの家に居ればその人物を幸せに出来るかものぉ』
「・・・」
誰かのそばに居れば誰かを幸せにする・・・
その言葉を聞いた私は一つだけ、この体質を生かす方法を思いついた。
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「・・・でも本当に良かったの?進学しなくて」
「ええ、私はこっちの方が性に合ってますから」
あれからしばらく経った。
私はシスターさんの教会に住み込みで働いてる。
誰かを幸せにしたい。
とすればここ以外の良い場所が思いつかなかった。
訪れれば幸せになる教会。
宣伝文句としてはそうとう良い感じだと思う。
こうすればシスターさんに恩返しできるし、能力の無駄遣いにはならないと思う。
・・・シスター服が若干きついのは気のせいにしておこう。
「それならいいけど・・・それよりも今日は誰も来ないし、お茶にしましょう」
「え、いいんですか?」
私の質問に偶には良いでしょとにっこり笑うシスターさん。
私は前よりもずっとずっと重くなった身体でシスターさんの後をついて行くと、
お茶の用意を手伝うのだった。
桐州佳子
身長:155cm
体重47kg → 50kg → 73kg → 96kg → 175kg
B:87cm → 91cm → 98cm → 105cm → 127cm
W:59cm → 64cm → 84cm → 99cm → 147cm
H:78cm → 82cm → 101cm → 117cm → 151cm