頭に宿る物
渡瀬 久美(わたせ くみ)年齢16歳 身長151cm 体重34kg
小柄というにはあまりにも細い少女。
体格を良くする為にとある病院にかかるのだが・・・
蛍光灯が輝き、無機質な廊下を照らし出す。
渡瀬久美は椅子に腰掛けながら一人ただじっと待っていた。
「渡瀬さん、結果が出ましたよ」
やがて近くの扉から看護士の女性が出てくると、久美を呼ぶ。
久美は椅子から立ち上がると、診察室へと入っていった。
中では人柄のよさそうな白衣の男性が机向かってに座っており、
久美に気づくと椅子に座るように促す。
椅子に座った久美に向き直ると、男性はこう切り出した。
「渡瀬さんの体を調べた結果、どうやら腸の吸収能力が普通の人より劣っているみたいですね。
そのためほかの人と同じだけ食べ物を食べても吸収出来る栄養が少ないのです」
「・・・」
久美は自分の腹を覗き込む。
服で隠れてはいるが本当はがりがりで贅肉が全然無い。
服の上から触れば胸のすぐ下辺りに肋骨の感触があるし、腰に手をやれば骨盤がくっきりと触れる。
そんな様子の久美を見て男性はさらに話を続ける。
「とはいえ治療法が無いわけではありません。
最近開発された薬がありまして、これならば治る可能性は十分にありますよ」
「・・・本当ですか?」
すがるような目で男性を見る久美。
男性はにっこりと笑うと、久美にこう語りかけた。
「ええ、本当ですよ。ですがまだ新しい薬なので少々お値段は張りますけど・・・」
「・・・治るなら払います!」
残念そうな表情の男性に久美は平気だと答える
男性はその答えを聞き、申し訳なさそうな口調でその薬を処方する事を告げた。
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「・・・一週間に一回でいいんだ」
家に帰った久美は処方された薬の用法を読みつつ、そう呟いた。
一週間に一度、この薬を飲む。
薬の副作用が出るのでアルコール類は避けること。
そんな事が書かれてある。
「・・・お酒とか飲まないからいいや」
久美はそう言って一粒薬をパッケージから出した。
赤と白のカプセルで、軽く振るとからからと音を立てる。
久美はそれを口に放り込むと、水と一緒に飲み込んだ。
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「・・・よし!」
一週間後、久美は風呂上りに体重計に乗りながらガッツポーズをとった。
あれほど増えなかった体重が2kgも増えたのだ。
久美は体重計から降りると冷蔵庫に向かい、カップのアイスクリームを取り出す。
あの薬を飲みだしてから食欲も増し、甘いものを欲しがる様になったのだ。
今まで全然そういうことが無かった久美にとって、
食欲が増えるのはこれ以上ないほど嬉しい事なのだ。
「・・・これ食べたら寝よう」
久美はそう呟くと、カップアイスをぺろりと食べ終えて眠りにつくのだった。
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「・・・いい感じかも」
一ヶ月後。
久美の体は大分変わっていた。
あれほどがりがりだった体はむっちりと色気を感じさせるほどに成長し、程よく育っている。
平らだった胸は小ぶりながらも形がよく、くびれた腰は程よく肉がついている。
尻はやや大きいがそれが逆に色っぽさを醸し出し、
むっちりとしてきた太ももは男子達の視線を釘付けにする。
「・・・でもお薬まだあるんだよね」
久美は残りの薬について考える。
薬は自分で十分だと思っても途中で勝手にやめたりせず処方された物は最後まで飲むこと。
以前そう聞いたことを思い出した久美は、薬を飲み忘れないようにしようと自分に言い聞かせた。
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「・・・太りすぎかな?」
さらに一ヵ月後。
久美は自分の体を見ながらそう呟いた。
今では久美の体はぽっちゃりと言っていいほどになり、以前の久美とは別人のようになっていた。
胸は巨乳と呼んで差し支えないほどになり、腹は括れが無くなり寸胴になってきた。
尻は大きくなりすぎて学校の椅子が窮屈になるほどで、
足は歩くたびに太ももの贅肉が揺れるようになった。
頬骨が出ていた顎は肉で丸々としたぷたぷとしている。
「・・・今度もう一度診察いこう」
そう決めた久美はアイスバー二本とチョコレートケーキ1ピースを食べると、
そのまま眠るのだった。
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「・・・なんで?」
それから2週間。
久美は自分の体の変化についていけなくなっていた。
あれからどんどん太る速度は上がり、今ではぽっちゃりからデブへと変化していた。
爆乳になった胸。
くびれどころか前に飛び出た腹。
巨大な桃のようになった尻。
丸太を思わせる太もも。
二重顎になりより丸くなった顔。
今までの分を取り返すかのように太っていく体に、久美は困惑していた。
「・・・お薬やめたはずなのに」
そう、医者に十分効果が出たのでやめていいといわれた彼女はすでに薬をやめている。
なのに太る。
「・・・ダイエットしないと」
口ではそういいつつ一抱えもあるバニラアイスをスプーンで掬って食べる久美。
その行動の異常性を、久美は自覚していなかった。
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「・・・おかしい」
さらに一週間後。
久美はさらに太った自分の体を見ながらそう呟いた。
メートルになった胸。
まるで妊婦のような腹。
椅子からはみ出るようになった尻。
スカートの横幅が足りなくなりつつある足。
肉がつき始め呼吸が辛くなってきている首。
三桁を超えた体を見て、久美はようやく自分の体が異常であることを自覚した。
「・・・なんでだろ?」
シュークリームを貪りながら疑問を抱く久美。
『今度病院にかかろう』と決意すると、久美は新しいしシュークリームを口に運ぶのだった。
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「・・・異常なし」
数日後、病院の血液検査をの結果を見ながら久美は頭を捻っていた。
久美が今日来ている病院は設備の整った大手の病院である。
こちらで無ければ詳しい検査が出来ないからだ。
精密検査の結果はまだだが、血液検査では特に以上が見られないという。
単に自分が自堕落なだけだろうかと考える久美の耳に、とあるニュースが飛び込んできた。
『──病院で薬を悪用したとして医師が逮捕されるという事件がありました。
この薬は寄生虫の卵が入っているカプセルで、服用すると中に入っていた寄生虫が脳に移動し
消化能力の向上と食欲増加を無理やり促すようになります。
これを長期間服用すると寄生虫の数が増え大変な事態になるという専門家の意見もあり──』
久美はテレビに近づくと驚愕した。
「・・・この病院って」
目の前のテレビに映っているのは間違いなく久美が薬を処方してもらった病院であった。
久美の顔は見る見るうちに青くなり、その場をうろうろし始める。
「・・・まだ決まったわけじゃない・・・この薬が私に処方されたとは決まってない・・・
でも・・・」
ぶつぶつと呟きながら歩き回る久美。
だが、現実は甘くなかった。
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「ふぅ・・・ふぅ・・・!」
一ヵ月後。
久美は必死にダイエットをしていた。
久美が処方された薬はやはり寄生虫が入ったものであり、
久美がここまで激太りしたのもやはり寄生虫のせいだった。
久美の場合飲んだ薬の数が多くないとはいえ、
寄生虫の居場所が脳であるためうかつに手術も出来ない。
結果、寄生虫が寿命で死ぬまでダイエットをする以外方法がないと言われ、
入院しつつダイエットをしている。
だが久美の体はダイエットの効果がまるで無いかのように増量をしていた。
バスケットボールよりも大きな胸。
太鼓腹というにも大きすぎる腹。
尻は若干垂れ下がり、それ以上に横に飛び出ている。
太ももは膝が肉で埋まりかけるほどになり、顎は既に首と同化し境目が消えてしまった。
なぜこんな事になったかと言うと寄生虫は久美の体が急に栄養を取らなくなったことに気付き、
さらに久美の体の体を“変化”させていった。
その結果、筋肉に回されるはずの栄養が脂肪になるようになってしまい、
見る見る体に脂肪が付くようになったのだ。
今必死に筋肉を付けようとしている久美だが、効果の程は薄い。
病院としても食事を摂らせないわけにはいかないため、久美にもきちんと食事を食べさせている。
それにそうしなければ過剰に増えた食欲で精神的な負荷がかかるのだ。
久美はいつ終わるとも分からない地獄を味わいながら、
唯一楽しみである食事の事を思いながら今日も運動するのだった。
渡瀬久美
身長:151cm
体重: 34kg → 36kg → 49kg → 62kg → 80kg → 103kg → 382kg
B:71cm → 72cm → 83cm → 89cm → 98cm → 103cm → 178cm
W:51cm → 52cm → 58cm → 69cm → 81cm → 97cm → 201cm
H:70cm → 73cm → 90cm → 101cm → 113cm → 127cm → 241cm