ぴったりなサイズ
鎌田 凛子(かまた りんこ) 26歳 身長181cm 体重51kg B:89 W:62 H:86
背が高い事をコンプレックスに感じている女性。
ある日可愛らしい衣装を見つけて・・・
プシューッと、空気が抜ける音と共に電車の扉が開く。
直後、ホームへと流れ込む列の中からコツンという音と共にあいたっと小さな声が聞こえた。
「いたたた・・・またぶつけちゃった・・・」
額を擦りながら扉をくぐる女性の名は鎌田凛乎。
一般的な女性よりもかなり高い背のせいで頭をぶつけるのはしょっちゅうである。
「ふぅ・・・もうちょっと低くても良いのになぁ・・・」
自分の背を嘆きながら、凛子は改札を通りとぼとぼと歩いて行く。
巨大な液晶画面がニュースを映し出し、アナウンサーが最近行方不明者が増えているという
不安を煽る報道を垂れ流す。
夜も遅いのに大通りにはちらほらと未だ営業を続ける店がキラキラと光を出し、
街灯と一緒に道を照らし出す。
そんな通りを歩く凛子の目に、ふと一軒の店が映った。
こぎれいなショウウィンドウには色とりどりの服を纏ったマネキンが立ち並び、
誰にともなく訴えかけている。
「・・・いいなぁ」
その中の一着に凛子が惹かれる服があった。
可愛らしいフリルを付けたロングワンピース。
照明を受けて光り輝くそれは、凛子にはまるで宝石のように映った。
「・・・まぁ、私じゃ着られないわよね」
ガラスに映る自分の姿を見つつ、彼女はため息をつく。
そのままその店を後にする凛子。
「そこのお姉さん!ちょっといいかしら?」
その背中に呼びかける声が響いたのはその直後であった。
振り返る凛子の目の前にはでっぷりと肥え太った一人の女性が立っていた。
恐らく体重は100kgを超えているだろう体を揺すりながらその女性は凛子に近づいて行く。
「お姉さん、その服着たいの?」
「え・・・?」
「じっと見てたじゃないの。そこのショーウィンドウ」
「え、ええ・・・まぁ・・・でも私には似合わないし・・・」
あははとにが笑いをする凛子に、女性は笑いながらこう切り出す。
「わかるわぁ・・・私もほら、こんな体型だもの。
でもそういうのを気にしなくて良い場所があるのよ!!貴方も来ない?
ていうか来て体験してみて!!」
「え、え?」
置いてけぼりの凛子を余所に、女性は凛子の腕を掴んでドンドン進んでいく。
やがて細い路地を進んでいくが、女性は太い体を押し込むように進む。
凛子も引っ張られるがまま進み、路地の奥へ奥へと迷い込んでいく。
そして・・・
「ほら!ここが私たちの集会所、『マイノリティーズ』よ!」
女性が仰々しい様子で凛子に紹介した場所は、一軒のお店であった。
広めの建物にテラス席、看板には『Minority’s』のネオン文字が踊る。
そして、何よりも異様なのはそこにいる人々だった。
背が極端に低い者、凛子よりも背が高い者。
顔が大きい者に小さい者。
胸が西瓜よりも大きい者、胸が全くない者。
ガリガリに痩せている者、ブクブクと肥え太っている者。
男も女も、様々な人が思い思いに楽しんでいるのだ。
「ここは・・・」
「マイノリティーズ。普通とは違う人間が集まる場所よ」
「普通とは違う・・・?」
「ええ、太っている人痩せてる人。背の高い人低い人。
そういう普通の人とは違うと言われた人達が集まっているの」
そう説明すると女性は凛子を店の中へと連れて行く。
店内は色んな人でごった返し、カウンターの奥では眼帯をした強面の男性が立っている。
「・・・新顔だな」
「え・・・あ・・・鎌田凛子です」
「・・・好きに過ごしな。ここはそういう所だ」
それだけ言うと男性は奥へと引っ込んでしまう。
凛子を案内した女性は楽しんでいってねと言ってその場を離れて人混みの中へと入っていく。
一人残された凛子はカウンターの椅子に座ると、辺りを見回した。
「・・・なんだろう・・・みんな楽しそう」
凛子の視線に映る人々。
その誰もがニッコリと笑っていた。
楽しげに酒を飲む女性。
笑いながら横の女性にちょっかいを出す男性とそれをいなす女性。
楽しげな笑いに包まれた店内を見回しながら、凛子はカウンターに目線をずらす。
シンプルなカウンターだが、綺麗に清掃が行き届いたそれはそれだけで心に安心感を与える。
「・・・これ美味しそう」
カウンターに置かれたメニューを見て楽しげにする凛子。
「・・・よし!今日ぐらいは羽目外しちゃお!」
『アンタはただでさえ背が高いんだから絶対に太っちゃ駄目よ?
嫁のもらい手が無くなるんだから!!』
いつだったか凛子は母親にそう言われた。
凛子はそれを真に受け、なるべく太らないよう太らないよう節制を続けて居た。
だが、楽しげな店内の空気に当てられたのか、次々と注文する凛子。
やがて運ばれてくる大量の料理を目の前にして、凛子は少しだけ後悔した。
「・・・ちょっと外しすぎたかな?」
そう呟いてから、凛子は料理に手を付ける。
「・・・んまぁ!」
思わず叫ぶ凛子に眼帯の男性が右手の親指を上げる。
凛子はかっ込むように料理を食べると、次の皿に手を伸ばした。
酒を流し込み、料理をかっ込み、そしてまた酒を流し込む。
やや忙しないが、最高の気分で食事を続ける凛子。
やがてその食事が一段落した頃、凛子の周りには何人かの女性が立っていた。
「あなた、良い食べっぷりね?」
「あ、あははは・・・ど、どうも?」
「よかったらこっちも食べてみない?」
そう言って凛子の目の前に別の皿を奥女性。
言われるがまま食べる凛子に、またもやわき上がる女性達。
やがてその輪は更に広がっていき、女性だけで無く男性も混ざるようになった。
「嬢ちゃん!次はコイツもどうだい?」
「おねーちゃん!こっちもイケルよ!!」
勧められるがままに食べていく凛子。
その度に盛り上がる周り。
・・・だが、凛子は気付いていなかった。
幾ら一人も大きな体とは言えこんなに大量の料理を食べられるほど凛子の胃は大きくない。
なのに、何故凛子は料理を苦も無く食べられるのか?
そんな重大な事に気付かないまま、凛子は食べては飲み、食べては飲む。
その度に彼女の体が徐々に大きくなっていく。
何も背が伸びているわけでは無い・・・横に大きくなっていくのだ。
括れていた腰はどんどんと肉を蓄え、やや大きめだった胸は下品な程膨らんでいく。
尻は椅子からドンドンはみ出していき、太ももはスカートを引き裂いていく。
腕はまるで丸太のようになり、首は肉に埋もれるどころか肉の段が形成されていく。
だが、それでも凛子は止まらない。
シャツを引き裂き、スカートを破き、真っ裸になっても彼女は食べ続けていく。
そして、彼女が食べる度、彼女が膨らむ度に周りの盛り上がりも上がっていく。
それは一つの狂気であった。
だが、その狂気を止める人間は誰も居ない。
狂気はさらなる狂気を呼び、凛子の体と共に大きなうねりとなっていく。
その宴は止まらない。
凛子は狂ったように──あるいは既に狂っているのか──ただひたすらに料理を食べていく。
それは、椅子が彼女の重さで壊れても止まらないのだった。
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「いいんですか・・・?この服頂いても?」
「いい・・・オデの試作・・・売り物にはならない・・・」
恐る恐る尋ねる凛子に、まるで巨人のような男は照れながら答える。
凛子の体は先ほどまでと違い、可愛らしいフリルだらけの服を纏っていた。
とは言え、そのサイズは可愛らしいとは言えないだろう。
200kg以上ある凛子の体を隠さずゆったりと包み込むその服は正に巨人の服だ。
巨大な胸も、1m以上前に飛び出た腹も、ソファの様な尻もドラム缶の様な足も。
電柱の様な腕も肉に埋もれて顎なのか首なのか分からなくなった部分も。
全てをまるで母親が赤子を抱くかのように優しく可愛らしい服が覆い隠している。
「これからは気にせず好きなファッションしましょう?」
「さ、食事の続きをしましょう?」
「宴はこれからこれから!」
口々に凛子を食事へと誘う人々。
凛子はその言葉に誘われるままに箸を持つのだった。
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『──に住む女性、鎌田凛子さんがおよそ7日前から行方不明となっており、
警察では誘拐事件として捜査を開始しています。
置き手紙などは無く、ここ最近の誘拐事件と手口が似ていることから連続誘拐事件の可能性も
──』
街頭の液晶からはアナウンサーの言葉が風に乗り、人々の耳に飛び込んでいく。
だが、この中で真剣にニュースを聞いている者は誰一人としていない。
なぜなら・・・
「あーあ・・・この足、もう少し細ければこんなファッション出来るのになぁ・・・」
「そこのお姉さん!ちょっといいかしら?」
今ここに、新たな被害者が産まれるのだからだ。
鎌田凛子
身長:181cm
体重: 51kg → 260kg
B: 89cm → 138cm
W: 62cm → 201cm
H: 86cm → 167cm