牙の行方

牙の行方

 

 

リズ ???歳 身長137cm 体重38kg B:78 W:52 H:76
虎に近い亜人種の少女。母親を亡くした所を拾われる。

 

 

 

 

「・・・これで全部か?」

 

目の前に築かれた死体の山を見つつ、俺はため息を付いた。
俺の後ろには同じく山の様に積まれた牙の数々・・・

 

「仕事とは言え、辛いな・・・」

 

俺は葉巻を咥えて火をつけた。
後ろに積まれた牙は目の前の死体からはぎ取った物だ。
亜人種同士の戦争はここ最近激化している。

 

「まぁ・・・だから儲かるんだけどな・・・」

 

戦争で出た死体から牙をはぎ取り加工屋に持っていけば中々の高値で売れる。
火事場泥棒というか何というかではあるが、生きるためには仕方ないのだ。

 

【ガサッ・・・】

 

そんな事を考えながら一服する俺の耳に、木の葉を踏みしめる音が聞こえた。
周りは戦火で焼けたとは言え、元が草原だっただけに草はいくらでもある。
問題はそんな音が立つと言うことは周りに誰か居ると言うことだ。

 

「・・・誰だ?」

 

俺の問いかけに近くで何かがびくっとする反応があった。
俺がそちらの方へ視線を向けると、そこには風になびく毛に覆われた耳があった。

 

「・・・隠れ切れてないぞ?」
「・・・その牙、どうするの?」

 

俺の言葉に素直に出てきた少女は、予想道理亜人種の少女だ。
まだ幼い体つきに全身に生えた毛。
茶色の髪の毛に金色の瞳。
猫を思わせる前に突き出た顔とそこから生えるひげ。
俺の近くに転がっている死体達と同じ種類のようだ。

 

「街に持っていって売る」
「・・・そう」
「欲しいのか?」

 

俺の問いかけに、少女は頭を横に振る。

 

「・・・死体をどうしようとアナタの勝手・・・でも出来れば弔いぐらいはしたい」
「ふぅん・・・そう言う文化、あるんだな」
「当然でしょ・・・人間が思うほど私たちは“遅れちゃいない”わ」

 

俺の皮肉に皮肉で返す少女。
どうやら中々どうして頭が良いらしい。

 

「そうかい・・・そりゃ失礼した。どうやって弔うんだ?」
「私たちは自然の一部。だからお別れの儀式の後土の中に埋めるのわ」
「こっちとは違うな・・・こっちは燃やして骨だけにする」
「そう・・・で、構わないの?」
「・・・そうだな」

 

俺は少し考えてから、少女に向かってこう言った。

 

「別に構わないが・・・手は貸すか?」
「・・・頼めるなら」

 

俺の言葉に、少女は少し笑いながらそう返すのだった。

 



 

「・・・お疲れさん」
「・・・ありがとう、手伝ってくれて」

 

俺は一ヶ所だけ土の色が見えている草原を見ながら、横に居る少女に声をかけた。
少女はしばらく無言でその場に座っていたが、その後俺に向かってお礼をくれた。

 

「別に、俺だってこれでも心を痛めてたんだぜ?言っちゃ悪いが牙を盗んでるのには違いないし。
 かといって勝手に死体燃やすわけにもいかねぇからな」
「・・・アナタ、変わってるね」
「そうかい?お前さんの方がよっぽど変わってるよ」

 

わざとらしく肩をすぼめてみると、少女はくすりと笑って立ち上がった。

 

「じゃあ・・・さようなら」
「あ、おい!」

 

そう言って立ち去ろうとする少女に、俺はなぜだか声をかけていた。
自分でも何故かけたかは分からないが、もしかしたらもう少しその少女と
会話がしたかったのかもしれない。

 

「・・・なに?」
「あ、いや・・・お前はこの後どうするんだ?」

 

少女は無言でとある方向を指さす。
そっちは彼女達の種族と敵対してる種族の住処がある方向だった。

 

「死ぬ気か?」
「・・・一族の誇りがある」
「やめとけやめとけ!どうせ既になんで争ってるかも分からん話なんだろ?」

 

俺の言葉に少女は詰まる。
どうやら図星らしい。
戦争が始まって既に100年近く経つらしいからな・・・
彼女の周りも恐らく誰一人知らなかったんだろう。

 

「それに勝てる算段はあるのか?他の生き残りは居ないのか?」
「・・・近くには居ない」
「どの辺りならいるんだ?」
「・・・山を二つほど超える」

 

この近くにある山と言えば一つ越えるだけでも3日はかかる代物だ。
そいつを二つ超えた上に帰ってくるならそれだけで約一週間。
さらに山越えでも何でも、人数が居ればその分だけ移動速度は落ちる。

 

「なら無駄だ無駄。
 仮に他の村から援軍が呼べたとしても相手だってその間に増援しちまうだろうし、
 援軍が生き残ってるかも怪しいじゃねえか」
「・・・アナタは私にどうして欲しいんだ?」

 

少女は俺の方を向き直りながらそう質問してくる。

 

「・・・俺にも分からん。分からんが命を無駄にする必要な無いだろ」
「じゃあどうしろと?」

 

少女の言葉に、俺はしばらく考えてからこう答えた。

 

「・・・とりあえずウチに来るか?」

 



 

「・・・意外と綺麗なんですね」
「ほっとけ」

 

俺の家を見て一言、少女はそんな事を言う。
どうやらもっとむさ苦しい場所を想像していたらしい。

 

「・・・で、私に何させる気なんですか?」
「・・・別にそういうつもりじゃねーよ。言うなればあれだ、情けだ」

 

そりゃ下の事だと思うわなぁ・・・

 

「情け・・・」
「おう。お前が死ぬのが何となく勿体なかった、それだけだよ」
「・・・」

 

少女はそれきり黙ってしまった。

 

「・・・そういえばお前名前は?」

 

話題が何か無いかと考えていた俺は、未だ少女の名前を聞いてなかった事を思い出した。

 

「リズです」
「そーか・・・とりあえずリズ、これからよろしく」
「・・・ええ、よろしく」

 

俺が差し出した右手に対し、一応握り替えしてくれるリズ。
俺は軽く上下に手を振った後、時計を確認した。

 

「急がないと加工屋が閉まるな・・・ついでにお前の登録もするから町の方に行くぞ」
「登録・・・?」
「あー・・・そりゃ知らんか・・・
 この辺りでは俺達人間と亜人種が一緒に住むのは認められているんだが、
 それには役所で登録をする必要があるんだよ。
 『私はこの領地内では戦闘行動は行いません』っていう奴だな。
 そうじゃないと人間達に被害が及ぶからな・・・」
「なるほど・・・そういえばここは人間が治めているんでしたか」
「まぁこの都市のトップ達の半分位は亜人種だけどな。人間の貴族共がうるさいのさ」

 

下手に隠したりしてしょっ引かれるのも問題だしな・・・
俺の説明にある程度納得したのか、リズも俺の後について移動し始めるのだった。

 



 

「・・・ねぇ」
「なんだ?」
「なんかさ・・・太った人多くない?」

 

役所に向かう最中、リズがそんな事を聞いてきた。
辺りを見回してみるが、別段そんな風には感じない。

 

「そうか?太った人なんてどこにも・・・」
「そうじゃなくて・・・私たちの種族の人達」

 

リズにそう言われ俺は改めて周りを見回す。
確かにリズと同じ亜人種は皆リズと違いぶっくりと太っているようだった。

 

「言われてみれば確かに・・・戦争しなくなったからその分運動量が減ったとかじゃないのか?」
「・・・そうかな」
「いいから役所行くぞ?あそこ閉まるの早いんだよ」

 

俺はやや強引だがリズの腕を引き、役所への道を進んでいく。
やがて役所に着いた俺達を見るなり、役所の人間はすぐさま案内をしてくれた。
連れて行かれた先ではきちっとしたスーツを着込んだ初老の男が受付に立っており、
にこやかに対応してくれた。

 

「ご用件は?」
「あー・・・あれだ、亜人種の居住許可が欲しい」
「なるほど・・・そちらの方の同意は得られてますか?」
「問題無い」

 

リズが俺に変わってそう答えると、分かりましたと一言言って
男はリズに奥の部屋に向かう様指示する。

 

「じゃあ、行ってくる」
「あいよ」

 

俺は近くの椅子に腰掛けると、やることも無いので窓から外を見つめた。
荷台に干し草を積んだ馬車や人々の往来を見ながらしばらく待つと、リズが帰ってきた。

 

「おかえり。どうだった?」
「これを付けられた」

 

そう言ってリズが自分の右腕を掲げると、そこには金属で出来た腕輪があった。

 

「これを付けている限り故意に誰かを攻撃することは出来ないらしい。外す方法もあるんだってさ」
「ほー・・・魔法の腕輪って奴か」
「多分ね。あと副作用で牙が伸びなくなるんだって」

 

リズがそう言いながら自分の牙を見せる様に唇部分を指で押さえる。
まだ若いため短いが、上あごに他より長く尖った歯が生えている。

 

「そうなのか・・・さて、先に帰ってるか?」
「なんで?」
「この後俺は加工屋に行くんだが・・・」
「・・・別にそんな事で起こるほど子供じゃないよ」
「そうかい」

 

俺はむすっとしたリズを連れ、役所を後にするのだった。

 



 

そんなこんなで始まったリズとの生活だが、最初は上手くいかなかった。
リズの文化と俺達の文化のギャップという奴のせいだ。
だが、それも3ヶ月もすれば大分良くなり、ごくごく普通に過ごせる様になってきた。
だが・・・

 

「なぁ・・・リズ」
「なに?」
「お前太ったか?」
「・・・」

 

リズは日に日に太っていた。
あれほどすらりとしていたリズの体はいつのまにやらぽよぽよを通り越し
ぶよぶよという感じになっている。
くびれていたはずの腰はぽっこりとした腹が前に出ているし、
小ぶりだった胸は片手では収まりきらなくなっている。
こっちに来てから履き始めたスカートから覗く足は今では立派な太さへと変貌していた。
当然尻も肥大化し、今では以前履いていた服は着られないだろう。
腕も太く肉厚で、主に二の腕が酷い。
顎もシャープさは薄れ、たぷたぷと顎肉が良く揺れる。

 

「・・・食生活が違うからよ。それと運動量」
「いや、分かってるなら痩せろよ」

 

俺の突っ込みに対してリズは無言のままだ。

 

「全く・・・とりあえず少しは痩せろよ・・・俺もそこまで蓄えあるわけじゃ無いし」
「わ、分かった・・・」

 

ため息混じりの俺の言葉に多少は反省したのか、ダイエットを誓うリズ。
俺もこれで少しは痩せるだろうと思いいつもの様に“仕事”をしに行くのだった。

 



 

「・・・で、どうしてこうなっているんだ?」
「・・・分からない」

 

リズがダイエット宣言してから2ヶ月。
彼女の体重は減るどころかますます増えていた。
昔が小石だとすれば、今はまるで一抱えもある岩だ。
腹は妊婦ばりに前に出てるし、胸は服から今にもこぼれそうな程育っている。
尻は椅子の幅よりも横に広がり、足は丸太のように太い。
二重顎になるほど顎肉が付き、首もかなり太くなっている。

 

「ダイエットしてるんだよなぁ・・・?」
「と、当然よ!」

 

俺の疑惑の目に対して違うと叫ぶリズ。

 

「・・・一度医者に診て貰うか」

 

また出費が増えるなと思いつつ、俺はリズを連れて町の医者の所へと移動するのだった。

 



 

「はむ・・・うん、美味しい!」

 

さらに数ヶ月後。
俺の目の前では旨そうに肉を貪るリズの姿があった。
当然その体はさらなる増量をはたしており、前の喩えで言えば岩というよりは大岩だ。
最近新調したはずの服はすでにパツンパツンであり、体はどこもかしこも肉で覆われている。
当然全身くまなくサイズアップしており、尻は椅子を二個並べないと追いつかないほどになった。

 

「はぁ・・・少しは痩せろよ・・・」
「残念だけど、私は無駄なことはしないの」
「無駄では無いだろ無駄では・・・」

 

なぜ彼女がここまでサイズアップしたのかと言えば、それは彼女の腕に付いている腕輪のせいだ。
この腕輪は力の抑制をする為の腕輪なのだが、
彼女達のトレードマークとも言える牙の成長も同時に押さえ込む。
だが・・・彼女達の牙はある種の“タンク”の様な物らしく、そこに力──
一種の魔力で気と言うらしい──が溜まるのだと言う。
この力が溜まる際、本来ならば過剰な分は牙の成長へと当てられるらしい。
が、その牙が成長しなくなったので余った気がリズの体の各地へと分散。
結果脂肪という形で現れているそうだ。
つまり、リズは腕輪をしている間は黙っていても太るというわけである。
道理で同じ種族の連中にデブが多いわけだ。
御陰でリズはダイエットをする気がなくなり、今では殆ど食っちゃ寝だ。

 

「家の事をしてくれるのは助かるが、少しは家計のことをだな・・・」
「いいじゃない。私を招いたのはアナタなんだし」
「そりゃそうだが・・・」

 

お節介しなきゃ良かったと思う俺に、リズはニッコリと笑いながらこう言ってきた。

 

「ならいいでしょ?これからも末永く面倒、よろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リズ
身長:137cm
体重38kg → 64kg →  93kg  → 135kg
B:78cm → 98cm → 117cm → 131cm
W:52cm → 76cm →  94cm  → 129cm
H:76cm → 94cm → 111cm → 124cm


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