熱膨張は熱暴走
鹿島 悠人(かじま ゆうと)18歳 身長169cm 体重52kg
東京の大学に行くため上京してきた学生。夏休みはいいが連日のうだる様な暑さで参っている。
「・・・暑い!地元よりも暑いって何だよ!!」
扇風機の風を体に浴びながら、俺はアイスを舐めつつ悪態を付いた。
上京してはや3ヶ月。
ようやくこっちの暮らしにも慣れてきたと思えばこの暑さだ。
「こんな事なら帰省しとけば良かったな・・・」
格好付けて『今年はこっちで遊んで過ごす』なんて親に言わなきゃ良かった・・・
まさかここまで暑いなんて聞いてねぇよ。
「アルバイト代はあるけどよぉ・・・流石にクーラーはなぁ・・・」
近所の電気屋のチラシを確認する。
・・・やっぱり高い。
「あーあ・・・なんか他にいい冷房器具ねぇかな・・・」
ごちゃりと入っていたチラシをめくりながら、俺は適当に流し見る。
すると・・・
「・・・ん?」
俺の目に一枚の広告が飛び込んできた。
『新しい冷房器具の誕生!』
『部屋に一台置くだけ!面倒な設置作業は無し!』
『届いたその日からすぐに使えて便利で安い!』
そんな文字が並ぶ広告だった。
怪しいとは思いつつ読み進んでみる。
どうやら熱気を吸収して冷気に変えてくれる装置らしい。
価格はなんと5000円。
「・・・ほんとかよ」
俺は笑いながらチラシを眺め終えると、受話器を手に取りチラシに書いてある番号に連絡する。
5000円ならまぁちょっとした悪ふざけでも済ませられる値段だ。
こういうのは笑いの種になるし、もし仮に良い物が送られてきたならそれはそれでお得だ。
『お電話ありがとうございます。株式会社ロコーです』
「あ、すみません。このクールでヒエールっていう商品が欲しいのですが」
俺は受付の人と話をしながら購入手続きをするのだった。
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「・・・でかいな」
数日後、俺は届いたばかりのクールでヒエールの箱を見ながらそう呟いた。
箱のサイズは大人の男が楽に入りそうなサイズで、酷く重かった。
「・・・ま、とりあえず開けるか」
俺はカッターナイフを取り出すと、張り付いていたガムテープに切り込みを入れていく。
するとひんやりとした冷気が箱の中から漂ってくるのに気付き、ちょっと期待が高まる。
やがて全ての部分に切り込みが入り、俺は勢いよく蓋を開けた。
「・・・なんだこりゃ!?」
中に入っていた物を確認した俺は思わずそんな事を叫んだ。
中に入っていたのはなにやら可愛らしい和服に身を包んだ一人の女性。
すやすやと穏やかそうな呼吸をしつつ、無防備な寝顔を晒している。
細身だが出るところは出たボン・キュ・ボンな体つきだ。
「おいおいおいおい!!なんだよこれ!?」
警察か、それとも救急車か?なんて感じに一人で慌てていると、女性がむくりと起き上がった。
「・・・おはようございます」
「お、おはようごじゃいます」
噛んだ。
だが女性は特に気にするそぶりを見せないまま立ち上がると、箱からのっそりと出てきた。
改めて見ると彼女はかなりでかい。
180cm位・・・もしかしたらそれ以上有りそうな身長。
どたぷんと飛び出た胸。
きゅっとくびれた腰回りからなだらかなラインを描いて飛び出た尻。
むちむちとして色気を感じる足に透き通る様な白い肌。
長く腰ぐらいまである髪の毛。
まるで人形と言った方がしっくり来るほど完成された美人だった。
「この度は我が社の製品をお買い上げ戴きまして真にありがとうございます」
「あ・・・いや・・・き、君は一体?」
「はい、私は型式番号Co-001。シリアルナンバー00345のクールでヒエールです」
「いやそうじゃなくて・・・名前とかさ・・・」
「名前ェないといけないし、生活費だってある。
買った翌日に彼女を放置するのは色々と心配だったが、
先立つものが無ければどうにもならないのだ。
俺は仕事をやや早めに切り上げ、自分の家へと急いで向かう。
「おかえりなさいませ」
「おう、ただい・・・ま・・・?」
途中夕食代わりのパンを買いつつ、家に着いた俺を幸夜子が迎えてくれた。
迎えてくれたのは迎えてくれたのだが・・・その姿に俺は固まった。
まるで西瓜を二つくっつけたかの様な胸。
昨日とは違って背中ごと膨らんだかの様な腰回り。
足は大根足と呼ぶにも太いし、尻はなんだかクッションみたいに横に広がっている。
袖口から覗く腕は俺の太ももとそう変わらない太さだ。
あごの方はあんまり変わってないけど、それでもやっぱり大分丸くなっている。
「どうかしましたか?」
「むしろお前がどうかしてるよ!」
きょとんとする幸夜子に突っ込みをかますと、俺は幸夜子を連れて部屋に入った。
「どうしたんだよその体!」
「ですから指示通り冷気を貯め込んでます」
「・・・はぁ?」
「私の体は至る所が空気の保管場所となっております。
人間で言うところの胃袋も当然ですし、腕や足、胸や尻なども変わりません。
流石に口の辺りは吸気等に影響が出るためあまり保管出来ませんが・・・」
「・・・じゃあなんだ?その体は全部冷気が詰まっているのか?」
「はい。腹部では熱気を貯めて処理しますので長時間貯めるならば胸か足が都合良く」
「・・・そうか。とりあえず冷気を出してくれ。昼間の熱気で暑い」
「かしこまりました」
実際は言うほど暑くないが、それでも幸夜子がこの姿のままなのは流石に嫌だ。
折角可愛いのにこんなぷくぷくに・・・まるで激太りしたかの様に膨らむのは
流石に見るに堪えない。
しばらくの間、俺は幸夜子が冷気を吐き出す音を聞いていたが、やがてそれが止まる。
「これ以上冷気を排出しますと部屋の温度が急激に下がりますので
健康に被害が及ぶ可能性があります」
淡々とそう説明する幸夜子。
確かに部屋の温度計は20℃辺りを指している・・・が、幸夜子の体はまだまだ太った状態だ。
「・・・もう少し下げてくれ」
「かしこまりました」
再び幸夜子の息の音を聞きながら、俺は明日は貯めないでおこうと決意するのだった。
幸夜子
身長183cm
体重 127kg → 152kg
B:92cm → 134cm
W:61cm → 155cm
H:88cm → 149cm