ゴミはゴミ箱へ

ゴミはゴミ箱へ

 

 

「あ〜・・・疲れた・・・部長小言多すぎだって・・・」

 

部屋に入り、鞄を適当に放り投げる。
社会人になって2年半、慣れてきたけど疲れるモンは疲れる。

 

「・・・さて、ご飯の前に“いらない物”捨てなきゃね」

 

私は上着をハンガーに掛けると、押し入れに向かった。

 

「ほーら、今日も“ゴミ捨て”の時間ですよー?」

 

私がそう声をかけながら扉を開けると、中の“ゴミ箱”が蠢いた。

 

「ひっ・・・や、やめて・・・!」

 

後ろに動こうとするゴミ箱。
でも、無理。

 

「はいはい、逃げられないんだから無駄な事しないの。
 どのみちその体じゃ後ろ下がれないでしょ?ぶっくぶくに太ってるんだから」
「こ、こうしたのは貴方じゃない!」

 

ゴミ箱が騒ぐ。
まぁゴミ箱というか、元人間というか・・・
この子は私が拾ってきた子で、名前は・・・忘れた。
まぁどうせゴミ箱としか呼ばないし、わざわざゴミ箱に名前を付ける必要なんて無いだろう。

 

「そりゃそうだけどね・・・まぁいいか。ゴミ箱と問答しても仕方ないし・・・ほら、口開けて」
「い、いや!!やめて!!」

 

狭い押し入れの中で暴れるゴミ箱。
いくら他に何も入ってないとはいえ、人間大の物が暴れれば邪魔くさい。

 

「ああもう!ほら大人しくする!」
「ぐぇ・・・!!」

 

ちょっと“力”を強めにかけると、ゴミ箱が大人しくなる。

 

「全く・・・余計に私に“ゴミ”が溜まっちゃったじゃないの・・・」

 

私はそう言いながら、ゴミ箱の口に自分の口を近づける。
そして、そのまま“私のゴミ”をゴミ箱に吐き出した。

 

「ふぎ・・・!ぐ・・・えあ・・・!!」

 

見る見る内にゴミ箱が膨れあがり、さっきよりも一回り大きくなる。
これが私の“ゴミ捨て”・・・私のストレスをこのゴミ箱に捨てるのだ。
元々私の一族は自分の精神を他の物に移す魔法だかを研究してたとかどうとか。
・・・あれ?元々そういう能力があるんだっけ・・・まぁどっちでもいいや。
とにかく、うちはそういう一族できちんとその能力を受け継いだ奴は本家へ、
そうじゃない奴は適当に一般社会へと出される。
私はその能力を不完全に受け継いだため、一般社会へと出された方だ。
だからといって、その能力が使えない訳じゃ無い。
ある日上司からの圧力でいらいらしていた私に、このゴミ箱が目の前に出てきた。
ぶつかってきたくせに私に怒鳴るこいつが酷くうるさくて、
気がついたら能力を使って気絶させていた。
精神を移す作業は、移される側に凄い負担をかける。
上手い奴は壊さずに出来るんだけど、私の能力じゃ加減がうまく出来なくて
ついつい物を壊したりしちゃう。
この時は偶々うまく気絶だけで済んだけど、もしもだったらこのゴミ箱の脳味噌壊してたかも。
今は大分調整出来るようになったからそんな事無いけどね。

まぁ何はともあれ、気絶したこのゴミ箱を拾った私は自分の部屋へと連れ帰って
ゴミ箱として使ってるわけ。

 

「・・・ぷは!うんうん、体が軽い!」
「あ・・・あが・・・」

 

ゴミを捨てた私は、その場で軽く体を動かす。
今日の疲れなんか全部吹き飛んで、まるで10時間位ぐっすり寝た後みたいに健やかな気分だ。
ゴミ箱の方はなんだか軽く痙攣してるみたいだけど、いつものことだし良いか。

 

「・・・それにしても大発見よねぇ・・・ストレスを他人に移すとそれが脂肪になるなんて・・・」

 

本家の方も知らないかもしれない大発見だ。
・・・まぁ、私の能力が不完全だからかもしれないけど。

 

「・・・ほぉんと、太ったわねぇ」

 

ゴミ箱を触りながら、私は出会った時の体型を思い返す。
くびれた腰にそこそこ大きい胸、ぐっと出た尻。
今時系のギャルっぽく制服を軽く着崩した服も様になってた。
それが今じゃ肉の塊と言った方が良さそうだ。
座っててると股間どころか膝まで隠す腹に、
まるでアメリカアニメに出てくるスイカみたいな胸が二個。
首は肉に埋まってるし、顎なんか二段になってて笑っちゃう。

 

「まぁいいか。これだけ脂肪があれば餓死は無いでしょ?脱水だけ気を付けないとね〜」

 

私はゴミ箱用にドリンクを作る為、スポーツドリンクの粉末を
1Lのペットボトルに入れるのだった。


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