勘違いで見える物

勘違いで見える物

 

 

金光 桜(かなみつ さくら) 15歳 身長157cm 体重47kg
春から女子校に通い始めた高校生。
外面こそ良いが、自分の容姿に自信があるようで心の中では他人を下に見ている。

 

 

 

 

 

「ふぁ・・・」

 

欠伸をかみ殺しながら、私は慣れてきた道を歩いて行く。
入学して一ヶ月、大分新しい学校への通学も慣れてきた。

 

「・・・とはいえ前の学校よりも遠いのは何とかならないかな」

 

正直言えば面倒だし、前よりも少し早めに起きないと行けないのも辛い。

 

「まぁ気楽でいいけどさ・・・」

 

“女子校は女だらけの分色々とアレだ”。
良く聞く話だけど、実際に通ってみると噂通りどころか想像よりも酷かった。
上級生のクラスから響く喧しい声。
これでもかと学校全体に漂う香水の匂い。
女の子というよりはおばさんっぽい笑い声。
中学の頃はよくクラスの男子が騒いでいたが、今思えばあれはまだ静かだった。
ウチのクラスメイト達も大分毒されてきていて、
最近では体育の授業の後は下着姿でうろついてたりする子も居る。

 

「・・・私はああならないようにしよう」

 

先輩達の酷い有様を思い出しつつ、私は頑張る事を一人誓う。
そんな事をしていると・・・

 

「金光さん、おはよう!」
「二上さん、おはよう」

 

クラスメイトの二上が話しかけてきた。
この子はウチのクラスの中でも一番の“デブ”。
横幅は私よりも二倍位有りそうだし、スカート下の足なんて太くて見るに堪えない。
・・・まぁそんな事を堂々と言うほど私も馬鹿じゃないけど。

 

「あれ?金光さん、また痩せた?」
「まぁ・・・少しは、ね?」
「いいなぁ・・・私はまた少し太っちゃった」

 

貴方と違って私は努力してるもの。
どうせいつも食っちゃ寝でもしてるんでしょ。

 

「んじゃあ私は今日日直だから先行くね!金光さんまた後でね!」

 

そう言って走っていく二上。
・・・デブのくせに足速いのよね。

 

「また後で」

 

そう答えながら、私は適当にその背中を見送るのだった。

 



 

「うん、良い感じね」

 

5月の中頃。
身体測定の結果を見つつ、私は一人頷いていた。
バストは2cmアップでウエストは1cmダウン。
体重も良い感じの所を上手いこと行ってる。

 

「・・・ただでさえ美人なのに磨きがかかって仕方ないわね」
「わぁ・・・金光さん細いなぁ・・・」
「わっ!二上さん・・・急にどうしたの?」

 

一人呟いていたら、後ろから二上が覗き込んできていた。

 

「いやぁ・・・金光さんの体重が気になって・・・」
「・・・だからって他人のを覗き込むのはちょっと」
「あはは、そうだよね。ごめんね!!」

 

そう言ってその場を離れて行く二上さん。
多分自分が太いから私が羨ましいんだろうけど・・・

 

「せめて自分の分見せなさいよ」

 

そうすれば笑って上げたのに、やらないけど。
私はため息を付きながら、身体測定の用紙を鞄にしまい込むのだった。

 



 

「・・・」

 

6月も後半。
なんだかクラスの雰囲気が変わってきた気がする。
女子校の雰囲気に飲まれたというか・・・

 

「・・・太った子が多いわね」

 

みんなどこかふっくらしてきている。
衣替えに加えて最近暑いからかみんな薄着だし、余計に目立つ。
油断がはびこっているのがよく分かる光景だ。

 

「・・・まぁ私も他人の事言え無いけど」

 

あんなに頑張っていたダイエットも最近どうにも不調だ。
前に比べて身体のラインが緩やかになったのは自分でもよく分かってる。

 

「・・・そりゃあんなのがいれば気も緩むか」

 

私は二上の方を見ながらそう呟く。
そこには丸っこい身体をかがめながらアイスを食べる彼女の姿があった。
・・・なんだか前よりもさらに太ってる気がする。

 

「・・・夏休みまでにどこまで絞れるかしらね」

 

うっすらとついて来たお腹の脂肪を軽く指で押しながら、私は今後の予定を考えるのだった。

 



 

「・・・はぁ」

 

8月も今日で終わり。
私のテンションはものすごく下がっていた。
明日から学校が始まるというのもある。
だけどそれ以上にきついのは・・・

 

「全然痩せなかった・・・」

 

ますます量を増したお腹の贅肉だ。
夏休みまでに絞るつもりだったけど、女子校っていうのはまぁ誘いが多い。
こういう所で断ると後で色々面倒になるのは女子特有の面倒さだ。
特に近くで最近オープンしたアイス専門店へのお誘いは殆ど連日だったし。
それがどうやらいつの間にか私の中で習慣になってたみたいで、
気がつけば夏休み中も殆ど毎日通ってた。
・・・実際美味しいし。

 

「その結果がこれかぁ・・・」

 

お腹についた贅肉をむにゅっと摘む。
厚みとしては2cmあるかないか。
以前の服だと大分パツパツになる程だ。
胸も大きくなったけど、このお腹を考えるとあまり嬉しいとは言えない。
足も歩く度にぷるぷる揺れるのを感じるようになった。
顔にはそこまでついてないから違和感は少ないと思う。
でも・・・

 

「ああ・・・憂鬱ね」

 

こういうのを驕りと言うのかもしれない。
私なら大丈夫という油断が有ったんだと思う。

 

「・・・明日から頑張って痩せなきゃ」

 

新学期だし、気持ちを入れ替えて頑張って痩せよう。
そう思いながら私はベッドに入って眠るのだった。
ところが・・・

 

「・・・」

 

翌日私が目にしたのは私よりも丸々としているクラスメイト達の姿だった。
どうやらみんなも私と同じ様に油断していたらしい。
特に二上なんてどう見ても3桁を越えた姿で、見ているだけで暑苦しい感じだ。

 

「・・・心配して損した」

 

みんな太った事を自覚しているからか、誰もその話題を出さない。
私はどことなく安心した気持ちでホームルームを迎えるのだった。

 



 

「・・・とは言えこれは油断しすぎた」

 

冬休み。
私は体重計に乗りながら2学期の最初の甘い考えを抱いた自分を軽く恨んでいた。
2学期も相変わらず・・・いや、1学期よりも酷い生活をしてしまった。
毎日のようにやる買い食いは当然だし、授業の間の休み時間に行われるお菓子の交換会。
雑談ではどこの食べ物が美味しいとか、そういう情報がばらまかれるし。
その結果がこれである。
70kgの大台を超した私の身体は前の身体にはもうこれでもかっと脂肪がついていた。
ぽっこりと前に出てるお腹に、その上に乗っかる様になった胸。
お尻は明らかに昔から使ってる椅子が小さく感じるようになったし、
足はお気に入りのストッキングがうっすら透ける。
腕も結構太くなって、明らかに袖口がきつくなった。
顔も大分もっちりで、少しでも頭を下に向けると二重顎になる。

 

「というかあれよ、クラスメイトのせいもあるって言うか・・・」

 

それもこれも彼女達のお菓子攻撃やら何やらのせいだ。
明らかに途中から足を引っ張るために色々準備してたし。
・・・私もやったけどさ。
でもなるべく食べる量減らして普段とそう変わらない量を食べてたはずなんだけどなぁ・・・

 

「・・・冬休みにどこまで絞れるかな・・・」

 

そう呟きながらも、私は駄目だろうなぁと頭のどこかで考えるのだった。

 



 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

3学期ももうすぐ終わり。
春休みを目前にした私は重くなった身体を引きずりながら重い足取りで登校していた。
身体は冬休みと比べても更に重くなって、気付けば3桁の壁が目の前にあった。
1歩歩く毎にどたぷんと揺れるお腹。
ブラが食い込んで痛い胸。
スカートに収まらなくなってきた尻。
体中にたっぷりついた贅肉が身体も心も重くする。

 

「おはよう!金光さん!」
「あ・・・二上さん、おはよう」

 

そんな私の背中を軽く叩く二上。
気がつけば去年の4月ぐらいの彼女と同じ位の体型になった。
その事実が余計に私を凹ませる。

 

「・・・ねぇ金光さん?」
「はぁはぁ・・・なに・・・?」
「えいっ」

 

二上は私の横に並ぶと、なんだかにやついた顔で私の腹を揉んだ。

 

「な、なにするの!?」

 

揉むなら自分の腹でも揉みなさいよ。

 

「いやぁ太ったなぁって思って」
「うるさい!」

 

大体貴方の方が太いくせに。

 

「あははは、怒らないでよ。折角いい話持って来たんだから」
「どういう意味・・・?」

 

いい話って何よ・・・早くしないとこの身体じゃ遅刻しちゃうのに・・・

 

「いや、変だと思わない?」
「なにが・・・?」
「1年で人間ってそんなに太るかな?」
「・・・えっ?」

 

そういえば・・・まだ1年よね。
・・・あれ?
私って元々何キロだっけ・・・
・・・今、何キロだっけ?

 

「見た感じ、今90キロはあるよね?元が何キロかは知らないけど、まぁ大体50キロぐらいかな?
 おっぱい大きかったもんね」
「そ、それが?」
「いや、人間って1年で40キロも太るのかなってさ」
「そ、そう言われても・・・」

 

実際太ったんだし・・・何が言いたいの?

 

「・・・私ね、みんなには黙ってたことがあるの」
「きゅ、急に・・・ぜぇ・・・何の話?」

 

なんなのよさっきから・・・

 

「あのね、私実は超能力が使えるのよ」
「はぁ?」

 

意味が分からない。
変わった子だとは思ったけど、やっぱり頭おかしいのかしら?

 

「あははは、みんなそう言うのよね。
 でもね、これは本当の話なの」
「・・・だから・・・ぜぇはぁ・・・なんなの?」
「・・・私の能力は『他人に勘違いを起こさせる』能力なのよ」
「・・・え?」
「勘違いでも思い違いでもいいけど、私は相手の認識をずらす事が出来るの。
 あ、といっても凄い事が出来る訳じゃ無いけどね?」
「何をばかばかしい・・・」

 

そう答えた私の顔を覗き込みながら、二上は私にこう言う。

 

「本当にそう思う?」
「えっ・・・?」
「なら・・・私の身体、どう見えるかな?」

 

そう言われてふと二上の身体を見る。
いつも通りの私よりも太った・・・あれ?
彼女の身体って横に太くて・・・だらしない感じだったはずなのにどこか細いような・・・
いや、そもそも・・・太ってない?

 

「なっ・・・」

 

私の目に映ったのは、少しむっちりとした可愛らしい女の子・・・
顔は確かに二上の顔だし、制服も持ってる鞄も彼女の物だけど・・・
でもついさっきまでは確かにデブで・・・

 

「分かってくれた?私の本当の体型」
「な・・・え、あ・・・?」
「あ、去年からずっとこの体型だよ?そりゃ多少は太ったけどね?
 証拠に、はいこれ」

 

そう言って彼女は鞄から1枚の紙を取り出して私に渡してくる。
それは健康診断の結果が書かれた紙で・・・

 

「体重・・・56kg・・・!?」
「ね?本当でしょ?あ、偽造なんかしてないよ?今は大体+2kgぐらいかな?」

 

58kg・・・今時の流行りから考えると確かに少し重めだけど・・・普通と言えば普通だ。

 

「最初からずっと勘違いさせてたの。“二上久美はとてつもないデブだ”って。
 そうするとね、みんな勝手にこう考えるのよ。
 “あんなデブが居るんだし私も少しぐらい太っても大丈夫”って。
 で、そこにさらに勘違いを重ねさせるのよ。“食べてる量は普段と変わらない位だ”って。
 実際はみんなかなり大量にお菓子とか食べてたんだよ?
 みんながみんな持ち込むんだから当然だけどね」
「な・・・なんで・・・?」
「“なんで勘違いなんてさせたのか”って?勿論私以外の子を太らせる為に決まってるでしょ?
 みんなが太れば私一人が美人でいられるもの」
「な・・・なんですって!?」
「あはははは!!そんな格好で怒っても怖くないよ?
 金光さんだってそう思うでしょ?気持ちいいモンね。自分よりも不細工な奴を見下すのって!」
「貴方ねぇ!?」
「あら、それとも訴える?私を?どこに?
 “こいつは超能力者だ!”って?信じる訳無いわよね」
「わ、私を騙しておいてよくも!」

「騙してなんて無いわよ?貴方達が“勘違い”してただけ。私は今まで一言も嘘をついてないわ。
 去年の始めは貴方の方が細かったもの。それにあの頃少し体重が増えてたのも本当。
 ・・・ま、勘違いをさせるのだから騙したと言えるかもね」
「・・・っ!!」

 

思わず引っぱたいてやろうと思って彼女の方に手を振る。
だけど・・・

 

「あはは!おデブちゃんが無理しちゃ駄目だよ?」

 

私の攻撃は軽々とかわされた。

 

「じゃあ私は先急ぐから!精々遅刻しないように頑張って来てね!」

 

笑いながら走っていく二上。
私は言い様の無い怒りを感じながらも、何も出来ない事に絶望するのだった。

 



 

その後、私は結局二上の事を他の人に言えなかった。
こんな事を信じてくれる子なんて居る訳無かったし、
今でも彼女は私以外の子にはデブに見えるのだ。
頑張ってダイエットしようとはしたけど、染みついた習慣は全然抜けることは無かった。
私の体重は右肩上がりを続け、気がつけば3桁を軽々と突破。
3年生になる頃にはXLの制服でも窮屈になっていた。
それでも・・・他のクラスメイトよりはマシだろう。
そうだ・・・だから・・・まだ大丈夫。
まだ、私は引き返せる・・・
大学に入ればすぐに痩せる・・・
だから・・・

 

「さくらちゃん!今日もあそこ寄ってく?」
「・・・寄っていこうかな?」

 

今日ぐらいは、大丈夫だ。

 

 

 

 

 

金本桜
身長:157cm
体重:47kg → 46kg →  50kg  → 61kg  → 73kg →  96kg  → 156kg
B:87cm → 89cm → 92cm → 96cm → 99cm → 103cm → 129cm
W:55cm → 54cm → 59cm → 68cm → 78cm →  94cm  → 132cm
H:78cm → 77cm → 81cm → 88cm → 94cm → 115cm → 140cm


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