291プロ 2nd
その日、千早ちゃんに届いたプレゼント・・・
あれが全ての始まりでした。
千早「おはようございます」
P「おやよう千早、ファンから荷物が届いてるぞ〜」
千早「荷物ですか?」
P「おう、なんか栄養ドリンクみたいだぞ。手紙付きだ」
千早「はい。えっと・・・」
【─千早さんへ
初めてお手紙お出しします。
この前初めてコンサートで千早さんの歌を聴いて虜になりました!
そこでこのドリンクを送ります。
なんでも最近アメリカで売り出されたもので、声の通りをよくして
歌がより綺麗に歌えるようになるそうです!
あともう一つ効果があって実は─】
P「なんだって?」
千早「・・・私の歌にはまってくれたみたいです。それで喉に良いドリンクを送ると・・・
プロデューサー、試してみてもいいですか・・・?」
P「うーん・・・ラベルが英語で書かれてて、読めないんだよなぁ・・・
安全かどうか判らないと・・・」
千早「パソコンとかで調べられないのでしょうか?」
P「そうだな、やってみるか」
・
・
・
P「でたぞ。つい最近発売された物らしいな。向こうでは結構売れてるっぽいなぁ」
千早「それで・・・安全なんでしょうか?」
P「うーん・・・取り立てて問題はなさそうだな」
千早「では・・・」
P「まぁ使ってみても良いんじゃ無いかな」
千早「判りました。早速飲んでみます」
P「体調が悪くなったりしたらすぐ言うんだぞ!」
千早「はい」
もしこの時、私が止めてれば千早ちゃんは・・・
いや・・・多分千早ちゃんは試したんだろうなぁ・・・
・
・
・
ボイストレーナー(以下VT)「はーい、お疲れ様!千早ちゃん今日はいつにもましてイイ感じだったよ!」
千早「本当ですか!」
VT「うんうん!なんというのかなぁ〜こう、声がズバッと通る!って言うの?響くって言うか・・・」
P「確かに俺でもいつもよりも調子よさそうって感じに聞こえたもんなぁ」
千早「嬉しいです・・・」
P「やっぱあれの力なのかな?」
千早「かもしれません・・・」
VT「まぁこの調子でレコーディングも頼むよ!」
千早「はい!」
ここはプロデューサーさんに後で聞いた話ですが、
その時の千早ちゃん本当に調子よかったみたい・・・
だから千早ちゃんも使っちゃったんだろうなぁ。
・
・
・
千早「あれから一週間・・・使い続けてるけど体調は特に問題ないし、それに・・・」
千早「ふふっ・・・これは良いプレゼントだったわ」
あれから良く千早ちゃんが鏡に向かって色々確認してるのを見かけるようになりました。
もしこれの意味に気付いてたら変わったかな・・・
P「千早〜そろそろ仕事行くぞ〜」
千早「判りました、今日はレコーディングですよね?」
P「ああ、新作曲のだ!気合い入れていくぞ!」
千早「はい!」
仕事もすっごく積極的で、多分この時が一番絶好調でした。
・
・
・
P「千早、最近元気ないな?」
千早「・・・いえ、大丈夫です」
P「まぁそういうなら良いけど・・・無理はするなよ?」
千早「はい・・・」
プレゼントが届いてから二週間。千早ちゃんは焦ってたみたいです。
後で聞いたんですがどうも薬が効きにくくなってきたみたいで。
だから─
千早「・・・一日一本って書いてあるけど・・・二本飲んだら・・・!」
だから多分間違っちゃったんです。
・
・
・
千早「おはようございます・・・」
P「おはよう千早。・・・なぁ千早?最近ちょっと・・・」
P「その・・・太ったか?」
千早「うっ・・・」
P「やっぱりか・・・少しダイエットしないとな。今どのくらいなんだ?」
千早「ろ・・・62kgです・・・」
P「20kgも太ったのか!?」
千早「すみません・・・」
P「にしては見た目あんまり変わってないな?」
千早「コルセットで結構無理矢理締めてますから・・・いつファンの方と会うか判らないですから」
P「その意識は立派だけどだったら最初から太らないように気をつけてくれ・・・」
千早「はい・・・すみませんでした、プロデューサー・・・」
P「じゃあ今日は美希の収録の方に行かないといけないから・・・
小鳥さん、千早のダイエットの手伝いお願いできます?」
小鳥「判りました。さ、千早ちゃん。向こうで色々打ち合わせしましょ?」
千早「はい、すみません色々と・・・」
小鳥「あやまるのは痩せてからね」
千早「はい」
この後千早ちゃんが努力してたのは私が良く知ってます。
それこそこっちが色々心配になるぐらいに。
でも、痩せるはず無かったんですよ。
・
・
・
P「千早は今日も顔出してくれないか・・・」
小鳥「はい・・・」
P「ダイエット始めてから一ヶ月か・・・全く効果無いどころかむしろ太ってるからなぁ・・・」
小鳥「顔出しにくいんでしょうね・・・春香ちゃんが様子を見に行ってくれてますけど・・・
そもそもなんであんなに太っちゃったんですかね・・・?」
P「千早が言うには別段普段と変わらない生活だったって話なんだけどなぁ」
小鳥「この前三桁突破したとか・・・まずいですよ・・・」
P「一体何がいけないんだ・・・?」
小鳥「千早ちゃんがこの前から飲んでるって言うドリンクは?」
P「ホルモンバランスを整える薬だとかで、適量を摂取していれば問題ないそうです。
千早が変な飲み方をするとも思えませんし・・・」
小鳥「しっかりしてますからね・・・」
こうしてみると、信頼って時々裏目に出ますよね・・・
・
・
・
P「・・・おじゃまするよ」
千早「・・・わざわざ・・・来て頂いて・・・はぁはぁ・・・すみません・・・」
P「構わないさ、そもそもその身体じゃ動けないだろ?」
千早「はい・・・」
ダイエット開始してから2ヶ月位すぎたある日、
プロデューサーさんは千早ちゃんの家まで様子を見に行きました。
自分から見に行ったそうです。
私もその位気をかけて欲しいですよぅ。
P「で、単刀直入で悪いんだけど・・・今何キロ?」
千早「・・・264kgです・・・」
P「・・・千早、判ってるとは思うが・・・」
千早「はい・・・クビ・・・ですよね・・・」
P「"今のまま"ならな・・・」
千早「え・・・?」
P「ウチとしても千早を失うのは惜しいんだ。社長も残って欲しいと言ってるし。
あれだったら歌手として雇う事だって出来る」
千早「プロデューサー・・・」
P「俺も協力する・・・一緒に頑張ろう・・・!」
千早「・・・もう駄目ですよ」
P「千早?」
千早「最近・・・ご飯が美味しくて、食べても食べてもお腹が一杯にならなくて・・・
動くもどんどん億劫になって・・・
気付いたらこんな身体になって・・・もうどうしようも無いじゃ無いですか!」
P「・・・千早」
千早「・・・すみません・・・少し考えさせて下さい」
P「・・・判った。また来るよ」
・
・
・
この後私は勿論、プロデューサーさんもちょくちょく千早ちゃんの様子を見に行きました。
見に行くたびに千早ちゃんの身体は大きくなってた。
千早ちゃんが薬を過剰摂取してるって気付いたのはこの頃です。
実はこの薬、副作用でバストアップ効果があったんです。
歌唱力が上がりにくくなって、胸も大きくなりにくくなってきた。
何とかしたいっていう欲が出ちゃったんでしょう。
最初に2本に増やして、それが三本、四本と。
最終的に一日七本飲んでたそうです。
おかげでホルモンバランスは崩れて、こんな事になっちゃったんです。
ネットですか?すっごい大騒ぎでした。
千早ちゃんの写真がどこからか漏れて、
【千早が激太りでアイドル引退!?】なんて一杯書き込みもあって。
暫くは事務所にもずっと電話がかかってきてましたし。
結局色々ダイエットを試しても効果が無かったんで、千早ちゃんはアイドルを引退。
最後に新曲をだして終わりと言うことになりました。
レコーディングは動くことの出来ない千早ちゃんのために千早ちゃんの家で行いました。
千早ちゃんの肌・・・凄く綺麗なんですよ。
もちもちっとしてて、白く透明なんです。
全身にお肉がついてて、まるでお餅のようで。
スリーサイズも3m近くまで大きくなって、体重は720kg・・・
『ここまで来るともい人じゃ無いわね』なんて苦笑いしてた千早ちゃんが忘れられませんでした。
この時収録したCD。凄い売れたんですよ!
収録の時のスタッフのみなさんも『今までで最高だ!』って言ってましたし。
『歌のために何でもするって言ったけど、まさかこれが代償だなんてね・・・』
千早ちゃんは歌手として生きることは出来ると思います。
姿を見せず、ただ歌を歌い、ただ太り続ける。
それが千早ちゃんが選択した過ちの代償だとすると、いくらなんでも酷いと思います。
これが彼女の騒動の顛末です。
なにがいけなかったのか。
どこを間違ったのか。
私には判りません。
千早ちゃんは歌に一生懸命でした。
でも、それっていけない事ですか?
・
・
・
監督「─はいカットォ!いやーみんなよかったよー!」
春香「お疲れ様でした!」
千早「お疲れ様でした」
P「二人ともお疲れ様。特に千早は大変だったろ?」
千早「いえ、貴重な体験でした。特殊メイクってなかなか面白いですね」
春香「でもこの映画・・・落下した偶像でしたっけ?これ大丈夫なんですか?」
千早「まぁ内容は人を選ぶわよね・・・」
P「こら二人とも!監督の前で」
春香「あ!す、すみません!」
監督「ああ、いいよいいよ〜それはこっちも判ってるし。そちらさんこそ大丈夫?
実名使っちゃってるけど・・・」
P「こちらも社長がOKだしてますからそこはまぁ・・・」
監督「高木君も無茶をするねぇ・・・まぁその分良い画が撮れたけどね」
春香「ところでこれってなんで千早ちゃんだったんですか?」
P「ああ、元々は貴音がやりたいって言ってたんだけど・・・」
監督「こう、如月君を見たときにピーン!って来たんだよ!
それで無理を言って如月君と変わって貰ったのさ」
P「貴音は残念がってたけどな・・・本当に良く判らない考え方してるよ・・・」
春香「はは・・・」
春香(ところで千早ちゃん?もしこの薬があったら・・・千早ちゃんは飲む?)
千早(・・・判らないわ。凄く魅力的な薬だし・・・でも・・・)
春香(でも?)
千早(飲まないと思うわ。だって私は自分の力で上を目指さしたいから)
春香(・・・ふふ。千早ちゃんらしいね)
P「ん?二人ともなに話してるんだ?」
春香「ちょっと秘密のお話をしてました!」
P「おいおい、なんだよそれ〜まぁいいか、撤収するぞ〜」
春香「はい!」
千早「はい」
千早「・・・でもバストアップは・・・くっ!」
#如月千早