P「291プロの一日
ある日の夜。
「じゃあ今日はお先に」
「はい、お疲れ様でした」
必要な資料を作り終えた俺は、小鳥さんに挨拶をして事務所を出た。
みんなのプロデュースも大分軌道に乗ってきた。
今回の仕事が成功すれば765プロを大々的にテレビで売り出せる。
可愛いみんなのことだ。このままSランクアイドルも夢じゃ無いはずだ!
「ここからが勝負だな・・・!」
俺は両頬をパンとはたいて、最寄り駅への道を急いだ。
これを逃すと帰宅時間が大分遅れてしまう。
明日も早いからなるべくきちんと寝たい。
・
・
・
【ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ・・・】
カチリと目覚まし時計を止め、簡単に朝食を作って食べる。
トーストと目玉焼き。それとコンビニで買った小さいサラダ。
これだけあれば十分だ。
「身だしなみは・・・良し。大丈夫だろ」
出社前に鏡で身だしなみを整えてから俺は自宅を出た。
そのまま電車に飛び乗り事務所へ向かう。
「・・・やっぱり事務所の近所に引っ越すか?」
満員電車で潰されながら俺は真剣に悩み始めた。
・
・
・
「よっと・・・まだエレベータ直らないのか・・・」
事務所への階段を上り、俺は事務所の扉に手をかけた。
「おはようございます!」
開けながら挨拶をする。
「おはようございますプロデューサーさん」
小鳥さんが俺に挨拶を返してくれ・・・ん?
「あら?どうかしましたか?」
「えっと・・・どちら様ですか?」
目の前には随分と太った女性が居た。
事務員の制服を着て小鳥さんの席に座っている。
「・・・?
朝から冗談ですか?私ですよ、音無小鳥です」
「・・・え?」
思わず言葉を失う。
いや、確かに見慣れたショートヘアと、唇の横のほくろや声なんかは小鳥さんと同じだ。
ただ、その体格が全然違う。
例えるなら軽自動車とトラック位違う。
「ちょっとプロデューサ殿、入り口で立ち止まられると邪魔なんですが」
「あ、すまん律・・・子?」
「なんですかじっと見つめて・・・私の顔に何か付いてますか?」
「強いて言うなら肉・・・?」
「はぁ?」
俺の目の前に立っている女性は確かに律子だ。
というか俺をプロデューサ殿なんて呼ぶ奴は律子以外居ない。
にしても・・・なんでこいつもこんな激太りしてるんだ?
「とりあえずどいて貰えますか?」
「あ、ああ・・・ってなんだその荷物」
「何って・・・何時もの食事じゃ無いですか」
律子はそういうと手に持ったビニール袋を床に置いた。
ドスンと非常に重そうな音がする。
失礼して中身を見させて貰うと、おにぎりにハンバーガーに
ビスケットタイプの栄養食やらなにやら・・・
それらが袋一杯に詰まっていた。
というかもしかして残りの袋も同じか?
8袋もあるぞ・・・?
「これ一日分か?」
「はぁ?一食分に決まってるじゃ無いですか。
今日は何か変ですね?」
俺は律子の言葉を聞いて目眩がしてきた・・・
俺の愛すべき765プロはどうなってしまったんだ・・・
・
・
・
「それじゃあ諸君!今日も一日張り切って頑張ってくれたまえ!」
社長が朝の挨拶を終えるとみんなそれぞれ自分の仕事をこなし始めた。
一方の俺は未だに事態が完全には飲み込めてなかった。
まず、ここは765プロじゃない。291プロという場所らしい。
そして、この世界でのアイドルというのは太った女性を指す言葉らしい。
通りで今日通勤の時太った人が多いと思ったよ・・・
こっちの価値観じゃ痩せてる人は醜いらしい。
「プロデューサーさん!おはようございます!」
「ああ、やよいか。おはよう」
「あれ?プロデューサーさんお疲れですか?なんか元気が無いようですけど・・・」
「あ、ああ。少し疲れててな・・・」
違うんだやよい。俺は君たちの変わりようが気になって仕方ないだけなんだ・・・
貧乏なはずのやよいはどうみてもアメリカの肥満児そのものだ。
いや、アメリカなんかだと貧乏な方が太っていると言うから寧ろ正しい状況なのか?
いかん・・・頭がおかしくなりそうだ・・・
「じゃあ私が元気をあげますね!」
そういって片手を元気よくあげるやよい。
それだけで体中の脂肪が揺れ動く。
「ハイタッチか?」
「はい!これで元気100倍ですよ!」
「そうだな・・・よし、こい!」
俺も片手を適当な高さにあげる。
この動作も慣れたものだ。
「じゃあいきますよーはいたーっち!いぇい!」
【バチィィイイイン!】
何時もの慣れた動作だが、衝撃は普段の数倍はあった。
・
・
・
「兄ちゃん!今日はどうするの?」
「真美か。今日の予定は・・・衣装合わせだな」
やよいとの会話の後、ソファに居た真美がこっちにやってきた。
こいつもそれはもう立派な体型だ。
やよいよりも少し大人っぽい風に感じるが・・・なんか胸って言うか脂肪なんだよなぁ・・・
とりあえずホワイトボードで予定を確認すると今度のライブの衣装合わせが入っている。
他に予定が被っているのは・・・千早か。
「おーい千早−!」
「なんですか?プロデューサー」
ドスドスと足音を立てて千早がこっちに来る。
その手には大量の栄養食が・・・それ一本で100キロカロリーあるんけど・・・
というかこの体型になっても胸が・・・
「・・・どこをみてるんですか?」
「いやなんでも無いぞ?
それよりも今日千早も衣装合わせだろ?車回すから真美と待っててくれ」
「はい」
返事を聞いた俺は車を取りに行く。
駐車場について俺は思わず一言呟いた。
「車までサイズアップしてやがる・・・」
・
・
・
千早と真美を送った後、俺はレッスンスタジオに来ていた。
ここで真と雪歩がダンスレッスンをしてるはずだ。
何時ものように様子を見て、レッスン後に事務所まで送らないとな。
「はい、そこで回って!」
「はい!」
「うぅ・・・は、はい!」
くるっと綺麗に回る真の後に、少しテンポ遅れで雪歩がターンする。
流石真だな・・・他の人よりやせ気味とは言えあの体型でもこれだけ機敏に動けるのか。
ただ・・・やっぱ王子様路線なのか?こっちでも男性は痩せてる方が受けてるみたいだけど・・・
こっちでは女の子っぽい感じで売り出すのも手か?
雪歩は・・・元々体力無いのもあるんだろうけど、大分肩で息してるな・・・
「はい、じゃあここで一回休憩にしましょう」
トレーナーさんの指示で二人が休憩に入る。
というかトレーナーさんも太ってるな・・・
「あれ?プロデューサーさん!」
「おう、様子見に来たぞ。ほら差し入れ」
俺に気付いた真が手招きをしている。
俺が手にしたスポーツ飲料入りのペットボトルを二人に手渡すと、
ごくごくとすごい勢いでラッパ飲みしていく二人。
うん、2Lのにしておいて良かった。
「ダンスの調子はどうだ?」
「真君は・・・その・・・大分出来てるんですけど・・・私が足を引っ張っちゃって・・・
ごめんなさい!やっぱり私穴掘って埋まってますぅ!!」
どこから取り出したのか分からないスコップを床に突き立てようとする雪歩。
慌てて真が取り押さえる。
俺が押さえにいって触ろう物なら気絶しかねんし・・・そもそも今の俺じゃあ多分押さえきれない。
ウエイト差すごそうだし・・・
「だ、大丈夫だ!雪歩は確かに少しとろいところが有るかもしれない!」
「やっぱり私なんか・・・」
「ちょ、ちょっとプロデューサ−!?」
俺の言葉にさらに落ち込む雪歩。
「最後まで聞け!
だがその分完成したときの雪歩の動きは丁寧で気持ちいい!
真が動ならお前のダンスは静なんだ!
だから今は出来なくてもお前なら出来る!」
「そ、そうだよ!雪歩ならきっと出来るって!」
「そ、そうかな・・・?」
「大丈夫!僕も保証するよ!」
俺達の説得に納得してくれたようで、その後のレッスンでの雪歩の表情は良いものだった。
・・・肉に埋もれてて分かり難かったけど。
・
・
・
「あ、プロデューサーさん。おやつ食べます?」
雪歩と真と一緒に事務所に帰ってきた俺を迎えたのは春香だった。
いつも通りリボンがよく似合っている。
・・・一瞬お相撲さんがよく背負ってるあの縄を思い出したのは内緒だ。
「お、旨そうだな。今日は何なんだ?」
「えへへ、今日はアップルパイですよ!」
そう言って俺の前に"丸々一個"アップルパイが出される。
「いや、俺はこんなにいらないぞ?」
「え?そうですか?
みんな二個三個食べてるからてっきりプロデューサーさんもそうかなって」
みんなという言葉で周りを見渡す。
ソファには竜宮小町のみんなが窮屈そうに腰掛けている。
というかそれ数人がけ用なんですけど・・・
「あら、真に雪歩、お帰り。あとあんたも」
「ああ、ただいま伊織」
「ただいまです。あ、私折角ですしお茶煎れますね」
「ただいまー!春香、僕にも頂戴」
「はいどうぞ」
上品にアップルパイを食べる伊織。
腕にはいつも通りのウサギのぬいぐるみが・・・ウサギすげぇ小さく見えるな・・・
幼少組は大人組に比べれば小さく見えるが実際は多分俺よりも体重あるんだよなこいつら・・・
「春香ちゃん、もう一顧頂けるかしら?」
「あ、ごめんなさい。これ以上は・・・」
「あら、残念ね〜」
「あ、じゃあ俺の分食べて良いですよ」
俺はそういってアップルパイをあずささんに渡す。
「あら、いいんですか?」
「ええ。そんなに今お腹も空いてませんし」
「では遠慮無く〜」
アップルパイを取るために中腰になるあずささん。
目の前には超弩級の胸が・・・というかでかすぎて先の方がテーブルについてないか・・・?
でもそれ以外の部分も超弩級なんだよな・・・
お腹なんか座ってると太ももを覆い隠しそうな程だぞ・・・
「えーあずさお姉ちゃんずるいー!亜美も欲しいYO−!」
亜美があずささんのアップルパイを恨めしそうな目で見てる。
・・・もしかしなくても真美より太くないか?
やっぱり売れてる方が太いのか。
「あらあら。じゃあ半分こしましょうか?」
「えっ、本当!?やったー!」
うん、ここだけ見れば微笑ましいな。
問題はこいつらがすでにアップルパイを2、3ホール食ってることだ。
・・・考えただけでも胃に来るな。
「ふぅああああ・・・おはようなのー」
奥で事務所の椅子を並べて寝ていた美希が起きたようだ。
そのままドスドスと歩くとビニール袋の中のおにぎりを取り出してひたすら食べ始める。
あずささん程じゃないけど、美希もでかいな・・・色々と。
なんていうか、洋なし体型って奴なんだろうなぁ。
胸とお尻がどーんとでかい。
「あ、ハニーなの」
「おう、おはよう。美希はこの後レコーディングだぞ」
「あ、忘れてたの。だったらもう少し早く起きれば良かったかな?」
み、美希から早く起きれば良かったなんて台詞を聞くとは面輪なったぞ・・・
「そうすればもっとおにぎりが食べられたのに・・・」
あ、これただ単に食欲と睡眠欲の順位が入れ替わっただけだわ。
・
・
・
美希をスタジオに送り届けた後、俺は響と貴音を迎えに行くべくテレビ局に向かった。
深夜番組の収録で、動物に関する様々な事を紹介していく番組だ。
動物好きな響と、何かあったときにフォロー出来るしボケ(天然の物だが・・・)も出来る
貴音のコンビは割と人気らしい。
「それじゃあまた来週だぞー!」
「それではごきげんよう」
「ハイカットー!これで終わりです!」
スタジオに入ると丁度収録が終わったところだったようだ。
「お、プロデューサー!迎えに来てくれたのか?」
「ああ、二人ともお疲れ様」
「ふっふっふ。完璧な自分には造作も無いことだぞ!」
「おや、そういう割にはいくつか失敗をしていたような・・・」
「うがー!貴音−!そういうのはばらさなくて良いんだぞ!」
「ふふふ・・・貴方様もお疲れ様です」
この二人の中はいつも通りのようだ。
体型は今までの3倍位有りそうに見えるけど。
響の方が貴音よりは細く見える。真と同じかそれよりちょっと太い感じだ。
貴音は・・・恐らくあずささんと同じでかなりの太さがあるぞ・・・横綱級だ。
「まぁ人間少しぐらい欠点がある方が可愛いぞ?」
「そ、そうかな?」
「ええ、その方が親近感が沸くものですよ」
「そ、そうだな!アイドルだから愛着が沸く方が良いよな!」
「まぁだからってNG出して良いわけじゃ無いけどな」
「ですね。今日の失敗は後で反省しないといけませんよ?」
「二人は自分を慰めてるのか説教してるのかどっちなんだ!?」
からかってるんだよとは口が裂けても言えないな・・・
太い丸太の様な腕を振り回して俺をポコポコと殴る響。
ポコポコと言ったが、実際はドコドコって感じで正直めっちゃ痛い。
「いたたた!響やめろって!貴音も笑ってないで止めてくれ!」
「はいはい。ほら響、そろそろ帰りますよ」
貴音が言うと渋々といった感じで響は俺を殴るのをやめた。
というか貴音もからかっていたのにそっちには何も無しか・・・?
「全く・・・それじゃあ事務所に帰るぞ?」
「はい」
「わかったぞ!」
俺は二人を連れてテレビ局を後にした。
途中貴音がラーメンを食べたいとごねて二十郎をハシゴする羽目になった。
しかも俺の金で・・・給料吹っ飛んだぞ・・・
・
・
・
「ふぅ・・・」
俺は一日を終え、細々した資料を作りながらため息をついた。
朝こそ面食らったが、彼女たちと接して分かった。
「いつもと何にも変わらないじゃ無いか」
中身は全く変わってなかった。
そりゃ体重を増やす方がいいみたいなことにはなってたけど、みんなはみんなだった。
俺が愛した765プロのアイドル達だった。
なら俺のやることは変わらない。
「彼女たちをトップアイドルに導く」
それだけだ。
それが出来るのは俺で、俺がやらなきゃ誰にも出来ない。
・・・と思う。
なんにしてもいつも通り全力で彼女達と向き合うだけだ。
「・・・よっし!」
俺は両手で顔をはたくとラストスパートをかけた。
・
・
・
そして数ヶ月後。
俺達はついに武道館でライブを開いていた。
それもSランクに上がった記念のライブだ。
俺もこれ以上無いぐらいに足が震えている・・・
せめて律子が居れば・・・他の仕事の打ち合わせがこんな時に限って被るなんてな。
「みんな、大丈夫か?」
それを隠しながらみんなに声をかける。
「はい!大丈夫です!なんてったって武道館ですよ武道館!気合い入りまくりですよ!」
「私はいつも通り歌うだけですから・・・
でも・・・そうですね。みんなで楽しみたいとも思ってます」
「うっうー!頑張って踊っちゃいますよ−!
長助達に格好いいところみせたいですから!」
「今すぐに穴の中に埋まりたい気分ですけど・・・
ここまで来たからにはみんなの足を引っ張らないように頑張りたいです!」
「雪歩なら大丈夫。心配いらないよ。
僕も調子は絶好調ですよ!」
「ふっふっふ・・・このスーパーアイドルたる伊織ちゃんに任せなさい。
みんなをあっと言わせるライブをしてみせるわよ」
「兄ちゃんがここまで引っ張ってきてくれたしね。
ここでびしっと決めちゃうYO!」
「できれば竜宮小町でここに来たかったけど、まずは目の前のライブの成功!
次は竜宮小町で来るYO!」
「そうねぇ・・・でも竜宮小町だってすぐに来られるわ。
なんてったって私たちですものね」
「美希もそう思うよ。律子・・・さんも頑張ってるし、
きっと次は竜宮小町メインでキラキラ出来ると思うな。
ただ、今回は291プロ全体でキラキラしよ!」
「まぁ自分たちは完璧だからな!
ここまで来たらみんなでなんだって出来るぞ!」
「ですが楽観は出来ませんよ?本番はこれからなんですから。
とはいえ・・・まずは楽しむことですね。失敗を気にしては良い動きは出来ませんから」
みんな各々意気込みを言ってくれる。
その度にみんなの体がぶるぶると揺れる。
まぁ呼吸だけで体・・・というか脂肪が揺れるしな。
「・・・俺もまだまだだな。
本当は俺がみんなを元気づけなきゃいけないのに、俺の方が元気づけられたみたいだ」
「良いんですよ!持ちつ持たれつって奴です!」
「そーよ!それにあんたの支えなんかじゃぽっきり折れちゃいそうだし」
あははと舞台袖が笑いに包まれる。
確かに今の彼女達を持とう物ならきっと背骨が折れるだろう。
なにせウチの中じゃ小柄なはずの伊織ややよいですら230kg越えているんだ。
あずささんや貴音なら何キロ行くんだか・・・300kg以上あるよなこいつら・・・
この前あずささんのグラビア撮ったら腹がまるでエプロンみたいにだらんと垂れてて、
ちょっとでも屈んだら床に付きそうだったしなぁ。
貴音は貴音で尻がでかすぎて4人掛けのソファでも収まらなくなってきてるし。
千早や春香辺りでも太ももが太すぎて片方で俺の腰回りよりもきっと3周りは太いよな・・・
細めの真や響でもこの前はかったら270kg越えてたし、
最近事務所の扉をくぐるのも一苦労だからな。
アイドルじゃ無い律子もいつの間にかみんなと同じぐらい太ってるし・・・
一番細いのが小鳥さんなんだが、小鳥さんでも多分200越えてるよな・・・
こんな体で踊れるんだから本当にアイドルっていうのはすごい。
本当にみんなの努力のたまものだ。
「そうかもな!じゃあそろそろ出番だぞ!」
「はい!あ、そうだプロデューサーさん!あれやりましょうよ!
手を合わせて一斉にオーってあげる奴!」
「お、いいな!じゃあみんな手を合わせて・・・」
「プロデューサーさんは一番上でお願いしますね!」
「はいはい・・・」
俺は苦笑いしながら円陣の中に入っていく。
非常に肉々しい空間のなかで一人一人手を重ねていく。
最後に俺が手を置く。
柔らかな脂肪の感触が手のひらに伝わる。
「それじゃあいくぞ・・・頑張るぞ!!」
「「「「「「「「「「「「オーッッ!!!」」」」」」」」」」」」
みんなが一人ずつドスンドスンと盛大な足音を立ててステージに上がっていく。
ステージ袖で俺はそれをいつまでも見送っていた。
そしてステージが始まる。
暴れる肉。
弾ける汗。
俺はその光景を美しいと思っていた。
・
・
・
【ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ・・・】
カチリと目覚まし時計を止める。
俺はゆっくりと体を起こして背伸びをする。
なんだか変な・・・でも良い夢を見ていた気がする。
内容を思い出そうと少し頑張ってみたが駄目だった。
「・・・夢ってすぐ忘れるよなぁ」
そんなことを呟きながら俺は朝食を作りはじめた。
トーストと目玉焼き。それとコンビニで買った小さいサラダ。
これだけあれば十分だ。
「身だしなみは・・・良し。大丈夫だろ」
出社前に鏡で身だしなみを整えてから俺は自宅を出た。
そのまま電車に飛び乗り事務所へ向かう。
「・・・やっぱり事務所の近所に引っ越すか?」
満員電車で潰されながら俺は真剣に悩み始めた。
・
・
・
「よっと・・・まだエレベータ直らないのか・・・」
事務所への階段を上り、俺は事務所の扉に手をかけた。
「おはようございます!」
開けながら挨拶をする。
「おはようございますプロデューサーさん」
小鳥さんが俺に挨拶を返してくれる。
いつも通りの笑顔で。
「律子はまだですか?」
「はい、美希ちゃん用のおにぎりを買ってから来るとかで」
「ああ・・・あれ経費で落ちませんかね?貴音の食費と」
「社長に言ってください」
冷たい。
俺は自分の席に着くと、今日の予定を確認しはじめた。
Sランクまでまだまだ。
頑張ってみんなを導いていかないとな!
天海春香
身長:158cm
体重:46kg → 185kg → 294kg
B:83cm → 134cm → 167cm
W:56cm → 156cm → 198cm
H:82cm → 149cm → 187cm
如月千早
身長:162cm
体重:41kg → 174kg → 286kg
B:72cm → 127cm → 149cm
W:55cm → 151cm → 195cm
H:78cm → 146cm → 191cm
萩原雪歩
身長:155cm
体重:42kg → 184kg → 289kg
B:81cm → 136cm → 172cm
W:56cm → 150cm → 187cm
H:81cm → 153cm → 192cm
高槻やよい
身長:145cm
体重:37kg → 179kg → 247kg
B:74cm → 129cm → 148cm
W:54cm → 154cm → 181cm
H:78cm → 147cm → 174cm
秋月律子
身長:156cm
体重:43kg → 185kg → 270kg
B:85cm → 139cm → 164cm
W:57cm → 154cm → 186cm
H:85cm → 149cm → 181cm
三浦あずさ
身長:168cm
体重:48kg → 218kg → 355kg
B:91cm → 151cm → 189cm
W:59cm → 169cm → 214cm
H:86cm → 159cm → 207cm
水瀬伊織
身長:153cm
体重:40kg → 195kg → 255kg
B:77cm → 141cm → 151cm
W:54cm → 160cm → 182cm
H:79cm → 151cm → 179cm
菊地真
身長:159cm
体重:44kg → 171kg → 274kg
B:81cm → 126cm → 158cm
W:56cm → 145cm → 189cm
H:81cm → 149cm → 184cm
双海亜美
身長:158cm
体重:42kg → 195kg → 279kg
B:78cm → 143cm → 156cm
W:55cm → 161cm → 190cm
H:77cm → 149cm → 188cm
双海真美
身長:158cm
体重:42kg → 181kg → 279kg
B:78cm → 129cm → 156cm
W:55cm → 157cm → 190cm
H:77cm → 146cm → 188cm
星井美希
身長:161cm
体重:45kg → 181kg → 298kg
B:86cm → 137cm → 162cm
W:55cm → 153cm → 196cm
H:83cm → 147cm → 194cm
我那覇響
身長:152cm
体重:41kg → 175kg → 276kg
B:83cm → 134cm → 159cm
W:56cm → 147cm → 191cm
H:80cm → 148cm → 183cm
四条貴音
身長:169cm
体重:49kg → 219kg → 380kg
B:90cm → 149cm → 203cm
W:62cm → 167cm → 218cm
H:92cm → 163cm → 214cm
「あずささん、はいこれ差し入れです。
こっちがファンからので、こっちが社長からのです」
俺は山のように積まれた料理を指さしながらあずささんに説明する。
目の前では肉の塊が動いている。
一面肌色の山。
上の方に特徴的なアホ毛と青く長い髪。
そう、それが今のあずささんだ。
「ふぅふぅ・・・ああ、ありがとうございます。
あの〜・・・すいませんが口まで運んで貰えます?
最近・・・ふひぃ・・・腕を動かすのも大変なんで・・・」
「勿論構いませんよ。貴音もそうですからね。慣れたモンです!」
俺はそう答えながら適当に選んだ料理を持ってあずささんのそばへ寄る。
近づけば近づくほどあずささんがいかにでかいかが分かる。
「はい、口開けて下さい」
「あ〜〜〜ん・・・」
大きく開いた口に適当なサイズにちぎったケーキを入れる。
もぐもぐと咀嚼する音がして、口がまた開く。
「しかし育ちましたね・・・体も、アイドルとしても」
あのSランク記念ライブの後、竜宮小町も無事にSランク到達をした。
今までは挑戦だったが、これからは防衛になる。
となれば今まで以上に俺達は成長しないといけなかった。
アイドルとして色々な面で。
その結果が今のあずささんだ。
体重は確か800kgを越えていたと思う。貴音もそんな感じだ。
他のアイドル達も軽い幼少組が600後半、真・響の運動系が700前半、後は700の後半までだ。
800越えは貴音とあずささんの二人だけだし。
あの辺はまだ何とか腕が動かせるらしくて一人でも何とか食事が出来る。
ただ、この二人は流石に無理だった。
「ふふ・・・まだまだアイドルとして育ちますよ〜」
「ええ、頑張りましょう。291プロのみんなで」
あずささんの口を拭きながら、俺はあずささんと笑いあった。