貴音「とっぷしーくれっと」
「もう一杯お願いします」
俺の目の前で塔が築き上げられていく。
ラーメンの丼で作られた塔だ。
そして新しい獲物が彼女の目の前に運ばれて来た・・・
だがこれもそんなには持たないだろうな・・・
「貴音、そろそろ」
「ですが貴方様、私はまだ満足を・・・」
ドンだけ食う気だよ・・・
「いや、お店の人が泣いてる」
俺はカウンターの向こうを指さす。
店主と思わしき男の人が頑張って上を向いて涙が流れないようにしてる。立派だ。
因みにここの支払いは俺持ちなので俺も泣きたい。
「そうですか・・・仕方有りませんね。御馳走様でしたでした。
大変美味でしたよ」
「毎度・・・ありがとうございます・・・」
丁寧に手を合わせてご馳走様をする貴音。
俺は店から請求書を受け取り、請求額を支払う。・・・これ経費にならないかなぁ。
「では貴方様、行きましょうか」
「ああ・・・」
また来ますと呟いて店を出て行く貴音。
俺もそれに続く。
後ろでもう勘弁してくれとか、今日は閉店にするしかないとか色々聞こえた気がするが気のせいだ。
多分、きっと。
・・・お店の方ごめんなさい。
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「では私はお先に」
「はい、お疲れ様貴音ちゃん」
事務所で仕事をしていたら後ろの方で会話が聞こえた。
どうやら貴音が帰宅するらしい。
というかもうそんな時間か・・・貴音を見送りがてら一息入れるか。
「貴方様もお疲れ様です」
「おう、お疲れ。気をつけて帰れよ」
俺の返答に対してにこりと微笑みながら貴音は事務所から出て行った。
「そーいや貴音って普段何してるんですかね?」
貴音が出て行って数分後、コーヒーを飲みながら何となく小鳥さんに聞いてみた。
「さぁ・・・どうなんでしょうね?
普段何してるかまでは私もちょっと・・・」
「そういう話題って女のこの間で出ないんですか?」
「出ますけど貴音ちゃんはいつもトップシークレットと・・・
そこまで積極的に聞く話題でも無いですし」
「そりゃそうだ・・・まぁこれだけは分かりますけど」
「なんです?」
「多分ラーメンの食い歩きはしてる」
「ああ・・・」
何となく納得した顔をして、小鳥さんは頷いていた。
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「ふぅ・・・終電ぎりぎりだな・・・」
事務所の最寄り駅に行く途中。
腕時計を見ながら俺は駆け足をしていた。
資料作りに少し手こずって、気付けばこんな時間だ。
これを逃すと明日の朝まで電車は無い。
事務所はすでに小鳥さんが鍵を閉めてしまった。
「・・・小鳥さんこの近くに引っ越したって言ってたな・・・俺もそうするかな?」
そうすれば朝も普段よりもう少し遅くまで寝てられるし・・・
でも今の所家賃安いからなぁ・・・
「にしても駅がやっぱり遠い・・・ん?」
少し遠くに気になる人影が見えた。
あの銀色の長髪・・・間違いない。
「貴音・・・?なんだってこんな時間にこんな場所に?」
貴音が帰ったのは何時間も前だ。
どこかで時間をつぶしていた?
だとしてもこんな深夜まで?
「・・・追いかけるか」
貴音に限っては無いと思うが、道に迷っていたとかで遅れたならいい。
食べ歩きで気付いたらこの時間とかはありそうだし。
だがもしいかがわしい事をしていたとしたら・・・
俺は週刊誌に変な記事をすっぱ抜かれる場面を想像して背中に冷たい物が走った。
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「・・・こんな所に何の用なんだ?」
貴音が向かっていったのは古いアパート。
築何年・・・いや何十年だろうなこれは。
その中の一室に貴音は入っていく。
「・・・悪いが少しのぞかせて貰うぞ、貴音」
もしここが貴音の住んでいる部屋なら何の問題も無い。
だが、何か悪いことをしているならまずは現場を押さえないと・・・
俺は携帯をカメラモードにしてからそっと扉に近づいた。
そのままゆっくりと扉を開ける。
幸い鍵は掛かってなかった。
部屋の中を覗くと、部屋の中央に貴音がこっちに背中を向けて立っていた。
ただ・・・その格好は変わっていた。
テカテカとしたゴム独特の質感・・・ラバースーツって奴だ。
ぴっちりと張り付いて貴音のプロポーション抜群の体を包み込んでいる。
カーテンは開かれていて、暗い部屋の中で月明かりの中に浮かび上がっている。
なんていうか・・・とてもエロい。
「・・・ここに住んでいるのか?」
アレがパジャマだとしたら・・・変わっているがまぁ問題は無い。
貴音は一人だし、もしかしたらこう・・・
“そういう”相手が居るかもと思っていたがそういった感じではないし。
こう、悪いお薬とかだったら洒落にならないし。
とはいえまだ安心は出来ない。
これからという事は十分に考えられる。
なら・・・
「もう少し見張らせて貰うぞ」
俺はその場にもう少し留まる事にした。
そう思って体勢を変えた時だった。
「ん・・・あん・・・うぁあぁああああ・・・」
部屋の中からうめき声のような物が聞こえた。
勿論貴音の声だ。
貴音を見るとその場で自分の体を抱いて震えている。
俺が慌てて部屋に突入しようと思ったときだ。
俺は気付いたのだ。貴音の声はうめき声なんかじゃ無い。
「んぁあああああ・・・ああああああああんんんんんんんんんんんんん♥!!!」
嬌声だったんだ。
俺が驚いてる間に、変化が始まった。
貴音の体が膨らみ始めたんだ。
風船に空気をを入れるような感じで。
ぶくぶくと膨らんでいく。
ラバースーツのせいで膨らんでいく様子が手に取るように分かる。
その間にも貴音の嬌声は止まらない。
「ああぁん♥イイ・・・気持ちいいです・・・♥
この締め付けられる感覚が・・・あああああああぁぁぁぁぁぁ・・・♥」
気付けば貴音の体は一変していた。
まるで俺二人分はありそうな横幅。
丸々としている尻。
こっちからでも見える腹。
その上に段のようになってる胸。
腕はまるで特大のハムみたいで、ぴっちりと包まれてる。
顔はこっちからじゃ見えないけど、多分頬が肉で丸くなっているだろうなぁ。
これだけ太ったにも関わらず、未だに貴音の体は大きくなっていく。
そして・・・ついに・・・
【ビリッ・・・】
嫌な音が俺の耳にも届いた。
よく見れば腹の辺りに小さな亀裂が見える。
そこから貴音の白い肌が覗いている。
【ビリッ・・・】
新たな亀裂が入る。
こうなればもう止まらない。
【ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッ!!!】
ラバースーツがどんどんと破けていく。
どんどん露わになる貴音の体。
いつの間にか貴音の体は一糸纏わぬ状態になっていた。
さっきより一回り・・・いや二回りはでかくなっている。
まるで横綱のような体・・・
ドンと突き出た腹。
臨月の妊婦よりもでかいんじゃ無いか?
その上に乗っかっている胸は片方だけで頭ほど有りそうだ。
尻はきっと椅子を三つは横に並べないとはみ出しそうだ。
そんな体を支える足は丸太を通り越してドラム缶だ。
腕は普段の貴音の腰程は有りそうだ。
首はもう繋がっていて、うなじの辺りに肉の段が出来ている。
貴音はその場に座り込んで荒い息をしている。
火照って赤く染まった肌が艶めかしい・・・
足下にあるシミはきっと汗だけじゃ無いだろうな。
「はぁはぁ・・・ふふっ・・・ようやくこれも破けましたね・・・
ああ、次のサイズを破くのが待ち遠しい・・・♥」
「貴音・・・」
俺はひょっとしなくてもとんでもない物を見てしまったんだろう。
この録画した映像は消そう。後は俺が今晩のことを忘れればそれでいい。
そうなればこの場を立ち去ろう・・・
【カツン・・・】
そう思って立ち上がった拍子に小石を蹴ってしまった。
普段なら大した事じゃ無い。
だが今は深夜。音は静寂を破るには十分過ぎた。
「誰です!?」
部屋の中の貴音がこっちに振り返る。
顔の肉がそれだけでブルンと揺れる。
俺はその場を逃げだそうとして転んでしまった。
【ガチャリ】
扉が開く。
恐る恐る貴音の方を見る。
貴音が俺を見下ろしていた。
「貴方様・・・」
「お、俺はその・・・こんな時間に貴音が出歩いているのを見て・・・心配になったから・・・」
「そうですか・・・見たんですね」
「その・・・済まなかった・・・」
「貴方様」
がしっと両肩を貴音に捕まれる。
そのまますごい力で引き寄せられる。
「た、貴音?」
「見られたからには貴方様といえど・・・」
「な、何をする気だ!?」
「大丈夫です。少し寝て貰うだけですから」
「お、おい!何をするんだ!あ、謝る!覗いた事は謝るし今晩のことも忘れる!ごめん!悪かった!
だから──」
俺が言い切る前に俺の意識は途絶えた。
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「・・・っは!」
俺は事務所のソファで目を覚ました。
確か・・・そうだ、資料制作で遅くなって終電逃したからここに泊まったんだっけ。
「うへ・・・汗だらけだ」
なんか変な夢を見た気がする。
そのせいか体中汗だらけだ。
「やれやれ・・・シャワーでも浴びるか」
俺は近くの銭湯に行こうとソファから立ち上がって財布を探しはじめた。
「おはようございます、貴方様」
「ん・・・っ!た、貴音?」
「ええ、私です。おはようございます」
「あ、ああ。おはよう。随分早いな」
貴音がいつの間にか事務所に来ていた。
今の時間は大体朝の6時。
普段からしても早い・・・
「少し気分を変えてみまして。
偶には早めに来るのも良いものです」
「そ、そうか・・・」
なんでだ・・・なんで貴音を見るとこんなにも恐怖感を感じるんだ・・・
「貴方様?どうかなさいました?」
「あ、いや!なんでもないぞ。
寝起きで少しボーッとしてただけだ」
「そうでしたか。それよりも貴方様、朝食の方は?」
「いや、まだだな」
「ではどこか一緒に行きませんか?」
「・・・まぁいいか。正し今日はおごらないぞ?」
「ふふっ・・・貴方様はいけずですね」
「そう毎日奢ってられるか」
俺は自分の机の上から財布を探し出すと、スーツのポケットに入れた。
そのまま事務所を貴音と一緒に出る。
飯を食べたらシャワーを浴びに行くか。
「ふふっ・・・大丈夫のようですね」
「ん?何か言ったか?」
「いえ何も。それよりも早く行きましょう」
「こら引っ張るなって!」
俺は貴音に引っ張られながら朝日に照らされた道を歩き始めた。
#四条貴音