響く音の中で
「はいさい!おはようだぞみんな!」
事務所に元気の良い声が響く。
響の声だ。
「おはよう響、お前にプレゼントが届いてるぞ?」
「自分にか?」
俺は響に挨拶をして、今朝届いた物を響に渡す。
中身は手紙と犬用のドッグフードが二つ。ただし両方外国産のだが。
「お、手紙もあるのか。
えっと何々・・・この前のラジオでいぬ美ちゃんが最近元気が無いことを聞きました。
私も犬を飼っているので辛さがよく分かります。
もしよければ、家で使っている医療用ドッグフードを送るので食べさせてあげて下さい・・・か。
なんか嬉しいな・・・」
「中身をさっき調べさせて貰ったが、特に異常は無し。
問題なく食べさせて良いぞ」
「本当か!?」
しみじみとしている響にそういうと、響は嬉しそうに目をキラキラさせていた。
「ああ、だけど今は仕事だ。今日はグラビアの撮影だぞ?」
「分かってるぞ!今日も頑張るからなー!」
元気よく挨拶する響を横目に、俺は車の鍵を取りに行くのだった。
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「最近いぬ美の調子はどうだ?」
「良い感じだぞ!食欲も戻ってきてるし顔色も良くなったぞ」
プレゼントを貰ってから数日後、俺はいぬ美の様子を響に聞いていた。
一応針が入っていたり、何か加工された後が無いかとか色々調べてはあるが、
それでも心配ではある。
だが、話を聞く限りは問題なさそうだ。
「それは良かったな。今日はラジオの収録だし、報告してみるか?」
「良いのか?」
「その位は問題ないだろ。ただし発言には気をつけるように」
「分かってるってば!プロデューサーは自分の事をもっと信頼するべきだと思うぞ」
膨れる響は鞄からパンを取り出して食べ始めた。
「ん?珍しいな、朝食でも抜いたのか?」
「いやー最近忙しいからかお腹が良く減るんだぞ・・・
自分運動系の仕事も多いからかな?」
「あー・・・まぁお前と真はそっち系だからなー
少し仕事減らすか?」
そう聞いてみると、響は良い笑顔で答えた。
「問題無いぞ!自分は完璧だからな!」
「そうだな、この前ハム蔵のひまわりの種を食べて逃げられる位完璧だな」
「うっ・・・」
「それに今もパンのカスがこぼれてるが完璧だもんな」
「うがー!プロデューサーがいじめるぞ−!」
俺は響をからかいながら、スタジオへと車を走らせるのだった。
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ある日、俺は事務所で菓子パンをかじる響を発見した。
時間を見ると、昼飯には少し遅い時間だ。
「昼飯食い損ねたか?」
「ん・・・あ、プロデューサーか。ちょっとしたおやつだぞ」
「おやつって・・・まぁいいけど。あんまり食うと夕食食えなくなるぞ?」
「大丈夫だぞ、最近お腹減って仕方ないからなー」
それだけ言うと、響はまたパンを食い始めた。
しかも食べ終わったと思ったら二個目の袋を開けているのだ。
「・・・やっぱり仕事減らすか?」
「だから大丈夫だって!プロデューサーはどーんと構えていればいいんだぞ?」
俺の心配をよそに、響は問題無いと笑う。
「そこまで言うなら良いが・・・無理はするなよ?」
「勿論だぞー」
俺は幸せそうにパンを食べる響を横目に、自分の机に向かうのだった。
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「・・・で。響、これはどういうことだ?」
それから数日後、俺は事務所で響を問いただしていた。
今日は新しく届いた衣装を合わせていたのだが・・・
「太って腰の部分が入らないってどうするんだ?」
「うぅ・・・すまないぞ・・・」
ここ最近の暴食が祟ったのか、響の衣装だけが入らなかったのだ。
いや、正確には入るのだが、腰の部分に余分な肉が乗っかっているのだ。
響はその方向性から腰の部分が丸見えになるタイプの衣装デザインになっている。
なので、随分となだらかになった今の響のウエストが余計目立つわけだ。
「最近よく食べるなとは思っていたが・・・これからは少し食べる量を減らすこと!」
「・・・分かったぞ」
シュンと落ち込む響。
だがこれもプロデューサーの仕事だからな・・・きちんとしからなければ。
「貴音はなんであんなに食べているのに太らないんだ・・・?」
「ふぁい?」
響がぼつりと呟いた言葉に、近くでカップ麺を啜っていた貴音が反応する。
「・・・それは俺もわからん」
「うぅ・・・ずるいぞぉ・・・」
響が恨めしそうな声を上げるが、あれは別格だと思うぞ。
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「なぁ・・・俺はダイエットするように言ったよな?」
「うぅ・・・自分も頑張っているんだぞ・・・?」
響に痩せるように言ってから二週間。
俺は再び響を叱っていた。
なぜなら・・・
「ならなんで二週間前よりさらに太っているんだよ!?」
「そんなの自分が聞きたいぐらいだぞ!!」
「逆ギレか!?」
うがーと叫んでいる響を、俺は改めて観察する。
健康的なスタイルが自慢だった響は、今やただのぽっちゃりだ。
まぁ、ある意味健康的ではあるんだが・・・
胸は大きくなり、おそらくあずささんを超しただろう。
だが、ウエスト部分が丸くなりすぎてそれどころでは無い。
前にぷにょっと出てきている腹は、確実に摘むどころか掴めそうな脂肪が付いている。
尻はホットパンツが食い込むもの凄く食い込んでいる。
一応腰のボタンがしまっているからサイズは上げたんだろうが、それでも間に合ってない。
太ももは明らかに男の俺と同じぐらい有りそうだ。
顔は幸いあまり肉が付いてないが、そういう問題では無いだろうな。
「全く・・・今後暫くは食事をきちんとメモして俺に渡すこと!出来れば写真とかも撮る!
間食を全くするなとは言わないが、それも全部書くこと!
それを見て俺達で食事制限とかを判断するから」
「分かったぞ・・・でも自分最近はあんまり食べてないぞ?」
「自分ではそう思っても他人から見たらかなり食べてるって事もあるからな。
その辺もきちんと判断してやる。とりあえず暫くは顔を出す仕事は外して
トレーニングばかりだからな」
「うぅ・・・了解だぞ・・・」
俺は響から離れて机に向かう。
これは・・・仕事の調整が大変だな・・・
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それからさらに二週間。
俺は響の家に来ていた。
「・・・」
「・・・」
響との間に重い空気が流れる。
周りの動物たちも、俺と響の方を見て動かない。
正直に言うと、響は全然痩せてなかった。
それどころかかなり増量している。
もうぽっちゃりを通り越してデブど真ん中と言った感じだ。
「・・・プロデューサー・・・自分もしかしてクビなのか・・・?」
「・・・どうしてそう思うんだ?」
「だって全然痩せないし・・・もうこんな体じゃアイドルなんて名乗れないぞ・・・」
そう言って自分の体をいじる響。
特大になった胸。おそらく1mを突破しているだろう。
腹はそんな胸を下からドデンと飛び出して支えている。
服はどこで買ったか知らないが、かなりのサイズのジャージだ。
だが、そのジャージすらきちんとファスナーが閉まってない。
その上、尻部分がぴっちりと張り付き、今にも破けそうだ。
当然太もももかなり太く、もう丸太だ。
腕も太くなり、指先の肉々さがどれだけ肉が付いたかを物語っている。
あごにもたっぷりと肉が付き、まん丸なその顔は小柄な身長と合わせてまるで子供の様だ。
頬もむっちりとしていて、ちょっと引っ張りたくなる。
「・・・今日はそういう用件で来たわけじゃ無い」
「嘘だぞ!自分はもう駄目なんだ!!」
「違う!」
暴れる響を頑張って押さえる。
が、重量差か全然押さえられない。
「いぬ美!手伝ってくれ!!」
「ちょ!いぬ美を呼ぶのは・・・うぎゃああ!」
俺がいぬ美を呼ぶと、いぬ美が響に飛びかかって床に押しつける。
俺も押さえていたとはいえ、いぬ美どんだけ強いんだ・・・
「全く・・・違うと言っているだろう。
確かに今日来たのは響の今後についてだが、クビという話じゃ無い!」
「うぅ・・・じゃあなんなんだ・・・」
ようやく大人しくなった響の近くに座り、俺は響に話しかける。
「前にお前の食生活のメモ書いて貰ったよな?
あれを読んだ限りだとお前がそこまで太るのはおかしいという結論になった。
勿論響が黙って間食とかをしていない限りだがな」
「そんなことはしてないぞ!!」
「俺もそう思っている。だからな響・・・一回病院に行かないか?」
「病院・・・?」
「明らかにこれは異常なんだ。
なんかの病気の可能性がある。そうなった場合は俺らじゃどうしようも無いんだ。
俺はここで響を・・・765プロの仲間を失いたくは無い。
だから、一度病院に行こう」
俺の説得を聞いて、響は暫く黙っていたが、ようやく口を開いてくれた。
「・・・分かった。検査受けるぞ」
「そうか。じゃあ、行こう」
俺は響の手を取って立ち上がらせる。
「え?今からか?」
「善は急げだ」
ちょっと!と騒ぐ響を余所に、俺は響を車に押し込めると病院まで連れて行ったのだった。
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結果から話すと、響の体内からとある薬品の反応が出た。
アメリカ等で畜産に使う薬品なのだが、どうやらこの前響に送られてきた
ドッグフードにも含まれている物らしい。
なぜそんな物が出るのかと言うと、響のいつものつまみ食いである。
一応人体には余り影響の無い物なのだが、それでも多少は出る。
今回の薬品の効果は、『食欲促進』と、『消化促進』だ。
つまり、ここ最近の響の異常な食欲も、この突然の肥満化も、この薬品のせいだと言うことである。
どうやら響の奴、ちょくちょくドッグフードをつまんでいたらしく、
薬品がかなりの量残留しているらしい。
なので、薬品が完全に抜けるまではこの調子が続くのだそうだ。
まぁ死ぬような物では無いので一安心ではある。
あるのだが・・・
「うぎゃあ!やっぱり痩せてないぞ!!」
「だろうな・・・」
現在進行形で響の体重増加は続いているのだ。
薬品が抜けるのが暫くかかると言うことは、当然痩せないと言うことでもあるのだ。
現在の響の体重は141kgを記録。
体型もそれに併せて悲惨な状況になっている。
類を見ないほど肥大化した胸は、今にも3Lの服を弾き飛ばさんとしている。
その下の腹は、臨月の妊婦も真っ青などでかい腹だ。
まるまるとしていて、掴めば電話帳クラスの脂肪がもにゅりと掴める。
尻は人一人入れそうなほど横に広がり、今も椅子を二個並べないとはみ出る。
太ももは以前の響の腰異常に太くなって、そのせいで互いに干渉するようになった。
腕は動くたびにぶるんぶるんと豪快に揺れて、二の腕なんか目も当てられない。
首は脂肪に埋まりそうで、顎との境目が消えかかっている。
頬はハム蔵の頬袋の様に広がって、なんというかアイドルとか以前に女としてどうかと思う。
「うぅ・・・いつになったら薬の効果がなくなるんだ・・・」
「医者が言うにはもう少しかかるって話だからなぁ・・・
暫くは食事を少なくして運動するしかないだろ」
「分かってるけど・・・辛い物は辛いんだぞ!!」
「いたっ!痛い!やめろ響!!」
腕を振り上げて俺を殴る響。
普段なら微笑ましい光景だが、今の響に殴られるとたまった物では無い。
俺は響から逃げながら、今後の仕事の穴埋めをどうするか考えるのだった。
我那覇響
身長:152cm
体重: 41kg → 50kg → 60kg → 84kg → 141kg
B:83cm → 88cm → 95cm → 107cm → 137cm
W:56cm → 61cm → 71cm → 98cm → 124cm
H:80cm → 87cm → 92cm → 100cm → 131cm