モバP「きらりん☆パワーには参ったな」
「にゃっほーい☆Pちゃん元気かにぃ?」
「おう、おはようきらり。俺は元気だぞー」
朝、事務所で今日の仕事を確認していた俺にきらりが元気よく挨拶をする。
毎朝元気よく挨拶してくれるのは良いことだ。
「ハピハピなのは良いことだにぃ!ねぇ杏ちゃん!」
「あー・・・うん・・・そうだね・・・杏は全然ハピハピじゃないけど」
ふと、近くからこんな時間に居るはずの無い杏の声がする。
・・・よく見るときらりは杏を抱きかかえているらしい。
「杏もおはよう。きらりに拉致られたか?」
「うん・・・プロデューサーもなんとか言ってよ・・・私はこの時間に活動出来る様には
出来てないんだって・・・」
酷く眠そうに欠伸を噛み殺す杏。
きらりは甘い物食べてスッキリしよ?と杏に飴を手渡している。
「まぁいいか。杏が来てるなら丁度良いな・・・お前等この後仕事だぞ」
「え”?今日そんな予定あったっけ?」
俺の台詞に心底嫌そうな返事を返す杏。
「朝一でメールが飛び込んできてな。手が空いてる子を一人か二人回して欲しいって
話だったんだよ」
「きらりは問題ないよー?お仕事はなに?」
「写真撮影・・・っつてもグラビアみたいなのじゃ無くてちょっとしたポスターの撮影だけどな」
「ポスター?」
「おう、ちくわの広告だとさ」
「ちくわ・・・めう・・・う、頭が・・・」
「杏ちゃん大丈夫?きらりんぱわー注入すぅ?」
「いやいいよ・・・」
杏が急に頭をかかえ、きらりが心配そうに杏の顔をのぞき込む。
「というわけでよろしく頼むぞ?」
「えー・・・私は嫌だよ・・・」
「なんでー?」
「だって面倒だし・・・」
首を傾げるきらりに、杏は面倒の一言で片付ける。
「杏ちゃんはきらりと仕事するの嫌?」
「別にそういうんじゃないけど・・・」
「なら一緒にやろー☆きっとハピハピすぅよ!」
「えー・・・」
なおも嫌がる杏にきらりのやろうよコールが続く。
「あー・・・もう、わかったわかった。やるから。代わりに仕事場まで運んでー」
「うん!杏ちゃんもがんばろー☆」
やがて抵抗するのも面倒になったのか、杏は嫌々ながらきらりに従う。
こっちとしてはきらりが居れば杏を無理矢理飴で釣らなくてイイから楽な事この上ない。
「じゃあ車で送った後俺は戻らなきゃいけないから、終わったら連絡くれ。そしたら迎えに行く」
「あいよー。上手くいったら飴頂戴」
「上手くいったらな」
そんな約束をし、俺は事務所近くに止めてある社用車の鍵をちひろさんから受け取るのだった。
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【Prrrrrrrrrrr・・・】
「ん?もう終わったのか?」
2時間程して、俺の携帯電話に連絡が入る。
発信者は杏だ。
簡単な撮影とはいえ、もうしばらくかかる物だと思っていたのだが・・・
「もしもし」
『あ、プロデューサー?ちょっと大変な事になっちゃったんだけど・・・』
「はぁ?」
『ごめん、杏じゃどうしようも無いから来てくれない?』
「お、おう!分かったすぐ行く!」
杏からの連絡を受け、俺は再び車に乗り込むと撮影スタジオまで飛ばした。
スタジオに着いた俺を待っていたのは衣装のまま泣いているきらりと、
困った表情の杏とスタッフさん達の姿だった。
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「・・・つまり、きらりが勢い余ってセットを壊してしまったと」
「うん。きらりが杏を持ち上げるっていう構図の撮影だったんだけど、その時にちょっとね」
説明を受けた俺はとりあえず二人に怪我が無い事を知って安堵した。
どうやら杏を持ち上げた際、勢い余ってセットの一部を踏み抜いてしまったらしい。
確かによく見ればきらりの足形にぽっかりと穴が空いている部分がある。
「で、きらりはショックで泣いてると・・・」
「そう。スタッフさんは気にしなくていいよって言ってくれてるんだけど・・・」
「こういうのは本人の問題だからなぁ・・・」
俺は改めてスタッフさん達に謝ると、きらりの近くに近寄った。
未だに落ち込んでいるのか、あの元気いっぱいのきらりがほぼ無言で居るのはかなり寂しく感じる。
「きらり、大丈夫か?」
「Pちゃん・・・ごめんだにぃ・・・」
「なに、十分挽回できる失敗だろ?」
「そうだけど・・・でもこんなの全然ハピハピじゃないよー・・・」
どうやらここ最近目立った失敗も無かったことがよりきらりを落ち込ませているらしい。
「・・・じゃあこうしよう。とりあえず今日は撮影を終わらせるんだ。
その後どうすれば良いか相談しよう」
「・・・うん」
「なら笑えきらり!ハピハピしたいんだろ!!」
「・・・わかった、がんばってみるにぃ」
とりあえず少しは元気が出たのか、きらりは立ち上がりスタッフさん達に再び頭を下げていた。
俺は二度目の安堵のため息を付くと、この後どうした物かと考えるのだった。
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「で、なんで杏まで参加しないといけないの?」
その日の午後、暇な時間に俺達はきらりの事について相談をする事にした。
因みに杏は俺が無理矢理参加させている。
「基本敵にはお前にも関わる事柄だからだよ」
「確かにきらりとは仕事一緒になること多いけどさぁ・・・」
「ごめん・・・杏ちゃん・・・迷惑かけるね」
「あーもう!そんな目しないでよ!!別に嫌って訳じゃないから!!」
こちらの思惑通り杏もきらりの涙には勝てないらしい。
「・・・で、どうするっていうの?」
「まず、今回の問題点を探そうか」
「問題点・・・きらりがセットを壊した事?」
「おしいな、正確には『なぜきらりはセットを壊してしまったのか?』だ」
「なぜ・・・ってそりゃ勢い余ってだよね?」
「そうだな、きらりの売りポイントは元気がある事だ。それは決して悪い事じゃ無い。
ただ、今回はそれがマイナスに働いてしまったってだけだ」
「・・・きらりんぱわー、駄目?」
「駄目じゃ無いさ、さっきも言ったがきらりの元気いっぱいな姿に魅せられたファンはかなり多い。
だから、少し気をつけるだけで十分はずだ」
「気をつける?」
「おう。ちょっと周りを見て脆そうな場所には乗らないとか、そういうのだよ」
「・・・それで解決するのかにぃ?」
「すると思うぞ。まぁその分ストレスかかるかもしれないけど・・・」
「・・・わかった、きらり頑張る!」
「よし、その意気だ!!」
盛り上がる俺達を横に、杏は杏いらなくない?と一人呟いていた。
が、その言葉は俺達には聞こえなかったのだった。
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それから1ヶ月、きらりは表向きあまり変わらない様に見えた。
だが、実際はどことなくぎこちない動きになっている。
それは今までよりも周りの足場なんかに気を遣う様になったからだ。
元々気遣いは人一倍出来る子だから、すぐにその違和感も消えてきた。
だが・・・
「・・・なぁ、きらり?」
「うゆ?」
「お前・・・少し太ったか?」
「わープロデューサーさいてー。女の子に酷い質問をするなー」
「いくらなんでも棒読み過ぎるぞ。突っ込みを入れるならもう少し真面目にやれよ」
俺の質問にきらりではなく杏がちゃちゃを入れる。
その横できらりは自分の体をちょこちょこ触りながら確かめている。
「うー・・・少し太ったかもしれないにぃ」
「そうか・・・この前の事があったから普段よりも動きが少なくなるのはわかるが、
あんまり気にしすぎるなよ?俺が言うのもなんだけどよ」
「わかってるよぉ☆」
「まぁきらりならすぐ背に変換されるでしょ」
「お前も少し伸びたら良いのにな」
「無理でしょ」
そんな会話をしつつ、俺は今度から少しきらりの運動量を増やして貰う様
トレーナーさんに頼むことを誓うのだった。
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「・・・きらり、なぜこうなったんだ?」
「わかんない・・・Pちゃん・・・どうしよう・・・?」
さらに2ヶ月、俺はきらりの部屋できらりと対面しながらそんな質問をしていた。
きらりの体型はますます横に膨らみ、今ではぽっちゃり体型そのものだ。
いやぽっちゃりと言って良いのかすら怪しい。
背が高い分、きらりの存在感は余計に増す。
もともと大きめだった胸は爆乳と呼んでいいのか迷う程になり、
尻はまるで桃太郎の桃を思わせるサイズだ。
腹はくびれてる様に見えるが、それは他が大きくなったから相対的に見えるだけで有り、
実際はかなりぽっこりしている。
すらりとしていたはずの足は今では男の俺よりも太くなり、
腕も当然それ相応にサイズアップしている。
最近では顎のあたりも肉がたぷつきはじめ、首もなんだか太くなった気がする。
「間食とか・・・運動量の低下とか・・・なにか思い当たる節はないか?」
「うーん・・・無いにぃ」
「甘い物の取り過ぎとかは?主にドーナッツとかパンとかケーキとか」
「そういうのもないよぉ」
運動量に関してはトレーナーさんに頼んであるから大丈夫だとは思う。
間食に関しては本人の言うことを信じるしか無いが、
きらりの態度を見る限り嘘と言うことは無いだろう。
「・・・Pちゃん。きらりアイドルやめなきゃ駄目?」
「まさか・・・ちょっと太っただけだろ?」
「・・・ホント?」
「本当だって」
俺の言葉に納得した風にするきらりだが、実際は不安で仕方ないだろう。
「・・・よし、後2ヶ月間様子を見よう。
それで痩せない様なら医者にかかって診てそれからだ。
だから先ずは痩せる努力だきらり!」
「・・・うん!」
俺の言葉を受け、きらりは立ち上がると早速運動をするために部屋を飛び出した。
俺は慌ててその後を追いかけ、きらりにせめて部屋の鍵は閉めろと叫ぶのだった。
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「はぁ・・・」
「うー・・・」
そして2ヶ月後。
俺達は病院からの帰り、車の中できらりと共に頭を抱えていた。
きらりの体重は結局減らず、今では完全にデブそのものだ。
胸はついに雫を軽々と超え、尻は事務所の椅子でははみ出す様になった。
腹は杏一人分ぐらいの脂肪が付いてそうなほど前に飛び出し、足はまるで丸太の様だ。
腕は今では俺の太ももに迫るような勢いだし、顎は立派な二重顎になってしまった。
医者の結果もただの太りすぎというだけであり、未知の病気だとか改造だとか
ウサミン的電波とかではないらしい。
「二人ともそろいもそろって辛気くさいよ・・・」
「うるへー」
付き添いで来てくれた杏が後ろの席からそんな言葉を投げかけてくる。
「杏ちゃんごめんね・・・きらりのために」
「別に・・・今日は暇だっただけだよ」
「お、ツンデレか?」
「はは、こやつめ。杏がそんな面倒なキャラ付けするわけないじゃん」
そうやって冗談交じりに俺の言葉に応えてくれる杏。
杏の御陰か、少しは車内の空気も明るくなった気がする。
「・・・さて、このままでは本当に不味いな。
きらり、杏。二人とも何でもいいから思い当たる節が無いか探してくれ」
「うん・・・わかったにぃ」
「そりゃいいけど・・・なんかあったかなぁ・・・」
うんうん唸る二人。
やがて、杏がこんな事を言い出した。
「そういえばさ、最近きらりって『きらりんぱわー☆』って言わなくなったね?」
「うゅ?そういえば言ってないかも・・・」
「そーいえば聞かなくなったなぁ・・・それが関係あるのか?」
「いやわかんないけどさ。例えばきらりんぱわーって台詞が
きらりの何か行動のトリガーになってるとかないかな?」
「それは・・・」
いくらなんでもゲームのやり過ぎだろ、という台詞を俺は飲み込んだ。
確かに、あの事故以来きらりはずっときらりんぱわーと叫んでない。
最初は単純に落ち込んでいるだけだと思っていたが、
もしも無意識のうちにきらりが自分にリミッターをかけていたとしたら?
「きらり、あとでトレーニング室で思いっきりきらりんぱわーって叫びながら運動してみろ」
「・・・?Pちゃんがそういうならやってみるぅ」
「え、プロデューサーさっきの杏の言葉マジで受け取ってるの?」
「こっちは藁にもすがりたい気分なんだよ。せっかくのアイドル潰したら勿体ないだろ」
俺はそう言いながらトレーニング室が空いてるかどうかを記憶と照らし合わせつつ車を加速させるのだった。
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「・・・まさかマジできらりんぱわーってかけ声で治るとは思わなかったよ」
「俺もだよ・・・杏お手柄だな・・・」
「なんだろ・・・素直に喜べない」
数週間後。
俺達は目の前で以前のように細身になったきらりがキレのあるダンスを踊るのを見ていた。
あの日トレーニングルームできらりんぱわー☆と叫びながら運動したきらりは尋常じゃ無い量の汗をかいていた。今までは全然かかなかったのにである。
これはもしかしてという俺達の予想通り、きらりの体重は見る見る内に落ちていったのだった。
どうやら俺達の想像通りきらりはあの事故が引っかかっていたらしく、無意識に運動量を
制限していたらしい。
それだけであんなに太るんだから人間はよくわからない。
「・・・すごいね、人体」
「だな・・・」
「Pちゃん!杏ちゃん!どうだったにぃ?☆」
「すごかったぞ・・・うん」
「ここ数ヶ月の苦労はなんだったんだろうって考えさせられるほどには凄かったよ」
「ホントー!?☆やったぁ!!」
ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶきらりに、俺と杏は得体の知れない疲労感を味わうのだった。
「きらりん☆パワーには参ったな」
「ホントだよ」
ぐったりとする俺達に、きらりは満面の笑みを浮かべながらこう言ってきた。
「そういえばきらりまた背が3cm伸びたよ☆もしかしたらこれもきらりんぱわーのおかげかも☆」
「・・・だとよ」
「・・・杏もきらりんぱわーあれば背が伸びるかな?」
「伸びるかもな」
「ちょっと注入してもらってくる」
近づいてきた杏を持ち上げるきらり。
俺はきらりに玩具にされる杏をみながら、やれやれとため息を付くのだった。
「おいこらー!助けろプロデューサー!」
「自業自得だろ」
なお杏が解放されたのはそれから30分後だった。
諸星きらり
身長:184cm
体重:60kg → 64kg → 72kg → 125kg
B:91cm → 95cm → 101cm → 127cm
W:64cm → 67cm → 78cm → 108cm
H:86cm → 90cm → 99cm → 133cm