魔女達の宴
(!)注意。
この作品はfateシリーズのネタばれ、及び独自の解釈を多く含みます。
またfateシリーズをプレイした事前提に書かれているため、初見ではわかりにくい表現などが多くあります。
さらに、この作品はfate/hollow ataraxiaの設定をいくつか使っています。
お読みになる際は十分にご注意を。
「・・・私に魔術を教えてほしい?」
ある日の衛宮での昼下がり、遠坂凛は妹の間桐桜にそんな話を持ち込まれた。
きょとんとした表情の凛に対し、桜は少し照れくさそうに笑いながら続ける。
「はい。その・・・最近少しずつですけど、魔術の行使に慣れてきたので・・・」
「・・・アンタライダーに教わってなかった?」
凛は桜のサーヴァントの名前を出す。
ここですぐさま教えると言わないあたり、素直ではない。
「ライダーじゃ教えられないタイプの魔術なんです・・・
その・・・遠坂の魔術について教えて欲しくて・・・」
口を大きく開け、固まる凛。
「・・・駄目、ですか?姉さん・・・」
駄目押しとばかりにやや上目遣いまで使う桜。
凛はしばらく考え込むしぐさをして、
「──わかったわ。そこまで言われたら断れないわよ」
そう、どこか吹っ切れたような顔で答えた。
・
・
・
「というわけで、うちは代々大師父ゼルレッチの魔法に到達するのを目標としている訳。
・・・まぁ正確には宝石剣の完成を目指すっていうのが正しいんだけど・・・」
眼鏡をかけ、自室で桜の指導をする凛。
「宝石剣・・・あ、この前イリヤさんの家で作ろうとして失敗した・・・」
桜は言ってから、すぐさま失敗したという表情をする。
凛はフンッと鼻をならしてそっぽを向く。
「・・・ええそうよ!失敗したわよ!
完全無欠に完膚なきまでに失敗したわよ!!」
ダンッ!と足をその場で踏み鳴らし、ガルルと今にも唸りそうな顔をする。
ここに士郎がいたならば、彼は凛の八つ当たりを喰らっていただろう。
「おかげでロンドンまでいく羽目になるし、向こうでは散々な目に会うし!
それもこれも士郎が悪いのよ!!」
断じてそんなことはない。
「ま、まぁ・・・それで、他には?」
「他?そうね・・・さっきも言ったとおり、宝石剣を製作するのが目的なのよ。
その関係か鉱石魔術・・・特に宝石に関する魔術が得意ね」
凛は部屋を漁り、いくつかの宝石を取り出すと桜に見せた。
どこか普通の宝石とは違う輝きを持つそれを、桜は様々な角度から眺める。
「桜も見たことあると思うけど、宝石に魔力をストックする術があるの。
これ一個作るのにも結構大変なんだけどね。それと家は転換が魔術特性よ。間桐は吸収だっけ?」
「はい。お爺様がそうおっしゃってました」
「そっちはいいわね・・・お金がかからなそうで」
ふっとっ皮肉っぽく笑う凛に、桜は手にした宝石を返す。
「・・・私にも出来ますか?」
「これ?」
桜の言葉を受けて、凛は宝石を指差す。
「はい」
「そりゃ出来るでしょうけど・・・なんでこれ?」
「その・・・どうせ覚えるなら姉さんの手助けが出来ればなって」
「・・・そう。じゃあ好きになさい」
桜に背を向ける凛。
かなり冷たい態度にも見えるが──
否、その顔は赤く染まりきっており、ただ恥ずかしがっているだけである。
桜もそれがわかっているのか、ただただにこやかに笑っていた。
・
・
・
「やり方はわかった?」
「はい。なんとか・・・」
さらに少し時間が経ち、桜への講義は終わった。
凛は眼鏡を外すと、席を立ち背伸びをする。
「そ、それならいいわ。
じゃあ私はこの後用意があるから一旦向こうへ行くわ」
向こうとは遠坂の実家の事である。
「あ、はい!わかりました!先輩に伝えておきますね」
「よろしく。また後でね」
そう言って凛は部屋を出て行く。
桜も一緒に出た後、凛の背中を見送りつつ一人優しく笑う。
「・・・さてと、先輩が買い出しから帰ってくるまでにお洗濯物畳まなきゃ」
しばらく凛の背中を眺めた後、桜はゆっくりと縁側から庭に出て洗濯物を取り込むのだった。
・
・
・
数時間後、途中で帰ってきた凛に呼ばれ、桜は夕食後に凛の部屋を再び訪れていた。
「はいこれ」
そう言って凛が無造作に渡してきた小さな包みを、桜は受け取る。
中にはいくつか小分けされた粉末が入っており、包みが妙に可愛らしいデザインだから始末が悪い。
「それを明日から毎朝飲んで頂戴。
間桐の魔術に上書きされた遠坂の魔術を目覚めさせる物だから。
あ、飲むと多分身体がだるくなると思うけど、そういう物だから心配しないように。
あと少し身体が熱くなるわよ?」
薬の効果を説明する凛。
桜は簡単にそれをメモすると、お礼を述べる。
「・・・まぁ頑張りなさい。
それが全部飲み終わったら次の段階にいくから」
「すぐは無理なんですか?」
「アンタ・・・今までどれだけ蟲に自分の身体が喰われてると思ってるの・・・
そう簡単には開かないわよ。薬を飲み終わるまで2ヶ月だからそれ位我慢しなさい」
呆れたと言わんばかりの顔で呟く凛。
「そ、そうですか・・・分かりました」
「素直で結構」
それだけ言うと、凛は作業が有るから桜に部屋から出るように言う。
いつものツンデレをこじらせた発言である。
「はい。頑張ります」
笑って返し、部屋をでる桜の方を、凛は結局見なかった。
・
・
・
「桜、調子はどう?」
「あ、姉さん。ちょっとだるい感じがしますけど大丈夫ですよ」
「そ、なら良かった」
数日後の朝。
朝練に行こうと靴を履く桜に、凛が声をかける。
珍しくしゃっきりとした顔をしており、いつもの学校の人間には見せられない様な感じではない。
つまりは、それだけ桜が心配だと言うことである。
「・・・ふふっ」
それが分かったのか、桜がクスリと笑う。
「・・・何よ」
「いえ、何でも。あ、それよりそろそろ出ないとまずいので」
むーと膨れる凛に背を向けて、桜は玄関の扉を開ける。
「・・・いってらっしゃい」
「はい、いってきます」
そのまま笑顔で外へと出て行く桜に、凛はどこか釈然としない顔をするのだった。
・
・
・
そんな事が続いた数日後。
桜は違和感を感じていた。
「・・・動きにくい」
確かに身体はだるいのだが、朝練に影響が出るほどでは無かった。
だが、最近今まで以上に疲労が出るようになってきていた。
「・・・なんでだろ?」
一度凛に相談しよう。
そう考えた桜は、それ以上深く考えなかった。
・
・
・
「うーん・・・見た限り特に異常は無いわね・・・
考えられるとすれば身体の中にある『遠坂の魔術』を呼び覚ましているから、その影響かしらね」
そうやって考え込む凛。
桜に相談された凛は、桜を自室に迎え入れた後、色々と手を当てて桜の身体を弄った。
まぁ結局の所分からなかったのだが・・・
「もうしばらく様子を見ましょう。今のままじゃ上手いこと原因が究明出来ないから」
姉さんがそう言うならと、桜は凛に礼を言い、ゆっくりと部屋から出て行く。
どこか釈然としない気持ちを持ったまま・・・
・
・
・
「うっ・・・」
さらに一週間程経った頃。
桜は脱衣所で暗い顔をする。
「増えてる・・・」
そう、乙女の大敵・・・体重計だ。
カラカラと小気味良い音を立てる悪魔は、桜に嫌な現実を見せつける。
「少しお弁当の量を減らさないと駄目かな・・・
でもそれだと弓道部の部活が乗りきれないし・・・」
ぶつぶつと呟きながらあーでもないこーでもないと考える桜。
「とりあえずライダーと相談してみようかな・・・?」
そう呟いて彼女は部屋に戻り、ライダーと相談する。
結局、夜にライダーと共にゆったりとランニングする事で話は纏まった。
纏まったのだが・・・
それから二週間経っても痩せるどころか体重は上がっていったのである。
「なんで・・・!?なんで痩せないの!?」
「サクラ・・・運動量が足りないと言うことは無いはずですが・・・」
体重計を目の前にして頭を抱える桜。
その様子を横で見て悲しそうな顔をしているライダー。
ライダーから見ても一回りは桜の身体が太くなったのが分かる。
特に胸は元々大きかった事もあり、どこぞのメイドを超えるサイズだ。
・・・まぁ、他の部分も大きくなっているのだが。
「・・・ライダーはいいよね。サーヴァンとだから体型変わらないし」
「いや、それはそうですが・・・サクラ?あのちょっと・・・?」
ゴゴゴゴゴゴという音が聞こえてきそうなオーラを纏いながら、桜はゆっくりとライダーに近づく。
「サクラ?黒いです!黒くなってますよサクラ!?」
「ふふっ・・・どうしたのライダー。別に何かするわけじゃないから安心して?」
狭い脱衣所の中で逃げ場も無く追い詰められるライダー。
「さ、ライダー。少し『お話』をしましょう」
「サクラ、それは部屋に帰ってからでも・・・
そうです。偶には私がお茶を入れますから少しリラックスを・・・!」
必死に抵抗するライダーだが、なすすべも無く桜の八つ当たりの餌食になるのだった。
・
・
・
「・・・姉さん?」
「・・・ごめんなさい」
さらに大分月日が経ったある日。
凛は汗をだらだらだと垂らしながら目の前の桜に頭を下げている。
その桜は酷く太り、自称太めであった細身の身体と完全にお別れを告げたようだ。
たっぷりと脂が詰まった身体は、完全にデブ一直線であり、酷い有様であった。
大きすぎる胸はなんだか別の誰かを彷彿とさせ、突き出た腹は妊婦のごとし。
スカートを突き破らんとする尻を支える二本の丸太は内側ですれる様になった太ももだ。
腕も当然みっちりと肉が付き、酷い有様としか言えない。
首元も大分太くなり、そろそろ襟元が厳しい感じである。
「その・・・あれよ・・・不運な事故というか・・・不運と踊ったというか・・・」
「つまりはいつものうっかりですね?」
「・・・はい」
言い訳をしようとする凛だが、桜の威圧に負けて頭を再び垂れる。
詰まるところ、桜の体重増加の原因が凛であったと言うことだ。
桜がここ最近飲んでいた薬。これは凛が言うとおり遠坂の魔術を桜の身体になじませる物だ。
だが、桜自身常に刻印蟲に魔力を喰われており、それを思った凛が自分の魔力を込めた宝石を砕いて薬に混ぜていたわけである。
ところが、これがまずかった。
凛のうっかりが炸裂し、薬の配合と宝石の分量を間違えていたのである。
これにより凛の魔力が桜の中に有る間桐の魔術である『吸収』によって体内に必要以上に取り込まれ、遠坂の魔術の『転換』によってよりにもよって脂肪として蓄えられたのである。
詰まるところ、お節介がもたらした悲劇である。
そして、ここまで気付かなかったのも凛の責任である。
桜も何度か自分の身体について凛に尋ねていたのだが、凛は『桜の身体』を調べるだけであった。
自分で調合した薬に自信があったと言うよりは、薬のせいであると考えつかなかったと言うのが正しい。
その結果がご覧の有様である。
「ふふふっ・・・姉さんったら妹思いなんですね・・・
しっかりと思いを受け取って重くなりましたよ?」
「いやー・・・その−・・・私の思いが伝わって良かったわ。うん!」
「ええ・・・たっぷりと伝えて頂きました」
「そう!じゃあ私はこの辺で失礼するわ!あ、お礼はいいからね!」
そう叫ぶと、凛はその場から立ち去ろうとする。
が・・・
「いえ、折角ですから姉さんに恩返しさせて下さい」
がっしりと、満面の笑みの桜に捕まった。
「いやいや、それには及ばないわよ!妹に色々してあげるのが姉の役目っていうか!」
「ふふ・・・姉さんは謙虚ですね・・・気にしないで下さい。たっぷりとお返ししてあげますから」
「いや、それは大丈夫だって・・・ア───ッッッ!!」
凛の悲鳴が辺りに木霊し、桜の笑い声だけが後に残った。
その後、穂群原学園の美人姉妹が二人して太るという悲劇的な話があり、一悶着あるのだがそれはまた別の話である。
間桐桜
身長:156cm
体重:46kg → 49kg → 55kg → 113kg
B:85cm → 87cm → 94cm → 129cm
W:56cm → 63cm → 68cm → 107cm
H:87cm → 79cm → 87cm → 119cm
遠坂凛
身長:159cm
体重:47kg → 100kg
B:77cm → 92cm
W:57cm → 118cm
H:80cm → 109cm