野干よりは狐のほうが可愛いって言うか─誰が狸ですか

野干よりは狐のほうが可愛いって言うか─誰が狸ですか

 

 

「ご主人様はどんな女の子がタイプですか?」

 

──ふと、そんなことをキャスターが聞いて来た。
聖杯戦争の準備中、いつも通りキャスターと自分の部屋で打ち合わせをしていたらである。

 

「いやー・・・乙女たるもの、ご主人様の好みに合わせた姿でいたいじゃ無いですか!」

 

くねくねと身を捩りながら何か言ってる。
それにしても・・・好みのタイプか。
さて、どう答えた物か──

 

 スレンダーかな?
▼実はぽっちゃり系が好き
 気にしたことが無い

 

 

ここは一つ、からかってやろう。
そう思い適当な事を言ってみる。

 

「な、ななななななんですとぉおおおお!?
 ご主人様!?本当ですかそれ!?」

 

ああ、本当だ。

 

「ああ・・・まさか!そんなぁ!?」

 

よろよろとよろめき、そのままキャスターが崩れ落ちる。
そのままぶつぶつと何かうわごとのように呟いている。
・・・ちょっとやり過ぎたかもしれない。

 

「ご主人様!私ちょっと用事が出来たのでこれで失礼します!」

 

冗談だ。
と、言おうとした矢先、キャスターはどこかへとまるで弾かれた弓のように飛び出していった。
・・・もしかしたらとんでもないことをしたかもしれない。

 

───────
─────
───
─────
────────

 

「それで・・・?なんで私達なわけ?」
「貴方達の方がハッキングやらなんやら得意でしょう!?」
「私の記憶によれば、貴方は変化スキルを所持していたかと」

 

キャスターを追ってみると、凜とラニの二人と話していた。
どうやら二人を巻き込んでいるようだ・・・

 

「こっちにも事情があるんです!そうおいそれと使う訳にも行かないんですよ!
 協力してくれないなら・・・呪いますよ?」

 

トーンがガチだ。

 

「分かったわよ・・・協力してあげるから・・・」

 

凜はやれやれといった感じで眉間の辺りを押さえている。
ラニは・・・顔が見えないから良く判らない。
が、多分呆れているのだろう。

 

「それじゃ、ラニ。アンタも手伝いなさい」
「はぁ・・・分かりました」

 

──これ以上ここに居ると見つかりそうだ。
ここは一度マイルームに戻ってキャスターが来るのを待った方が良いだろう。
自分で引き起こした事の責任はせめて取りたい。

 

───────
─────
───
─────
────────

 

「はい、お待たせしましたご主人様」

 

おかえり。
帰って来たキャスターに声をかける。

 

「では早速ですがこちらの用事は済みましたのでアリーナの探索と行きましょう。
 ええ、そりゃもう是非にとも!」

 

・・・

 

▼どんな用事だったの?

 

「いえいえ、ご主人様に報告するほどのことではありませんので!」

 

──露骨に慌ててる。
・・・そのままキャスターに無理矢理連れられてアリーナまで行くことになった。

 

───────
─────
───
─────
────────

 

「おお!来てますよ!私の妖狐センサーにビンビンと来てますよ!
 これはレアアイテムゲットの予感です!」

 

アリーナに入った途端、キャスターがこっちに話しかけてくる。
どうやら先ほど凜達と話し合っていたのはこれを出すためらしい。
というか妖狐センサーってなんだろう・・・髪の毛でもピンと立つのだろうか?
・・・これ以上突っ込むと何かまずい気がする。

 

「是非是非ゲットしましょうね〜」

 

・・・上機嫌のキャスターを放って置いて、アリーナ探索を始めた。

 

「ご主人様!?無視が一番堪えるんですけど!?」

 

───────
─────
───
─────
────────

 

「お、これこれ!レアアイテムの気配がミコーンと来ますよ!」

 

アイテムボックスを前に、キャスターが騒いでいる。
・・・とりあえず開けてみるか。

 

【礼装:ある家政婦の割烹着】

 

──頭に警報が鳴り響く。
なんだか分からないがこれはヤバイ。
触れてはいけない物だ。
どこかで何か聞いてはいけない高笑いが聞こえる。

 

「ささ、これを使ってみましょう!」

 

嫌だ。
なんだか分からないがこれを使うのはまずい気がする!

 

「気のせいですよぉ〜ささ、ぐいっと行きましょう!」

 

キャスターを説得してみるが、駄目だ。
聞く耳を持たない。

 

「大丈夫ですって!ええ、そりゃもう安全ですって!直ちに影響は無いです!」

 

それは駄目だと思う。
一応コードキャストの確認だけしておこう。

 

【Makikyu_X:サーヴァントのヴィジュアルを大きく変更する】

 

──謎の映像が脳裏によぎる。
どこかの洋館で、地響きを立てながら巨大な黒髪の女性が床を突き抜けて来る。
しかも何故か目から怪光線を放っているし。
その裏で割烹着を着た女性がせせら笑って──

 

「ご主人様?どうなさいました?」

 

キャスターの言葉で現実に引き戻される。
だが、まだ脳内で警告が鳴り響いている。
これを使うと琥*の思い通りになってしまう。
・・・*珀とは誰だ?
**なんて人物は自分は知らない──

 

「ご主人様!?大丈夫ですか!?」

 

キャスターの声が聞こえる。
そうだ、キャスターとアリーナに潜っているんだった。
そこでこの礼装を手に入れて・・・
どうするんだっけ?

 

「さあ、早く効果を試してみましょう!折角入手したんですから!」

 

そうか、これを使えば良いのか。
礼装を使う。

 

「来た来た!来ましたよ!」

 

使ってから気がついた。
これは使ってはいけない物では無かったか?
全身の血がさぁっと引くのを感じる。
呆然としている場合では無い、キャスターは!?

 

「あぁん・・・んっ・・・♥」

 

むくりと、キャスターの体か一回り膨らむ。
ただでさえこぼれそうな胸が着物を押しのける。
腰は帯を解かんとする勢いで膨らんでいる。

 

「あは!イイ感じですねご主人様!」

 

少しした後にはそれはもう見事なぽっちゃり体型のキャスターが居た訳で。

 

「ご主人様!どうです?こんな感じの体型がベストですか!?
 これで私とご主人様の絆もより一層深まるって言うか〜
 もうラブっときてズッとしてキュンって感じ?
 ぱっぱと探索を終えて二人の愛の巣でそれはもう濃厚な一時を──あれ?」

 

いつものマシンガントークをしていたキャスターが何かに気付いたように言葉を止める。
止まっていたはずのキャスターの膨張が再び始まっていた。

 

「え、ええ?
 ちょっと待って下さい!あんまり太ると流石のご主人様も引いちゃうっていうか・・・
 ちょ、ヤダヤダ!これ以上は勘弁を──んん!!♥」

 

───────
─────
───
─────
────────

 

「あら、昨日はアリーナで良い物見つけたんじゃ無い?どうだったかしら?」
「どう考えても既にバレてますから芝居は無駄かと」

 

翌日、凜とラニの二人に出会った。
どうやら予想通りこの二人が作ったアイテムだったらしい。

 

「にしても変な話よね。何故か礼装を作る度に箒やら変な形状のステッキやら、
 あげくには割烹着になったし・・・」
「動くサボテン等も有りましたね」

 

────やはりアレは呪われたアイテムだったのだろうか。
まぁ実際呪われたような物だが。

 

「で、キャスターは?居るんでしょ?」

 

凜が疑問を口にする。
確かに隣に居るが・・・

 

「ご主人様、気にしなくて良いです。私もこの女達に言いたい事有りますから」

 

キャスターが喋りながら姿を現す。
凜とラニの表情に緊張が走る。
それもそうだろう。
あり得ないほどに太ったその姿は、着物な事も合わさってまさに横綱と言いたい感じだ。
スイカみたいな胸が今にも服からあふれそうだし、満月のような腹に巨大すぎる尻。
スリットから見える太ももは丸太のようだ。
丸々とした顔は首と一体になったような感じだ。
二の腕なんかも推して知るべし。

 

「キ、キャスター?貴方その体・・・!?」
「ええ、御陰様でこうなりました♪」

 

笑顔で話すが、キャスターの目が笑ってない。
というか後ろに何か黒いオーラが見える。

 

「ふふふ・・・さぁて?弁明は有りますか?
 答えは聞いてませんが」
「ちょ、ちょっと待って。先に礼装を見せて!?」

 

凜に言われて礼装を渡す。
暫く弄った後、ぽつりと

 

「あっちゃー・・・設定ミスってるわ・・・」

 

そう呟いた。

 

「・・・成る程〜ミスっちゃいましたか〜それは仕方ないですねぇ〜」

 

まずい、横からものすごい負の圧力を感じる。
このままでは二人の命が危ないかもしれない。
今のキャスターならセラフをねじ曲げるぐらいはしそうだ────!

 

▼今のキャスターも好きだよ
 二人に頼んで元に戻れるようにして貰おう

 

とりあえず落ちつかせるために言ってみる。

 

「え・・・?ご、ご主人様?今何と?」

 

凄い顔でこちらを見てくるキャスター。
なんというか・・・「なん・・・だと・・・?」とか呟きそうな感じの表情だ。

 

「あのですね・・・今のセリフ、もう一度お願いできます?」

 

だから今のキャスターも好きだって。

 

「今”も”って事は・・・
 きゃー!きゃー!今のセリフは脳内に完全保存ですよ!
 ええ、もうそれこそ何回でも再生出来るように!」

 

くねくねと体を捩らせ、いやんいやんとしているキャスター。
どうやら惨劇は防げたようだ。

 

「えっと・・・私達はこの辺でお暇するわ。今度お詫びはするから」
「そんな〜お返しなんていいですよ〜こちらも助かりましたし!」

 

この手の平返しである。
・・・まぁいいか。こういうのも面白いかもしれない。
聖杯戦争の最中だけど、こんな平和な一日があっても。

 

───────
─────
───
─────
────────

 

七天の聖杯。
不要なデータである自分が削除されるまでの間だ。
そこと繋がった時に見た光景。
全ての観測をする聖杯たる七天の聖杯が予測した世界の一旦。
そこは自分が体験した世界と少し違う"世界"。
流れる膨大なデータの中で何故か妙に印象に残った。
他の世界では自分は男装の麗人である*イ*ーを引き連れていたり、もしくは赤い外装をまとったア**ャ*をサーヴァンとにしていた。
いや、黄金の鎧をまとった最*の英**だったかもしれない。
だが、自分の心引かれたのはこの『あったかもしれない世界』だった。
・・・もしかしたら自分はそういう子が好みだったのかもしれない。
まぁいいか。
全てはもう終わる。
ああ、惜しむらくは。
惜しむらくはこの"夢"の続きが見れない事だろうか。
ああ、それは少し残念かもしれない。
まぁ彼のことは彼女にまかせた。

なら私は消えるべきだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お望みとあればいつでも見れますよ、私のマスター♥
 ええ、そりゃもう自主規制なんか取っ払って。
 だから・・・お休みなさいマスター、タマモはいつでも貴方のお側に居ますから」


トップページ 肥満化SS Gallery(個別なし) Gallery(個別あり) Database