暁の水平線に命を捧げ

暁の水平線に命を捧げ

 

 

※注意※
この作品には作者による独自の解釈が含まれております。
公式の発表等とは異なることがございますのでご了承下さい。

 

 

 

西暦20XX年。
深海棲艦と呼ばれる未知の生物の襲来。
故郷を焼かれた俺は、怒りに身を任せて海自へと入った。
意外にも"海"の適正が高かったらしく、俺は気付けば佐官級の階級へとなっていた。
佐官"級"というのは、俺の立場にある。
本来なら俺は下っ端も良いところだ。
ところが深海棲艦達は待ってくれない。
結果、とある特殊な"適正"を持つ人間を一時的とは言え佐官級の扱いとする事となったのだ。
その適正というのが、"艦娘"に対する適正だ。
艦娘・・・第二次大戦時に海軍が所持していた艦が何らかの力で擬人化した物の総称。
そして、深海棲艦に対する唯一の対抗手段でもある。
俺の適正と言うのは、この艦娘のメンテナンスなんかをする妖精が見えるのだ。
この妖精達も摩訶不思議な存在で、全くの謎だ。
資材等をどこからともなく調達してくるし、艦娘を建造出来るのはこの妖精達だけだ。
さらに破損した艤装などから元の艦娘を出現させる事も出来るのだ・・・
疑問は尽きないが、現状この状況を打破するのに必要な為にとりあえず働いて貰っているのだ。

とにもかくにも、俺はこの適正の御陰で艦娘達を指揮する提督というポジションに付けた。
これでようやく・・・深海棲艦達に目に物見せてやれる。
俺はその為だけに必死で働いているのだ。

 



 

「科研からの報告?」

 

ある日、秘書官の霧島からの報告を聞いていた。

 

「はい、どうやら新種の弾薬が使用された形跡があるとか・・・」

 

報告書を片手に、眼鏡を光らせる霧島。
俺は資料を受け取ると、軽く流し読みした。
資料によると、とある鎮守府の艦娘達が新型の武装を持った敵と遭遇。
残念ながら交戦した艦娘が轟沈したため詳しい事は不明だが、
回収された艤装を調査した結果、なんらかの化学反応を起こす物と考えられるとのことだ。

 

「新型か・・・霧島はどう考える?」
「やっかいである事は間違いないですね・・・
 情報が少ない上、交戦した海域は私達の鎮守府とそう離れてませんし」
「情報か・・・今手の空いている艦娘達は?」
「こちらで調べておきます」
「頼む」

 

失礼しますと言って部屋を出て行く霧島の背中を見ながら、俺は一人考えるのだった。

 



 

「で、私達か」

 

俺は霧島が調べてくれた艦娘達の中から、四人の艦娘達を選んでいた。
戦艦の長門、軽巡洋艦の大井、重巡洋艦の愛宕、そして軽空母の龍驤だ。

 

「ああ、龍驤は対潜攻撃と制空権の為に、長門は火力の為に、
 大井と愛宕は万が一夜戦に縺れ込んだときの雷装での一撃を見込んでだ。
 急な任務で悪いな・・・」

 

俺は四人を見渡しつつ、頭を下げた。

 

「ええてええて。今手が空いてる中で行けるんがウチらだけやろ?
 寧ろ期待して貰って嬉しい限りやで!」
「ですねぇ〜だから頭を上げて下さいな♪」
「ふふ、北上さんの・・・艦娘達全員の為だもの、腕が鳴ります!」
「ふっ・・・ビッグ7たる私がこの程度の任務で音を上げるとでも思っているのか?
 提督はそこでゆっくりと報告を待っていれば良い」

 

自信ありげな言葉を放つ四人に、俺は再び頭を下げた。

 

「じゃあ頼むぞ。18隊出撃せよ!」

 

頭を上げて四人に号令を出す。
了解という声が鎮守府に響き渡った。

 

「ところで提督、旗艦は誰だ?当然私だよな?」
「え〜?私ですよねぇ提督?」
「はぁ?ウチに決まっとるやろ?」
「いやいや、私ですよね?提督?」

 

四人の間に嫌な空気が走る。

 

「・・・情報が欲しいので足が速い大井で」

 

俺は眉間を押さえながらそっと呟くのだった。

 



 

「さて・・・そろそろ戻ってきても良い頃だが」

 

俺は部屋の時計を確認する。
彼女達が出撃してから数時間。
哨戒兼偵察任務ならばそろそろ・・・

 

「提督!!」
「どうした!?」

 

そんなことを考えていたら霧島が扉を突き破りそうな勢いで開けた。
驚く俺に霧島は、悲惨な顔でこう告げた。

 

「四人が大破で戻ってきました。それも・・・かなり面倒な状況で」

 

それを聞いた俺は急ぎ三人が居るドックへと駆け込む。
そこには・・・

 

「提督ぅ・・・私ぃ・・・」
「嘘よ・・・こんなんじゃ北上さんに・・・」
「ありえへん・・・ウチが・・・ウチの体が・・・」
「くっ・・・提督、見ないでくれ・・・」

 

馬鹿みたいに太った四人の姿があった。

 



 

「すまないが、もう一度報告してくれ」

 

みんなが服を着替えるのも兼ねて、暫くの休憩を取った後、俺は龍驤達にそう質問する。
目の前に居る龍驤が丸々とした体で答えてくれた。

 

「えっとやな・・・ウチ等がそろそろ帰ろうか言うときにな、
 見たこと無い形状の砲身抱えた軽巡ホ級がおったんや。
 そいでな、観察しようとウチ等が近づいたら横から駆逐のハ級とニ級が仰山出てきてな・・・」

 

涙ぐみながら話す龍驤。
やはり色々とショックが大きいのだろう。
服を突き破らんとする程に育った腹は、たっぷりと柔らかそうに前へと迫り出している。
だが残念ながら胸は余り育たなかったようで、ひっそりと少し増した膨らみがそこにある。
太ももは前の腰程に太くなり、膝辺りの艤装が非常に窮屈そうだ。
尻はスカートを押し上げ、少しでも動けば下着が見えそうだ。
腕は袖が広めだから分かり難いが、確実に太くなっているのが分かる。
顔は丸くなり、頬が呼吸に合わせて揺れている・・・

 

「・・・そこからは私が話そう。
 駆逐達に気を取られている間に愛宕が後ろをホ級に取られて例の新型に撃たれたんだ。
 撃たれ所が悪かったのか愛宕が動かなくなってな・・・
 足の速い大井が愛宕の回収にまわり、私と龍驤で道を開けたんだが・・・数の暴力と言う奴だ。
 途中で中破してしまった龍驤がホ級の攻撃を受けて大破。
 それに気を取られた私も同様に撃たれたよ」
「で・・・大破した訳か」
「ああ・・・」

 

俺は長門の方へと向く。
自信家な彼女らしいヘソ出しルックは、今では見るも無惨な形状となっている。
でっぷりと迫り出した贅肉の塊が元々あった布を隠し、今ではヘソ出し所か腹丸出しである。
その上に乗っかる胸はたわわに実りすぎ、完全に腹の上に乗っかっている。
短かったスカートは肥大化した尻のせいで最早機能を果たしているか怪しく、さらに横にスリットのような切れ目が入ってしまった。
当然デザイン的な物ではなく、ただサイズが合わなくなっただけだ。
腕は太く丸太のようになり、素手の火力も戦艦並みとなっただろう。
・・・口にしたら本気で首が物理的に飛びそうだ。

 

「・・・で、大井は?」

 

俺は向こうでひたすらぶつぶつと呟いている大井の事を他の三人に聞く。

 

「じゃあ私が話しますねぇ・・・
 私は最初の一撃で気絶してしまって、その後気付いたら大破状態で大井ちゃんに運ばれてました。
 で、見れば目の前で長門さんが大破してて、とりあえず動かなきゃと思って
 立ち上がったんですけど・・・」
「敵の数が多すぎて、二人じゃ何も出来なかったんです」

 

大井が愛宕の話を補完する。
ちらりと大井の方を見ると、他に負けず劣らず酷い有様だ。
服は既に前が留められないのか、完全に開いている。
制服のようなそれは、体中色んなところが食い込み酷い有様だ。
胸は元々大きかった物がさらなる増量を果たし、長門を超える勢いだ。
腰部分にあった艤装に大きくなりすぎた腹が収まっておらず、縄で無理矢理結びつけているらしい。
カモシカのようだった脚は本物のシカ所か象クラスだし、腕に至っては腕章が食い込んで痛々しくすらある。
顔は長い髪が幸いして太った印象が薄いが、よくよく見ればまん丸である。

 

「先に戦闘していた大井ちゃんが敵に足止めをされているうちに新兵器に撃たれて大破されて、
 それで私もう一発喰らって大破してしまって・・・」

 

再び黙ってしまった大井に替わって愛宕が残りを話し始める。
二発喰らったからだろうか、愛宕が一番酷い有様だ。
元々トップクラスに大きかった胸は既に爆乳を超え、西瓜大所か片方で西瓜二個分は有りそうなイメージだ。
そんな胸が乗っかる腹は三つ子の臨月腹を思わせるほどで、どうやっても艤装が付けられないのか横に置いてある。
当然そんな体を包む服なんて無く、胸の部分をタオルか何かで隠しているだけだ。
股間は腹で隠れて見えなくなっているし、太ももは少し開いて座っているのに互いに触れ合ってしまっている。
腕はドラム缶のようで、何か動く度にぶるんぶるんと揺れているし、顎は完全に肉に埋まってしまった。
頬にも脂肪がたっぷりと付き、少し目を細めてしまっている。

 

「だが、その状況でよく帰ってこれたな?」

 

俺の質問に、長門が忌々しそうに答える。

 

「・・・愛宕が二発目を喰らった時点で、連中引き上げたんだ。
 まるでこちらを見逃すかのようにな・・・」
「ウチ等も戦闘する力無かったからな・・・そのまま引き上げたんやけど・・・」
「途中で肥満化が始まったのか・・・?」

 

俺の問いかけに無言で頷く二人。

 

「つまりあれか・・・?向こうは実験だった訳か?
 威力と、あと効果がどうかの・・・」
「そう考えるのが自然でしょうね」

 

大井が俺の考えを肯定する。
愛宕が二発撃たれたのもおそらくはただの実験。
多分途中まで深海にでも潜ってこちらを追跡していたのだろう。

 

「・・・やっかい過ぎるぞこの兵器」

 

二発喰らえばその時点で愛宕のように満足に動けなくなるのはきついなんて物じゃ無い。
しかも威力自体も高いようだし、これが量産されよう物なら・・・
俺は頭を抱えて悩むしか無かった。

 



 

しばらくの間、我が鎮守府は非常にやかましかった。
多くの研究者達が押し寄せ、ひっきりなしに俺の所へ報告と相談が飛び込んでくる。
四人は体を触られたり艤装を無理矢理付けてみたりと忙しく、まともに休んでいる暇なんて無かったようだ。
さらに深海棲艦達は遠慮無しにこっちへ来るしで、一月ほど睡眠時間がろくに取れない日々が続いたのだった。

 

「ふぅ・・・ようやく帰ったか・・・」
「お疲れ様でした」

 

俺は嬉しそうに帰っていく研究者連中を見送りながら深くため息を付く。
霧島が俺にお茶を差し出してくれたのでありがたく頂こう。

 

「霧島もお疲れ様。第一艦隊の出番が多くて大変だったろ?」
「いえ、こちらは殆ど通常任務でしたから・・・まぁ警戒する事が多かったのは事実ですけどね」

 

やや茶目っ気を出して笑う霧島。
俺はお茶を飲み干すと、尋ねたかったことを聞いた。

 

「あの四人は何してるんだ?」
「ようやく科学者達が帰ったからこれからダイエットだ−!って騒いでましたよ」
「ははっ。早く痩せて貰わないとこっちも困るからな。やる気になってくれて嬉しいよ」
「ですね。期待しましょうか」
「駄目だったらケツを引っぱたいてやってくれよ?」
「はいはい」

 

俺はゆっくりと背伸びをしてから深呼吸をした。
背骨がパキパキと音を立て、縮こまった筋肉が伸びたような気がする。

 

「さて・・・もうひと頑張り行くか」

 

俺は研究者達の論文染みた報告書をを手に取ると、頭を必死に働かせながら読み始めるのだった。


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