歌よりも・・・?

歌よりも…?

 

 

時は20XX年・・・
2000年代初頭、『VOCALOID』ブームから数十年。
人類は現実世界に彼女達を生み出していた。
カーボンの合金で出来た骨格、シリコンで表現された人間的な柔らかさに人工皮膚。
オーナーの自由で体型をある程度変化させる事すら可能となったそれらVOCALOIDシリーズは正に新たな時代の象徴とも言える。
そんな中、今一体のVOCALOIDが生み出されようとしていた・・・

 



 

重々しい音がする。
金属が擦れる音だ。
それと共に空気が抜ける音が響き、何かが起き上がる気配がする。

 

「目覚めたかい?」

 

起き上がった何かは、横から声をかけてきた人物の方を見つめる。

 

「・・・はい」

 

ゆっくりと、しかしきちんとした発音で答えるのはVOCALOIDシリーズのカスタムモデル。
『初音ミクカスタムシリーズvol.1 弱音ハク』だ。
長く後ろで束ねた白髪に赤い瞳。
初音ミクと違い豊かな胸に肉感の良い尻。
大胆に胸元を開けた服を着た彼女は、今ここに産まれたのだ。

 

「私の事は分かるかな?」
「データベース照合・・・VOCALOIDシリーズ開発責任者の」
「ああ、そこまで言えれば十分だ。物事は効率的に行こう。私の事は博士と呼びたまえ」
「はい」

 

ハクはその場に立ち上がり、博士の方へと近づく。

 

「ふむ、きちんと歩けているな。バランサーは正常のようだ。
 次のテストをするからこっちへ付いてきなさい」
「わかりました」

 

コツコツと無機質な廊下を歩く二人。
たどり着いた部屋で二人は様々なテストをした。
曲を理解する能力のテスト。
実際に歌を歌うテスト。
リズムに合わせてダンスを踊るテスト。
他にも視界がきちんと正常かのテストに判断能力のテスト。
様々なテストを一通り試した後、ハクはまたもや別の部屋に連れて行かれた。

 

「ここには一人で入りなさい。指示はスピーカーを通して別の部屋から送るから」
「はい」

 

ゆっくりと部屋の中に入るハク。
さっきまでの実験室とは打って変わり、機材らしいものは殆ど無い。
精々録画用のカメラに、指示を出すためのスピーカー。
そして小さな机とその上に乗っている酒瓶とグラスだけだ。

 

ハク

 

「博士、これは?」
『その瓶の中身をグラスに注いで飲みなさい。それが実験だよ』
「わかりました」

 

これが一体なんのテストなのか疑問に感じつつも、ハクはグラスを持ちそこに瓶の中身を注いでいく。
ツンとしたアルコールの香りが辺りに広がり、ハクはあらかじめプログラムされている『酒に惹かれる』という気持ちを感じた。
そのままグラスを口に付け、ぐいっと飲み干す。
喉の辺りを焼けるような感触が通り抜け、ハクはこの味を『旨い』と感じた。

 

「博士・・・これが一体なんの?」
『すぐに分かるよ』

 

博士がそう言った直後、ハクの体がかぁっと熱くなる。
アルコールのせいかと最初思ったハクだが、すぐにそうでは無いと言うことを感じ取った。
むくりと、ハクの体が震えた。
それは徐々に徐々に全身に行き渡り、むくむくと体を内側から押し上げる感触に変わる。

 

「これは・・・!?」
『君はカスタムモデルだからね。今回の売りは“より自由になった体型エディット”なんだ。
 今まで以上に細かい調整が出来るようになった上に、肉付けの上限が上がったんだよ。
 私としてはそんなに要らないと思うんだけどねぇ・・・
 まぁそうなった以上テストしないと行けない。そう、今まで以上にね。
 だから君にはその酒に入れた特殊な薬剤で限界まで太って貰うよ。
 その状態で活動出来れば十分だからね、製品版ではリミッターかけるし』

 

博士の説明の間にもハクはどんどん太っていく。
気付けばハクの体は既にぽっちゃりを通り越しデブその物になっている。
腹はズボンの上にこれでもかと乗り出し、胸は片方が頭のサイズとそう変わらない。
二の腕はまるで特大のペットボトルのようになり、太ももは完全に丸太のそれである。
だが、彼女の肥満化はまだまだ止まらない。
どんどんと重く、どんどんと前に、どんどんと横に。
脂肪で膨らむ体を必死に支えながら、彼女は少し悲しそうな顔をした。
それはこんな状況になった事への悲しみなのか、それとも初めての体験が汚された事への悲しみなのか・・・
ハク自身にも分からないのである。

 

 



 

肥満化開始からおおよそ10分後。
ハクの肥満化はようやく終わりを迎えた。
だが、彼女の体は既に最初の時とは別物になっていた。
頭よりも二倍はありそうな胸。
その下にあるこれでもかと脂肪を盛られた腹。
電柱を彷彿とさせる足。
腕は余り変わってないが、それでも一回り以上は太くなっている。
顎は完全に肉に埋もれ、首は肉が段を作っている。
まるで肉の山のようなその体だが、それでもハクは何とかその場で動いている。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

荒い呼吸を繰り返し、ゆっくりと地響きを鳴らしながら歩くハク。
その様子に博士も満足そうだ。

 

『うんうん。良い感じじゃ無いか。これならお偉いさん方も納得するだろうね。
 じゃあお偉いさん方が来るまでその体型で生活してくれたまえ。
 なぁにほんの二週間ぐらいの話だよ。そしたら戻してあげるから頑張ってね』
「・・・はい」

 

どっかりとその場に座り込み、荒い息を落ち着けようとするハク。
結局彼女が痩せるのは一ヶ月後であった。


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