無意識食欲肥満体

無意識食欲肥満体


#東方Project

 

『永遠亭で盗難事件!犯人は未だ分からず!』

 

「・・・物騒ね。まぁウチは特に盗む物もないからいいでしょうけど。
 それより・・・」

 

幻想郷は旧地獄に立つ地霊殿の食堂。
随分と物騒な見出しの躍る『文々。新聞』をから視線を上げ、古明地さとりははぁ・・・とため息を付いた。
その視線の先には笑顔で食事を頬張る霊烏路空の姿があり、さとりの視線に気付いた空はうにゅ?と言わんばかりに首をかしげた。

 

「・・・永遠亭でお薬貰ってくるべきかしらね?」
「私病気じゃないですよ?」
「いえやせ薬よ」

 

さとりの言葉にズレた反論を見せる空。
さとりは椅子から立ち上がると、空の腹を軽く揉む。

 

「ひゃっ・・・!さとり様くすぐったいですよ」
「あなた・・・大分太ったわね・・・」

 

そう、空の腹は揉める程に成長・・・つまるところ太っていた。
元々長身スレンダーな体型だった空は、ここ最近益々増した食欲で随分とぽっちゃりしてきたのである。
むっちりと肉付きの言い足にくびれが無くなりぽっこりと前に出た腹。
胸は服と赤の目を押し上げて自己主張し、角の取れた顎は柔らかそうになってきている。

 

「全く・・・なんでこう太ったのかしらね?」
「最近御飯が美味しいからかなぁ・・・食欲のなんとかって奴ですよ」
「食欲の秋というには随分寒いでしょうに・・・」

 

既に先日正月を迎えたばかりである。

 

「でも私だけじゃ無くてお燐も太ってますよ!!」
「それなのよね・・・」

 

そう、さとりの悩みの種はもう一つある。
空と同じくさとりのペットである火焔猫燐。
彼女も最近随分と丸くなってきているのだ。
空に比べればまだ変化は少ないが、それでも細かった足は一回り太く、腰のくびれは大分なだらかになっている。

 

「地上の巫女なら異変だーと騒ぐのかしらね?」

 

自分で言いながら、さとりはそれは無いだろうと考えて居た。
異変であるならば一緒に生活している自分にも影響が有るはずである。
ところが異常な食欲も無ければ体型の崩れも特にない。
まぁ一過性の物だろうとさとりは考え、空にあまり食べ過ぎないようにと釘を刺してから部屋を出て行く。

 

「あんまりにも目立つようなら本気で考えた方が良いかもしれないわね・・・」

 

出る際に新聞をちらりと見つつ、さとりは何度目かのため息をつくのだった。

 



 

ところがである。
しばらく経っても空と燐の食欲は落ちるどころか益々増していき、気がつけば体型は崩れに崩れていた。
最初はそう目立ったほどで無かった燐の方もいつの間にやら一食で三人前は当たり前、へたすれば五人前は食べる様になっていた。
その食欲に合わせるように体も横に横にと広がり、気がつけば完全にデブその物であった。
丸々と飛び出た腹は歩く度にぶるぶると揺れるし、一緒に肥大化した巨大な胸で服が取られてヘソが丸見えである。
足はスカートの上からでも分かる程に太く、尻は完全に丸に近い。
腕は太く、育った腹と胸と干渉して猫車が押しづらそうで仕方ない。
顎は完全に二重であり、少しでも口を開こう物なら頬肉と合わせてぶるぶると揺れるのだった。
だがこれでも空に比べればまだ"マシ"である。
燐の二倍は食べる空の方はこれはもうデブというよりは肉の山であり、飛行能力が無ければまともに動けない程である。
腹は膝下を隠す程度の量で、片方が頭より大きい胸は腹にこれでもかと乗っかって垂れている。
足は右足だけでなく全体が"象の足"じみて太くなり、尻に至ってはさとり一人なら入りそうなサイズである。
腕は肉が振り袖のように垂れ下がり、最近ではまともに腕が曲げられないほどに贅肉で覆われている。
燐よりも酷い首は完全に肉に埋もれ、二重顎なんだか分からない程の贅肉に巻き込まれている。
勿論さとりも何度か注意はしたし、時には食事を無理矢理中断させる事もあった。
なのだが・・・気付けばどこかで食事をしており、効果が上がったことは無い。

 

「・・・一度診させた方が良いかもね」

 

永遠亭の噂は地霊殿まで──主にどこぞの白黒魔法使い経由で──伝わっており、あそこなら何か良い手立てが見つかるだろう。
なのだが・・・

 

「でも今向こうも大変な状態らしいし・・・」

 

そう。
『文々。新聞』曰く、先日の盗難事件が未だ未解決であり随分と殺気立っているというのだ。
診察自体は行っているらしいがそれでも診て貰うまでかなりの手間と時間がかかるというのだ。

 

「それに今のあの子達じゃ永遠亭まで行けそうに無いからこっちに来て頂かないと行けないし・・・」

 

そう、永遠亭までここ地霊殿からはかなり遠い。
当然そんな長い時間を今の永遠亭がこちらに割いてくれるとは思えない。
だからと言ってこのまま放置するわけには行かないのだ。

 

「どうしたものかしらね・・・」
「あれ、さとり様お悩みですか?」

 

ふと、悩み込むさとりの後ろからそんな声をかけられた。
地霊殿デブコンビの動ける方、燐である。

 

「お燐・・・悩みって程じゃ無いのだけどね」

 

流石に本人に言うのは気が引けるのか、さとりは誤魔化すようにそう言った。

 

「嘘言っちゃ駄目ですよ。その顔は何か悩み事がある時の顔ですからね」
「・・・わかるの?」
「ええ。長い付き合いですから」

 

さとり様意外と顔に出るしと言う頭の声を聞きながら、さとりはさてどうした物かと悩む。
本人達を病院に無理矢理連れて行こうとしているとは流石に言えない。
だがかといってこのまま黙っていたらそれはそれで色々聞かれるだろうし・・・
そう悩むさとりを燐はしばらく見つめた後、急にさとり手を取った。

 

「お燐?」
「何をお悩みかはわかりませんけど、良い方法がありますよ!
 ささ、アタイに任せて!」

 

そう言いながらどこかへと連れて行く燐。
さとりは制止してみるも、体格差で引きずられるようにどんどんと連れて行かれる。
やがて付いた部屋はいつもの食堂だった。

 

「この時間ならまだここに居るはずですから」

 

そう言って燐は食堂の扉を開ける。
中には丁度食べ終えたのだろう・・・大量の空の皿前に満足げに腹をさすっている空の姿があった。

 

「あれ?お燐にさとり様?」
「お、居た居た。お空、さとり様に"いつもの奴"やってあげられないかい?」
「うん?いいの?」

 

空の質問に燐はああと答え、さとりを空の方へと連れて行く。

 

「さ、さとり様。お空の奴に思いっきり抱きついてみて下さいな」
「え?」
「大丈夫です!すっごく気持ちいいですから!」

 

何が大丈夫なのかよく分からないさとりは燐と空の方を交互に見る。
空はさぁおいでと言わんばかりに動かしにくい両腕を広げ、燐はささどうぞと言わんばかりに空の方を指し示す。

 

【・・・しょうがないね】

 

それでもさとりが迷っていると、燐はそう頭の中で呟いてからぐいっとさとりの背中を押した。
前に押し出されたさとりは空に抱きつくように飛び込み、抱きつかれた空はさとりを優しく抱きしめる。
ふわりと、まるで特大の綿に包まれたような感覚をさとり感じた。

 

「えへへ・・・さとり様いつもご苦労様です」

 

そんなことを言いながらさとりの頭を撫でる空。
人肌に暖かく、ふわふわとした感覚。
そして優しく撫でられる感覚。
夢見心地というのはこういう事かとさとりが思う程に、空の"ハグ"は素晴らしい物だった。

 

「アタイもそれよくやって貰ってるんですよ。凄く気持ちいいでしょう?」
「・・・そうね」

 

辛うじてそう返したさとりは、そのまま空に抱きしめられながらこう考えるのだった。
──とりあえずすぐに診せなくても良いかも、と。

 



 

こうして永遠亭に二人を診せる計画は先延ばしになり、それはつまるところ二人の肥満化を更に進めると言うことでもあった。
燐はさらに二回りは太くなり、下腹が膝にたどり着くほどになっていた。
胸も肥大化が進み、最近ではしきりに『胸が邪魔で前が見づらい』などと漏らすほどである。
当然サイズの合う下着などはなく、腹が下着代わりという酷い有様である。
背中にも深く脂肪の谷間が刻まれようになり、足や腕は丸太が細く見えるという具合である。
空に至っては最近は宙に浮くことすら困難になり、頑張って飛び上がってようやく歩ける様になると言う具合だ。
当然体もかなりのサイズで、足首に届きそうな腹肉や片方に赤ん坊一人が入ってそうな胸。
殆ど動かせなくなるほどに肉が付いた腕に膝を曲げることが出来ない足。
呼吸が辛いのか常に方を上下させ、頬肉を振るわせるその姿は暑苦しい事この上ないだろう。
だが・・・さとりはもう何も言わない。
と言うのも・・・

 

「・・・太ったわね」

 

ぶにりと、自分の腹を揉むさとり。
空の肉に包まれる感覚にはまったあの日から、彼女の肥満化も進み始めていた。
今はまだ腹の肉がつまめる程度だが、これから少しすればきっと掴める程になるだろう。
そしてその先にはあのペット二人のようになる未来が見える。

 

「・・・まぁそれはそれでいいでしょう」

 

だが、彼女はどことなく嬉しそうな顔をする。
と言うのも燐のこんな一言が原因であった。

 

『さとり様、自分も太ってる方がお空に抱きしめられた時気持ちいいですよ?』

 

その時はそんなまさかと言ったさとりだったが、心のどこかでそれが残っていたのだろう。
気付けば自分が太る事をどこか楽しみにしているのをさとりは感じていた。
さとりは自分の腹から手を離すと、椅子に腰掛けて新聞に目を通し始める。
新聞の見出しには永遠亭が薬の行方を捜しており、見つけた人には謝礼をするという記事が書いてあった。
薬はイ-2911というラベルの貼られたビンに入っていると書かれており、中身は粉末であるという。
無言でぱらりぱらりと新聞をめくりながら過ごすさとり。
その後ろを妹の古明地こいしがゆっくりと通り過ぎる。
無意識を操る程度の能力である彼女をさとりは見つけられない。
彼女はさとりの方をちらりと見てにっこりと笑うと厨房の方へと向かう。
その手にはイ-2911と書かれたラベルが貼られたビンが握られているのだった。


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