斜め上の恋愛模様
岡元 良介(おかもと りょうすけ) 15歳 身長169cm 体重62kg
高校に入学したばかりの少年。男子校に入ったことを後悔しているが・・・
葉月 薫(はづき かおる) 15歳 身長158cm 体重40kg
良介のクラスメイト。なにやら秘密があるらしいが・・・
春も過ぎた5月。
憧れの学校に入学してそろそろ1ヶ月経つ。
クラスの連中とも大分仲良くなってきたし、俺は高校生活を満喫していた。
・・・ただ一つを覗いて。
それは・・・
「なんで男子校なんだよ・・・!!」
「何でも何もないだろ・・・元から男子校なんだから」
クラスメイトの葉月にそんな愚痴を言う。
そう、この学校は男子校なのだ。
学びたい学科がある近くの学校がここしか無かったとは言え、女子との出会いが全然無いのが悲しい。
「お前だって分かるだろ!?出会いが全然無いんだぞ!?」
「・・・君は学校に何をしにきているんだい?」
葉月が呆れた顔でそんな事を言ってくる。
俺だって学校が勉強をするところだって言うのは分かっている。
だからって折角高校生になったんだからこう・・・恋愛とかしたいだろ!?
「それよりレポートは出来たのかい?」
「・・・まだ」
「ほう?レポートの書き方が分からないからと泣きついて、僕を付き合わせた挙げ句、レポートもやらずに下らない事を考えていたと?
君はそう言うんだね?」
「・・・すまん」
「いやいやいいんだ。君がどう書こうと君の自由だからね。ただ僕がこのまま帰るのも僕の自由だと言えるよね?
それで君が明日が提出期限なレポートを出せなくなっても僕には全くこれっぽっちも関係無いからね」
「ホントスミマセン!お願いします葉月サン!お手伝いお願いします!!」
俺はおでこを机にぶつける勢いで謝った。
葉月はやれやれと言う感じで浮かせた腰を椅子に戻してくれた。
俺は下らない現実逃避をやめて再びレポートに向き合い、そしてため息を付いた。
「・・・なんでレポートとか有るんだよ・・・あの先生足骨折とかしねぇかな・・・」
「不謹慎だよ」
「良いだろこれ位なら・・・あの先生話分かり難いし」
「まぁ・・・あんまり上手くは無いね」
「はぁ・・・めんどくせぇ・・・」
「ほら、あと少しなんだから頑張りなよ」
「うーい・・・」
俺はペンを握りすぎて軽く痛くなってきた右手を2、3度プラプラと揺らしてからもう一度ペンを握るのだった。
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「あ〜・・・遅くなっちまったな」
前を歩く葉月に向かってそう言う。
レポートを無事に書き終えた俺達は学校からの帰り道をぶらぶらと進んでいく。
こいつとは家が近くにあるため殆ど同じ帰り道なのだ。
高校で知り合ったわけだが、もしかしたらこいつと幼なじみになっていたかも知れないと思うと少し不思議な気分になる。
「だね。まぁ家には連絡してあるから問題はないけどね」
「んー・・・ならもう少し遅くなってもいけるな?」
「ん?」
振り返った葉月がどうしたんだい?って感じでコッチを見る。
「メシ、食いに行こうぜ」
「・・・遅くなったと言ってもまだ6時前だよ?」
信じられないという顔をする葉月に向かって俺は腹を押さえながら訴えをする。
「いや、腹減っちまってよぉ・・・な、奢るしさ!」
「・・・まぁ付き合うぐらいならいいけど」
「よし、決まりだな!ハンバーガー屋でいいか?」
「どこでもいいよ」
どうでも良さそうな葉月を引き連れて、俺は足の向きを駅前の方へと変える。
やがて見えてきたハンバーガー屋に二人で入り、メニューとにらめっこを始める。
割とがっつり行きたいきもするが、夕飯の事も考えるべきだ。
でも腹減ってるしなぁ・・・
そんな事を考えながら葉月の方を見ると、葉月は既に決めたのか店の中を軽く見回していた。
「なんだよ、もう決まったのか?」
「ああ、僕はコーラだけでいい」
「あ?腹減ってないのか?」
「いや、空いてはいるけど帰ったら夕飯になるだろうからね。我慢かな?」
「お前ホントに男子高校生かよ・・・」
「うぇ!?」
普通この時間になったら腹減って死にそうになるだろ・・・
「な、何を言うんだ!」
「いや、普通に腹減ってやべぇってならねぇ?中村とか坂本とかと遊ぶ時大体この時間になるとメシ食ってるぞ俺等」
「だから空いてはいるって・・・我慢してるだけだよ」
「・・・ありえねぇ・・・だからお前そんな女みたいに細いんだよ!もっとメシ食えメシを!」
「うっ・・・」
葉月も思うところがあったのか、それ以上反論はしてこなかった。
「なぁ、みんなそうなのかい?」
「みんなって?」
「クラスのみんなさ」
「多分な。割とみんな買い食いとかしてるぞ?」
「そうか・・・」
葉月はしばらく考え込んだ後、はぁ・・・とため息を付いてからこう言ってきた。
「・・・わかった、僕も何か食べるよ。
それに君が食べるのに僕が食べないのは少し非常識だしね」
「おう。そーしとけ」
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「・・・で、結局それかよ」
結局葉月はハンバーガー一個とコーラを注文して終わりだった。
まぁ奢る俺からすれば助かるんだけどよ・・・
「いや、さっきも言ったけど夕食があるんだよ?」
「いいや、やっぱお前食細いって」
「そうは言うけどさ・・・別に普通だと思うよ?」
「じゃあお前普段どのぐらい食うんだよ?」
「普通に一人前だよ・・・」
「例えば?」
「例えばって・・・」
「ほら、どっかの店の定食が丁度良いとか有るだろ?」
俺の質問に葉月は少し考えた後、ポツリと答えた。
「・・・三月軒の定食で丁度ぐらいかな?」
「お代わりは無しで?」
「うん」
「はぁ!?あそこはお代わりしてナンボだろ!?」
「いや、別にしなくても・・・」
「いや俺等で行く時大体お代わり2杯はするぞ!?」
「むしろそれで良くおかずが持つね・・・」
「あそこは漬け物で一杯、おかずで一杯、味噌汁で一杯が基本だろ!?」
「絶対違うと思う・・・」
「とにかく!お前もうちょい食えよ!!だからそんなに女っぽいんだよ!!」
「うっ・・・やっぱり僕は女っぽいかい?」
葉月もどうやら悩んでいたのか、そんな質問をしてきた。
「まぁなぁ・・・顔立ちも女っぽいし、男にしちゃガリガリだし」
「やっぱりそうなのか・・・」
「なんだよ、家族にでもからかわれたか?」
「・・・そんなところだよ。
・・・治すにはどうしたら良いと思う?」
「男っぽくなるにはって事か?」
「うん」
「ならやっぱりまずは食えよ。がっしりしてくれば男って分かりやすくなるだろ?」
「・・・そうだね、努力してみるよ」
そう言いながら葉月はハンバーガーにかぶりついた。
・・・つもりなんだろうが。
「お前食い方まで女っぽいのな」
「・・・それは流石に余計なお世話だよ」
そんな事言ってもマジでなんでそんなチマチマ食うんだお前は・・・スッゲー気になるんだよ。
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そんなこんなでその日以来、俺は葉月を何かと葉月を放課後食事に誘った。
正直コイツだけだとぜってー食わなそうだし。
他の連中を誘ってカラオケ行ったりゲーセン行ったりして遊びつつちょこちょこと食べ物を食わせる。
それが功を奏したのか、徐々に葉月の体型はがりがりから普通体型になっていった。
・・・まではよかったんだけどなぁ。
「まさかここまで太るとはなぁ・・・」
「う、うるさいよ!!」
ある日の放課後、俺達はいつも通り買い食いをしてから自宅への道を歩いていた。
あれから半年、葉月の奴はそりゃもうブクブクと太った。
XLサイズの学ランがパッツパツで、今にもボタンが外れそうな程で、相撲取りというかそんな感じ。
腹はすげぇ前に出てるし、ズボンなんかしゃがんだら絶対尻の所破けるだろって感じだ。
「今体重何キロだよ?」
「・・・言いたくない」
「ふーん・・・ま、俺の見立てだと大体90ちょいって所か?」
「!?」
「図星かよ・・・適当だったのに。というか随分胸でかくなったなぁお前」
【ムニュ】
俺は悪ふざけで葉月の胸を揉むように触る。
ホントただのデブのはずなのに女みたいにこうボインって感じになってて思わず揉みたくなったのだ。
勿論俺はホモじゃ無い。
まぁ一種のスキンシップのつもりだった。
ところが・・・
「きゃぁぁああ!?」
「うぉ!?」
葉月がすげぇ悲鳴を上げて、その声が路地に響く。
まるで女子が上げるような悲鳴で、思わずビビる。
声変わりがまだなこともあって・・・女に見えてくる。
なんつーか変な気分だ。
「な、なにをするんだ!!」
「な、ただのスキンシップだろ!?」
「だからって他人の胸を揉む奴があるか!!」
「なっ!別に良いじゃねーかよ!!」
「いいわけあるか!!」
なんだよ!何気にしてるんだよ!
「そんな女じゃ有るまいし!」
「女だよ悪かったね!!」
「・・・ん!?」
「あっ・・・!」
おい、こいつ今なんて言った?
「おい、お前今なんて・・・」
「・・・ちょっとこっち来てくれ」
「あ、おい!?」
顔をうつむけたまま、葉月は人気の無い裏路地の方へとドンドン進んでいく。
慌てて追いかけると、辺りにあった人の気配は殆ど感じられなくなっていく。
やがてどこかの空き家に入り込んだ葉月はリビングまで進むと、俺にスプリングが飛び出たソファに座るように促した。
「ここ・・・僕の秘密の場所なんだ」
「そ、そうなのか・・・こんな場所全然知らなかったぜ」
「もう何年も空き家でね・・・何かあるとここに逃げ込んで泣いたり隠れて漫画を読んだりしてた。
ウチは古い考えの厳しい家でね・・・漫画も駄目だしゲームも駄目だって言う感じの家なんだ・・・」
そう言って葉月は埃の積もったテーブルの下から段ボールを出した。
俺の座ってるソファとその段ボールは埃が全然なく、普段から使っていると言うのがはっきりと分かった。
「読んでみてよ」
そう言って段ボールを俺の方へ寄せる葉月。
俺は蓋を開け、そっとカバーの付いた本を一冊取り出してパラパラとめくる。
中身は俺でも知ってる有名な少女漫画だった。
同じ名前の女性が新幹線で偶然出会って、片方にあだ名をつけて〜で始まる奴。
「・・・」
「探せばもっと昔の物もあるよ」
「だ、だからどうしたんだよ?」
「僕が言いたいことがわからないかい?」
いや、分かる。
分かるけど・・・
「分からないなら言おうか?僕は女だ。生物学上立派な女、雌だよ」
「は、ははは!なんだよ!これがその証拠だってのか?今時少女漫画読む男が居たって別におかしくはねぇし!」
「なら・・・もっと分かりやすい証拠を見るかい?」
そう言って葉月は少し離れると、制服のズボンを下ろした。
そして、学ランを上へとめくり上げる。
そこには可愛らしいピンク色の女物の下着があった。
勿論俺達に付いてるはずのアレもない。
股の下に挟んでるわけでも無い・・・足を肩幅に開いてるし。
「分かったかい?」
ズボンをはき直しながら、葉月がそう言ってくる。
俺は手にした漫画が落ちるのにも気付かないで、その場で固まるしか出来なかった。
・
・
・
「・・・なんで?って聞いて良いのか?」
「まぁ気になるだろうね。
さっきも言った通り、僕の家は古い家なんだ。それこそ昔からの迷信を信じるようなね・・・
家訓・・・とでも言えば良いのかな?
『女が生まれたならば男として18まで育てよ。さすればお家取りつぶしは永劫あり得ん。』
だってさ。馬鹿だよね・・・」
なんだそりゃ・・・時代錯誤っつーか・・・
「で、ウチの家はそれを今でも守ってる。
御陰で僕はこうやって男として生きているんだ・・・」
「で、でも・・・男子校だぞ!?どうやって入学したんだよ!?」
「古い家って事はそれなりにコネがある。僕の家は葉月だけど、本家は睦月家というんだ・・・君も知ってるだろう?」
睦月って言えばここいらの地主って奴で、すげぇ偉いらしい・・・って事ぐらいは俺でも知ってる。
ウチの学校にも多くの資金援助とかしてるから偶に学校の行事で挨拶してるの見るし・・・
「って事は・・・」
「まぁそういう事さ。ウチの本家からの圧力がかかってるから僕の性別は男として学校でも扱われてる。
男子校に男が行くのは当たり前だろ?」
「・・・なんだか頭痛くなってきた」
今時そんな家があんのかよ・・・
「事実は小説よりも奇なりって奴さ。
・・・それともう一つ君に言わなきゃいけない事があるんだ」
「なんだよ・・・もう何言われても驚かねぇぞ・・・」
そう言った俺に、葉月はどこかにやつきながらこう言った。
「僕と結婚して欲しいんだ」
「ぶっーーーーーーー!!」
思わず吹き出した。
こいつは何を言い出すのか。
「ゲホッッ!ウゲッ・・・グッゲホゲホ!何言うんだよ!!」
「これも家訓って奴でね。秘密を知られた場合は〜っていうお決まりの奴さ」
「嘘付け!!本当だとしても黙っておけばいいだろ!?」
「無理だね。あれだけ大声で騒いだんだ、絶対今頃本家に僕の性別がばれたことは伝わってるよ」
「はぁ!?だってあの辺別にお前の家と関係無い家ばっかりだろ!?」
「君はここいらに対する睦月家の影響を甘く見てるみたいだね。
絶対にあの辺の古くから有る家の誰かが通報しているよ。そうしないと自分達が危ないからね」
「マジかよ・・・ウチの近所そんなにやべぇ所だったのかよ・・・」
漫画じゃねーんだぞ・・・
「と言うわけでばれた以上君には僕と結婚して欲しいんだ」
「お、お前はいいのかよ!?」
「・・・嫌な相手に下着を見せると思うかい?」
そう言って葉月の奴は俺の横に座る。
重さでぼろいソファが軋み、葉月の方へ傾く。
割れた窓から夕日が差し込んで葉月の顔を照らす。
女って分かったからか、葉月の顔がやたら女っぽく、可愛く見えた。
「それに君にはこんな体型にした責任も取って貰わないとね?」
そう言って葉月は自分の腹を叩く。
朝まで何とも思ってなかった腹と胸が、ぷるぷると揺れるだけでなんだかエロかった。
「いや、それはお前の運動不足がだな・・・?」
「僕も運動したかったんだけどね、家に帰れば基本は勉強漬けなんだ。
それに太っている方が将来丈夫な子供が産めるし男としての貫禄が出るって言って基本痩せるのは禁止なのさ」
「ホントかよ・・・」
「本当さ・・・さて、今度の土曜日開いてるよね?」
「・・・開いてるけど」
「じゃあ迎えに行くから」
「・・・俺に拒否権は?」
俺の質問に葉月は何も答えず、ただ笑うだけだった。
この後、葉月の家に行った俺は葉月の親父さんに『君もか・・・頑張れよ』と謎の応援を貰った。
どうやら親父さんとは仲良く出来るらしい。
俺は横で笑ってる葉月を見て、ため息をついた。
それが諦めのため息だったのか、それとも別の意味のため息だったのかは俺にも分からなかった。
葉月薫
身長158cm
体重:40kg → 95kg
B:78cm → 102cm
W:56cm → 117cm
H:76cm → 98cm