悪星氏その3
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何処かの世界、パリと見てくれのよく似た何処かの町。
おしゃれの都で有名になのだがここでは痩せ過ぎモデルが社会問題になっている。
何故問題かと言えばファンが後を追うかの痩せることは無論、餓死したモデルまでいるからである。
おかげでステファニーのマネージャーは本日「キレた」。
彼は一人の名も無き科学者から妙な錠剤を買ったのだ。
「お腹減った…でも太るの嫌だなあ…」
撮影が1件終わり、そう呟くステファニー。
今の彼女のコーデはピンクのカットソーにレモン色のミニスカート、黄緑色のパンプス。
ステファニーには一度10kg太って大バッシングされた経験がある。
だから脂肪をこれでもかと落としてきた。
その細身に終末の日は遂にやってきた。
そう、彼女のマネージャーが鬼の形相で一歩一歩近づき…。
「いい加減にしないかステファニー!」
「何よっ」
「君は細いにも程がある!飲め!」
軽い言い合いの直後、マネージャーは右手に錠剤、左手に水筒を持ち、無理矢理彼女に薬を飲ませたのだ。
それから1分後…。
「な、なんか暑い…うわああああ!?」
彼女の体は急速に肥大化し、スカートもカットソーも、ついでに下着も弾け飛んだ。
一糸纏わぬ肉の塊にされてしまったのだ。
「ちょっとアンタ!どうしてくれんのよ!」
ステファニー大激怒の咆哮。
彼女に限らずモデル達はモデル足りえるためにやせ細ってきたのだから、当然の怒り。
怒りのあまり殴りかかろうとするが、体がロクに動かずその拳は届かない。
マネージャーからは
「痩せるのはその体でファッションショーを1本やり切ってからにしてくれ。動くミイラは見飽きたよ」
と言われてしまった。
その場で計測したステファニーのスリーサイズは上から
213/228/222(単位:cm)。
ついでに体重は414kgと、痩せすぎモデルは太りすぎモデルへと変貌した。
この後日、彼女(ステファニー)以外の痩せすぎモデルに同様の薬が用いられ、中にはモデルを退職した女性も。
このことはメディアに大注目され、強烈な批判が飛んだ。
薬の効きが段々進み、モデル歩きができるようになったことで肥満化に対する批判は飛んだものの、痩せすぎから太りすぎになったモデルたちはファッションショーへの出演は強行された。
その時のショーでステファニーはエメラルドグリーンのドレスにワインレッドのハイヒールという姿でランウェイの上へ…。
「あれがステファニー?」
「ただの肉の塊だろ…」
「ズシズシ煩え!」
「でもデブにしてはおしゃれじゃない?」
客席から飛ぶ冷ややかなコメント、軋むランウェイ。
だが、この強行は後に「肥満体でもおしゃれを頑張ろう」という勇気を世の女性たちに持たせた。
そして、旧来のファンは多少減ったが、ステファニーは肥満体であるが故の人気まで得た。
「うーん、美味しい〜♪」
肥満体であるが故の人気を得た結果、特盛がステファニーのマイブーム(ハーブーム?)に。
今さっきステファニーは「時間内に食べきればタダ」の特盛ラーメンをスープの一滴さえ残さずペロリ。
他のモデル達は減量に励んだり1人、また1人とモデルを辞めたりとしているが、ステファニーはしっかり食べる方向に走った。
無理な食事制限をしなくなったはいいが、大食いとはイマイチ常人と違う世界を生きていることに変わりない。
いったい彼女たちはまともな食生活をし、まともな体型を手に入れるのだろうか…。
(完)
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