498氏による強制肥満化SS

498氏による強制肥満化SS

〜元エルフの森〜

 

 

 

数少ない木々を押しのけるように背の高い建物が所狭しと立ち並ぶ。
かつて森だった頃の面影を残しつつも、ここ数年での急速な都会化により明らかに緑の量が減っている。
しかし、そこはやはりエルフの森。狭苦しくならないように何とか取り繕おうとはしているが、明らかに住人の数が多すぎる。ここなんかはまだいい方で、少し離れたところにある元草原にはびっしりと建物が建てられ、エルフの方が建物に遠慮して狭い道を歩くようなことになってしまっている。
当然、路地裏なんかに入れば、人とすれ違うことはまず無理である。
とりわけ、「最近の」エルフに関しては・・・・・・

 

 

 

「ふんっ! ふぬぅ! この! ゼー・・・ハー・・・あっれぇ? おかしいなぁ・・・この服、何週間か前に買ったばっかりなのに入らないなんて」
「お姉ちゃんまた太ったの?」

 

およそエルフらしくない体型のエルフ女が妹にからかわれている。姉エルフの名はベル、妹はハンナといい、仲良し姉妹で通っている。ベルは腕のいい狩人で魔王軍討伐にも参加した実績を持つエリートだった。しかし平和になってからというものめっきり仕事が減ってしまい、あれよあれよという間にこの様である。もともと気位の高い彼女は、どうやら太ったことを気にしているようだ。

 

「ストレートに言わないで、傷つくから・・・」
「私が何を言ったって、このお肉はなくならないよ?」
「み”ゃっ!?」
「顔はかわいいのにもったいないなぁ〜・・・こんな姿、前に一緒だった冒険仲間に見せたら別人だと思われちゃうよ?」
「・・・///!!」

 

ハンナが姉のお腹を後ろからむんずと鷲掴み、それでもまだ余りある肉をしみじみと呟きながら揉みしだく。背後に回られても敵の反撃を許したことがないベルはかなり動揺した。どうやら勘まで鈍ってしまったようだ。

 

「・・・決めた」
「え? なにを? 朝ごはん食べたばっかりでしょ? もうお昼のこと考えてるの?」
「ち、違う! ダイエットだ! 絶対に痩せてやるー!!」
「おぉ〜、思い切ったね」

 

ベルは赤面し涙目ながらも、前よりずいぶん重たくなった拳を振り上げ高らかに宣言した。
室内は狭くて運動ができず、外で行うのは何だか恥ずかしいということで、なるべく自然な形で運動をすることになった。

 

そう、クエストである。ここ数年で急速に普及したこのシステムは職に困る人々の救済システムとしても機能していた。ちょうど緊急の大掛かりなクエストが舞い込んだようで、係員が参加者を募っている。ベルとハンナもちょうどそこへ出くわした。

 

「討伐クエストだって。どうするのお姉ちゃん、本当に受けるの? そんな体で大丈夫?」
「ふっふっふ・・・私を見くびらないでもらおうか! かつてはエルフの森にその人有りと名を馳せた鷹の目のベルだぞ!」
「目はよくても顔がそんなにパンパンじゃねぇ・・・体もだけど」
「う、うるさい! それを何とかしようとしてるんだろ! 全く・・・そもそもダイエットだと考えるから恥ずかしいんだ。クエストを受ければ自然に痩せられる。ダイエットはオマケなのだよ!」
「それはお姉ちゃんの考え方の問題でしょ? まあ本人がその気になるんだったらこの方法でもいいか。・・・返り討ちに合わなきゃいいけど」
「さぁー! 無駄に動いて?覧せるぞー!」
「・・・大丈夫かなほんとに」

 

クエストへの参加を申し込んだベルはハンナの見送りを受けて意気揚々と出陣していった。

 

 

<多頭竜ヒドラ討伐>

 

カメのような分厚い甲羅を持つこのヒドラは、歩くだけで大地を揺らし、また毒を吐くことからも人々に恐れられていた。かつては勇者一行ですら手を焼いたという危険極まりない生き物である。しかし、どうしたものか参加者がやけに多い。それだけの強者ばかりが揃っているようにも見えず、ベルは首をかしげた。そうこうしている内に、引率していた係員が道具を配り始め、別の係員が声を張り上げた。

 

「みなさんにはヒドラが通った跡の除染作業にあたってもらいます! 防具をつけてから順番に除染液を受け取ってくださーい!」
「え?」

 

討伐任務だと聞いていたベルは何が何やらといった表情だ。受けるクエストを間違ってしまったのだろうか? ベルは他に参加していた、どう考えたって戦えそうにない年配の男性に話を聞いてみた。

 

「あの、すみません」
「ん? なんですかなお嬢さん」
「これってヒドラの討伐クエストですよね? やることってこれだけですか?」
「お嬢さん、あんた初めてかい? そうだよ、わしらのやることは蛇さんだか、カメさんだかが通った跡をきれいに掃除するっちゅうことだ」
「と・・・『討伐』って言ってましたよね・・・?」
「あぁ、そういうのは全部ロボットがやってくれとるよ。最近のはほとんどそう。わしらがやるのは危険のない簡単なお仕事だけ。いやぁ〜いい時代になったもんだ」
「は、はぁ・・・そうですか・・・」

 

通りでロクに戦う装備をしていない者がたくさんいるはずだ。

 

そのまま仕事は淡々と進んでいき、お昼にはおいしいお弁当とお昼寝休憩がついて、夕方には帰ってこれた。なにかおかしい。そもそも思ってたのと違うし、それ以上になにかおかしい。そんなことを考えつつも、そんな生活が数日間続いた。

 

「・・・お姉ちゃん・・・太った?」
「・・・」

 

ダイエットをするどころか、おいしくて安価なたっぷりのお弁当を、毎日残さず平らげていたベルの体は、たった数日でさらにふくよかさを増していた。

 

「お姉ちゃん・・・このままじゃエルフじゃなくてドワーフになっちゃうよ・・・」

 

ハンナは呆れながらもベルの豊満なお腹を叩くと、ポンポンといい音を立てて柔らかい腹肉がポヨンポヨンと波を打つ。

 

「や、やめてくれぇ・・・」

 

ベルは顔を真っ赤にしながらも力なく抵抗するが、もう情けないやら恥ずかしいやらで訳が分からなくなっていた。はたしてベルが元の美しい体系を取り戻すことはできるのだろうか。生きるのに困らない楽園というのも考え物である。


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